あと、読み返しててカラミティのTPS装甲ってシザー・アンカーで掴んで岩にぶつけるみたいな攻撃も衝撃以外は無効化出来るんじゃ……って思ったんですけど、ウラミのカラミティはそこまで再現してなかったってことで。
勝負も終わり、僕はウラミの方を見る。
ウラミを顔を真っ赤にして鬼のような形相でこちらを睨んでいたが、僕に背を向けそのまま部屋を退出するつもりのようだった。
「待ってよ。サトノさんに謝るのが礼儀ってもんじゃないの?」
僕が詰問するように彼に問うが、彼は僕をキッと睨みつけるのみにとどまり無言で部屋を出ていく。
「待ってくださいよ、ウラミさん」
ウラミの取り巻き達も慌ててウラミの後を追い、部屋には僕とサトノさんのみとなった。
「あいつ……」
「いいんです、クチノキ君。私はクチノキ君が勝ってくれただけでとても嬉しいですから」
サトノさんは僕に向かって微笑む。
外を見ると日が沈みかけており、あたりも暗くなり始めていた。
「あっ、もうこんな時間。私もそろそろ帰りますね」
サトノさんは華奢な腕に着けた可愛らしい腕時計を見ながら言った。
「では、クチノキ君今日は本当にありがとうございました」
「うん、サトノさんも気をつけて帰ってね」
「はい! それでは、また」
もう僕の出番は終わった。
明日から彼女と話すこともないだろう――そう思うと、少し寂しいような気がしたが元々知り合いでも何でもなかったのだ。今日の関係から元の関係に戻るだけ、それだけだ。
――と思っていた僕は甘かった。
「クチノキ君! 私と一緒に模型部で活動してください!」
ウラミとの対決の翌日、何故か僕は放課後の教室で前日と同じようにサトノさんに迫られていた。
「落ち着いてサトノさん……」
僕がたしなめると、サトノさんは「すみません……」と恥ずかしそうに顔を赤らめた後、コホンと咳払いをした。
「クチノキ君! 模型部に入っていただけませんか!」
「ウラミも倒したし、今後ガンプラバトル部からの妨害も無いんでしょ? なら僕がいなくても大丈夫でしょ」
僕がそう言うと、サトノさんはモジモジしながら「それがですね……」と恥ずかし気に言った。
「模型部は部員も顧問も足りてないので廃部寸前なのは変わらないんです」
サトノさんは悲しげにため息をつく。
「でも、今後は妨害もないわけだし部員も増えるだろうし、顧問も誰かしら着くよ。それに、ウラミだって僕にリベンジすることはあってもサトノさんには手は出さないと思うし。だから、僕がいなくても大丈夫だよ」
「クチノキ君じゃないとダメなんです!」
サトノさんは叫ぶ。
「昨日の戦いで私すごく感激したんです。私あんまりガンプラバトルは好きじゃなかったんですけど、クチノキ君の戦いを見て私すごくワクワクして、自分もこれからもっとやってみたいって思うようになったんです」
「……サトノさんは僕のことを買いかぶり過ぎだよ」
「違います!」
サトノさんは机をバンッと両手で叩く。サトノさんの行動に僕は思わず驚いてしまう。廊下の取り巻き達がこちらをただでさえ、こちれを覗いているのだから心臓に悪い。
「クチノキ君は自分のことを過小評価しすぎです。クチノキ君が先日倒したウラミくんだって、この学校の中――ガンプラバトル部内でも上から数えたほうが早いくらい強いんですよ? だからクチノキ君はもっと自分のことを褒めていいと思います」
サトノさんの熱弁に僕は気圧されてしまう。自分のことをこれでもかというくらい褒めていて、とても恥ずかしい。自分の顔がかぁっと熱くなるのを感じる。
「でも、僕はガンプラバトルを辞めてから、もうあんまり興味がないと言うか……」
「昨日あんなに楽しそうにしていたのに?」
サトノさんの言ったことに対して、僕は言葉が詰まってしまう。
――いくら考えても彼女に返す言葉が見つからない。先日のウラミ戦は久々のガンプラバトルということもあるが、とても楽しかった。
「あんなに楽しそうにしているのに、もう興味がないなんて嘘ですよね。昨日のガンプラバトルの動きだって、ガンプラとガンプラバトルが好きじゃないと出来ないですよ。クチノキ君はきっとまたガンプラバトルをしたいんです。でも、何かが心のなかで引っかかってるんですよね」
サトノさんは僕の目を通して心を覗き見るかのように言ってくる。
「私はクチノキ君がその心の取っ掛かりをいつか取れるように手助けしたいんです。先日、私は助けてもらいました。だから次は私があなたに返す番です」
「別に僕は見返りを求めて引き受けたわけじゃないよ」
「分かっています。そこがクチノキ君のいいところなんだと思います」
サトノさんは、まるで太陽のようににっこりと微笑む。やっぱり、彼女は笑っている顔が素敵だなと思う。
「それでは、行きましょう。私、昨日のクチノキ君が持ってきたガンプラ、もっとじっくり見てみたいんです」
サトノさんは僕に手を差し伸べる。僕は手を伸ばそうとするが、あと一歩のところで決心がつかずにサトノさんの手をとることが出来ない。きっとサトノさんと一緒にいたら色々楽しいこともあるだろうし、僕もまたガンプラバトルを普通にできるようになるかもしれない。
――でも、一步踏み出すのがすごく怖い。
しかし、サトノさんは途中まで伸ばした僕の手を引っ張るように掴んでニコっと笑った。サトノさんの手はとても柔らかくてドキッとしてしまう。
半開きのカーテンから差し込む陽の光がサトノさんに当たり、それがまるで女神様のように僕には見えた。
「さぁ、クチノキ君行きましょう」
そう言って、彼女は僕の手を引っ張って模型部まで歩き出した。
ガンプラバトルするの次の次くらいかも