無限と十種   作:うぃりあむぅ

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えー、満象を万象と間違えてました。恥ずかしい。


無限対無限

 五条家。呪術界御三家の一つである名家であり、御三家の中で今最も勢いのある家だと言っても過言ではない。理由は単純。五条悟が居るから。

数百年ぶりの六眼と無下限呪術の抱き合わせ。生まれただけで呪術界の均衡を崩してしまった特異点。

 

「いきなりだな、僕を連れて他所を訪ねるなんて初めてじゃないか。」

 

「元々用はあったんだがな、ついでにお前のお披露目でもしようと思ったのさ。」

 

「なるほどね……。」

 

嘘だ、絶対に何か企んでいる。直毘人爺はニヤケ面を隠そうともしていない。

だがまあ、ずっと教えられてきた五条悟がどんな人物なのか。気にならない訳ではない。僕は怪しみつつも了承した。

 

 

***

 

 五条家に着いた。使用人が当主の元へ案内するらしい。こういうのは当主が出迎えるのではないのか?直毘人爺を見るが気にして無さそうだ、ならば自分が何か言う必要はないだろう。直毘人爺と共に屋敷を歩く。

 

「此方でございます。」

 

通された部屋に居たのは、五条家の当主らしき壮年の男ともう1人。

白い髪に青い瞳、整った顔立ちの少年。五条悟が退屈そうに座っていた。

 

……あれが、五条悟。これまで会ったどんな術師とも違った異質な呪力。そしてあの眼が六眼か、綺麗な色だな。生まれつき備わった機能であり、呪いがとても良く視え、呪力効率が格段に良くなるものだと聞いている。どれだけ強いんだ?昨日の甚爾との模擬戦での興奮を思い出す。

しばらく観察していると向こうも僕に気付いたらしい。眼が合った。

 

「……なんだお前、こっち見るなよ。気持ち悪りぃ呪力しやがって。」

 

口を開いたと思えば飛んできたのは罵倒。少し面喰らうがここは──

 

「ん?僕の呪力量に嫉妬してるのか?」

 

「は?」

 

驚くほどすらすらと言葉が出てきた。気付いたときにはもう遅い。

 

「殺す。」

 

膨れ上がる五条悟の呪力。初めて感じる激情のままに術式へと呪力を流し放たれるのは無下限の収束。異変を察知した五条家当主が止めに入るが、間に合う筈もなく。

 

「──術式順転『蒼』」

 

蒼い引力が、全てを飲み込んだ。

 

 

***

 

 ──初めてだった。俺より呪力の多い存在が。

 ──初めてだった。俺に対する挑発的な発言が。

 生まれたときから周りは自分を持て囃してばかりだった。口を開けば天才、天才、天才、天才。勝つのは当たり前。強いのは当たり前。だってお前らなんかより強いから。お前らは弱すぎる、同じ人だとは思えねぇ。

そんな中、訪れた禪院家の当主ともう1人。何回か見たことがある禪院の当主はどうでもいい。気になったのはそいつが連れてきた子供。

六眼を通して視えたのは、心臓の位置にある不気味な呪力の塊とソレが放つ巨大な呪力。黒髪に少し暗い紅い瞳。顔は……俺の方がカッコイイが整っている方だろう。向こうも俺を見ていたらしい。不意にそいつと眼が合った。

 

……気付いたら俺はそいつに向けて術式を撃っていた。無下限呪術、その順転。これに耐えられた奴は今までで1人として居ない。賞金目当てに俺を狙ってきた馬鹿な呪詛師も、たまに出会う呪霊も。

──やってしまった。

面白そうな奴だったのに。もっと遊べば良かった。やっと買ってもらえたオモチャをすぐに壊してしまったかのような、そんな感覚。

 

術式による周囲を巻き込んだ破壊が終わり、立ち込める砂埃が晴れる。

そこには哀れにも『蒼』を受けた術師の死体が──

 

「おいおい、そんな寂しそうな顔するなよ。生きているぞ。」

 

……健在。俺の『蒼』を受けて無傷……いや、着物はボロボロか。その事実を認識した瞬間、奴から溢れ出す圧倒的な呪力。同時に広がる黒い影。

呪力強化による防御で俺の『蒼』を防ぎ切ったのか。六眼で再度視認する。広がった影は術式によるもの。そして影の中から感じる複数の気配。禪院家の者で影を扱う術式となると相伝のアレだな。自然と口角が上がる。

 

「十種影法術か。」

 

「正解だ、よく視えるというのは本当のようだ。」

 

そう答える奴には余裕がありそうだ。それもそうか、相伝の術式は有名だ。看破されることにいちいち驚いてなんていられないだろ。それは俺も同じ。

 

「……お前、名は?」

 

「明。禪院明。」

 

「知ってると思うけど、俺は五条悟。明ね、覚えとくわ。」

 

知りたかった。初めて俺の術式を耐えた奴。初めて俺を煽った奴。

初めて──思い切り遊べそうな奴。

 

「じゃあ明……遊ぼうぜ!!!!」

 

高揚する気分のまま、明に向かって突っ込む。頼むから壊れてくれるなよ?

 

 

***

 

 無限を操る五条悟と無限の呪力をもつ禪院明。唐突に始まった両者の激突は、戦場となった五条家の屋敷に壊滅的な被害を齎しながらも止まらない。

開幕で突っ込んだ悟の拳による一撃を、明は容易く受け止める。さらに続けて拳との間に発生させた『蒼』により加速した拳を放つも躱される。出来た隙を逃す明ではない。すかさず自身も強化した拳をお見舞いしようとするが──

 

ビタッ

五条悟に当たる寸前で拳は止まる。すぐに切り替え距離を置く。

 

「それが無下限呪術、止める力か。」

 

「そ、俺への攻撃は俺に近づけば近づくほどに遅くなる。……どうする?止めるか?」

 

笑いながらも問い掛けるのは五条悟。そこには若干の諦めもあった。

──あぁ、お前の攻撃も届かないのか。

やっと始められた楽しい喧嘩。確認するようなその声の返答は。

 

「……心配すんなよ、楽しくなってきたじゃないか。」

 

より強く吹き荒れる明の呪力。明から広がった影は術者の意志に従って蠢き、手印を組む。

 

「『鵺』」

 

選んだのは雷を操り、飛翔する式神。影より顕現した鵺は悟へ目掛けて飛び掛かる。突進。効かない。離れて、雷撃。どれもが五条悟には届かない。

悟の視線が鵺へと移る。鬱陶しい。自身の周りを飛び回る式神を堕とそうと術式を構えた瞬間。

 

「余所見するな、妬くだろ。」

 

「余所見するだけの余裕があんだよ!!」

 

明が肉薄する。引き絞られた拳には先程と違い、雷が込められている。明の呪力と鵺の雷撃の合わせ技。式神の能力を術者へと乗せる高等技術。術者である自分の影から生み出された式神もまた自分であるという解釈。悟の不可侵を喰い破らんと振るわれた拳は。

 

「残念。そう簡単に殴られてやんねぇよ。」

 

「いや、ここからさ──」

 

拳が止められると同時。至近距離にて解き放たれた明の影が悟へと襲い掛かった。何回も何回も。その全てが止められようとも影の連撃は止まない。

 

「大人しく待つわけねぇだろ!!」

 

『蒼』を使った高速移動により即座に離脱。無限によって滞空した悟は明を見下ろしつつも宣言する。

 

「今度はこっちの番だ!──術式順転『蒼』」

 

再び巻き起こる、無限による破滅的な引力。明の足元目掛けて放たれたそれを、跳躍し距離をとり回避しようとする明だが。

 

「跳んだな?」

 

「!」

 

目の前に現れた悟によって地面へと殴り飛ばされる。打撃によるダメージは無い。それを見越した悟は追撃のためさらに加速する。

 

「圧し潰してやるよ。」

 

地面に叩きつけた明を組み伏せ、無限を強く展開。地面と無限で明を潰しにかかる。悟を押し除けての脱出は不可能。悟と明の間には無限による不可侵がある。ならばどうするか。

呪力出力を一段上げる。莫大な呪力を自分の周囲に無差別に放出し、悟諸共地面を破壊。当然悟には不可侵に阻まれ届かないが、地面が砕けたことで自由な空間が出来た。

 

「危ないな。」

 

「どの口が言うんだか。」

 

一撃一撃がそこらの呪術師にとって必殺となり得る攻撃の応酬。それを経て互いに無傷。片や六眼による極まった呪力効率。片や呪心による無限の呪力供給。このままでは埒が明かないことは両者共に分かっている。

 

「次の一撃でとりあえずの決着としよう。」

 

「はぁ〜?もっと遊ぼうぜ〜??」

 

「次、また遊べば良いじゃないか。」

 

「……ははっ、嬉しいこと言うじゃねぇか!死んでくれるなよ!!!」

 

笑みを深めて構える両者。悟は最大出力の『蒼』を。明は指向性をもたせた全力の呪力放出に満象の高圧水流と鵺の雷撃を乗せて放つ。規格外の2人の呪力で空間が歪む。

 

「出力最大──術式順転『蒼』」

 

「──禍津生(まがつき)

 

空間ごと全てを削り取らんとする蒼い引力と漆黒の奔流が激突する。威力は完全に互角。周囲を破壊しながら、互いに一歩も引かない。

……この拮抗が終わったら、楽しい時間はもう終わり。激戦を繰り広げたというのに心に残るのは一抹の寂しさ。だが明は次があると言ってくれた。ならばそれを楽しみにするだけだ。

 

長い拮抗と共に起こるのは大きな呪力の爆発。2人の技が相殺した結果。お互いの姿を確認し、同時に微笑み──

 

「「またな。」」

 

 こうして五条悟と禪院明による「楽しい喧嘩」は幕を下ろした。後に残ったのは見る影もない五条家の屋敷の残骸とそれを見て呆然とする五条家当主。そして爆笑する直毘人の姿だった。

 

 

***

 

 帰り道。すっかり気を良くした直毘人爺と共に歩く。

 

「直毘人爺、最初から僕を悟にぶつける気だったな?」

 

「あぁ、そうだ。見たか?当主のあの呆然とした間抜け面を!傑作じゃないか!!クククク……。ウチでやったら俺の屋敷がああなるのは見えていたからな。わざわざ出向いてやったのよ。お前も楽しかっただろう?」

 

……楽しかった、とても。昨日の甚爾も、今日の悟も。どちらも直毘人爺が引き合わせてくれたようなものだ。感謝するべきだろう。

 

「直毘人爺、ありがとう。」

 

「フッ……その感謝は家への貢献で返してくれ。」

 

連日強者との戦いを経験した明。明日以降は甚爾との鍛錬もある。どんどん高まる己の力に喜びを隠せない。

……定期的に悟のとこにも遊びに行くか。次って言ったしな。

 

***

 

 五条悟と禪院明による戦い。本人達にとってはただの喧嘩かもしれないが、呪術界には衝撃が走っていた。一強だと思われていた五条悟と渡り合える術師の出現。その術師は禪院家の次期当主筆頭候補であること。その事実は五条家に大きく傾いていたバランスを禪院家にも傾かせることとなった。残された加茂家は焦燥に駆られていた。

 

 

 

 




頑張りました。技名はライブ感です。
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