無限と十種   作:うぃりあむぅ

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予定ないなったんで出せました。短めです。


完全調伏者

 明の領域、無明影呪界。

 展開した領域の内部を十種影法術の影で満たす。影には酸素も、浮力も、抗力もない、永遠に沈み続ける漆黒の空間。引き摺り込まれた者は肉体に依存しない移動手段が無ければ自由に動くことすら出来ない。

 

更に、領域内では明の式神に関する制限の一切が無くなっている。通常時は使えない脱兎の合成、憑依の解禁。同時に顕現可能な式神の種類の無制限化。敵対者には重い行動の制限を、自身には領域による能力向上とより強力になった式神を。術者に圧倒的に優位な空間の形成。それが明の領域。

 

引き摺り込まれた魔虚羅は領域に適応するまでの間、満足に動けない状態で必中効果が付与された明とその式神たちの攻撃を捌かなければならない。

 

……絶対に自分が勝てる空間。いいね、領域はこういうものじゃないと。無事に領域の構築と展開には成功したが……展開速度は今後の課題だな。あれだけ距離を空けても間に合ったのはギリギリだった。呪術戦の極致と呼ばれているだけはある。さてと。

 

「『影融合』脱兎+鵺+虎葬+大蛇、脱兎+貫牛+玉犬+満象」

 

「『影降ろし』脱兎+虎葬+貫牛+満象」

 

解禁された脱兎の使用。生み出された合成式神と明は脱兎の特性で無数に分身。必中効果をもって魔虚羅へと一斉に襲い掛かる。

 

「初見の技にて一撃で屠る。要は魔虚羅を欠片も残さず吹き飛ばすってことだ。」

 

今の魔虚羅は調伏のために呼び出された状態。僕のように破壊を回避する技術をもった術者が操っている訳じゃない。魔虚羅が適応しているのは起き上がる前の僕の呪力だ。今の僕の呪力の方が上。

 

魔虚羅はなんとか僕と式神たちの攻撃を受け続けている。どれだけ硬いんだよ。ここで倒さなければ更に適応されて領域を凌がれる。そうなったら領域展開後に術式が焼き切れた僕は詰みだろう。

 

「──宣言する。この一撃の後、僕の領域は崩壊。本日中は領域の再度展開を禁ずる。」

 

縛りの設定とその宣言。内容は一撃に賭けた不退の意志。凌がれたら次が無いという状況を理解した上でのこの縛りは絶大な効力を発揮する。

 

悟との戦いで撃ったような指向性を持たせた呪力の奔流。そこに鵺、満象による雷と激流。更に貫牛の距離に応じて威力が増加する特性を付与。確実に葬る。圧縮、圧縮。妥協はするな。

 

高まる呪力に魔虚羅が気付く。自分を一撃で破壊し得る攻撃。阻止に動くも。

 

……もう遅い。

 

放たれるのは破滅の奔流。

 

「────僕に、従え。」

 

解放された呪力の奔流は全てを巻き込み魔虚羅へと突き進む。魔虚羅も負けじと全呪力を退魔の剣に込めて迎撃するが、拮抗は一瞬。歴代で初めて、自身を正面から打ち破る術者の出現。魔虚羅が感じたものは、果たして。

 

明の領域が崩壊する。放った呪力の余波は魔虚羅を吹き飛ばしてなお余りあるものだった。恐ろしい規模の破壊の中心。ドロリと影に溶けるのは魔虚羅の方陣。立っていたのは、禪院明。

 

──八握剣 異戒神将魔虚羅、調伏完了。

 

***

 

 鵺に乗って家に戻った明を迎えたのは、当主である禪院直毘人と明の料理を担当する女中たちだった。鵺から降りた明に直毘人が歩み寄る。

 

「……調伏したんだな?」

 

「あぁ、苦労した。死にかけたよ。」

 

「見れば分かる。よくやった。女中共に食事を用意させてある。どうだ?久々に2人で飯にしようではないか。」

 

「ふふふ、もちろん。腹が減って仕方がない。」

 

直毘人爺の部屋に入って用意されていたのは一面の料理。聞けば、僕が調伏に向かってからずっと準備していたらしい。基本的に和食ばかりのウチではあるが、最近は僕が頼んで色んな種類の料理を作って貰っている。非術師たちの食事処を参考に色々と研究しているのだとか。

 

料理を楽しみながら、直毘人爺に調伏中のことについて話をした。自分と殴り合えるだけのフィジカルにこちらに合わせて適応する能力。そして死にかけたことで呪力の核心を掴み、反転術式を習得したこと。そこから黒閃を決め、領域展開にまで辿り着いたことまで。直毘人爺は笑いながらも最後まで話を聞いてくれた。

 

「ガハハハ、まるでアニメのような展開だなぁ!ヒック」

 

「飲み過ぎじゃないか?」

 

「何を言う!歴代初の十種影法術の完全調伏者が出たんだ!!飲まないわけがらいだろうが!!!ウィ」

 

うっわ。

 

「術師の成長曲線は一定ではない……よく言ったものよ。反転術式に関しては円鹿がおるから別に覚えなくても大丈夫だと思っていたが……領域まで覚えてくるとはなぁ!」

 

「もう酒は持ってこなくて良いぞー。あ、飯はどんどんくれ。」

 

まぁ、僕も気分が良いことは確かだ。これで調伏は全て完了。魔虚羅の使い方とかはこれからも考えるつもりだが、これで術式については全てのパーツが揃ったと言って良い。長かった鍛錬が一つ身を結んだということだ。

……今日くらいは死ぬほど飲み食いしても良いだろ。*1

 

 

日が暮れてなお、直毘人の笑い声と食器の音は止まなかった──

 

 

***

 

──呪術総監部より通達。

 

禪院家の保有する山々より、強大な呪力を観測。

残された残穢、そして現当主禪院直毘人からの事情聴取により、十種影法術の使い手である同家次期当主禪院明による式神の調伏だと判明。

調伏過程の戦闘による破壊規模、歴代初の十種影法術全式神の完全調伏者。

加えてその身に宿す呪力量から、単独での国家転覆が可能であると判断。

 

禪院明を────特級術師に認定する。

*1
いつもしてます




総監部ってこんな感じで良いのだろうか……

次はなんか他者視点とか閑話挟んでやっと原作入ります!
長かった〜
皆さんの感想、評価に凄い助けられてます。今後もよろしくお願いします。
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