とりあえず異世界に行けたので貰ったチートスキルの数々で気楽な商人を目指す   作:のこのこ大王

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第25話

 

 

 

 

 

 この世界に来てからどれぐらい経っただろうか?

 1ヶ月?3ヶ月?半年……は、まだかな?

 

 そこそこの店をもって、そこそこの従業員を雇っているそこそこの店主になれた。

 まあそこから先どうしたいのか?と聞かれることもあるが、特に目標などない。

 第二の人生を気楽に愉しく生きられればいいやってぐらいだろう。

 

 という訳で現状で十分だと言うとリシアさん達からもシャーリーからも、そして何故かマイバーン辺境伯からも、もっと上を目指すべきだと言われる。

 これ以上何を目指せというのだろうか?

 

 既に店は武器や防具に便利アイテムや日用雑貨など様々なものを販売している。

 食料だってインスタント食品は冒険者を中心に大人気である。

 もはや品揃えは、地方のスーパー並みだ。

 なのでこれ以上となるとデパートか?

 今度は、洋服でも売るか?

 などと馬鹿なことを考えるぐらいには、余裕がある。

 

 従業員として雇用したハリーさん一家は、頑張って働いている。

 父親のハリーさんは武器などの重い商品を中心に頑張っていて、母親のチータさんは便利アイテム等の使い方などを説明したりしている。

 娘のレジーヌちゃんとマロンちゃんも日用雑貨の販売で頑張っている。

 たまに小さい娘2人にちょっかいをかける男も居るが、休憩スペースに居るマダム達によって排除されているらしい。

 

 シャーリーは、主に宝石類など高級品を中心に扱っているが、全体を見てハリーさん一家をしっかりと動かしている。

 もう俺が居なくても良いんじゃね?と思わなくも無いが、買い取りだけはどうしてもね。

 

「―――という訳で、銀貨3枚ね」

 

「何がという訳でなんだよってか、3枚ぃ!?」

 

「いやだって、こんなの何に使うんだ?」

 

 ■乙女の純情ナイフ

  相手を思い過ぎて、つい自分以外の相手と結ばれそうになると彼を刺したくなる乙女のナイフ。

 

 *付与特性:初恋   (装備者が恋心で選んだ目標1体を自動的にナイフの対象者とする)

       純情   (対象者が自分以外の異性に興味を示すと毎秒対象者に対し殺意+1%)

       片思い  (対象者が自分以外の異性に興味を示すと毎秒対象者に対し命中+1%)

       小悪魔少女(対象者が自分以外の異性に興味を示すと毎秒対象者に対し必殺+1%)

       恋の呪い (恋愛が成就するまで外せない)

 

 平均価格;銀貨1枚~銀貨5枚

 

 確実にヤンデレ御用達みたいなナイフですやん。

 というか、ホントにこれ何に使うの?

 相手を確殺する気満々過ぎて怖いわ。

 

「むしろこんなのに銀貨3枚も出すって言ってるのが良心的なんだよなぁ。嫌なら別の店にどうぞ」

 

 ナイフの特性と呪いを説明すると、途端に黙る男。

 恐らく他の店でも似たような評価だったのだろう。

 

「恋愛成就どころか、絶望への片道切符みたいなナイフを誰が好き好んで欲しがるよ」

 

「……恋愛成就の可能性がアップしたりとかは?」

 

「ないな」

 

「ですよね~」

 

 結局、銀貨3枚で買い取ることになった。

 まあそれは良いんだけどね。

 

「……いつも思うのですが、そんなゴミみたいなの、どうするんです?」

 

「おや、シャーリーはこんな危ないナイフに興味が?」

 

「興味というか、そんな売れそうにないものを定期的に買い取ってるじゃありませんか」

 

「そんなことはないと思うんだけど」

 

「前にも装備者を呪い殺すだけの剣とか、ひたすら不運になるネックレスや凄く強そうに見えるだけで何の価値も無い剣等も、そこそこの値段で買い取っていらっしゃいましたよね?」

 

「おや、よく見てるねぇ」

 

「いずれは買い取りもやりたいと思ってますので」

 

「買い取りまで完璧になれば、もはやシャーリーの店になっちゃうね」

 

「それはそれでありですわね」

 

 などと適当な会話をしつつも、普段は見せていない帳簿を見せる。

 

「これがシャーリーが気になったものの行方さ」

 

「―――なッ!?」

 

 シャーリーが食い入るように帳簿を見つめる。

 

 ■ただの呪われた剣

  何故か装備者をひたすら呪い殺すだけの剣。

  特に切れ味が良いとかではない。

  装飾が施されただけの鋼の剣。

 

 買い取り:銀貨2枚

 売却  :金貨6枚

 

 

 ■不幸のネックレス

  所有者に不運を呼び込むネックレス。

 

 買い取り:銀貨10枚

 売却  :金貨32枚

 

 

 ■見た目だけの鉄の剣

  伝説の剣のような見た目をした鉄の剣。

  特に何かある訳でもない。

 

 買い取り:銀貨3枚

 売却  :金貨12枚

 

 

「あ、あんなゴミみたいなものに銀貨15枚も出してる時点でおかしいのに、どうしてそれらが合計金貨50枚になってますのッ!?」

 

 あまりの衝撃に大きく声を出した彼女に店内の視線が集まる。

 

「そういった変な装備品を高値で欲しがる変人も居るんだよ。そういう人を見つけて高値で売るのが商売人の腕ってやつさ」

 

 少し大きめにそう答えながら、大声をあげたシャーリーに注意すると、スグに状況を理解してくれた。

 大きな声で儲かってる話なんて、あまり良いことではないからね。

 

「さて、今の話を聞いてしまった旦那方は、口止め料として今回限り2割引きにするから黙っててくれよ」

 

 そして反対側を向く。

 

「そして奥様方も、口止め料として異国の菓子をお土産にプレゼントだ。その代わり儲かってるのは黙っててくれよ」

 

 するとおば様の1人が笑いながら

 

「黙ってるも何も、みんなアンタが儲けてるのは知ってるよ」

 

 と口にする。

 

「それでも具体的な金額は生々しいでしょ?」

 

 そう言うと周囲が笑いで盛り上がる。

 その間に『失敗した』という顔をしているシャーリーを立たせてお菓子配りをさせる。

 あとは奥様方が、適度に励ましてくれるだろう。

 

「さあ、どうする旦那方?2割引きだぞ?今回限りだぞ?」

 

「待て待て急かすな。どうするか考えてるんだよ」

 

 冷やかしに近い連中が急に真剣に吟味し始めて思わず笑いが込み上げてくる。

 やっぱりお金が絡むと人って露骨だなぁ。

 

 ちなみに帳簿の売却先は、チート兵器であるスキルの買い取りだったりする。

 流石にそんな便利なスキルがあるとは言えないからね。

 これのおかげでスキル内のポイントとして吸収されたのが、販売する様々な品物に化ける。

 ゴミが良品に変換される、まさに夢のリサイクル。

 

 そういや例の引退冒険者達の就職斡旋の件は、もはや俺の手を離れて大々的に行われるようだ。

 大きな土地が必要ってことで外周の城壁の外に更に拡張する形で作るらしい。

 なので更に外の大きく新規の城壁建設が予定されている。

 街なんてそうしてジワジワと大きくなっていくのだろう。

 

 え?なんでそんな話を知ってるのかって?

 ……集金屋が来たんだよ。

 

「街の発展のための投資を」

 

 というもっともらしい言葉で追加の税金を徴収していく領主という名の悪魔が。

 そんなに金が欲しいなら街の中心付近にある巨大な武器・防具等を売る店の集合体からむしり取れと言ったんだが―――

 

「ここ最近、どこかに負けてかなり経営が厳しいらしい」

 

 てな理由で徴収から逃れたそうな。

 なんて羨ましい。

 普通に商売して無理なら、自らの店限定という付加価値をつければいい。

 

 奥の通りの爺さんの店なんて、防具屋だったのに今じゃ修理専門店になっている。

 そして修理専門店の方が儲かっているようだ。

 やはり商売というのはそうじゃなきゃ。

 ライバル店が出来て何もせず単に売り上げが落ちたからライバル店が悪いってのは馬鹿な話だ。

 ライバル店には無いような付加価値を付けるなどして戦えよと。

 

 散々文句を言ったが、結局金貨300枚も臨時徴収されたわ。

 この前のシャーリーのやらかしあたりから、またそれなりに金持ってるのがバレたんだろうな。

 それに似合うだけの返礼はすると言われたが……まあ期待しないでおこう。

 

 あと今度また、金に困って装備が整えられない冒険者達を数組ほど面倒見てやることになった。

 働くのは、その街の拡張工事でだ。

 労働力であり、戦闘力としても役立つなんて、なんておいしい。

 

 まあダン達が順調そのものなのも原因の1つだ。

 アイツら洞窟ダンジョンの15階という中級者がウロウロする階層まで到達したらしく、せっせとその辺で取れる採取物を納品しているらしい。

 下手に戦って素材を~というのでないあたりが賢い所だろう。

 装備をほとんど損耗させずに手堅く稼いでいるらしく、ようやく自分達の利益で装備を更新できそうだと言っていた。

 そのおかげで、ウチに装備の更新が厳しい連中が再度集まってきている。

 あまりやり過ぎるのはアレだが、まあ訓練校が出来るまでだと割り切ろう。

 

「ありがとうございました~」

 

 今日も一日が終わる。

 店を閉めると、家に帰りながらこれからを考える。

 どうせなら店をもう少し大きくして従業員も余裕を持たせるべきか?

 それとも思い切って2号店か?

 

「まあ、じっくりと行けばいいや」

 

 

 

 

 

 




■解説

*辺境伯(へんきょうはく)
 まあ資料とか時代とか国とか色々あるので、あくまで今回の説明は作者の知る範囲ということで。
 主に貴族の役職というのは
 公爵(王族の血が入っている侯爵)
 侯爵(それ以外の侯爵全般)
 伯爵(上位貴族)
 子爵(下位貴族)
 男爵(最低限貴族)
 という簡易的な分類が可能です。
 特に上位貴族と下位貴族には役割の違いがあるので、下位から上位に陞爵(爵位が上がること)するには、かなりの活躍(貢献度)が必要みたいですね。
 他にも準男爵というのもありますが、平民が1代限りで名乗れる名誉職というのもあれば、平民が1代限りで貴族として扱われる爵位であるという2種類があったので、こういう面倒なものは基本的に扱わない方が良いと思ってるので作者は使わないようにしてます。


*では辺境伯とは?

 基本的に国というのは戦国時代もそうでしたが、自分の土地を貰ってそこを繁栄させつつ有事の際には国全体で対処するというような感じです。
 特に隣の国と隣接しているような土地は、戦争になると真っ先に狙われる土地です。
 更に言えば中央から遠いために政治なども浸透しにくいので、命令が行き届きにくさもありました。
 そういう土地は未発展なことが多くて嫌われがちですが、かといって放置する訳にも行きません。
 なのでそれなりの軍備力を有することが出来て、国に忠誠を誓ってくれやすい立ち位置の貴族が担当することが多くなりました。
 となると候補は、やはり上位貴族でしょう。

 実際、辺境伯というのはそういう厄介な土地を治める管理職の名前として実在します。
 爵位ではなく管理職なので今で言えば国家公務員みたいな立ち位置でしょうか。
 そしてこの立場を任されていた人物に侯爵が居たりします。
 つまり国家公務員の中でも相当な上位立場であることがわかります。

 もっと言えば防衛を担当するということは、それなりの税収が無ければ軍隊を維持出来ません。
 となると必然的に国境沿いの土地を任される人は、大きな土地を貰え安くなります。
 土地が大きければそれだけ収入も期待出来ますからね。
 こうなると中央からも離れていて広大な土地や収入に独自戦力を持つため、半分独立国家のような感じになりがちでした。
 そのためよほど信頼出来る家系でもない限りは、度々王家と揉めることがあったり敵対して独立したり敵国と通じて裏切ったり。
 この辺りはどこの国でも同じで、自らの土地や利権を守るために手のひらを返すのはよくあった話で。

 そういった訳で辺境における防衛を目的とした役職というか管理職の名前。
 それがファンタジーブームで爵位を並べる段階になった時に出てきたと言う感じでしょう。
 そして辺境伯という名だし伯爵っぽいなとか、王と気軽に謁見出来る立場なので侯爵・公爵以外の地位として使いやすかったのではないでしょうか?

 ですので辺境伯というのを出す場合は
*上位貴族であり侯爵と同等か上の立場が理想。
*国の軍備の一定割合を担っており武闘派であることが多い。
*防衛ラインを任されてる以上、国王含めて信頼出来る貴族が担当していて、国王に直接直訴出来る立場でもある。
*国境沿いに広大な土地を有しており、常備兵などが多数存在していたり砦や要塞などがセットであることも多い。
 とまあその辺をおさえておくと辺境伯というのが大体どういう立場の人なのか解ると思います。


*誤字脱字などは感想もしくは修正機能からお知らせ頂けると幸いです。
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