とりあえず異世界に行けたので貰ったチートスキルの数々で気楽な商人を目指す   作:のこのこ大王

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第33話

 

 

 

 

 

 

■side:シャーリー・クロイツ・デイヴィス

 

 

 

 

 

 それなりに立派な部屋に大勢の人間が集まっている。

 マイバーン辺境伯とその家族。

 乙女の旗という冒険者チーム。

 冒険者ギルドのギルドマスター。

 商業ギルドのギルドマスター。

 そして何故か奴隷商のローレッド様まで。

 更にもっと言えば何故私までもが辺境伯の屋敷に呼ばれたのか。

 ……などと最初は思っていましたが、まあ理由は何となくわかります。

 

「まずは改めて、街の防衛ご苦労だった。感謝する」

 

「いえ、我々も自分達の街を守っただけですので」

 

 そんな形式的なやり取りが辺境伯とギルドマスターの間で行われる。

 ある程度決まり切った話し合いが行われた。

 これもある意味決まり切ったことであり周囲は特に気にしていない。

 一連の流れが終わるとようやく意味のある話題となった。

 

「……それにしても、あの武器の数々は見たことが無い」

 

 今回の防衛戦で使用された箱の中身。

 相手に向かって短槍のようなものを飛ばして爆発させる魔法のような武器。

 上位の冒険者でなければ討伐不可能と言われている怪物ですら一撃で倒したらしい。

 

「しかもあの量を見るに、明らかにどこかの国の軍事武器だ」

 

「どの程度の値段になるかわかりませんが、あれを兵士に持たせて数を揃えている国など聞いたことがありません」

 

 ギルドマスター2人が感想を述べる。

 確かにあれだけの量ということは量産されているということ。

 そして明らかにどこかの国の軍が使用するような武器だと予想出来る。

 

「聞いたことが無い方が、ある意味良かったかもしれん。万が一、近隣にこのような武器を当たり前のように持つ国があれば恐ろしいことになりかねない」

 

 ……そうでしょうね。

 もしその国に野心があれば侵略戦争が起こる。

 そうなっても城壁すら一撃で破壊するような武器を使用してくる相手など勝てる訳がない。

 あの人が使っていたものも、鉄の弾をばら撒いて次々と怪物達を吹き飛ばすかのように倒していた。

 戦闘経験など無いとハッキリ言っていたあの人ですら、圧倒的な戦果を挙げた。

 そうなると本物の軍人が、アレ以上の武器を持って攻め込んでくれば周辺国など一瞬で飲み込まれるでしょう。

 

「ということは、ますます疑問が出てきますね」

 

「ああ、そうだ」

 

 

 ―――彼が何者でどこからあのような武器を調達しているのか?

 

 

 そこで部屋が静寂に包まれる。

 確かに誰もが気にしていたが、誰もが聞かなかったこと。

 下手にそこを突いてあの人が逃げ出すようなことになる方が困るからだ。

 

 しかし謎であることに変わりはない。

 産地を誤魔化してはいるものの、聞いたことが無い怪物の素材を使った装備の数々。

 見たことが無い便利な道具。

 食べたことが無い食品。

 そして明らかに量産品である軍事武器。

 これでただの商人であるとは誰も思わない。

 まだ商人を装ったどこかの国の密偵だと言われた方がわかりやすい。

 

 でも。

 あの人とずっと一緒に暮らしてきて、わかったことがある。

 あの人は善人だ。

 それもかなりのお人よしである。

 今回も見て見ぬふりだって出来ただろうに、かなりの品物を持ち出しでばらまいた。

 簡単に計算しても金貨200枚を超えている。

 それらを無償提供したのだ。

 そんな人が、密偵?

 私のような面倒な女を買い取った人が?

 

 ―――あり得ない。

 

 それだけは断言できる。

 ならば。

 

「あの人が何者であろうと関係ありません」

 

 ハッキリと言った私に視線が集まる。

 

「例えどこかの国の軍事武器を仕入れられる大商人であっても、貴族や王族であっても、関係ありませんわ」

 

「……それはどうしてですか?」

 

 ローレッド様が促すように聞いてきます。

 

「だってあの人は、この街で店を構えてしっかり生活基盤を整えて落ち着くつもりなのですよ?そこに敵意があったと?今までの行動に裏があったと?」

 

「それは……」

 

 乙女の旗から声があがる。

 

「なら何処から何を仕入れようが関係ありません。私達と共に生き、この街に留まり続ける限り、例えあの人の国が何かをしてきても、あの人が私達を見捨てぬ限りは問題ないわ」

 

 思っていたことを全て話すと、少し冷めたお茶を飲む。

 流石は貴族というべきか。

 冷めていても良い茶葉を使っているのがわかる。

 

「……確かにな」

 

 辺境伯が意を決したような顔で声をあげる。

 

「今回の件は、流石に王都に報告せねばならん。…ならんが、彼のことは可能な限り現状維持にすべきだと上申しよう。私としても彼を敵に回す気など無いからな」

 

「当たり前です!あれだけの人を手放すなどあり得ません!」

 

 乙女の旗の連中が騒ぎだす。

 ……やはり彼女らが当面の敵という認識は間違ってなさそうね。

 

 

 

 

 

 一方、ファルス王国の密偵達は、ため息を吐いていた。

 

 今回の大規模な大氾濫。

 その目的地や被害を調べるために怪物どもに気づかれないよう遠くから監視していた。

 

 ガーナック王国のエーアイ街。

 それが今回の怪物どもが最初に到達する場所だった。

 更に調査するとエーアイ街の戦力は数日前に別のところに行っており、残っているのは冒険者ぐらいだという。

 

「これは街1つでは済まないな」

 

 そう思った。

 一応国境の街なので城塞都市になってはいるものの、その程度で止められないのが大氾濫である。

 戦力が無い城塞都市など壁があるだけの街でしかない。

 場合によってはガーナック王国は疲弊するだろう。

 そうなればファルス王国が疲弊している部分を侵略することも可能だ。

 当面は復興支援などで余計な金のかかる場所になるだろうが、十年も経てば立派に良い収入になる。

 なので我々の任務は、とても重要なものであった。

 

 

 ―――あの防衛戦を見るまでは。

 

 

 何だ、あの武器は!?

 上級の怪物が一撃で吹き飛んだ!?

 凄い音と共に怪物達を吹き飛ばすあの回転している棒みたいなものは何だ!?

 透明な盾のようなものもよくわからない。

 陶器のようなものを投げて火が付くアレぐらいしか仕組みがわからない。

 あの鉄で出来ているのか?の線が何故あそこまで怪物を足止め出来るのだ?

 

 何よりあれだけの大氾濫を1日も経たずに壊滅させてしまった。

 防衛側の街に被害らしい被害などない。

 まるで夢を見ているようだ。

 こんなこと、あり得る訳がない。

 

 何とか街に潜入して謎の武器を奪おうとしたが管理が厳しすぎて手が出せなかった。

 こうなると我々は何と上に報告すればいい?

 こんなこと真面目に報告した所で冗談だと笑われるか、真面目に報告しろと怒鳴られるか。

 どちらにしろまともに伝わることなどないだろう。

 

「クソッ!なんて報告すりゃいいんだよッ!!」

 

 周囲に人気が無いことを確認してから、思わず声を荒げる。

 

「気持ちはわかるが、とりあえず報告するしかあるまい」

 

 仲間にそう言われて冷静になると、再びため息を吐く。

 そして闇夜に紛れて王都へと急いだ。

 

 

 

 

 

 




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