プラマイ零のヤンデレ   作:中田 旬太

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 タグに『ひよこ頭を許すな』と付けてるけど、ヨーデルが嫌いなわけじゃない。ただ、零と結婚したことは許せない。
 そう。ただ、それだけなんだ。

 今回はヤンデレ要素薄いです。


第3話

 

 雲のない青い空が広がり、小鳥が囀る気持ちのいい朝。そんな朝に太陽は学校に通うために通学路を歩いていた。すると、目の前に一人の少女が見えてくる。太陽はその少女を見つけるや否や、駆け足で近寄って行った。そして、少女もまた太陽に向かって駆け寄って行った。

 

「零!」

 

「太陽! おはようなのだ!」

 

「ああ。おはよう」

 

 笑顔で挨拶を交わす太陽と零。挨拶を終えた零が左手を小さく差し出すと、太陽はその左手を右手で握る。そして、二人はそのまま学校へと向かって歩き始めた。一連の行動に躊躇がないことから、手を繋いで歩くことが当たり前のようになっていることが分かる。

 

 そのまま二人は雑談をしながら学校へと歩いて行く。学校が近づくにつれて子供の姿もちらほらと見え始めた。すると、一人少年が二人に声をかけた。

 

「おーすっ! おはようお前らー!」

 

「おはよう勝太(かった)

 

「おはようなのだ」

 

「珍しく早いな」

 

「珍しくは余計だっつの」

 

 元気よく二人に挨拶をする逆立った赤い髪が特徴的な少年、切札(きりふだ)勝太。勝太は二人の繋いでいる手を見て呆れたような表情を浮かべる。

 

「お前らまた手ぇ繋いでんのかよ。よく飽きないな」

 

「飽きる飽きないとかじゃないんだよ」

 

「そうそう。お子様の勝太には分からないことなのだー」

 

「ぬぅあにぃー!」

 

 零の自分を馬鹿にする発言に怒る勝太。そこに新たに三人の少年が声をかける。

 

「まあまあ、落ち着きなよ勝太くん」

 

「ぶっちゃけ、朝から元気なんだな」

 

「それが勝太の取柄レヒー」

 

 勝太を落ち着かせようとする眼鏡を掛けた如何にも真面目そうな青髪の少年、(べん)(たつ)()こと通称べんちゃん。

 ぶっちゃけが口癖で緑のアフロとトレンチコートが目立つ少年、武家(ぶけ)(ちゃ)()(ろう)こと通称ぶっちゃけ。

 語尾の最後にレヒを付ける変わった喋り方と先祖代々受け継がれるひよこ頭が特徴的な背の高い少年、()()(はら)ルイこと通称ヨーデル。

 

 クセの強そうな三人に太陽は普通に挨拶をする。

 

「おはよう三人共」

 

「おはようなのだー」

 

「おはよう太陽くん、零ちゃん」

 

「おはようなんだな」

 

「おはようレヒー」

 

 挨拶を済ませると、べんちゃんも勝太と同じように太陽と零の繋がった手に注目した。

 

「朝からラブラブだね」

 

「あはは、まあな」

 

「私たちはいつでもラブラブなのだ」

 

「ぶっちゃけ、俺もそんな風に女子と手を繋いで登校してみたいんだな。できればミミちゃんと………ぐふふっ!」

 

「ぶっちゃけ。そんなのは絶対に無理レヒよ」

 

「おーい! 俺を無視すんじゃねえ!」

 

 朝から元気に騒ぐこの六人。この六人は先のオラクルの影響を受けたカード事件やアウトレイジとオラクルの戦いでデュエマ探偵団を結成し、それらを解決してきた凄い小学生なのである。

 

「って、あんまりゆっくりしてると学校に遅刻するな」

 

「そうだね。少し急ごうか」

 

 太陽の言葉にべんちゃんが頷き、六人は少し早足で学校へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 あれから少しギリギリに学校に着いた六人。そのまま一時間目の授業を終えて少しの休み時間に入ると、席が近く集まった六人の元に一人が近づいていった。

 

「オレ、レオが華麗に登場!」

 

 華麗にターンを決めて現れたライオンの鬣のような髪と少し長い犬歯が特徴的な太陽達のクラスメイト、(ひゃく)(じゅう)レオ。その登場の仕方に誰一人ツッコむことはなかった。

 

「太陽。見たぜ昨日のデュエル塾!」

 

「お、そうか。ありがとな」

 

「お前ときららさんの質問の回答は見事だったが、オレならもっと華麗に答えられたと思うね。オレはね!」

 

「なら、番組のスタッフの人に出演を推してみるよ」

 

 レオは絶賛売り出し中の芸能人であり、レオの言い方から出演したがっていると思った太陽はスタッフにそれとなくレオを推してみることにした。

 

「なら俺も出たい! 出演料はカレーパンで!」

 

「勝太くん。それは………」

 

「無茶レヒよ勝太」

 

「なんだな」

 

「いいじゃねえか! レオが出れるんならさ」

 

「相変わらずのカレーパン馬鹿なのだ」

 

「なんだと! カレーパンを馬鹿にすんのか!」

 

「カレーパンじゃなくて勝太のことを言ってるのだ!」

 

「なにをー!」

 

「喧嘩すんなよ二人ともー」

 

 案の定と言うべきか、騒がしくなる太陽たち。そして、その話を聞きつけたクラスメイト達が続々と太陽の周りに集まってくる。

 

「デュエル塾なら俺も見たんダダダ!」

 

「「「僕たちも!」」」

 

「うむ。ドラゴンについての回答はとても参考になったぞ!」

 

「あの質問コーナーでの回答はとても良かったメカ」

 

(わたくし)も同じクラスの学級委員として鼻が高いわ!」

 

「最後のエクストラルールマッチはすごく面白かったよなユキ子」

 

「うん。きららさんって人と息ピッタリだったね」

 

 その言葉に太陽は昨日の零の変化が頭を過り、目をギョッと開いて慌てて制止に入ろうとした。

 

「ちょっ! それは―――」

 

 その瞬間、クラスに冷たい風が吹き荒れるのを全員が感じた。そして、その元凶となっている人物に視線を集中させる。

 

「れ、零?」

 

「ん? どうしたのだ太陽?」

 

「い、いや。………怒ってます?」

 

「んー? なんのことなのだ?」

 

 太陽からの問いかけに笑顔で答える零。しかし、顔は笑っているのだが放たれる威圧感は表情と一致していなかった。

 一方、クラスメイト達は二人から距離を取って集まっていた。

 

「零の前で昨日のデュエル塾の話はやめよう」

 

『うん………!』

 

 勝太の提案に首を縦に振って賛同するクラスメイト達。その陰で、太陽は零の機嫌を直すのに追われるのだった。

 

 

 

 

 

 

「ボルバルザーク・エクスでトドメだ!」

 

「やられたメカ―!」

 

 すべての授業を終え、放課後となった瞬間に太陽達のクラスで始まったデュエマ祭り。元々デュエマ好きが多いこのクラスで、朝からデュエマの話題が続いたせいか放課後にデュエマしたいという欲求が爆発してしまったのだ。

 そして、太陽も当然その祭りに参加し、たった今勝利を収めたところだった。

 

「よし!」

 

「太陽! 次は俺とデュエマするんダダダ!」

 

「いーや、僕としようよ」

 

「おでとデュエマしようへどぅる」

 

「ごめん。ちょっと休憩させて」

 

 もうすでに四回デュエルをした太陽は少し疲れていた。そして、それを感じ取ったクラスメイトたちは引き下がることにした。

 

「仕方ないか」

 

「うん」

 

「へどぅる」

 

「悪いな」

 

 そう言うと太陽はデュエマを行う台から離れ、近くの席に座り一息ついた。

 

「ふぅー」

 

「お疲れさまなのだ」

 

「ぶっちゃけ、さすがプロデュエリストなんだな」

 

「四連勝なんてさすがレヒー」

 

 零、ぶっちゃけ、ヨーデルが太陽へと声をかける。勝太とべんちゃんも居ればデュエマ探偵団勢ぞろいなのだが、今は二人ともデュエマを楽しんでいた。

 太陽はぶっちゃけとヨーデルからの称賛に満更でもなさそうに笑った。

 

「へへ、まあな。でもみんな強いからなー。結構危ない場面もあったから、帰ってからは復習だな」

 

「私も手伝うのだ」

 

「ああ、よろしく頼む」

 

 隣に座る零の提案を太陽は笑って承諾する。二人は用事がない限り、学校の後は毎日どちらかの家に行っている。なので、二人はそれを前提に話していた。しかし、周りはそんなことは知らず、今ここで家デートの約束を取り付けたように思っていた。

 

「ほんと、二人って仲がいいよな」

 

「そうだね(らん)ちゃん」

 

「私も素敵な殿方と出会いたいでガンス」

 

 近くで会話を聞いていた女の子も会話に参加し始める。

 

 活発な雰囲気を纏う女の子、大畠(おおはた)乱。一人称が俺であり、その雰囲気と見た目からよく男の子に間違われる。ちなみに、過去にぶっちゃけが乱を男と間違えたとき、乱はブチ切れてぶっちゃけをブッ飛ばしていた。それを見て笑っていた勝太もブッ飛ばされた過去がある。そのときは太陽も心の中で男と思っており、二人がブッ飛ばされたことでギリギリ助かっていた。

 

 そして、頭に雪だるまの髪飾りを付けた天然そうな雰囲気を纏う女の子、鎌倉ユキ子。一時間目の授業後の休憩時間にきららの名前を出し、零の地雷を踏み抜く辺りからもその天然具合が伺える。

 

 ヨーデルのレヒのようにガンスが語尾に付く変わった喋り方と、何よりも小学生とは思えない大きな体格を持つ女の子、山本・エレガンス・久美子。給食でお代わりデュエマをするとき、無類の強さを誇る。プロデュエリストの太陽でさえそのときは負けることの方が多い。

 

「零ちゃんが転校してきたときのことを考えると、今の状況は想像つかないよな」

 

「太陽君と零ちゃんよく喧嘩してたもんね」

 

「あー、まあいろいろあってな」

 

 乱とユキ子の言葉に太陽はバツが悪そうに頭を掻く。

 零がやってきてすぐのとき、半ば無理矢理デュエマ探偵団に加えさせられたことに太陽は少し苛立ちを覚えていた。しかも、カード事件が起こるようになってからは怪しい行動が目立ち、オラクルのスパイではと零を怪しんでいたことも重なっていた。今でこそ恋人の二人だが、最初は間違いなく仲が悪かった。

 

「変わり始めたのは、夏休みの終わりあたりでガンスね」

 

「あー! 太陽が大ケガした頃か!」

 

「「「「ギクッ………!」」」」

 

 乱の大ケガ発言に対し、目に見えて動揺するデュエマ探偵団の四人。しかし、会話に夢中になっている三人はそのことにまだ気づかず話を続ける。

 

「大ケガと言えば、その後にも一度太陽君は入院してるでガンス」

 

「べんちゃんも夏休み前に入院してたよな」

 

「確か、その間皆さんはデュエマ探偵団なるものをやっていたでガンス」

 

「カードによる不思議な事件の解決だったよね」

 

「確かに不思議な事件ばっかり起こってたし、何かあるよな。絶対」

 

「「「「ギクギクッ………!」」」」

 

 三人の視線が四人に突き刺さる。カード事件やオラクルとの戦いをクラスメイト達は知らない。だからこそ、太陽と零の関係の変化の理由がはっきりと分からないのだ。

 

「な、何かなんてないレヒよね。ぶっちゃけ」

 

「そ、そうなんだな。何もやましいことなんてないんだな!」

 

「俺やべんちゃんの入院だって、森でちょっとした崖から落ちたり階段から転げ落ちただけだし! な!? 零?」

 

「そ、そうなのだ! デュエマ探偵団だって、私がそういう不思議な事件が好きで始めただけで、太陽達はそれに付き合ってくれただけなのだ!」

 

「必死過ぎだろ」

 

「でガンス」

 

「あはは………」

 

 明らかに動揺している四人。その四人に呆れたような視線を向ける乱とガンス。ユキ子はどうすればよいのだろうと乾いた笑い声を出す。

 

「はあ、まあいいか。聞いても話してくれそうにないし」

 

「そうでガンスね」

 

「「「「ほっ………」」」」

 

 追及が無くなったことに四人は胸を撫で下ろした。

 

 

 

 

 

 

「んで、どうしたんだ零?」

 

「………別に」

 

 学校から帰り、いつものように太陽の部屋に居る二人。床にクッションを敷いて座っているのだが、零は太陽に抱き着いて顔を胸にうずめたまま離れないのである。

 別にと零は言うが、こういうときは大抵何かあることを太陽は知っている。

 

「別にじゃないだろ。どうしたんだよ」

 

「………」

 

(こりゃだめか)

 

 零は何かと抱え込みやすい。イズモとのことも、最後は自分でどうにかしようと一人で飛び出すほどだ。こうなっては中々話してくれないだろうと思った太陽。今日の出来事を頭のなかで振り返り、何かないかと探っていく。

 

(そういえば、今日は探偵団について聞かれたな)

 

 いつも違ったこと。それはデュエマ探偵団について聞かれたことだった。

 

(そうか、アレが原因か)

 

 零がこうなった原因に検討がついた太陽は落ち着いた声音で零に話しかけた。

 

「もしかして、俺やべんちゃんがケガしたこと思い出したからか?」

 

「………!」

 

「当たりか」

 

 背中に回された腕の力が強くなり、零の頭が強く太陽の胸を押す。その反応から当たりだと太陽は判断した。

 太陽は零の背中へと左手を回し、右手で零の頭をゆっくりと撫で始めた。

 

「大丈夫だよ零。もうあのことは謝ってくれたし、俺もべんちゃんも怒ってないって」

 

「………うん」

 

 子供をあやすように優しく頭を撫で、背中を叩く。その心地よさと一つ一つの行為から感じ取れる優しさにうっとりする零。しばらくの間、その温もりに浸るのだった。

 

「えへへ、太陽」

 

「ん?」

 

「大好きなのだ」








 主人公の苗字の比良坂は黄泉比良坂から取りました。
 オラクルの親玉の名前「ヨミ」→黄泉→黄泉比良坂→よし! 「比良坂」にするか!
 こんな感じです。

 次回の更新もいつも通り分かんないです!
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