禪院家に誕生した鬼才、禪院明。その自己鍛錬が本格的に始まった。家の蔵書を読み漁り自らの術式を把握した明がまず試したのは、式神の召喚
「式神を召喚する瞬間に必ず発生する影。召喚を望まずに術式を起動することで影だけを生み出すように呪力を流せば……」
術式の起動と同時に溢れ出す爆発的な呪力。5歳とは到底思えぬ圧倒的な呪力量と出力を可能としているその心臓は、明の意思に応じて脈動する。明確な意志を以て放たれた呪力は明の周囲を黒く染め上げ──
「成功だ……」
明の足元からは黒い影が不規則に蠢いていた。明の莫大な呪力によって展開された影は術者の喜びを体現するかのように暴れまわり、周りの木々や地面を破壊し、陥没させる。
「おっと、つい制御を忘れていた。ここが庭で良かったな、自室だと片付けが面倒だ。」
ぴたり。と暴れまわる影を止めると思案する。
やはりな、式神を顕現する際に使う影は式神とは別で自由に操作が出来る。制御できるかは分からなかったが自分の術式の、それも媒体に当たるものであるためか手足のように使える。なぜ書に記されていなかったかは分かりかねるが……素晴らしい!!!
十種影法術は、式神を召喚し使役する式神術と影を展開し自在に操る操術の
術式に関する書物を読み漁ったあとからずっと疑問だった部分だったが、今確信をもてた。これならば式神を召喚するときも隙がない、影で応戦することで対複数戦も可能だ。……ん?
「玉犬」
手印を影に組ませて式神を呼び出す。今までは犬の影絵を手で組みながら召喚していたが、自在に変形する影を生み出せた今ならどうなるか。目論見通りならば……
ドロリと顕現する玉犬。
おもわずほくそ笑む。この展開した影を使えば手でわざわざ印を組まずとも式神を出せる。両手を空けたまま、式神と影を使った圧倒的な手数を実現できるということ!やれることが格段に増えたな……自分の手で手印を組まなかった分、いくらか式神の強度が落ちていても仕方がないと思っていたが、影も僕自身だという扱いか?強度が変わらないのは嬉しい誤算だな。
呪力消費は多いが僕の呪力量ならば問題はない。今はこの影をもっと細かく動かせるように練習せねばな。的はどこかな?
突く、斬る、殴る、縛る、潰す。様々な方法で影を操り、呪霊を殺す。明から発せられる圧倒的な呪力に怯える呪霊たちは逃げる間もなく祓われる。禪院家の飼う呪霊たちがいる懲罰房は吹き荒れる呪力により誰も近寄れなくなっていた。
家にこのような場所があったとはな。家の者に術式を試す相手を募ったが皆に断られてしまった。最終的に顔を青褪めさせながら案内されたのがここだが……中々良いな、広さも申し分ない上に壊してしまっても問題ないときた。ここを僕の鍛錬場にしてやるか、ただの懲罰房としておくには惜しい。呪霊を定期的に捕獲させてここに詰めさせれば的にも困らん。名案だな。
しかし……色々試したが式神のための手印を組む以上、基本的に手を象っている方が無難だな。これならば器用に動かせる上に用途が多い。今のところは2本までしか戦闘中に手の形を維持できないがこれは鍛錬次第でどうにでもなりそうだ。式神に頼らずとも強力な戦闘手段をもつことは式神使いとして大事なことだ、地力の部分はこの影の操作と心臓の呪力を基盤に鍛え上げるとしようか。
うーん、無限の呪力サイコー!!!