とりあえず異世界に行けたので貰ったチートスキルの数々で気楽な商人を目指す   作:のこのこ大王

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第27話

 

 

 

 

 まあ、アレから数日ほど経過した。

 

 とりあえず問題が孤児院だけでは済まないのが難点だ。

 この件に関して詳細を聞くためにカール伯爵を訪ねると、クレアさんまで現れた。

 

「一応、私がこの街で婦人会という女性達をまとめる組織を運営しているのよ」

 

 ということらしい。

 文字通り、街の女性達に対しての組織で主に相互補助というか助け合いの精神で互いを守るというもの。

 具体的に言えば、突然旦那が死んだ未亡人とその子供への支援や未亡人への仕事斡旋など。

 特に冒険者という、いつ死ぬのか解らない旦那を持つ女にとってはありがたい組織なのだろう。

 しかしそれでも限界がある。

 結局、それらに対する資金は街の税収だ。

 孤児院対策も含めて圧倒的に足りていない。

 だからこそ定期的にウチに集まって井戸端会議をしているご婦人方も『何か仕事はないか?』と聞いてくることがあるのは、そういう訳だ。

 

「当然、税収には限りがあるし救済するにも限りが出てしまう。だからこそ今は収入を増やす政策を重視しているという訳だ」

 

 街を拡張して住民などを増やせば当然税収は増えるだろうが、気長な話だなぁというのが印象だ。

 ある程度話を聞いてから街をウロウロする。

 出ていく時に2人が何か期待するような目で見てきていたのはスルーしよう。

 

 具体的な案が無い訳ではないのだが、結局それだと俺が更に手を広げることになる。

 俺は異世界でラクして気楽に人生を愉しみたいだけなのだ。

 決して異世界で事業展開して大富豪・大商人になりたい訳ではない。

 そこまで行けば結局死ぬまで働くハメになるではないか。

 

 そう、目の前で忙しそうに出入りしているギルド職員のように。

 

 いつの間にか街の中央付近に来ていたようで、いつもはそこまで出入りが無いギルドから職員が凄く出入りしている。

 何かあったのかと職員に尋ねると何故か応接室へと通される。

 そこへアレクさんとユーリさんが、疲れた顔をしながら現れた。

 

「で、何のようだ?こっちは忙しいんだよ」

 

 その言葉にぶっちゃけ意味が解らない。

 ここへ通したのも、現れたのもそっちだろうよと。

 なので事情を話すと、ユーリさんは苦笑して、アレクさんは盛大なため息を吐いた。

 

「お前なぁ~。自分の立場ってやつを考えろよ」

 

 そう言いながら説明された。

 冒険者支援をしているためギルドへの貢献度が高く、しかも街の大半の武具屋が撤退している中で人気の商品を取り揃えているウチは、どうやら街でも重要な扱いになっているらしい。

 つまり俺は、気づけば街の重鎮扱いらしい。

 

 ……解せぬ。

 

「だからウチの連中が気を利かせたんだろうよ」

 

 なるほど、そういうことか。

 まあ、こうなってしまっては仕方がない。

 とりあえずどうしてそんなに忙しいのか聞いてみる。

 

「お前のせいだろうがっ!!」

 

 何故か盛大に怒られた。

 

 ……解せぬ。

 

「丁度、仮設ではあるけど砦が完成したのよ」

 

 話が進まないと踏んだのか、ユーリさんが説明してくれた。

 要するに前に出した案の1つが実行されたのだ。

 

 ダンジョンの入口を要塞化して溢れ出る現象を止めるというやつだ。

 

 この砦を通過してダンジョンに入るようになるらしく、ここに元冒険者などを警備兵として雇用するそうな。

 そうすることで万が一の際でも、相手モンスターの情報を知る兵士なら的確な判断が出来るだろうと。

 将来的にここに領主軍の一部が常駐化することで金食い虫である兵士の有効活用に繋げる予定らしい。

 

 で、2人はそれの対応というか現地での指揮を執っているらしい。

 

「何で2人が指揮を?」

 

「砦内部に簡易的な冒険者ギルドを設置予定なの。そこでダンジョン専門のギルド受付として受注と買い取り等を行うつもり」

 

 聞いていると確かにそれはそれで良い案だと思う。

 特にダンジョン産の素材は価値がある。

 ただ価値があるだけでは商人は手を出しにくい。

 それらを捌ける販路が無ければならないからだ。

 その点、冒険者ギルドは街中の色んな所に伝手がある。

 だから基本的に素材はギルドに売るというのが一般的だ。

 逆にウチのように素材だろうがドロップ品だろうが買い取っているのが異常らしい。

 

「へぇ~、面白そう。俺も見に行っていい?」

 

「邪魔だけはするなよ」

 

「へいへい」

 

 こうして俺は、初めてダンジョンの入口まで行くことになった。

 何だかんだで危なそうなので行かなかったからね。

 今回は、人が大量に居るから問題ないだろう。

 

 そして話にあったダンジョン入口に到着したのだが……

 

「うっそだろ、お前」

 

 思わず絶句してしまった。

 確かに仮設だと聞いたよ。

 でも、これはあんまりだろう。

 

 ダンジョン内部に向けてコの字型の石壁の強固そうな壁と扉がある。

 そして中間には適当に建物が建てられていて物資などが無造作に置かれている。

 よく見れば兵士用の宿舎みたいなのまである。

 仮設ギルドもそんな中の1つだ。

 最後に外側にダンジョン内部に向けてのコの字型の石壁と大きな扉。

 

「……え?これで守る気あるの?ってか守れると思ってるの?」

 

 街への被害を抑えるための場所でしょ?

 最終防衛ラインでしょ?

 何この『街の入口にある関所』って感じしかしない場所は。

 

「あ、シンさん!」

 

 あまりのクソ建築に困惑していると声をかけられる。

 振り向けばそこには乙女の旗の皆が居た。

 最近は、この砦建設や拡張の手伝いで忙しそうにしていた。

 

「ああ、皆さん元気そうで」

 

 そう言いながらリシアさんに返事をする。

 その隙にというか、その間に何故か左右からエレナさんとルルさんに腕を組まれる。

 ……最近、何故かこの形が多い。

 まあ押し付けられる左右の膨らみは大歓迎なのだが、周囲の男どもの殺意まで集まるので困る。

 

「困っているような感じでしたが、どうかされましたか?」

 

「何かあれば私達から責任者に伝えることも出来ますけど?」

 

 ジュリアさんとパメラさんが声をかけてくれる。

 やはり顔に出ていたようだ。

 

「いや、大したことじゃないんだけど……いや大したことになるのか?」

 

 さっそくこのクソ建築の欠点を指摘した。

 コの字は中央に対して強いかもしれないが逆に左右どちらか一か所に攻撃が集中すると弱い。

 こんな閉鎖空間なら下手に凹凸を作らずに平面的で、とにかく頑丈にすべきだ。

 そして中央の巨大門の横に何故に小さい出入り用の門を作らないのか?

 巨大な門ほど閉じるのが遅い。

 緊急時の閉門に間に合わない可能性も高い以上、普段は小さな出入口用の門を作るべきだ。

 いざとなればそこは裏側から巨大な鉄板か何かを上から降ろすようにして封鎖できるようにしておけばいい。

 

 中央の門も破られることも考えておかねばならない。

 左右に乗り越えられない壁と一本道を準備し、左右の高所から一方的に攻撃が出来るとか、左右から小さな狙撃穴を作ってそこから攻撃するとか色々あるだろう。

 最終防衛ラインになる最後の扉だって左右を備蓄庫にすれば最後までそこを使用出来るし、左右を壁で覆っておけば最初の壁が抜かれても左右から兵を回して挟撃だろうが支援だろうが出来る。

 その左右だって各所に閉鎖区画を設置すればそちらに抜けられるようなことになっても封鎖して侵入を止めることだって可能だ。

 何より相手の進入路を制限することで、相手が圧倒的な数が居たとしても、その数の暴力を使用出来なくすることだってできる。

 

 第一、兵士用の宿舎みたいなものを砦内部に作るなよと。

 本格的な砦なら広さもあるから解らんでもないが、基本的にはダンジョン入口の外側に宿舎なりを建てるべきである。

 こんな門壁による砦にするなら、もう少しやり方ってものがだなぁ。

 そもそも中央にこんな乱雑に建物なんて作ったら、最初の壁を抜かれた時にどうするんだよと。

 まさか建物に隠れるモンスターとか出てくるような状態になって乱戦でもするの?

 最終防衛の門からの攻撃でも建物が障害物になって邪魔なだけじゃん。

 大体、砦を作るならまずは基本的な―――

 

「あ、あの~、シンさん?」

 

 とりあえず気になる所を指摘していると、リシアさんに遠慮がちに止められてしまう。

 

「ああ、これは申し訳ない。皆さんにはつまらない話をしてしまって―――」

 

 俺としたことが、愚痴のようなものでしかも女性が興味を示せなさそうな話題を延々と口にしてしまったようだ。

 彼女達に気を使わせてしまって申し訳ない。

 

「いえ、そうではなくてですね……」

 

 そう思っていたのだが、リシアさんが後ろを指でツンツンと指す。

 振り返ったらそこには―――

 

「―――」

 

 確かテルムッドとかいうリシアさんの兄が、真っ白に燃え尽きた状態で立っていた。

 

「この砦の建築は、兄が任されてものでして―――」

 

「あ~、つまりこのクソ砦は彼の作品だと」

 

 思わず礼儀や敬語を忘れてそう言うと

 

「グハッ!」

 

 血を吹いて倒れた。

 どうやらトドメを刺してしまったようだ。

 しかし仮にも貴族で仮にもリシアさんの兄である。

 どうしたものかと思っていると

 

「はっはっは。まあいい経験になっただろう」

 

 そう言いながらカール伯爵がやってきた。

 

「どうだ、テルムッド。今指摘されたことは理解出来たか?」

 

「……はい、己の未熟を痛感致しました」

 

 いつの間にか立ち上がったテルムッドさんが、落ち込みながらそう言う。

 まあ仕方がないだろう。

 何だかんだで彼はまだ若いのだ。

 人生二週目かつ、様々な知識を持っているオッサンに勝てる訳がない。

 

「しかしシン君。キミは凄いね。砦の仕組みや迎撃方法に活用法まで様々な知識を持っているようだ」

 

「まあこれでも色々な所を旅してきましたので」

 

「せっかくだ。息子に知識と経験を積ませたいので、砦の再建築に関して手を貸してくれんかね?」

 

「いやぁ~、流石に私如きでは」

 

「私も先ほど色々と出てきた防衛方法に興味があるのでね。本業に支障が出ない程度で構わない」

 

「はぁ、まあそういうことでいいのでしたら」

 

 というか平民の俺が、貴族の提案を蹴れる訳がないじゃない。

 ……あ、そうだ。

 

「手伝うついでといってはアレですが、多少報酬は頂いても?」

 

「ああ、構わんよ。どの程度を希望している?」

 

「いえ、金銭ではありません。砦の一部を利用させて頂きたいだけですので」

 

「……ほう?まあ別に構わんが」

 

「ありがとうございます」

 

 と言う訳で、砦の一部を使えるようになったわけだ。

 あとは仕込みの準備も含めて色々とやるか。

 上手く行けば色んな問題が解決出来て、俺もラクできる。

 

 カール伯爵とテルムッド君が去っていった後。

 残った俺は、現場監督の称号をゲットしたので早速周囲に色々と指示を出す。

 厳密に言えば、ほとんどのものを撤去するところからだ。

 

「ま、とりあえずやることはクソ砦の全面解体からだなぁ」

 

 それを聞いた乙女の旗のメンバーは、全員が苦笑していた。

 ちなみに全撤去をし始めたのを見て、慌ててこちらに事情を聴きに来たアレクさんは、再建築という言葉を聞いて頭を抱えていた。

 流石のユーリさんも『色々再調整しないとダメかしら』とため息を吐く。

 

 文句は全てあんなクソみたいな砦を作ろうとした彼と、その経験のために半分放置したと思われる伯爵様に言って欲しいものだ。

 

 

 

 




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