クロスボーンガンダムが大好きだった少年の話   作:海野守葛

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今回ちょっと不快係数高いかもしれないです。


彼のように

部室の扉を荒々しく叩き、勢いよく開けて入ってきたのは金髪にピアスを付けた、いかにもガラの悪そうな男だった。

その後ろには、同じくガラの悪そうな生徒が数人ほど立っていた。

その男を見て、サトノさんは身構える。

 

「よぉ、サトノ姫。今日も相変わらず麗しいことで」

 

「ウラミくん……」

 

「今日はあの女もいないのか。ヘヘ、俺にもチャンスが回ってきたな」

 

ウラミと呼ばれた男は、舌舐めずりしてからサトノさんを見た後、部室にいた僕に気づいたようだった。

 

「……ん? なんだぁ、こいつ。見ねぇ顔だな」

 

ウラミは僕を睨みつける。

そして、ため息をついた後、僕に近づき、僕と肩を組んだ。

ウラミの香水の匂いが思った以上にキツく、僕は顔をしかめる。

 

「お前サトノ姫目当てに入った新入部員か? なら、やめとけやめとけ。この部活はもうじき潰れて、オレたちガンプラバトル部に統合されるんだからよ」

と言った後、勝手に組んでいた肩を外しキャハハハと下品に笑った。

 

「やめてください! クチノキ君はそんなのじゃありません」

とサトノさんは声を荒らげた。

 

「サトノさん。この人は誰?」

 

「ガンプラバトル部の部員のウラミ・ヤスオ君です。こうやって、私をガンプラバトル部へ勧誘しに来るんです」

 

サトノさんは顔を伏せて言った。

 

「そうそう。サトノ姫もこんな部員のいない部活なんか辞めちまって、オレたちの部活に来いよ。みんなサトノ姫のことを可愛がってくれますヨ。なぁ、お前ら」

 

ウラミが後ろの部員たちに問いかけると、後ろの部員たちも下衆な笑いを浮かべた。

 

「サトノ姫もこんな部員もいない、顧問もいない、こんな部活なんかの部長をしていて何が楽しいのやら……オレには全く分からないぜ」

 

「それはあなた方が私達の活動を妨害してくるからでしょう! せっかく入ってくれた部員の方も3日と経たず辞めてしまったり、顧問の先生も辞めてしまったのも、あなた方が関わっているのを私は知っています」

 

サトノさんはウラミを強く睨みつけながら言った。

 

サトノさんの人気に反して、部員が全く少ないのにも何か訳があるとは思っていたが、まさか他の部活から圧力をかけられていたとは思わなかった。

通りで部員が少ないわけだ。

 

サトノさんに睨みつけられたウラミは「おぉ、怖い怖い」とおどけた後、

「でも、オレたちがやったって証拠はあるのか? まぁ、サトノ姫に近づく不届き者を影で成敗していたなんて話は出てくるかもしれないがな」

と下品な笑い声を発した。

 

その後、ウラミは急に気持ち悪いくらいの笑顔になった。

 

「この学校にはさぁ……模型部とガンプラバトル部があるじゃねぇか。でも、ガンプラを扱う部活2つはいらないんだよ。どちらか一方が残ればいい……そうは思わないか、サトノ姫?」

と言った後、ウラミは唐突に部室の棚を強く蹴った。

 

衝撃を受けた棚はガンッと大きな音を立てる。

飾られていたガンプラたちが蹴られた衝撃によってグラグラと揺れる。

 

「何をするんですか!? やめてください!」

とサトノさんはウラミに向かって叫んだ。

 

ウラミはサトノさんの悲痛な表情がたまらないのか、気色の悪い笑みを浮かべていた。

その後、ウラミはサトノさんに向かって、このようなことを言った。

 

「なぁ、サトノ姫。オレと賭けをしないか?」

 

「賭け?」

 

サトノさんはウラミに対して警戒心を解かずに聞き返す。

 

「あぁ、そうだ。前も話したろ? 模型部とオレでタイマンのガンプラバトルをして、もし模型部が勝ったらオレたちは今後一切サトノ姫にちょっかいはださない。約束するぜ」

 

「もし私が負けたら?」

 

「その時は、模型部を辞めてガンプラバトル部に入ってもらう。あと、オレと付き合ってもらうぜぇ」

 

ウラミはサトノさんの体を蛇のような視線で下から上に舐め回すように見た後、気色の悪い笑みを浮かべていた。

後ろの取り巻きは「ずるいっすよウラミさん」と言いながら笑っていた。

 

サトノさんは、しばらく考え込んでいたようだが、覚悟を決めたのかウラミをまっすぐ見つめ、

「分かりました、お受けします」

と凛とした表情で言った。

 

「そんな、絶対やめたほうがいいよ! 第一、勝てたとして約束を守ってくれるかどうかすら怪しいよ。あまりにも危険すぎる」

僕は叫ぶ。

 

サトノさんは、そんな僕を見つめた後ニコッと笑って

「……私が戦ったら厳しいかもしれません。だけど、今日は勝てる可能性があります」

と言った。

 

そういった後、サトノさんは部室に置かれていたキャビネットから鍵付きの箱を取り出した。

鍵を解除し、中から出てきたのは一体のガンプラだった。

綺麗な桜色と白のコントラストのそのガンプラは高い完成度を誇っていた。

 

そのガンプラを僕の前に持ってきたサトノさんは真剣な顔で僕に、

「これはルブリス・グレア。これを使って私の代わりに戦っていただけませんか。……どうか、お願いします」

と言って、僕に頭を下げた。

 

「……ごめん、それは出来ないんだ」

 

僕は申し訳なさげに彼女に対して言う。

 

「何故ですか……?」

 

サトノさんは食い下がるように僕に尋ねる。

 

「僕はガンダムタイプのガンプラの操縦は出来ないんだ」

 

「だったら、他のガンプラを用意しますので……」

 

サトノさんは戸棚から他のガンプラを持ってこようとするが、僕はそれを手で静止する。

 

「……無理なんだ」

 

「何故ですか?」

 

「……僕、自分の作ったガンプラじゃないと上手く戦えないんだ。それにガンプラバトルを辞めて結構経つし、ガンプラも……ほとんど捨てた」

 

僕がそう言うと、サトノさんは絶望に突き落とされたような表情をしていた。

後ろでガンプラバトル部の部員たちの甲高い笑い声が聞こえた。

 

「キャハハハハハ……ハァハァ……お前面白すぎるだろ、笑いすぎて腹筋死ぬかと思ったぞ。サトノ姫もつれてきたのが、こんな用心棒で可哀想だなぁ」

 

残念ながら、ウラミの言うことは正しい。せっかく連れてきたのが、こんな役立たずでサトノさんには申し訳なかった。

 

サトノさんは、僕の方を見て悲しそうな顔をしていたが、すぐに作ったような笑みを浮かべ、

「そうですよね……。元々私が無理矢理こんな話に付き合わせようとしたんです。ご迷惑をおかけして、すみませんでした」

と頭を下げた。

 

「…………サトノさんは、この後どうするの?」

 

「……引き受けたからには逃げません。少しでもこの部活を存続させることの出来る可能性があるのなら私は諦めたくないんです」

 

と微笑みながら答えた。

しかし、僕には彼女が今にも泣きだしそうに見えた。

 

「これは模型部とガンプラバトル部の問題だ。部外者……いや臆病者は出てけよ」

 

「…………」

 

ウラミに言われた通り、僕は部室を出ようとする。

目の前では、ウラミの取り巻きたちが僕をバカにするようにクスクスと笑っていた。

これはガンプラバトル部と模型部の問題だ。

部外者が首を突っ込んでいい話ではない。

 

後ろは見ないのではなく、見れなかった。

サトノさんに申し訳無さすぎるからだ。

 

そうして、模型部の部室を後にしようとしていたところ――。

 

――もし、僕じゃなくてトビア・アロナクスだったら、この状況をどう対処するだろうか。

 

そんな風な考えが脳裏に浮かび、足を止める。

 

――少なくとも、彼なら僕のように逃げないし、あの金髪に立ち向かうだろう。

 

それに――。

 

女の子が悲しんでいるのに、それを見てみないふりをするようなやつに昔の僕はなりたかっただろうか?

 

違う、僕は――。

 

 

 

 

 

――僕はトビア・アロナクスみたいなヒーローになりたかったんだ。

 

足を完全に止め、ウラミの方に向き直る。

サトノさんもウラミも不思議そうにこちらを見ている。

 

「やっぱ、辞めた」

 

二人とも何の事を言っているのか分からないようだった。

 

「サトノさんの代わりに僕が受けるよ。そのバトル」

そう言い終わった後、サトノさんの顔がぱぁっと明るくなった。

 

「上等じゃねぇか。ボコボコにしてやるよ」

ウラミは拳をポキポキと鳴らしながら、挑発するようにこちらに言った。

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