「クッ……」
カラミティの蹴りにより、フリントは勢いよく吹き飛ばされる。持っていたビーム・ザンバーは蹴られたときに手放してしまい、手元にはバスターガン一丁のみしかない。一刻も早く体勢を建て直さなくてはいけないが、この絶好の機会をウラミが見逃すはずもない。
「これでも喰らいやがれぇ!」
ウラミはカラミティの持つ全ての射撃武装をフリントに向けて発射した。
ビームとバズーカの弾幕がフリントに襲いかかる。
フリントに放たれたビームの織りなす綺麗な弾幕を見て、僕は呑気にも綺麗だなぁなんて感想を抱いた。一発でも直撃してしまえば、試合の勝敗を大きく分かつことになるというのに。負けてしまえばサトノさんとの約束も守れなくなってしまう。絶対にそれだけは避けないといけない。
でも――。
それと同時に、僕はこう思ってしまった。
――やっぱり、ガンプラバトルは楽しいなぁ。
フリントの姿勢を急いで立て直し、スラスターを吹かせ、圧倒的な機動力で弾幕を全て回避した。
「あの体勢から持ち直しやがっただと!? ……こいつ化け物かァ!?」
ウラミの驚いた声が聞こえる。フリントの加速は落とさず、更に加速する。そして、フリントを先程同様、カラミティに急接近させる。
「はっ、バカが! 二度も同じような攻撃が通じるかよ!」
カラミティはフリントに対して迎撃の構えを取る。僕はフリントを限界まで加速させる。
「そんなに加速をかけたら機体のコントロールも出来ねぇし、機体が耐えられずに自壊するぞ!?」
ウラミの言う通り、コンソール画面には警告が出ていた。
――しかし、そんなことは関係ない。
「行けるよね、フリント!」
カラミティがフリントの攻撃園内に入ったのを確認し、フリントの右手のブランド・マーカーを起動する。ビームスパイクが両手に形成され、そのままの勢いでカラミティへ突撃する。カラミティはフリントの攻撃に対応しようとするが、フリントの動きについて来れていない。
「はっ……速い……」
そのまま、カラミティの右腕をブランド・マーカーで殴り飛ばす。その後、フリントの腰部フロントスカートに装備されているシザー・アンカーを展開し、カラミティを掴む。
「これで!」
掴んだカラミティをシザー・アンカーで拘束し、そのまま振り回す。
振り回されたカラミティは、近くに浮かんでいた大きな岩に衝突した。
岩に激突したカラミティの元に駆け寄る。そして、カラミティの残った左手をフリントの右腕で抑え、カラミティのコクピット部分スレスレの位置で左手に持ったビームサーベルを寸止めする。
「僕の勝ち……でいい?」
カラミティはブランド・マーカーによる攻撃で右手を失っている上、岩に激突したときの衝撃で、いたるところから火花が出ていた。対して、僕のフリントはカラミティに蹴られたときのダメージが少しあるくらいで、ほぼ無傷だった。さらにABCマントもまだ残っている。このまま戦ってもカラミティの勝機は薄いだろう。
そう判断した後、僕はウラミの反応を待った。
「…………んなよ」
「?」
「調子に乗んなって言ってんだよ!」
カラミティは左手のケーファー・ツヴァイでフリントを勢いよく薙ぎ払い、拘束を解いた。
「このまま俺が負けたら俺のメンツが立たねぇんだよ! 大人しく死ね!」
そう言って、胸部のスキュラをフリントに発射する。
しかし、フリントはそれを難なく回避する。
カラミティの攻撃は先程の激突のダメージのせいかチャージ時間も長く、威力も落ちていた。だから、回避するのは容易だった。
「攻撃のスピードも威力落ちてるよ。このまま長引くと機体のダメージが蓄積して治すのに時間かかるよ?」
僕はカラミティの攻撃を回避しながらウラミに語りかける。
「うるせぇとっとと死ね!」
しかし、ウラミは僕の話を聞かずフリントに向かって攻撃を続ける。
「ガンプラが壊れるなんてどうでもいいんだよ。使えなくなったら捨てる……それだけだろ? 使えなくなったら捨てて新しいのを使えばいいんだよ! ……まぁ作るのは俺じゃねぇけどな」
「…………」
ウラミの発言に僕の心が心底冷え込んでいくのを感じる。
――なんでこんなやつがガンダムを操っているんだろう。
「ガンダムってのは選ばれた人しか使っちゃいけないって僕は思ってるんだ。別に僕が心のなかで思ってるだけで、他人に強制する気はさらさらないけど」
「お前何言っ……」
「いいから黙っててよ。まぁ、要は君がとんでもないクズだってことを言いたいだけだからさ」
「調子に乗りやがって!」
カラミティのケーファー・ツヴァイの刺突攻撃を回避し、ビームサーベルで残りの腕も切り落とす。両腕を失ったカラミティの武装は残すところ胸部のスキュラのみになった。
「最後の警告――降参して」
僕は自分でも驚くほどに冷たい声で、ウラミに告げる。
「ふざけるなァァァァァァ」
カラミティはスキュラを撃とうとするが、当然そんなことはさせない。
フリントの両手にビームサーベルを構え、カラミティの胴体をX状に切り裂いた。
「お前なんかにこのオレが……」
「別にこれからもガンプラバトルをするなとは言わないけど、サトノさんみたいな本気でそれが好きな人の邪魔をするのは今後一切やめてね」
僕がそう言い切ると同時に、切り裂かれたカラミティは爆発四散した。
『BATTLE END』
バトルシステムから終了の音声が流れ、ガンプラバトルは終了した。プラフスキー粒子により構成された諸々はバトル終了と同時に消えた。
「お疲れ様、フリント」
僕はGPベースからフリントを回収し、戦ってくれたフリントに対し礼を言った。
「クチノキ君!」
サトノさんが僕のもとに駆け寄ってきた。
――そして、サトノさんは僕に抱きついてきた。
「え?」
僕の体に女の子特有の柔らかい感触が当たっており、サトノさんからは、ふわっとした甘いいい匂いがした。
「ちょっと……!? サトノさん!?」
僕は茹でたタコのように真っ赤な顔で抱きついてきたサトノさんに言った。正直、ずっとこうやっていて欲しい気持ちもない訳では無いが、外面的にかなりマズイ。
「私、とっても心配したんですよ!」
サトノさんの目は涙目で、目が赤くなっていた。
「心配かけてごめん……。でも、ちゃんと勝ったよ」
サトノさんは流れた涙を拭きながら、「はい!」と満面の笑みで答えた。
ちょこっと機体解説
▪フリント(クチノキ使用)
クロスボーンガンダムの簡易生産型。武装はオリジナルとほぼ同じで、リオの使うフリントは少しカスタマイズされている。ABCマントや足下のヒートダガー、フロントスカート内部のシザー・アンカーが追加されている。
ほぼX-1。