※注意!
今回、独自設定という名の妄想マシマシです。
キャラ崩壊なんていつもの事ですが、今回はそれに輪をかけて多くなっています。それでもよろしければどうぞ
「なに、これ…………?」
それは、まさに祭壇と呼ぶに相応しかった。
神道の知識は初歩的な神話のものしかない咲だが、これについては祀るものだと一目で理解できた。
問題は何を祀っているかという点だった。
これを作ったのが神代子蒔たち永水の面々である以上、彼女たちの神社に関係するものだと考えるところだ。
しかし本命と思われる巨大な神棚の横にそれよりも小さいが、十分に大きい部類に入る祭壇がある。
これが観光地なら、感心はしても驚きはしなかっただろう。
問題はここがマンションの一室。咲が大学への進学を機に、来年から住み始めるマンションの一階にあるという事だった。
『本殿』と部屋前のプレートに書かれたその部屋は、神社の本殿を思わせる和風の作りとなっていた。
その奥で異彩を放つ祭壇。話には聞いていたが、実物を見るとなかなかにインパクトのある光景だった。
祭壇を見上げて固まる咲に、ここを紹介した小蒔が楽しそうに笑む。
「どうですか? 京太郎くんと咲ちゃんを祀るにはまだまだ不足してますが、なかなかの出来だと思いませんか?」
「…………えっ、私も祀られてるの!?」
ここにきて初めて耳にする情報に、思わず敬語を忘れて詰め寄ってしまう。
龍門渕グループが所有するレディースマンション。という名の道具箱であるこの場所には、ひと足先に上京した京太郎の所有物が集まっている。
来年以降も所有物が集まるので、その管理の為に咲もここに住む予定となっていた。
住む予定となるマンションなので、事前にここに関する情報は聞いていた。その中の一つに、京太郎を御神体として祀る部屋があるというものがあった。
そんな気になる噂を聞いていた咲なので、部屋の確認に来た時にその噂についての確認も行っていた。早々に首謀者を見つけ部屋に案内されたのだが、まさか咲まで祀られているとは夢にも思っていなかった。
御神体が何かというのを直接確認できるものはない。しかし供物と思われるものの中にバンドーボールの球やカピバラのぬいぐるみなど、そうだと知っていれば特定できそうなものもいくつかあった。
ちなみにカピバラのぬいぐるみを純粋に可愛いと思った咲は、後で供えた人を探して買った場所を訊こうとしていた。
詰め寄っている咲は、横目で自分のものだと思われる小さな祭壇を見遣る。
祭壇には麻雀牌や、花瓶に生けた一輪の白い花が供えられていた。
おそらくこれが自分のものだろう。そう推測を立てると、小蒔は穏やかな表情のまま告げる。
「もちろんです。京太郎くんはもちろん。咲ちゃんも、私たちに救いの手を差し伸べてくれた大事な方ですから。敬わないのは不敬にあたります」
「すく、い…………?」
はて、と首を傾げる。少なくとも、咲には小蒔たちから感謝される覚えがなかった。
自分でも知らないうちに大妖怪でも退治したのだろうか? などという、偏った巫女の知識から明後日の方向に思考が飛んでいく。
咲がした事といえば、いつものように京太郎の所有物になるよう動いただけだ。
少し手を広げて年下の二人も対象としたくらいで、他に何かしたわけでもなかった。
恋のキューピット役という意味なら感謝される理由もまだ分かる。それでも救いの手や崇拝されるものかと訊かれると、答えはノーだった。
ただ、冗談でないのも事実だ。少なくとも、これだけの祭壇を用意しておいて実は嘘でした。なんて事はありえないだろう。
躊躇しながらも事情を尋ねる。すると小蒔は二人分の座布団を用意して、座るように促してきた。
どうやら、長い話になるようだった。
「京太郎くんがスサノオ様の末裔である以上…………」
「待って。いきなり核爆弾投げつけないで」
初手核爆弾という強烈な手に、咲が素に戻る。
さも当然のように言い切った小蒔だが、もちろん咲が知るわけもない。
神様の末裔ってなんだ。
まさかの京太郎の一面に、咲の脳が理解を拒む。
スサノオもとい、素戔嗚尊。何かの間違いで、スサ・ノーさんとかだったりしないだろうか? などというバカな考えが混乱のあまり浮かんだ。
いつまでも馬鹿をやってるわけにもいかないので、頭を振って気を取り直す。最初からこれだけの爆弾を落とされたのだから、後は何が来ようと受け入れられる自信があった。
「…………うん。よし。これ以上は大丈夫なはず! いいよ、続けて!!」
「京太郎くんがスサノオ様の末裔である以上、巫女である私たちは恋愛感情よりも先に信仰心が先に出てしまうんです。特に京太郎くんは先祖返りの影響で、将来的にはスサノオ様と同等の力を得るでしょうから…………」
「ごめん、やっぱり待って!!!」
ミサイルを警戒していたところに、衛星軌道上からの反物質砲が撃ち込まれて再び咲の思考が止まる。
神様と同等ってなんだ。
スサノオと同等言われてもピンとこない咲だが、スケールが大きいのは理解できた。
少なくとも、八岐大蛇のような化け物を倒せるくらいには強くなるのだろう。
現代において、戦力過多以外の何物でもない。それで体が丈夫になって、京太郎が健康に過ごせるようならいい。ハンドボールを再開しようとしているので、それもまた有利に働くだろう。
ただ、それ以上の利点となると一つしか思い浮かばなかった。その内容があまりにもピンク色に染まっていたので、とりあえずは考えないようにした。
混乱している頭でそんな事を考えれば、何をするか分からなかったからだ。
考えを整理しようにも、雑念が混ざり込んでそれを許さない。なんとか頭を働かせて気持ちを落ち着かせた咲は、ようやく情報の整理がついて顔を前に上げた。
「今度こそ、大丈夫、だと思う」
もはや敬語という概念を忘れた咲が頷く。
もはや銀河が消滅する規模の発言が飛んでこようと、受け止められる自信があった。
一方、色々と混乱させてしまった小蒔はここまでの話について反省していた。
実家公認の家出をしてから半年。普段着が洋服になり、料理も簡単なものなら作れるようになっている。
電子機器は未だに苦手で美穂子と一緒に扱いについて勉強している最中だが、普通の生活にも慣れたつもりだった。
しかし神道の話になると、一般的な知識との境目が分からなくなってしまう。
小蒔は神が実在しているのを知っている。それは物心がつく前から巫女として育てられた小蒔にとって、当たり前の事だ。しかし世間一般の認識はそうではない。
あまり具体的に話してしまうとより困惑させてしまうと判断した小蒔は、要点だけを掻い摘む。
「要するに、私たちにとって京太郎くんは神様なんです。そして巫女として育てられた私たちは、京太郎くんを愛すると同時に信仰も捧げてしまうんです」
「それは、嫌だね」
好きな相手から畏敬の念を向けられる。
それはとても辛い事のように思えた。
少なくとも、相手は自分の事を上に見ている。それはつまり、お互いが対等の立場にいないという事になる。
一見親しいようでも、そこには明確な溝が存在する。近くて遠い存在として見られる。
他の有象無象ならともかく、京太郎にそのような態度を取られたらと考えると、それだけで心が折れそうだった。
「だから私たちは、京太郎くんを諦めようと決めたんです。京太郎くんに寂しい思いをさせてしまうのは、嫌だったから…………」
たち。というのは、他の巫女も含んでいるのだろう。
最初に提案したのが誰かは分からない。しかし小蒔の立場上、彼女の決定に他の巫女が異を唱える事はない。
それは彼女たちが互いの立場を越えた強い結束があるからこそだ。
小蒔の決定に、多少の不満はあっただろう。しかし誰一人として抜け駆けをしようとしなかったのは、強い絆があったからこそだ。
その繋がりを咲はどこか眩しく感じ、だからこそ京太郎の所有物となれば、絶大なメリットを生むと睨んでいる。
なお京太郎はともかく、咲への崇拝はなんとか止めさせなければいけないと思っている。
色々とタガが外れている咲だが、神様扱いはごめん被るところだった。
「でも、咲ちゃんが私たちを救ってくれたんです。私たちの意思なんて関係なく、京太郎くんの側に置くと言ってもらえて。その日、みんなで喜んだんですよ。霞ちゃんだけは、なぜか変な顔をしてましたけど」
「うん。それが普通だと思う」
自分でやっておいてなんだが、所有物扱いに喜ぶ人間がいるとは思っていなかった。
だからこそ教育を行っているのだから。
それを揃って喜んだという報告は、咲にとって朗報のはずなのに素直に受け取れなかった。
どうりで、教育の最中に生じるはずの敵意や反発が永水の面々からはなかったはずだと納得する。同時に、霞が頭を抱えていた理由を理解した。
今度、差し入れでも持っていこう。この人を支えるのは大変なんだろうなあ。と自分の事を棚に上げた咲は、下を向きかけた視線を上に上げる。
当の小蒔は、不思議そうに首を傾げていた。
なお身近に和という癖のある人物がいるが、あれは例外として除外する。
咲が立てた計画で最も得をしているのは、京太郎や咲ではなく、彼女のような気がした。
「なんにせよ、京ちゃんのものになってくれるならそれでいいよ。出過ぎた真似をしなければ、歓迎するよ」
「出過ぎた真似、ですか。その、子供は五人くらい欲しいのですが、それはいいんでしょうか?」
「ご、五人…………。その、えっと、私の子供が生まれた後なら、何人でも」
「なら、十人くらい作りましょう! もちろん、咲ちゃんの子供は二十人くらいで!! 私たちも手伝いますから!!」
「ちょっと待って、どういう計算!? 私何歳まで子供産み続けるの!?」
京太郎との子供なら何人でも。そう思っている咲だが、二十人くらい作りましょう! などと提案されれば、驚愕が最初に出てくる。
まさか、子供はコウノトリが運んでくるとでも思っているのだろうか? 小蒔の箱入り娘としての一面を何度もその目にしている咲は、その可能性を捨てきれなかった。
二十年近く、常にボテ腹プレイというのはいくらなんでもマンネリ不可避だ。気持ちは嬉しいが、京太郎の気持ちも考えて計画を立てたいところだった。
霞も苦労するわけだ。普段の霞がどれだけ大変な思いをしているか考える。定期的に差し入れをした方がいいのかもしれない。
今後の霞との接し方について考えていると、驚愕と共に放たれた咲の問いかけに小蒔が答える。
「心配無用です。霧島の秘術なら、若さを長く保つ事もできますから。そこに京太郎くんのスサノオ様の力を合わせれば、不老とまではいかなくても百年単位で寿命を伸ばせますよ」
「サラッととんでもない事言わないで」
京太郎が神の末裔だという話に比べれば軽いが、それでも驚くには十分な情報が飛び出す。よく分からないが、その秘術とやらは存在そのものを部外者に明かしてはまずいのではないか?
喉まで出かかった疑問をなんとか押し殺す。
秘密を知られたからには…………。という、不穏なセリフが脳内をよぎった。
旧家の秘密を知って消される。そんな創作ではありがちな展開で殺されてしまってはたまったものではない。
後で尋ねられてもシラを通せるように、今聞いた話は記憶からなるべく早く消す事にした。
とはいえ、思考が止まらなかったのはこの短い間での進歩と言える。少なくとも、銀河が崩壊するレベルの爆弾発言という、咲自身もよく分かっていない発言を警戒しているおかげだった。
「でも、それくらいしないとこちらとしても申し訳が立ちません。せっかく咲ちゃんが、許可をくれたというのに。何もしないというのは…………」
「…………さっきから気になってたんだけど。どうして、そこまで私にこだわるの? 自分で言うのもなんだけど。私、まだ京ちゃんの恋人じゃないのに」
「確かに、まだお付き合いはしていませんが。それも時間の問題ですよね? 両思いである以上、もはやお付き合いしているようなものかもしれませんが」
「…………? 誰と誰が両思いだって?」
「咲ちゃんと京太郎くんですよ。誰が見ても、両思いなのは明白ですよ」
一切の疑問もなく確信を持って小蒔が答える。
プツン。と、咲の中で何かが切れた。それが何なのかは分からない。
言葉の内容を整理し、理解するまでたっぷりと時間を使う。
そしてその意味を理解した瞬間、咲の頭の中で銀河どころかあらゆる時間軸や並行世界が消滅する爆発のような何かが起こった。
「ハァ£≠♤#″△/※♨︎$ゝ☁︎;◆@&≦々【*□⇔°°°°¿¿¿¡¡¡ン!?」
驚愕のあまり、咲の語彙力まで消滅する。およそ人類には発音できない叫びを上げながら、大きくのけ反る。
その姿勢のまましばらく固まり、ゆっくりと背中から床に倒れ伏して意識を失った。
「咲ちゃん!? 咲ちゃん!! 救急車を! いや、その前に霞ちゃんを…………? あっ! 携帯電話はお部屋に…………!! 咲ちゃん起きてください! 誰か助けてくださ────い!!!!」
意識を失った咲を前に小蒔が慌てふためく。
その後、騒ぎを聞きつけた他の住人が駆けつけるまで小蒔の混乱は続いた。
ちなみに意識を失った咲は、人が集まったタイミングで目を覚ました。
キャパシティオーバーで意識を失っただけで、大きなケガなどがあったわけではない。しかし意識を失う直前のやりとりについて忘れてしまったらしく、京太郎と両思いになっているという情報は綺麗さっぱり忘れてしまっていた。
────まさか咲ちゃんがあそこまで鈍いだなんて。咲ちゃんの楽しみを奪わない為にも、京太郎くんが咲ちゃんを好きなのは内緒にしておきましょう。あっ。みんなにも言っておかないと。他に咲ちゃんが気付いていない事を知らない子も多いだろうし。それに霞ちゃんみたいに、面従腹背の子への牽制にもなるもんね。