無限と十種   作:うぃりあむぅ

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インフルエンザでダウンしてました。皆さんも気をつけてくださいね。
では、どうぞ。


昇華

 禪院甚爾、そして五条悟。現在の呪術界でも相当の上位に位置するであろう2人との戦いは、明にとってこれ以上ない戦闘経験となった。禪院甚爾とはこれからも修行をつけてもらうことになっており、五条悟とも次の「遊び」を約束している。

明は堪らなく嬉しかった。ここ数年はやる事が変わらなかった。ひたすらに呪心の制御と出力の向上や影の操作、式神の扱いを鍛えるだけであった。たまに家から呪霊との戦いにも駆り出されていたが、どれも歯応えが無かった。大半が呪力に怯えて逃げるか、動けなくなってしまう。立ち向かってくるやつもいたが、そういう奴らは呪力から実力差も分からないような低級の呪霊だけ。術式をまともに使うまでもない。せいぜい逃げる奴らを影で追撃する程度だった。そんな毎日も昨日で終わり。今日からは甚爾か悟のどちらかは付き合ってくれることになっている。本音としては2人を鉢合わせたかったが──

 

「五条の坊とは会いたくねぇ。」

 

甚爾はこの一点張りだった。なんでも、昔一方的に会って以降少し苦手らしい。詳しく聞こうと思ったが誤魔化された。機嫌を損ねて鍛錬を辞められても困るためその辺にしておいたが。

 

甚爾がいるときは甚爾との模擬戦と体術の指導。今度は前回と違って術式の解放も許可されている。前は全て躱されていたが……。今回はなんとしても当てる。そう意気込んで鍛錬に臨んだものの。

 

「目線でバレバレだ。気取られるな。」

 

「腰が入ってねぇ。呪力任せに拳を振るな。」

 

「包囲が甘い。こんなもんじゃすぐ抜けられるぞ。」

 

……手厳しいな。

操作した影による手数。そこに拳を交えて襲いかかるも届かない。式神も追加して包囲し畳み掛けようとするが一点突破ですぐに抜けられる。

 

「パワーとスピードは呪力による強化もあってイイ線いってるが、技術はやっぱまだまだだな。まぁ、そのための俺だ。もっと扱いてやるよ。」

 

ひたすらに攻撃を続ける。駄目だったらその都度指導が入る。その繰り返し。少しずつ、少しずつ、動きが矯正されていく。

 

「今日はここまでだ。言われた動きは忘れんなよ、次忘れてたらシバく。」

 

火照った体に一息入れながら、去っていく甚爾を見送る。……頑張ったが、結局まともに当てることは出来なかった。最後の攻防では回避ではなく迎撃を選ばせられたことを喜ぶべきか。まだまだ、僕は強くなれる。

 

 

***

 

 今日は悟が来るらしい。「前は俺ん家だったから次は明ん家が良い!」だと。直毘人爺からは大規模な戦闘行為を禁じられている。心配しなくとも、自分の家を壊すようなことはしないが……。

 

「よっ。」

 

「ちゃんと玄関から来てくれ。」

 

無限を使って目の前に来た悟。まさかいきなり僕の部屋に来るとは。

 

「何をするんだ?あの時みたいな喧嘩は駄目らしいぞ。」

 

「はー??マジかよ。つまんねぇー。」

 

あからさまに嫌そうな顔をする悟。気持ちは分かる。

 

「じゃあ今日はいっぱい話そう!俺、明のことなんも知らねぇよ。」

 

「あぁ、僕も悟のことは知っておきたい。」

 

そこから始まったのはお互いを知るための言葉の投げ合い。家ではどうなのか、普段何をしているのか。好きなことは何?嫌いなことは?両者にとって初めての同い年との対等な会話。悟は明が大飯食らいであることを知って笑い、明は悟が有り得ないほど過保護に甘やかされていることに笑った。ひとしきりお互いのことを語ったあとはやはり、呪術についての話。

 

「そうだ、悟にはちょっと見て欲しいものがあるんだ。」

 

「なんだ?」

 

「──落花の情って知ってるか?」

 

落花の情。御三家に伝わる秘伝。纏った呪力を相手の攻撃に合わせて自動で解放することで身を守る対領域の術。

 

「もちろん知ってるぞ。昔教えてもらった。」

 

「なら話が早い。この前悟と戦ったときからふと思いついたんだ。無限による不可侵の防御。それと似たようなことを落花の情で出来ないかってね。」

 

落花の情は対領域の術ではあるが、領域内の攻撃が防げる程の出力があるのであれば他の攻撃も防げる筈だ。以前、体術訓練で立ち会った剣士も今思えばあれは落花の情を転用したものだった。

 

「目指すのは落花の情の常時運用。僕に触れたものの強度や呪力量などの危険度に応じて自動的に呪力で迎撃する。常時展開にかかる呪力については僕なら無視できる。」

 

教えてもらったときの術者は動いていなかった。もしかしたら動けないという縛りによって領域にも抗えるような性能にしているのかもしれない。その事については明言していなかった。動こうとするものがいなかったのだろうか。だが僕の運用だと動けないのでは常時展開する意味がない。ここの性能は呪力量を対価に埋められるのだろうか。そうした検証も必要だ。

 

「へぇー、面白そうじゃん。もっと硬くなるつもりかよ。」

 

「単に受けるだけでもダメージはないけど衝撃はある。いちいち吹っ飛んでいては面倒だ。悟も無限をずっと使うのは疲れるんじゃないか?完成したらこちらも使ってみてはどうかな。」

 

「俺にはそもそも当たらねーから要らねえよ。無限の下位互換じゃねぇか。」

 

うーん、辛辣。まぁそれはその通りだ。当たる瞬間に迎撃するのとそもそも当たらないのとでは後者の方が良いに決まっている。良いところは……領域を会得したなら術式が焼き切れてても使えるところかな。

 

「とりあえず、悟は軽い攻撃から重い一撃までを一通り僕に当てて欲しい。今話した落花の情を試す。」

 

「なんだよ、戦っちゃダメだったんじゃねぇのか?」

 

「戦いじゃない、実験。呪術の研鑽だよ。」

 

「はっ、物は言いようだな。」

 

このあと庭がめちゃくちゃになった。

 

***

 

 時が経つのは早いものだ。もう僕も16才になった。やってたことはずっと変わらない。甚爾との模擬戦や悟と遊んだり喋ったり。甚爾との体術訓練は契約満了ということでつい最近無くなってしまった。そのまま甚爾は家を出た。なんでも結婚したんだとか。実にめでたいことではあるが会えなくなるのは少し寂しい。子供が産まれたなら見せて欲しいな。

悟はというと、今年から呪術高専に通っている。僕も来ないかと誘われたが、どうも僕たちは同じ東京校には通えないらしい。パワーバランスがどうとか。

なら伸び伸びと鍛錬出来る家の方が好都合である。

悟との実験のおかげで落花の情の常時展開も成功している。これを使って甚爾にやっと一撃喰らわせたときは爽快だった。あのときの甚爾の顔を忘れることはないだろう。

 

さて、今日は久しぶりに式神の調伏を行う。対象は大蛇、円鹿、虎葬の3体。

特に欲しいのは円鹿だ。能力は反転術式などの正の呪力の運用。調伏するだけで反転術式が使えるようになるのならば破格の式神である。また、それに伴って正の呪力を攻撃に使うことも可能になるだろう。また戦術の幅が広がると思うととても楽しみだ。最近の僕は絶好調。自らの術式に負ける気など毛頭ない。

 

「同時調伏だ。『大蛇』、『円鹿』、『虎葬』」

 

影で手印を組んで呼び出すのは3体の式神。本来は1体ずつの調伏を術者の意思で3体同時に調伏を行う荒技。ここにいるのは術者とその式神だけ。調伏の儀の禁止事項に抵触はしていない。呼び出された3体は目の前の術者を見やる。

 

「かかって来るがいい。お前たちの前にいるのは1対3を許容した無礼者だぞ?」

 

まず飛びかかったのは虎葬。巨体に似合わぬ俊敏さで明に向かって鋭い爪と牙を叩き込む。恐ろしい速さ。身体能力に特化した式神。

同時に、大蛇もまた虎葬を援護する形で明へと襲いかかる。巨体である虎葬より更に巨大。長い全長を活かして明の視界を塗り潰す。しかし。

 

ギィン

 

その攻撃が明に触れた瞬間、甲高い音と共に2体の体が吹き飛ばされる。

明は何もしていない。ただ自然体で立っていただけ。迎撃したのはその身に纏う荒ぶる呪力。御三家秘伝、落花の情。明の研鑽により、()()()()()()()()()それは2体の式神の攻撃をものともしない。

 

「お前は後ろで回復役か?円鹿ぁ!」

 

始めから狙いは円鹿。攻撃役だろう虎葬と大蛇の攻撃は落花の情の迎撃で簡単に対処出来ることも今の一撃で分かった。ならば厄介な回復役を最初に潰す!

 

接近しながら変形させた影を伸ばし円鹿を攻撃する。同時に鵺と満象を呼び出し、追いつこうとする2体の相手をさせることも忘れない。僕の呪力による強化も存分に施している。押し負けることはないだろう。

 

「まずは1体……!!」

 

だが円鹿は健在だった。確実に僕の影は円鹿を貫き、裂き、潰した筈。

 

「僕の影を中和したな!!」

 

円鹿は僕の影に流れた呪力を中和して見せたのだ。そうして攻撃を無効化した円鹿は逃げるのは無理だと悟ったのか真っ向から向かってくる。ならば直接殴り殺すしかない。

 

円鹿の突進を余裕をもって受け止める。そして触れた瞬間、中和されるより速く落花の情が発動。仰け反った円鹿へと拳の連撃を叩き込む。中和されかねない鵺の雷撃などによる強化は不要。ただひたすらに、動かなくなるまで。

 

やがて円鹿は動かなくなり、すぐに消失した。これで1体。あとは虎葬と大蛇をそれぞれ鵺、満象と共に叩くだけだ。消化試合だな。

 

……これで調伏した式神は9体。いよいよ最後の式神か。

 

 

 

十種影法術の式神完全調伏まで──残り1体。




前話辺りから場面転換の*とか使ってみてます。小説の投稿初めてなんでその辺の感想も貰えると参考になります。
虎葬の能力は完全に想像。ここでは身体能力全振りの式神ってことで。

次回、対魔虚羅(予定)
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