とりあえず異世界に行けたので貰ったチートスキルの数々で気楽な商人を目指す   作:のこのこ大王

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第24話

 

 

 

 

 

 という訳でやってまいりました。

 街をどげんかせんといかんのお時間です。

 

 ギルド協会の会議室が使われた点だけは、褒めたい所ですね。

 これで領主の屋敷なんてことになったら、面倒この上ない。

 

 とりあえず主催者の領主である、カール・マイバーン辺境伯。

 リシアさんの父親だなと解るほどイケメンで年相応の渋みもある。

 こんなイケオジになりたいなぁ。

 その隣には前に見たテルムッドさんだ。

 リシアさんの兄らしく、少し似ている感じがあるイケメンだ。

 きっと数々の女を泣かせてきたのだろうと勝手な思い込みが出来るぐらいにカッコイイ。

 

 そして冒険者ギルドと商業ギルドからいつもの2人。

 アレクさんとユーリさんが参加。

 更には見たことが無い人が数人いるが、恐らく各部署の代表とかだろう。

 

 と思っていると、それぞれ自己紹介が開始される。

 やはり見たことが無い人達は、各ギルドの担当官達や、領主側の担当官達だった。

 

「―――えっと、最近この街で商売をしているシンと申します。ぶっちゃけ何故この場に呼ばれているのか解りませんが、よろしくお願いします」

 

「―――お前が話の発端だろうが」

 

 アレクさんが渋い顔で文句を言ってくる。

 その中には恐らく『領主様の前であまり面倒を起こしてくれるな』というのが含まれているのだろう。

 

「娘達から話は聞いているよ。色々と規格外の人物だとね」

 

「ええ、おかげで私なんてリシアと母上の2人に何故か文句を言われてしまいましたからね」

 

「いやぁ、それは何だか申し訳ありません」

 

 ……親子揃って最初から結構、擦って来るじゃないのよ。

 まあ、ぶっちゃけこんなトークぐらいなら社会人になってから嫌ってほど経験したからなぁ。

 

「領主様の貴重なお時間を取らせては大変ですから、話を進めましょうか?」

 

「―――お前は、ホントなぁ」

 

「いやだってホントに何で俺呼ばれてるの?って状態よ、正直」

 

「都市防衛計画だよ!都市防衛計画ッ!!」

 

「……ナニソレ?」

 

「この前、お前が言ってたじゃねぇ~かっ!!冒険者やら使って色々やらせればいいって話をよッ!!」

 

「ああ、その話」

 

「その話だッ!!」

 

 いつの間にか真っ赤に茹で上がったタ―――んんっ。真っ赤になったアレクさんと、それをなだめるユーリさん。

 う、羨ましくないもん!

 

 ……とまあ、あまり遠回りをしてると怒られそうなので、そろそろ話を開始する。

 っと言っても前に話していたような構想でしかない。

 

 まずこれらを提案する。

 

■兵士・冒険者兼用の訓練学校を立ち上げる。

 

 これに関しては、3ヶ月間の集中訓練として基本的な身体能力や必須の知識を詰め込ませる。

 そうすることで多少は動けるようになるし、出会ったばかりのモンスター相手だろうが注意点や弱点などが解るため有利だ。

 この期間の衣食住に関しては、全て領主持ち……つまり税金とする。

 ただし住む所は寮を建てれば良いし、食事も一括で準備すれば割安で用意出来るだろう。

 衣類も最低限の補償があれば困ることはない。

 

 その代わりに戦い方を身体と頭で徹底して学習させる。

 反抗的な者や基準未満で、改善の見込みが無いどうしようもない者は、この街では冒険者ですらなれない。

 それで一定の常識人ばかりになるので質が安定するので、ギルドも認可印を出しやすくなり印持ちが増えれば、それだけ信頼の高い街という評価に繋がる。

 あとは一般的なクエストである採取・警備・護衛・討伐等を先輩達と共にやらせることで経験を積むことも可能だ。

 

 そうして初期投資が必要だが、卒業までにはそれなりの新人冒険者や、そこそこの警備兵が誕生する。

 コイツらにはその費用回収として卒業後に一定期間は仕事以外で国外に拠点を移さないことや、一定数の領主からの依頼という形になる警備の仕事や後輩の面倒を見るクエストを受注させる。

 それらが回転し始めれば、かけた金以上に人材が育ってくれて利益も上がりやすくなるだろう。

 

 

■引退冒険者達を訓練学校の教官や迷宮監視の兵士にする。

 

 こいつもそのままの意味だ。

 怪我や年齢など様々な理由で引退した元冒険者達のその後なんて苦労しかない。

 それなりのランクで蓄えがあるものは良いが、大半が低ランクでその場しのぎの金しか持っていない。

 スグに仕事にありつければ良いが、下手すりゃ元冒険者の野盗なんてよくある話だ。

 独身ならそれも人生だろうが、既婚者だった場合は未亡人となった妻や子供が居ればかなり面倒な話になってくる。

 実際、この問題はなかなか解決しない。

 この街では奥様達のネットワークがそれなりにあるようで、生活が上手く行っていない所に定期的な支援をしているそうな。

 たまにうちでのんびりしてる方々からも『ちょっとした仕事は無いか?』と定期的に聞かれることがある。

 その度に適当な仕事を作っては回しているが、それもそういうことだろう。

 

 元冒険者は、今まで命懸けで様々なモンスターと戦ってきた技術や知識を持っている。

 それを腐らせるなんてとんでもない。

 だからこそ、それらを新人教育で継承させると共に、第一線は無理でも予備兵扱いや警備兵で良ければまだ活躍出来るって引退冒険者達をそのまま訓練校の教官や警備兵にしてしまおうという案だ。

 その辺の兵士よりも、よほど冷静で的確な判断が出来るし、対処能力も高いだろう。

 何より、そういった第二の人生という受け皿があると解れば、安心して冒険者を目指すことも出来る。

 もちろん自分の人生だから、全員が引退したら警備兵になれとは言わないけどね。

 特に迷宮からモンスターが溢れてくるという定番のイベントもあるらしいので、それらの対策も元冒険者達の方がしっかりしているだろう。

 

 この案の最大の問題は、冒険者ギルド・商業ギルドなどのギルド協会や領主といった権力者など全員が協力してくれないと無理だという点だろうか。

 逆に上手く行けば質の高い安全な街にすることも出来るだろう。

 

 

■冒険者ギルドを中心に低階層の訓練学校化を進める。

 

 実戦経験や安定した素材確保などの面でも1階~2階ぐらいまでをほぼ制圧してしまって安全な場所を作るべきではないか?という案。

 中に砦のような場所を作ってしまえば、安全に狩りが出来てモンスターが溢れ出る現象も、出る前に前兆を掴むことだってできるかもしれない。

 それに低階層を安全にすることで低ランク冒険者がトラブルに巻き込まれにくくもなる。

 低階層の素材も今より安定供給されるなら、もっと値下げも出来て便利だろう。

 特に様々な場所で集団行動で戦闘訓練が出来るのも迷宮の強みだ。

 領主軍の軍事訓練にも使えて便利だし、冒険者達も十分な訓練を積んでから奥へと進むなら死亡率も大幅軽減できる。

 

 

■迷宮周辺の詰所や、街の警備に引退冒険者を含めることで数と質を高める。

 

 上記にも記載したが、元冒険者の知識や技術に状況判断などは貴重だ。

 それらを平時~緊急時で常時使える兵士化するのは、非常に有効な手だと言える。

 だからこそ引退冒険者を中心に警備や常駐兵のような形でダンジョン周辺や街の治安維持を任せればいい。

 領主軍とも関係ある仕事をしていれば、連携も取りやすくなるだろうし、迷宮の反乱という万が一にも対応しやすいだろう。

 戦力として取り込まれて公平性に欠けるというなら、その辺はギルド所属のままにするなど書類上で対策すればいい。

 

 

■領主の兵士は主に治安維持と街の出入り監視などを重視した配置にする。

 

 ある程度の貴族ともトラブルになった場合を考えて、捜査権というか犯罪者を探して捕まえるのを領主軍の仕事に。

 ついでに街の出入り監視も軍でやってしまえばいい。

 普段から適度な緊張感で仕事をさせつつ、出入り時の混雑解消にもなる。

 貴族とのトラブルもある程度対処出来て、いざとなれば出入口を独断で閉鎖して戦闘行為を行うなどは、流石に冒険者では手に負えない。

 という訳で普段の治安維持を取り上げる代わりに野盗殲滅とか街の犯罪者摘発など仕事を絞ってやらせることで効率的になるだろう。

 住み分けをすることで元冒険者とトラブルになることも少なくなる。

 

 

■これら取り組みに対して冒険者ギルド・商業ギルドが手を組む。

 

 冒険者ギルドだけでなく商業ギルドも、冒険者への支援を行う必要がある。

 具体例を言えば最初だけ1割高く素材を買い取るや、店で冒険者カードを見せることで割引を受けれる等だ。

 駆け出しほど金で困ってしまうのだ。

 それをある程度解決してやるだけでも段違いだし、そいつらがそれなりの冒険者になってくれれば将来的にはプラスになる。

 何より『冒険者を支援する街』となれば『迷宮を2つ抱える街』とセットで冒険者が更に集まってくれるだろう。

 それらを街の流儀で躾つつ、未だ底が全く見えない迷宮の奥深くにあるお宝を掘り出してくれれば、街全体が潤う。

 

 ただでさえ迷宮というデメリットが大きく、それ以外にも周囲の立地条件もそこまで良い訳ではないのだ。

 ならば用意出来る圧倒的なメリットでデメリットを覆い隠して集客すればいい。

 

 

 長々と説明し終わった所で椅子に座り、すっかり冷めた紅茶を飲む。

 

 ぶっちゃけ急に具体的に煮詰めてもいない案件のプレゼンをしろと言われても無理だ。

 正直、突っ込み出せば穴だらけだろうし、こんなものが完璧だとは思っていない。

 あくまでこれを叩き台にして、もっと良い案に作り直してくれ。

 

 ―――そう思っていたのだが

 

「う~む、まさかこれほどの案が出てくるとは……」

 

「この部分など今すぐにでも改善出来そうな案ですよね」

 

「よくもまあこんなことをポンポン思いつくな、お前」

 

 

 まさかの称賛である。

 ……何で?

 と思った所で、ふと思い出した。

 

『中世ヨーロッパっぽい剣と魔法の―――』

『長年停滞した世界で―――』

『だから刺激が無いと崩壊する―――』

 

 

 ―――ああ、そうか。

 

 

 俺は元の世界という高度な文明で教育を受けた記憶がある。

 だけどこの世界の人達は、中途半端に魔法や精霊信仰などがあるため、学問というか頭の回転というか。

 要するに言い方は悪いが『根本の基礎値』が違い過ぎるのだ。

 

 いくら相手が天才でも『50しか知らないなら50以上の発想は生まれにくい』のだ。

 そこから天才達によって51、52と年月と共に次が生み出されていくことで成長していく。

 そうして生まれた知識が継承され、未来のスタート位置が上昇していくという訳だ。

 

 つまり彼らはこの世界でも頭の良い方なのだろうが、所詮は50止まりなのだ。

 元から地球という環境で数十億もの人間が生み出した技術・経験・知識を何気なく学んできた環境に居た俺は、この世界だと100であり200でもある。

 単なる借り物の、それこそ義務教育とそれなりの社会人経験で学んだことですら、この世界では異端であり天才的な発想となってしまう。

 

 かつて同業者みたいなのが怒鳴り込んできた時もそうだ。

 確かにチート性能で確定儲けが出ているから安値で売れるというのもある。

 しかし根本的に彼らは『薄利多売』ぐらいは理解出来ても『サービス品』という名の集客や『タイムセール』という限定販売の意味を理解出来ない。

 だから真似したくても出来ないし、かといってそういった手法は全て飯のタネとして早々簡単に教えて貰えるものではない。

 昔ちょっとだけ利用した宿の食事ですら、味付けなどの話は全てはぐらかされていたが、まあそういうことなのだ。

 

 数々のラノベ作品の中には『現代知識だけでチート』だとして何の加護も貰えずに異世界転生させられたなんて小説もあった。

 しかしその意味をこんなところで理解するなんて……。

 あの時は『戦場とかだと役立たないし、限定的過ぎるから無理ゲーだろ』と笑っていたが、逆に言えば有効活用できる場だとヤバイとしか言えない。

 

 

 ――――――ッ!!!

 

 

 一瞬だけど、ぞわっとした。

 何がどうという訳ではない。

 単に無自覚にチートを垂れ流していたことに関してだ。

 これじゃもう『俺なんかやっちゃいましたっけ?』と毎度学習もせず馬鹿やってる主人公を笑えない。

 

 そう、気づいてしまったのだ。

 何がもうチートを自粛しないだ。

 元々から―――そう『この世界に来た時から』既に常時チート全開だったのと同じである。

 つまりは、俺という存在そのものがチートなのだ。

 

 ちょっとした考え方や行動、その全てが既にこの世界とは違う。

 要するに俺が生きていく限り、かならず周囲に少なからずこの世界に無い知識や考え方等を無意識にばら撒いてしまうということ。

 そう考えればあの女神のような相手が、ロクな説明もなくこの世界にぶち込んでくれた理由にも納得だ。

 俺が生きて世界をウロウロする限り、勝手に世界に影響が表れ始めるだろう。

 そして俺が死ぬ頃には、チートスキルも合わさって世界が崩壊するような停滞期は抜け出している可能性が高い。

 

 ―――ああ、クソッたれ。

 

 確かに第二の人生をくれたことには、感謝してるさ。

 だけどこうも都合良く利用されているのは、何だか納得出来ない。

 かといって何か出来る訳でもないというのが、絶妙な嫌がらせにもなっていて……本当にクソッたれだわ。

 

 現在、目の前では俺の案に刺激を受けた連中が、俺そっちのけでああだこうだと意見を言い合いながら勝手に計画書を作成し始めていた。

 そう、彼らだって決して馬鹿ではないのだ。

 こうして影響を受ければ50が70や80にだってなるだろうし、その内に100だってたどり着くだろう。

 それがこの世界からすれば異端であり、本来なら気づきもしないものだったとしてもだ。

 

 邪魔する気が無いのと、流石に色々と考えすぎて面倒な答えにたどり着いたために疲れ切った頭を休めたい。

 そういう訳で、俺はコッソリとその場を後にした。

 

 店はそこまで忙しそうではないので、シャーリー達に任せて俺は早々に自室に戻る。

 仕事をサボるなんてこの世界に来てから初だな、なんて思いながら通販スキルで酒をツマミを購入する。

 

「もう飲まなきゃやってらんねぇ」

 

 俺は単純に第二の人生をラクに愉しく生きたいだけなんだ。

 前のようにただ生きるだけの人生なんて何の愉しみもない生活なんてゴメンだ。

 だからチートスキルを乱発してでも、それによるトラブルも込みにしたってラクに金稼ぎが出来る道を選んだわけで。

 

「スキルを使う、使わないとかさぁ~、世界への影響とかさぁ~、考えてたのが馬鹿みたいじゃん」

 

 酔っ払いながら本音を口にする。

 かといって俺そのものをどうこうするなんて不可能だ。

 結局は、この世界にとっての異物である俺がどう溶け込むかというだけの話で。

 そしてそれが平穏無事な、波風立たない方法などが無いんだろうなってぐらいだろうか。

 

 夕方ぐらいに様子を見に来たシャーリーに呆れられたが、まあこんな日の1日や2日ぐらい許して欲しいものだ。

 

 

 

 

 

 




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