プラマイ零のヤンデレ   作:中田 旬太

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 お久しぶりです。作者です。
 感想が来たり、いつの間にか高評価付いてたり、お気に入り件数増えてたりでビックリしてます。これは書かないといけないな、と今回もノリと勢いで書き上げました。

 今回は零ちゃん大爆発の回です。


第4話

 

 いつも通り零と手を繋ぎ、仲睦まじく学校へと登校した太陽。下駄箱で靴を履き替えようとしたとき、事件は起こった。

 

「ん?」

 

 下駄箱を開けたとき、靴と一緒に置かれている一通の白い封筒。特に何も考えず太陽はそれを取り出す。そして、その封筒に封をするハートのシールを見た瞬間に、太陽は背筋を凍り付かせた。

 下駄箱に入っているハートのシールが使われた封筒。所謂、『ラブレター』だと察するには十分すぎる見た目であった。

 

「マジか………」

 

「ん? どうかしたのだ太陽?」

 

「い、いや。なんでもない」

 

 零に声を掛けられ、咄嗟に背中に封筒を隠す。零は靴を履き替えていた最中だったため、封筒の存在には気づかなかった。しかし、明らかに変な挙動をする太陽に零はその目を鋭くさせて訝しむ。

 

「本当なのだー?」

 

「ほ、本当本当」

 

「ふーん」

 

 問い詰めるようにグイッと顔を近づける零。そして、ジーと太陽の目を見つめる。ここで目を逸らすわけには行かないと、太陽もジーと零の目を見つめ続けた。

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

「…、……」

 

「………っ!」

 

「………う、うぅ」

 

 見つめ合いの末、太陽は屈した。

 零の目の圧に耐え切れず、太陽は徐々に目を逸らしてしまう。いつもの太陽なら強い心で零の目を見つめ続けることができる。しかし、後ろめたいことがあるせいで心が揺らぎ、負けてしまった。

 

 目を逸らされたことで、零は太陽が何かを隠していることに確信を持つ。先ほどよりも目を鋭くさせ、強い口調で太陽に問いただした。

 

「一体なにを隠してるのだ?」

 

「い、いやー。それは―――」

 

「な・に・を! 隠してるのだ?」

 

「………これです」

 

 太陽はそっとラブレターを差し出す。最初はただの封筒だと思い首を傾げた零だったが、その封筒に貼られたハートのシールを見た瞬間に目を見開いた。

 

「こ、これは………!」

 

 わなわなと肩を震わせる零。そこに別の人影が現れる。

 

「あ、おーす! 太陽! れっいぃぃっ!?」

 

 二人へと陽気に声を掛ける勝太。しかし、零から噴き上がる怒りの炎に驚愕し一歩後ずさった。

 運がお悪い。

 

「ふ、ふ、ふざけるなあぁぁぁぁぁなのだーーーーー!!!」

 

 零の怒りの絶叫が学校中に響き渡った。

 

 

 

 

 

「それで零ちゃんが不機嫌に………」

 

「そうなんだよべんちゃん」

 

 午前の授業を終え、昼の休憩時間に人気のない屋上に集まったデュエマ探偵団の六人。零は不機嫌そうに黒いオーラを放ちながら太陽の右腕に抱き着いていた。そして、事情を知らない他の四人が零が不機嫌だった理由を聞いていたのだった。

 

「ラブレターを貰うなんてさすがレヒー!」

 

「ぶっちゃけ、モテモテで羨ましいんだな」

 

「馬鹿! お前ら―――っ!」

 

 直後、零が纏っている黒いオーラがよりその強さを増す。怒りで真っ赤に染まった目を騒いでいたヨーデルとぶっちゃけの二人に向ける。そのオーラと目にビビった二人と太陽は固く口を閉ざした。

 そんなことを言えばキレるに決まっているのに言ってしまうあたり、ヨーデルとぶっちゃけがモテない理由が見えた。

 

「あ、あははは。それにしても、その手紙は本当にラブレターだったの?」

 

「ああ。別の手紙だったり相手を間違えてるんじゃないかと期待したけど、ちゃんとラブレターで俺宛に名前が書いてあったよ」

 

「そうなんだ」

 

 そう言うと腕を組み、片手を顎に当てて深く考え込むべんちゃん。不機嫌な零を除く四人はその考え込む姿に首を傾げた。

 

「どうしたんだよべんちゃん」

 

「いや、まあ。おかしいなと思っちゃって」

 

「「「「おかしい?」」」」

 

「うん。そのラブレターをくれた子は太陽君の下駄箱に手紙を入れられることから、ほぼ間違いなくこの学校の生徒ってことになる。でも、この学校の生徒なら太陽くんと零ちゃんが付き合ってることを知らないはずがない。それなのにラブレターを送るんだなんて」

 

「そんなもの! 私から太陽を奪うために決まってるのだ!」

 

 ここで口を閉ざしていた零が騒ぎ立てる。

 

「奪うためって………」

 

「でも結局はそういうことなのだ! 太陽がカッコよくて女子からモテてしまうのは仕方のないことなのだ! でも、だからといってこんなラブレターを送って私から奪おうとするなんて許せないのだ!」

 

「まあまあ、落ち着けって零。なにがあったところで太陽がお前と別れるわけないんだしさ」

 

「そうそうなんだな!」

 

「勝太の言う通りレヒ!」

 

 珍しい勝太のまともなフォロー。ぶっちゃけとヨーデルはそのフォローに乗っかる。しかし、勝太の言葉で収まるほど零の怒りと愛は容易くなかった。

 

「そんなもの当たり前なのだ! 例え死のうが世界が終ろうが、何が起こっても私達は永遠に一緒なのだ!」

 

((((お、重い………))))

 

 あまりの重さに太陽を除いた男子たち四人が心の中で引いてしまう。しかも、一度死んだことのある太陽の彼女である零が言うと尚更重い。

 その後、零は太陽へと顔を向ける。いきなり自分へと向いてきたことで太陽は驚き、肩をビクッと震わせた。

 

「太陽。確か放課後に体育館裏に来るようにその手紙には書かれていたのだな?」

 

「あ、ああ。そうだけど………」

 

「なら、私も付いて行くのだ」

 

「「「「「え!?」」」」」

 

 まさかの発言に五人が目を見開いて驚く。ただでさえややこしい話なのに、ラブレターの送り主と相その手の彼女が鉢遭うなど、一体どんな修羅場が繰り広げられるか分かったものではない。すぐに零の暴挙を止めるべく五人は口を開いた。

 

「お前、そこに行ってナニする気だよ!」

 

「馬鹿な考えはやめるレヒ!」

 

「そんなことしたら何が起こるか分からないんだな!」

 

「話が余計に(こじ)れちゃうよ!」

 

「さすがにやめた方がいいと思うぞ零。安心しろって! 俺が告白オーケーするわけないんだしさ! な!?」

 

「嫌なのだ! ぜっっっっっったいに行くのだ!」

 

 五人の制止を聞かず、子供のように行くと言い張る零。こうなっては梃子でも引かないことを五人は知っている。そこでべんちゃんは妙案を閃いた。

 

「なら、木の裏に隠れるのはどうかな!? あそこは桜の木がたくさん植えられてるから、隠れるならうってつけの場所だよ!」

 

「む。なんで彼女の私が隠れなきゃいけないのだ!」

 

「いいから! べんちゃんの言う通りにしとけって!」

 

「そのほうがいいレヒよ零ちゃん!」

 

「むしろ! お願いするからそうして欲しいんだな!」

 

「俺からも頼むからさ! な!? な!!?」

 

「………むう、分かったのだ。それで我慢するのだ」

 

 五人の必死の説得に渋々折れる零。そして、話は放課後へと進む。

 

 

 

 

 

 

 放課後の体育館裏。そこにはどこかそわそわしている太陽と、それを木の陰から見つめるデュエマ探偵団の姿があった。

 

「なんで勝太達まで居るのだ………!」

 

「だって気になるし」

 

「よくない事だって分かってはいるんだな。でも、このまま帰るのも難しいんだな」

 

「零ちゃんが飛び出さないかかん、ん゛ん゛っ。心配になっちゃってね」

 

「むう。まあいいのだ」

 

「あ! 来たレヒよ!」

 

 ヨーデルの声に息を(ひそ)め、そっと顔を木の陰から覗かせた。歩いて来る女の子はとても可愛らしく、その女の子の姿にヨーデルは胸をときめかせていた。

 

「めちゃくちゃ可愛い子レヒー!」

 

「ふん!」

 

「レヒッ!?」

 

 その一言に機嫌の悪い零は容赦のない蹴りをヨーデルの尻に浴びせた。

 

「あ、あの子は………!」

 

「知ってるのぶっちゃけ」

 

「あの子は桃井愛花ちゃんと言って、俺たちの一つ下の学年の子なんだな。そして、その可愛さから男子にすごく人気のある子なんだな」

 

「そんな子が太陽くんにラブレターを………」

 

「よっぽど自信があるんだな、きっと」

 

 ぶっちゃけの解説を聞くべんちゃんと勝太。ヨーデルは未だに痛そうに尻を抑え、零は怒りの炎を燃やしながら木に爪を立てて女の子を睨んでいた。

 

 

 

 

 

 

(あいつら隠れる気あるんだよな………?)

 

 一か所から放たれる圧に太陽は冷や汗を流した。

 

「あの、比良坂先輩。来てくれてありがとうございます」

 

「いやまあ、うん。どうも」

 

 さすがの太陽もこういうことには慣れていないのか、対応がぎこちない。太陽は少し頭を掻くと、ポケットに仕舞っていたラブレターを取り出した。

 

「一応確認するけど、この手紙をくれたのは君?」

 

「は、はい! 読んでくれましたか………?」

 

「うん。すごく綺麗な字で、俺のどこが好きとかたくさん書いてあって、ちょっと恥ずかしかったかな?」

 

「そ、そうですか」

 

 頬を赤らめ、もじもじと恥ずかしそうに顔を俯かせる愛花。そして、小さく深呼吸をすると意を決して顔を上げた。

 

「あ、あの! 私、比良坂先輩のことが好きです! 私と付き合ってください!」

 

 ばっと勢いよく頭を下げ、太陽へと告白する。その告白に太陽はバツが悪そうに頭を掻く。そして、背筋を伸ばしてほんの少し姿勢を正すと、ゆっくり頭を下げた。

 

「ごめんなさい。君の気持には(こた)えられません」

 

 ハッキリとした拒絶の言葉。その言葉に愛花は顔を上げて、両目に涙を浮かべた。

 

「理由はやっぱり………プラマイ零さんですか?」

 

「うん」

 

「………私じゃダメ、ですか?」

 

「うん」

 

 ハッキリと、答えるその姿に迷いはない。そして、零について聞かれたからか、自分が抱いている零への想いが口からこぼれ始めた。

 

「………最初はさ、アイツのことどっちかっていうと嫌いだったんだよ。我儘だし、態度デカいし、怪しいし、何かとムカつくことが多かったんだ。でも、一緒に居るうちに楽しくなって、アイツのいいところが分かるようになってきた。それで、アイツのことが放っておけない自分が居ることに気づいた。いつの間にか、(そば)に居てくれないと嫌だって思うようになってた。………アイツが、プラマイ零のことが大好きになってたんだ」

 

 こんなことを言うつもりなど太陽には無かった。断って、すぐに終わらせるつもりだった。

 しかし、口にしたら次から次へと言葉が、想いが溢れて止まらなかった。

 

「だからごめん。君とは付き合えない」

 

「………そう、ですか」

 

 太陽の零へと抱く思いに、愛花は何も言えなかった。

 両目からぽろぽろと涙を流す愛花に、太陽も表情を暗くさせた。

 

「………ありがとう、ございます。ちゃんと………フッて、くれて」

 

「いいや。別に………」

 

「それでは、失礼します」

 

 そう言うと彼女は足早にその場を去る。その悲しそうな背中を、太陽はただ見つめていた。

 

「ハァ………」

 

「太陽くん」

 

「………みんな」

 

 彼女が去ったのを見てべんちゃん達も木の陰から現れる。しかし、顔を俯かせて表情の見えない零以外は浮かない表情をしていた。

 

「なんか、変に勘繰って悪いことしちゃったな」

 

「ただ純粋に、太陽のことが好きだったんレヒね」

 

「覗き見て申し訳ないんだな」

 

「俺も………」

 

 全員、愛花の純粋な好意に対して悪いことしたなと罪悪感を抱いていた。

 その中で、いまだに何の反応も示さない零のことが太陽は気になっていた。

 

「零、大丈夫か?」

 

「………うん。大丈夫」

 

「………? そうか? ならいいんだけど………」

 

 明らかに変な様子ではあるが、心配になるような暗さは感じないため零の言うことを信じることにした。

 

「みんな、今日はもう帰ろうか」

 

 べんちゃんのその一言で、全員その場から帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 あの後、勝太達と分かれて比良坂家へと帰宅した太陽と零。太陽の部屋に鞄を置き、太陽はそのままクッションへと腰を下ろした。

 

「なんか凄い一日だったな零」

 

「………」

 

「零? 本当に大丈夫か?」

 

 帰宅中も終始無言だった零。流石に心配になってきた太陽は、未だ立っている零に声を掛ける。

 すると、零は座っている太陽のことを押し倒すと、押さえ付けるように覆い被さった。

 

「イッテ! 零、いきなりなにを―――」

 

「………―き」

 

「へ?」

 

「好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き大大だーい好きなのだ♡」

 

 (とろ)けるような表情と猫撫で声で、瞳の奥にハートを浮かべながら太陽を見つめる零。そのまま太陽の胸へと倒れるように体を預ける。そして、大好きな太陽の心音を聞きながら、ずっと抑えていた感情を爆発させて太陽へとぶつけた。

 

「好き♡本当に大好きなのだ太陽♡ずっと傍に居て♡傍に居てくれないといやぁ♡私死んじゃう♡でも、死んでもずっと一緒に居る♡何回死んだって生まれ変わって一緒になるの♡私は太陽のものだから、太陽は私のものなのだ♡だから、私のことだけ見て♡愛して♡大大だーい好きなの♡愛してるのだ太陽♡」

 

 支離滅裂に愛の言葉を並べる零。ただ溢れる想いを抑えることなく、言葉にして太陽に伝える。

 そんな零の言葉に、太陽は優しく零の背中に手を回し、力強く抱きしめた。

 

「あ♡」

 

「俺も零のこと大好きだよ。愛してる。だから、ずっと傍に居てくれよ」

 

「―――っっっ♡太陽っ♡♡♡」

 

「ん」

 

 甘く蕩けるような太陽からの愛の囁きに、更に歯止めが効かなくなった零は太陽へ熱い口付けをする。以前のように口内へと舌を入れ、貪るように激しく舌を動かした。

 

「ん♡あむ♡れろれろ♡ちゅ♡」

 

「ん、あむ。ちゅっ」

 

 今回太陽は一切の抵抗はせず、それどころか積極的に零と舌を絡めていく。互いの想いをぶつけ合うように、激しく舌を交わらせる。長い口付けの果てに、限界が来たことでようやく二人は口を離した。

 

 昂っていた感情をぶつけたことで零は落ち着きを取り戻す。そして、改めて太陽へ自分の想いを伝える。

 

「太陽」

 

「ん?」

 

「私、本当に太陽のことが大好き。太陽が私に居場所をくれて、私は居てもいいんだって思えた。太陽の居る場所が私の居る場所で、私の全部は太陽のものなの。だから、これからもずっと一緒に居て」

 

「ああ。もちろんだよ」

 

「えへへ、太陽。愛してるのだ」

 

「俺も愛してるよ。零」

 

 そして、二人は再び己が唇を重ねるのだった。
















 というわけで、零ちゃん(太陽への愛が)大爆発の回でした。
 こういう単発回でもいいけど、そろそろ過去編も考えようかな。もしくは、オリジナルで新ストーリー考えるか。

 いつも通り、次回の更新は未定です!
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