銀狼哀歌~逸般人が征くホロライブラバーズ難易度『オーディション』ゆっくり実況プレイ~ 作:LR44(ゆっくり)
「はい、じゃあ調書の作成は終了っと。
あの後30分ほどかけて調書を完成させ。
どうやら元凶は桃色髪の犬系獣人──
薬品を調合中に大爆発が発生する、という事自体はいつもの流れだが今回は事情が多少特殊らしい。
と、いうのも。そもそも、博衣はバトロワでミオと戦闘しており。その際に手持ちの薬品を纏めて投擲した所、大爆発が起こったとのこと。
持ってきていた薬品の中に爆発を引き起こす物は存在せず。更に、その爆発がかなり強力な武器になりそうなレベルで大規模で。
再現できないか色々と薬品を混ぜ合わせていた所……事故が起こったと。
いやまぁ、俺だって聞いた時は耳を疑ったよ。バカか? とな。
その上、爆発の副産物として──多分因果関係は真逆──危険な
不幸中の幸いは、生まれた錬金生物が比較的危険性の小さいスライム型だった事。ソレと、holoXのアジト内に実力者が揃っていた事。
結果的に錬金生物はフラスコの中に閉じ込められ、事なきを得た。という訳だ。
──と、その一連の流れを眺めていると、いつの間にか隣に来ていたいろはが補足説明をしてくれた。
「
薬品を売りさばくことでholoX随一の収入を誇る代わりに、定期的にやらかすせいでholoX随一の支出を誇る。おかしな立ち位置でござる」
今回の事件によってholoXは、無許可で錬金生物を生み出したことに対する罰金。それと処理までの間、錬金生物を保管する専用設備を動かすための莫大な費用。
オマケと言わんばかりに、爆発で壊れたholoX他メンバーの私物の弁償代も含めたら、優に7桁に届くだけの支出を余儀なくされた。
……のだが、薬品を売っているおかげで普段から相当な額の収入──それこそ、holoXの運営費を殆ど一人で担っているレベル──があるらしく。
そのおかげで今回の支出も『痛くないと言えば嘘になるが、素寒貧になるレベルではない』という程度に留まっているらしい。
「じゃあ改めて……ようこそ、皆さん。holoXへ。
部活見学がしたいとのことなので、ゆっくりと見て行って下さいね」
俺の知り合いという事もあり、この中で一番話しやすかったいろはが室内の案内をしてくれる。
先ず目に入るのは巨大なモニター。そこにでかでかと表示されたロゴは、恐らくholoXのマークか何かなのだろう。
その前の椅子に堂々と座っている巨大な角が特徴な少女は、つい先日のバトロワで俺が死闘を繰り広げた存在であった。
「よく来たな。吾輩こそがこの秘密結社holoXの総帥。ラプラス・ダークネスである! 刮目せよ!」
「こんなことを言ってるけど、普段はただのガキンチョでござる」
「おいっ! 速攻でばらすなよ!!」
最初はその尊大な態度と、バトロワでの規格外の強者というイメージ通りの、威厳のある態度だったが。
いろはに普段の実情をばらされた時点で化けの皮がはがれているところからも、恐らくそっちの方が素なのであろう。
続いて目を向けたのは、モニターの手前に位置しているデスク。
ホログラムで投影されたコンピュータのディスプレイと、多数の試験管からこのデスクを誰が利用しているのかは、概ね想像がついた。
「こっちは博衣こより、見ての通りの科学者でござる。まぁ普段は……見ての通りです。
一応、頼りにはなるんですよ。その分、トラブルも多いですが」
「うぅ……現状が現状だけに否定できない……」
「普段はそこのデスクで研究したり、コンピュータを弄ったりしてますね」
今回の爆発騒ぎの下手人にして、錬金生物を作成できる程の有能科学者。
コヨーテ獣人である博衣は、星街とさくらに詰められ地面に正座させられていた。
お次に目を向けるのは真ん中あたりの机と、それを取り囲むように置かれた5脚の椅子たち。
それぞれのメンバーの意匠が感じられる
その内、入り口から見て左奥に置かれた椅子に座っている一人の少女。
「こいつは
「よろしくね~。ま、掃除屋って言っても整理整頓なんかは苦手なんだけどね」
「……掃除が出来ない点と、風呂にあまり入らない点以外は、手放しで褒められるんですがね」
バトロワで出会った時には着用していたフードに仮面が無いため、一瞬分からなかったが。
よくよく見て見れば、あの時“同業者”だと感じた少女その人であった。
そして“掃除屋”という紹介と、からするとその予想は正確なものだったようだ。
最後に、入り口から見て左手側の最奥に配置された、濃い桃色が目立つ配色のキッチン。
そこには、料理を作っている一人の女性が存在していた。
かき混ぜている鍋からは、美味しそうな匂い──恐らく、シチューの臭い──が漂ってきていた。
「で、最後に。こっちにいるのが幹部の
「いろはとそのお友達だね、いらっしゃい。よかったら味見でもどう?」
「あ、じゃあお言葉に甘えて……」
フブキがそう答え、全員で小皿を受け取る。そこに盛られたシチューは、予想に違わぬ美味であり。思わず舌鼓を打つ。
そんな中、ふと気になったことがあるのかミオがダークネスへと問いかけを行った。
「そういえばさ、holoXって普段はどんな事してるの?」
「吾輩たちholoXの目的はエデンの星を征服すること。そのために日々活動しているのだ!」
「エデンの星?」
「地球の事でござるな。まあ、有り体に言えば世界征服ってことです。
まあ、普段の活動は世界征服とは一切関係ないんですがねっ!」
すわヤバイ組織か、と思った次の瞬間。いろはから入った補足により、それが口だけであることが判明する。
まあ、流石に生徒の自主性を尊重するとは言え、地球制服を真面目に実行する組織を認可するわけはないか。
と、一通り見て回り。そろそろ退出しようと思ったタイミングで、博衣に呼び止められる。
最も、その顔には綺麗な──そして、猛烈に嫌な予感を覚える──笑顔を浮かべているのだが。
「あ、そうだ。折角ならちょっとお願いしたいことが……」
厄ネタの臭いに、すぐさまこの場から逃げ出したい衝動に駆られる……が、時すでに遅し。
『自分が実験台になるのは嫌だ』と、その顔にありありと書かれた
「新作の発明品の実験台になって欲しいんですが……」
「発明品? それってどんな?」
「N社とやらで利用されている“鏡技術”という奴の情報を手に入れたので、それをこよりなりに再現・改良したオリジナルの鏡 です!」
「最悪の厄ネタじゃねぇかッ!!」
N社? N社ってあの“
……最悪だ。N社と言えば、
禁忌を犯せば、特色の事務所ですら容赦なく処分するってのが
「安心してください。流石に禁忌を犯したりはしてませんって。
元々はT社の技術者の発明品だったみたいなんですけど、N社に引き抜かれて。更にその技術者が、どこかの会社に引き抜かれたらしくて。
N社から拾い上げた情報と、T社に残っていた情報。それらをつなぎ合わせたら、それっぽいものが出来たってだけですよ」
現在の正当な所有権はその『どこかの会社』──具体的な社名が出ないという事は、翼じゃない可能性が高い──とやらが保有してると思って良さそうで。
事情が事情だけに、N社もT社も所有権の主張は難しそうで。
これなら……まぁ、ギリギリセーフって所か?
「その名も、『万華鏡 』! 鏡を通して、“可能性の世界”に生きる自分の経験をトレースすることの出来る機械です!」
「可能性の世界……? ゲームの別ルートみたいなものですか……?」
「そんな感じのイメージですね。もしもあの時別の行動を取ってたら、っていうのを観測できる形です」
……聞くだけでも分かるが、中々にぶっ飛んだ技術だな。
可能性の自分が有している情報を丸ごと自分の物に出来るって言うのは……いくら何でも危険が過ぎる。
翼 の特異点の情報すらすっぱ抜ける……
「そこのボタンを押したら起動します。で、映し出された“可能性”の希少さに従ってランプが点灯する仕組みです。
そう言いながら、博衣は実際に鏡を指さし説明する。
「で、二つ以上点灯した場合はその可能性の追体験が始まって、トレースが始まります。
オリジナルの方では観測するだけですし、とある会社で使われているバージョンでは人格を上書きする形なので記憶なんかの混同が起こる可能性があります。
それに比べてこよの改良版はこの点で明確に優れていると言っていいでしょう!」
博衣のその自信満々な様子に押され、俺たちは万華鏡 を使用するのであった。