よう実RTA 決闘者チャート   作:KKKK

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裏13

 

 

 

 

 

 

 

 龍園SIDE

 

 

 

 

 

 二年生の開始と同時に本剛はさっそく動き出しやがったな。校内放送で億単位のポイントをぶら下げて魚が食い掛るのを待ってやがる。

 

 それはまぁいい、あの脳筋ゴリラの宝泉が早速釣られて病院送りにされたらしいからな。ゴリラの相手はゴリラに任せるに限るということだ。

 

 当然ながら俺たちのクラスも遅れる訳にはいかない。本剛がやろうとしていることはおおよそ察しているが、こっちの都合や考えすら計算済みらしい。

 

 まぁいいだろう、乗せられはするが踊らされるつもりはねえ。あくまで俺は俺の都合でポイントを稼ぐだけだ。例えそれが本剛の計算の中であったとしてもそれは変わらない。

 

「随分とスッキリとした顔をしているではないか。綾小路に敗北して一皮剥けたようだな」

 

「はッ、うるせえよ。その何もかもお見通しって面を止めやがれ」

 

「止めるもなにもない、俺は常に先を見ているのでな」

 

「相変わらずクソ上から目線だなテメエは」

 

 もうコイツの言動には慣れてしまった。恐ろしいことだが。

 

「それよりも龍園、貴様のクラスのポイントはこちらに合流させんのか?」

 

「やる訳ねえだろうが、わかって訊いてんだろう……テメエが大ポカやらかした瞬間に何もかもが吹っ飛ぶんだぞ。保険としてこっちでポイントを抱えとくのは当然だ」

 

 坂柳や一之瀬はこいつを信頼しているらしいが、俺はそこまでこいつにベットするつもりはねえ。あくまで利用するだけだ。

 

「フッ、そうか、それもまたいいだろう」

 

「全て計算済みってか?」

 

「当然だ。俺は全てを知るが故に全てに結論を出せる」

 

「クソナルシストが、さっさと死ねよ」

 

 俺は俺だ、こいつの都合ではなく俺の都合でポイントを集める。こいつがやろうとしていることに乗っかるのも俺の都合だ。

 

 一息吐ける時がくれば、こいつを潰すのも悪くはない。その時まではせいぜい利用してやるよ。

 

 俺と本剛の視線は格技場の真ん中に向けられる。そこではアルベルトの奴が暴れまわっているのが見えた。ここまで随分と働かされたからそろそろ休ませるべきだろうな。

 

 本剛が億単位のポイントをぶらさげた結果、一年生どもを釣りあげるのは楽だった。まだクラスもまとまっていない段階でそんな餌を見せつければ足並みも揃わないまま引きずり出される訳だから話も早え。

 

 後はまとまりもなければ気楽な考えのままノコノコ出て来た連中を潰すだけ。もう宝泉クラスは餌食になったので残りの一年生も時間の問題だろう。

 

 俺たちのクラスは一年Cクラスの相手をしている。本剛のポイントを勝手に餌にして釣り出した訳だな。

 

 一年Cクラスの女子は主に伊吹が、男子はアルベルトに処理させる。覚悟も意思も団結力もない連中なのでとんとん拍子に処理できていったが……あの一年は多少はやるようだな。

 

「ほう、アルベルトを倒したか、一年生にもまだ使える奴がいるじゃねえか」

 

「あれは確か宇都宮だったか……OAAでは運動能力がA評価だったな」

 

 アルベルトが連戦に次ぐ連戦で疲労していたことを差し引いても動けるな。仕方がねえか、さも当たり前のように援軍としてやってきたこいつを使うとしよう。つまらん見栄で勝ち星を零すほど間抜けは晒せねえ。

 

「いってこい本剛、負けたら殺すぞ」

 

「ふむ、俺が勝てばポイントはこちらに寄こすのだろう?」

 

「半分だけだ……俺は保険を手放すつもりはねえ」

 

「あぁ、それでいい」

 

 薄く笑った本剛はアルベルトの代わりに格技場に立つ。生意気な一年生を処理する為に。

 

 宇都宮とか言ったか、かなり動けるようだがまだ足りねえな。少なくとも本剛は超えられないだろう。

 

 当たり前のように援軍に来て当たり前のように協力してやがる。だがアイツの都合も思惑も全て利用して俺は俺の目標を達成するだけだ。

 

 その先で、全ての憂いがなくなったその時は、アイツに挑んでやるとしよう。

 

 綾小路も、本剛も、挑み続けるだけの価値がある……俺にとってはそれが重要だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宇都宮SIDE

 

 

 

 

 

 

 この学校に入学してすぐに学校側からクラスポイントやプライベートポイント、そして特別試験などが行われることを告知された。クラスポイントを高めてAクラスとなり、恩恵を受けられるのはAクラスだけ。

 

 そんな説明に俺たち一年生は大いに困惑した。この学校に来れば進路も就職も思いのままだという誘い文句だったのに、背中を刺されたような気分である。

 

 そしてすぐさま特別試験が告知されたことで、困惑や混乱を引きずりながらも走り出すしかなかった。

 

 二年生とコンビを組んでテストを受ける特別試験。やはり学力の高い先輩と組むのがセオリーなのだろう。そう考えてOAAを確認していくと、二年Aクラスが異常な成績をしていることがわかる。

 

 そのクラスに在籍しているほとんどの生徒がOAAの学力評価でAかA+を記録しているからだ。これだけ学力優秀なクラスと組めるならば安心だろうと考えたのは俺だけではなかったと思う。

 

 さてどうやって交渉しようか、そんなことを漠然と考えていると、こっちの都合も一年生の困惑なども吹き飛ばすあの校内放送が響いたのだ。

 

 俺に勝てば一億、要約するとそんな感じの校内放送は、ただでさえ入学時の説明とクラス闘争や特別試験で右往左往している一年生たちを更なる混乱の渦に叩き込んだことだろう。

 

 勝てば一億、あまりにも大きすぎる餌に俺たちCクラスも特別試験のことを忘れて混乱した。

 

 調べてみると二年の本剛という男は、既に三年生も同学年も壊滅させてポイントを一点に集めて事実上この学園を支配しているらしい。二年生はもう一つの軍隊の様に動いており、他のクラスも次々と宣戦布告を受けていく。

 

 まだ入学して一週間だ。クラスポイントだとか、特別試験だとか、クラス闘争だとか、そういうのに混乱している段階だというのに一億をぶらさげてくるとか完全に頭がおかしい。

 

 だが、その衝撃は大きかった……大きすぎた。

 

 

「いやらしいよね二年の先輩たち……この時期にあんなことされたら、絶対に多数決になるよ」

 

「お前は確か……椿だったか?」

 

 同じクラスの椿桜子が呆れたように溜息を吐く。格技場で行われている柔道競技の現状を見ればそうもなるだろう。

 

 男子の多くは山田アルベルトとかいう巨漢の先輩に蹂躙されて、女子は伊吹とかいう先輩に転がされていく。ハッキリ言って戦況は不利そのものだ。

 

 柔道の勝ち抜き戦というルールでぶつかり合う。単純ではあるがだからこそ一つ越えられない壁を用意すれば一気に形勢は傾く……俺たちはあの二人の先輩に封殺されていた。

 

「君は宇都宮君だっけ? どう、勝てそう?」

 

「どうだろうな、あの先輩は強いが……そろそろ疲労も濃くなってきているから、次は俺が出ようと思っている」

 

「そう、自信があるのなら良かった」

 

「椿は多数決で反対に回っていたな。こうなることがわかっていたのか?」

 

「別にそういう訳じゃなかったけど、明らかに二年生たちは初心者狩りをしようとしてるなとは思ってたかな……まだ私たちは入学して一週間で、しかも複雑な学校のルールや特別試験を聞かされて困惑している時に一億だよ。いやらしいよ本当に」

 

 俺たちのクラスは二年生に挑戦するか否かをクラスで話し合い、最終的には多数決を取ることになり、挑むという方針になった……いや、なってしまった。

 

 今思えば二年生の計算通りなんだろう。まだ入学して一週間でクラスの方針を完全に掌握できるリーダーなんて存在しない。何かを決めるときは多数決になるのが自然で、そして一億という餌は多くの生徒を釣りあげるには十分なんだろう。

 

 そして結果がこれである……蹂躙だ。

 

「まぁ救いなのは、一年生の全部のクラスがまんまと取り上げられた点かな。少なくとも全部のクラスが0ポイントになるだろうから差は生まれないだろうし……二年生の戦力が把握できたこと、そしてこの学校が頭がおかしいってことを実感できた勉強代だと思うしかないよ」

 

「勉強代か……悪いが俺はまだ諦めたつもりはない。ここから全員を倒せば俺たちはクラスポイントも守れるし、一億も手に入る」

 

「できるの?」

 

「あの山田とかいう先輩さえ倒せれば、活路は開ける」

 

「そっか、頑張って」

 

「お前はやらないのか?」

 

「冗談よしてよ。あの伊吹とかいう先輩、容赦なく潰しにくるんだから、開始と同時に降参した」

 

 既に出番は終わっていたということか。いや、負け戦で怪我までしたくないという判断かもしれないな。

 

 まぁ俺は俺の役目を果たすとしよう。今となっては多数決の時にもっと強く反対しておくべきだと後悔しているが、やると決めた以上はどれだけ不利であっても挑まなければならない。

 

 

 

 最高の結果を出す為に、俺は懐からパワフルドリンクを取り出して一気に飲み干す。

 

 

 

「なに飲んでるの?」

 

「パワフルドリンクだ、椿は飲んだことないのか?」

 

「あぁ、最近CMでよく見かけるよね。オリンピック選手とか、野球選手とか国会議員とかも飲んでるって噂の」

 

 そうだな、このパワフルドリンクは近年急成長している「馬美露似屋グループ」が作った完全栄養飲料であり、日本だけでなく今や世界中で愛されている栄養剤だ。

 

 「パワフルドリンク、自由を授けるぅ」というキャッチフレーズは不思議と耳に残るし、その効能から世界的な人気があるのは間違いない。

 

 俺だってその一人である。強敵に挑むのだからこれは外せない。腹から広がる熱が体を軽くして集中力を高めてくれる。準備は整ったようだな。

 

 

 身体が軽くなった俺は背負い投げで畳に沈んだクラスメイトに代わり、格技場に立って山田アルベルトと向かい合う。

 

 さすがに連戦によって疲労が濃いようだな、これならばそこまで苦戦はしないかもしれない。長いリーチと巨体特有の重さを計算にいれながら幾度か組み合って……最終的に俺は勝利をもぎ取ることになる。

 

 最大の山を崩せた、そんな事実にクラスメイトたちからは歓声が届く。そうだ。まだ負けてはいない。ここから俺が全員を倒せば勝てる、このまま負ける訳にはいかない。

 

 そう思って俺は柔道の勝ち抜き戦に挑む。次に出てくるのが誰かは知らないが、あの山田アルベルトよりも強いとは思えない。

 

 

 一番高くて分厚い壁を超えたのだから後は楽だろう……そう思っていた俺の前にそいつは現れた。

 

 

 一見細身に見えるのに異常に研ぎ澄まされた肉体と体幹、思わず喉を鳴らしてしまうような覇気、こちらの全てを見透かすような独特の瞳、人外の美貌、その男を構成する全てが俺の本能に警告を発してくる。

 

 

 敵対すれば死ぬと。

 

 

 

 いきなり大きな熊が飛び出て来たような、トラックが突っ込んできたような、乗っていた飛行機が墜落するような、理不尽を練り固めたような存在が目の前にいる男だった。

 

 説明されるまでもなく理解した。コイツが学園の支配者である本剛防人だと。

 

 

「どうした、来ないのか?」

 

「……」

 

 向かい合うだけで呼吸が荒くなる。それでも前に進まなければと足を動かすのだが、その動きは落とし穴を警戒するかのように慎重で臆病なものになってしまう。

 

 だがいかなければならない、ここで俺が負ければクラスは完全に敗北することになってしまうからだ。

 

 弱気になる心に鞭を打つ、挫けそうになる思いに熱を入れる、例え虚勢でもしっかり吠えろ。

 

「俺は、お前に勝つ!!」

 

「あまり強い言葉を使うな……弱く見えるぞ」

 

 相手が慢心している今しかない……そう思って俺は突っ込み、一気に襟を掴んで一本背負いを決める為に手を伸ばす。

 

 

 しかし、投げられたのはこちらであった。

 

 

 気が付けば綺麗な一本背負いをされて背中が格技場の畳についている……相手を掴もうとして伸ばした手首を掴まれて体幹を揺さぶられて、そのまま投げられたということだ。

 

 自分が積み上げて来た全てが否定されたかのような、圧倒的な才能と力の差……一つ上にこんな化物がいるとわかったのだから、確かに椿の言う通り良い勉強代と思うべきなのだろう。

 

 あの暴力的な宝泉も叩き潰されたという話だし、どうやら上級生の壁は高く分厚いらしい。それがわかっただけでも良しとするか……そんな風に慰めることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 八神SIDE

 

 

 

 

 

 

 

 いっそ殺してしまうのも一つの手だろう。

 

 

 

 「綾小路清隆の方が凄かった」……それが僕を表現する始まりであり終わり。

 

 ホワイトルームで育ち、最高の教育と環境で育った僕は一般人とは比べ物にならないほどに卓越した知識と技術と肉体を持っている。それこそオリンピック選手のように計算され尽くした肉体と、天才と呼べるだけの頭脳を持っているのだ。

 

 けれど、そんな僕たちはいつもどんな時でも「綾小路清隆の方が凄かった」で表現されてしまう。

 

 吐き気がする、憎悪が募る、憎しみと嫉妬と怒りでどうにかなりそうだというのに、一つカリキュラムを超える度に聞かされるのが「綾小路清隆の方が凄かった」だ。

 

 一度でいい、アイツと直接対決できる状況をくれるのならば、僕の方が優れていると証明してみせる……そう願ったからなのか、あの人は僕にチャンスをくれた。

 

 ホワイトルームを出て一般の無能たちが無意味な時間を過ごす学園に入学して、綾小路清隆を退学させるようにという命令を受けた僕は、二度と無いであろう展開に歓喜することになる。

 

 ずっと願っていたのだ、僕の方が優れていると証明できる機会が欲しいと。

 

 その機会が転がり込んできたのだからやるしかない。いっそ殺してしまうのも一つの手だろう。

 

 しかし今はまだその時ではない。月城というバックアップも何故かいなくなっているし、もう一人のバックアップである司馬教官も「今はまだ冷静に状況を見極めろ」と言っていたしね。

 

 まずはクラスを支配する。そして学年を支配して、綾小路清隆を追い詰める準備を整えるべきだというのが僕の判断である。

 

 そう思っていた時にあのバカ丸出しの校内放送が届いた。勝てば一億だなんていうどう考えても頭の悪い低能な者にしか出せない条件は、実は都合が良かったのだ。

 

 都合よくその馬鹿……本剛防人がいるクラスが一年Dクラスを平らげた後にこちらのクラスにも攻撃を仕掛けてきたので、僕はやるべきだと断固主張した。

 

 ここで勝利できればクラスの、そして学年を支配する足掛かりと実績にできるという判断もあったし、なにより……あのクラスには綾小路清隆がいる。この状況ならばまだ強力なリーダーもいないので多数決になるだろうし、意識を誘導するのは容易いだろう。

 

 どういう立場なのか、どれだけの実力があるのか、クラスの総合力は、そしてアイツ自身の立ち位置だったり、知りたいことは色々あったからね。

 

 巡り合わせ次第では、学年を支配しなくても戦える機会を作れるかもしれない……冷静になれと囁く僕と、熱狂して勢いそのままにと叫ぶ僕がいて、意思は熱狂に支配されてしまう。

 

 競技は空手の勝ち抜き戦。わかりやすく優劣を付けられるので悪くはない……そして何の因果なのか、あちらのクラスは一番手が綾小路清隆だった。

 

 あれほど願った超えたい相手、僕を否定する全て、憎悪と恐れの象徴。それとこんなにも早く戦える機会が来たということである。

 

 当然ながら僕がでる。この瞬間を何度も何度も夢見てきて、その度に震えと恐れに苛まれてきたんだ……それを今ここで終わらせる!!

 

「お前……ホワイトルーム出身だな?」

 

 空手ということで接触も多い。事故を装って目潰しなどの急所攻撃でもしようかと思いながら幾度か拳を交えていると、対戦相手の綾小路が格技場の真ん中にいる僕たちだけにしか聞き取れない声量でそう言った。

 

「な、なんのことですか?」

 

「隠す必要は無い。独特の体幹や格闘技術はオレもよく知っているものだからな」

 

 さすがと言うべきなんだろう……いや、いいさ、バレたのならばもう躊躇する必要は無い。あの綾小路清隆が、恐怖の象徴が、僕を真っすぐ見つめているんだ。ここで全てを終わらせよう。

 

 僕は、ここでお前を超える。

 

「随分と余裕だな、これから負けるというのに」

 

 組み合い、拳を交えていく。あくまで空手をしているという体で狙うのは金的や眼球だ。

 

 しかし相手も強い、軽く処理されてしまう。そう簡単にはいかないか。

 

「僕はお前を倒す為に、超える為にここに来たんだ」

 

 僕もまた目の前にいる綾小路にしか聞き取れないほどの声量で返す。僕を見ろ、僕を認めろ、僕だけを認識しろと言わんばかりに。

 

「なるほど、それがお前の根底にあるものか」

 

 すると綾小路清隆は何かを思案するような顔になり……こんなことを言ってきた。

 

 

「オレを倒す……その程度でか?」

 

 

「……」

 

 こいつは今、なんて言った?

 

 僕では勝てないと、そう言ったのか?

 

 それを認識した瞬間にホワイトルームで毎日言われた言葉が耳に木霊する。言われ続けたことで幻聴になって聞こえて来るようになったその言葉が耳に届いたのだ。

 

 「綾小路清隆の方が凄かった」……僕を表す全ての言葉であり、僕を縛る呪いの言葉。その比較対象となっている張本人に、ここまで馬鹿にされたと認識した瞬間に、眉間の奥で何かが切れる音が広がったような気がする。

 

 

「どけッ!!」

 

「きゃぁッ!!」

 

 そこからは早かった。僕はこの身に宿った憎悪と苛立ちのままに、格技場の端でベンチに座って観戦していた女子生徒を蹴り飛ばすと、そいつが腰かけていたベンチを持ち上げた。

 

 それを綾小路清隆に振り下ろす。そうともホワイトルームで教わった人の壊し方の一つだ。

 

 

「月城といい、お前といい、随分と軽率だな……あそこで習わなかったのか? いや、そうだな、習わなかったな」

 

 

 ベンチを振り下ろす瞬間、綾小路清隆はこちらにとても呆れたような視線を向けてきてそう呟く。

 

 

「基礎からやり直すといい」

 

 

 最後に綾小路清隆はそう言って、ベンチを振り下ろしてくる僕の顎先を蹴り飛ばした……。

 

 こうして僕は敗北した。クラスは反則負けとなり、僕は退学処分となってしまった。

 

 そしてホワイトルームに連れ帰られると、教官たちからこう言われることになる。

 

 

 「やっぱり綾小路清隆には敵わなかったか……まぁ次の六期生に期待しよう」と。

 

 

 僕の人生はこうして全てが片づけられた。ここから先、何をどうしようとも綾小路清隆に勝てない存在だと結論付けられて、それが僕を語る全てであると確定するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 天沢SIDE

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「少し冷静になるべきだと思う」

 

 

 

 そう言ったのは同じクラスの石上君であった。あの校内放送が広がってからすぐに二年生の先輩たちが勝負を仕掛けて来たんだよね。

 

 坂柳さんとかいう人が纏めているクラスは、二年の本剛先輩のクラスの傘下状態であるらしい。その人たちに勝つと一億貰えるという条件でクラスポイントとプライベートポイントを賭けて戦おうって提案だったんだけど……まだ入学して一週間なんだから結局多数決という流れになってしまう。

 

 なんでも一年Dクラスは宝泉君とかいう人が暴力で支配しているからすぐさま勝負を挑んだって話だけど、情けないことに瞬殺されたらしい。

 

 じゃあ私たちのクラスはどうなんだって話になるんだけど……まぁこうなるよね。

 

 

「え~、でも勝ったら一億だぜ」

 

「そうそう、勝負しない手はないって」

 

 クラスの大半が一億という餌に冷静でなくなっている。そして入学して一週間のアタシたちに強力なリーダーなんて存在しない。冷静な意見なんて一億というインパクトにかき消されてしまうよね。

 

「確か坂柳先輩のクラスってあれだろ。クラスポイントを全部失って0になってるって話だし、クソ雑魚じゃん、絶対勝てるって」

 

「多数決しようぜ、それが一番手っ取り早いって。民主主義サイコ~!!」

 

 そんな流れに冷静な主張をした石上君は渋面となってしまう……そりゃそうだ、わざわざ初心者狩りが丁寧に罠を作って待ち受けているのに突っ込むような真似なんてしたくはない。

 

 けれどリーダーはいない。クラスを動かすのは一億と言うインパクトに頭を毒された集団の意見である。

 

 こうして私たちのクラスは坂柳先輩のクラスと学校側が用意したテストの平均点で挑むことになる……クラスの平均点って話だから、これってアタシが全教科百点を取ってもあまり意味ないよね?

 

 突出した個がいた所で集団の能力が劇的に変わるようなことはないし、こりゃ負け戦だ。いやだなぁ。

 

 石上君も物凄い渋面になっている。入学して早々こんなわかりやすい地雷を踏み抜くことになるんだから、そんな顔にもなるよね……まぁアタシも似たようなもんかも。

 

 世間って厳しいね、普通学校の先輩ってもっと優しく新入生を歓迎してくれるものなんじゃないの? ホワイトルームで読んだ参考資料ではそんな感じだったんだけどなぁ。

 

 こうしてアタシたちはそこにあるとわかっている地雷を盛大に踏み抜くことになってしまう。

 

 綾小路先輩に会いたいなぁ……馬鹿なクラスメイトを眺めながらそう思うしかなかった。

 

 一応は、最後の足掻きとしてテストでは全ての教科で満点を取ったんだけど、クラスの平均点では坂柳先輩のクラスに敵うことはなかった……というかあっちのクラスは二年生全体から精鋭を集めてきたので、やっぱり最初から勝ち目なんてなかったんだね。

 

 これでクラスポイントは全損、プライベートポイントも没収。しかも負けた場合の契約として今度の一年生と二年生でコンビを組んで挑む特別試験では完全に支配下にはいることになってしまい、アタシが綾小路先輩と組む流れは破綻することになってしまう。

 

 二年生ちょっとおかしくない? なんであんな滅茶苦茶な人たちが放置されてるんだろ、月城さんは何しているんだって文句を言いたいけど、あの人は一足早く処理されてしまったらしい。

 

 なにやってんの、馬鹿なの? 拓哉も気が付いたら退学しちゃってるし……なんでこうなってしまったんだろう。

 

 ホワイトルームの外は修羅の国だった……月城さんは逆関節になって、拓哉は瞬殺されて、たぶんだけど司馬教官も狙われていると思う。あの人も逆関節にされるのかな。

 

 

 

 うん……大人しく学園生活を満喫しよう、それが一番だとアタシは思うのだった。

 

 

 

 

 

 

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