よう実RTA 特殊トロフィー最速取得チャート 作:KKKK
氏名 零膳一美
学籍番号 xxxxxxxxxxxx
誕生日 3月2日
評価
学力 A
知性 A
判断力 A
身体能力 A
協調性 A
面接官のコメント
幼少期から様々なメディアに出演して活躍しており、テストや面接でも高い評価を得た。将来のビジョンもしっかりとしており。およそ非の打ちどころのない生徒と断言する。
自身の持つ能力を万全に発揮する力が強く、不自然なまでに好意を寄せてしまうのは意図してのものだろう。ある種の洗脳に近いものを感じるほどである。公平な視点で面接が難しいので、彼女のみ直接面談ではなくモニター越しの面接となった。
教師からのコメント
可愛い。
一之瀬side
テレビで見たことのある人が同級生って知って、やっぱり国立の学校って凄いなぁっていうのが私の感想だったと思う。雑誌とか、ネットとか、コマーシャルなんかで観ない日はないくらいに人気の子だったんだもん。そんな有名人が同じ学校にいて同学年だなんて、私じゃなくても浮ついちゃうよね。
実際、私の所属しているBクラスでも、零膳さんが同じ学校にいるって知って黄色い声が広がったことを今でも覚えている。
それでも心の中ではどこか「テレビの中の人」という考えが私の中にあったのだけど、とある件をきっかけに私たちはよく話すようになった。
「それで? 一之瀬さんの話ってなにかな? 須藤くん関連の話ならまだ調整中なんだけど」
「あ、それも大事なんだけど、今回の話は完全に別件なの。ごめんね忙しいのに時間を作ってもらっちゃって」
「ぜ~んぜん問題ないとも。私、女の子とのおしゃべりって大好きだし」
カラッとした、テレビでよく見たことある笑顔を向けられると、少しだけ気恥ずかしくなってしまう。なんていうか、芸能人だからなのかな、オーラが凄い。
強く意識しても、どうしてか思考がふわふわと浮ついてしまう。まっすぐ見つめると恥ずかしくなっちゃうし、かといって照れて視線を逸らしてしまうとなんだか勿体ない気分になってしまう、凄く魅力的な子だった。
ケヤキモールにあるカフェのテーブルを挟んで少しだけ零膳さんは前のめりになった。肘をついて顎を支えるという当たり前のポーズなのだけれど、たったそれだけで雑誌の表紙のような華やかさが広がったようにも思える。
「えっとね、その、こんなこといきなり訊かれるのはす凄くびっくりしちゃうと思うんだけどさ……零膳さんは、女の子同士の恋愛ってどう思うかな?」
これが私が抱えている現在の問題。こんなことをいきなり訊くとか変な子だと思われないかな。
「え、なに、一之瀬さんってそういう方向もアリなの?」
「ち、ちちち、違うよ!? そうじゃなくてね、なんていうか、その……一般論としてね、人によるとかそういうことだってわかってるけど、あんまり深く考えずフラットに考えて欲しいっていうかさ!?」
同じクラスの子が貴女を好きだけど女の子だから悩んでいる、声をかけたいとか、仲良くなりたいじゃなくて恋人になりたい。そんなことを思って悩んでいる女の子がウチのクラスにはいるのだ。
なんとか零膳さんの、そういう、セクシャルな思考を知れないかと相談されたのが私です……はい、頼れるクラスリーダーとして動くしかありませんでした。
知り合ってまだそんなに長くもないのに、こんなことをいきなり尋ねるだなんて、おかしな子とか、失礼な人だと思われないかな? いや、もう後戻りはできないんだけども。
クラスリーダーって今更ながら大変だなって思う、でも白波さんが凄く悩んでたから放っておく訳にもいかなかったんだよね。
「はは~ん、察するに君のクラスの子に訊いてくれないかって頼まれて断り切れなかった感じかな?」
「あ、うぅ……にゃはは、お察しのとおりです」
「大変だねぇ、クラスのリーダーって奴はさ。そんなことまでする必要はないと私は思うけど。まぁ、君の苦労を評して、どこの誰かっていう個人情報までは聞かないでおいてあげるよ」
うん、全部見透かされちゃってるね。それでも相手が気分を悪くした様子はなくて、クスクスと楽しそうに笑って受け流してくれているのは救われた気分になるよ。
少なくとも変な子だとは思われてはないのかな、ちょっとだけ肩の荷が下りた気分。
「さて、女の子が恋愛対象かどうかって話だよね」
「うん、あ、でも本気で答えなくてもいいんだよ? 失礼なことを訊いてるってわかってるし、答えたくないなら教えてもらえなかったって伝えておくから」
そもそも清楚で綺麗でキラキラしたテレビの中のアイドルである零膳さんに、こんなことを尋ねる必要なんてなかったんだよね。質問しておいて今更な話だけど。
「いや、寧ろ女の子がいい、女の子以外じゃ勃たない……まぁ無いんだけどさ」
そうそう、清楚な零膳さんはこんな質問をした所で恥ずかしがってしまうだけ……あるぇ?
「ん? うん? えぇ……うん?」
「女の子っていいよね、どこもかしこも柔らかくって、声もすっごくそそる。私さ、女の子同士のセックスって音楽だと思ってるんだ。最高の楽器で奏でる総合芸術って言うのかな、いつか東京ドームの舞台に立って全力熱唱する……というかさせるのが夢の一つなのさ」
「……」
あ、あれ、私の知ってる清楚で綺麗なアイドルはどこ? ここ?
「まぁ冗談はさておき。結論を言うと、女の子同士って全然ありだと思うかな……て、お~い、聞いてる?」
「ひゃ、ひゃい!?」
するっと、極々自然い向かいの席に座っている零膳さんがテーブルの上に置かれていた私の手に自然に触れてきたことで、脳破壊されていた私はようやく正気を取り戻した。
ゆ、指が、触れてる、あったかい、距離が近くなったからか良い匂いも強くなって、頭の中のフワフワが大きくなっていくような気が……。
零膳さんはこちらを揶揄うようにクスクスと笑いながら私の右手を弄ぶ。白魚のような指先が手のひらの上で「の」の字を描き始めると……ただそれだけでゾクゾクと体が震えるのがわかった。
気味が悪かった訳ではない、寧ろその逆でびっくりするくらいに気持ちがよかった。
その、なんていうか、敏感な部分に触れられているかのような、そんな感じ……ただ手の平を撫でられているだけなのに。
「ねぇ、せっかくだし帆波って呼んでいい?」
「ん、んんッ……ぁ、待って……いやぁ」
「いや? 嘘、気持ちいいでしょ? 帆波の指って素敵だね。沢山の苦労が垣間見える……こういう指で引っ搔き回されるのって凄く気持ちいいんだよ」
「そ、そんなこと、わからないよ……あぅ」
「わかるよ、人間てただそこにいるだけで色んな情報を発してるんだから。帆波の指は……ん~、洗濯物でしょ、お皿洗いだったり、料理なんかを沢山してきた手だね。そしてペンダコの後もある、あぁ、沢山勉強してきたんだ。ふふ、両親のお手伝いを沢山して、そして勉強も頑張った手だ……ふふ、下品だけどさ、こういう手って興奮しちゃうよね」
手の平を弄んでいた零膳さんは、何を思ったのか私の手を自分の頬に持っていき、そのまま手の甲をで頬擦りを初めてしまう……あったかい、良い匂いする、気持ちいい。
「れ、零膳さんッ……あの、もう……んにゃぁ」
手の甲が零膳さんの頬に触れる度に体中が熱くなってしまう、なんか、底無しの沼に足を取られたかのような感覚だった。
「一美、名前で呼んで欲しいな」
「か、一美さん……んッ」
「呼び捨てがいいなぁ」
「うぅ、それはちょっと、まだ出会ったばかりだし、気安いっていうか」
「そう? まぁいっか、ゆっくりねっとり仲良くなっていけばいいしね」
そこで一美さんの頬にくっつけられていた私の手は解放されることになる。その瞬間に体中から力が抜けて私はカフェのテーブルにゴンッと額をぶつけることになってしまうのだった。
なんだかもう、言葉にできないくらいに体が熱い。
だというのに指先だけはさっきまで感じていた熱や感触を求めているかのように、冷たく感じられる、名残惜しいと言わんばかりに。
机に突っ伏してしまった私の後頭部に一美さんの面白くて仕方がないといった感じの笑い声が降ってくる。なんというか、想像していたよりもずっと距離感が近い人なんだよね。私がテレビの向こうの人っていう勝手なフィルターを通してみていただけなのかな。
本当の一美さんは……想像以上に魔性の女の子であった。
なんていうかこの後に須藤くんの暴力事件をどうするのか打合せしたり、Dクラスとどう連携していくのか話したかったんだけど、私の気力はもう全部吸い取られちゃったみたい。
ま、まぁ、白波さんにとっては良いことなのかもしれない、少なくとも一美ちゃんは、その、そういう関係に忌避感がない人らしいから。
後、こうして一美さんと話すようになったことで私はとある悩みを抱えることになってしまう。
なんていうか、ことある事に一美さんのぬくもりや頬の感触を思い出してしまうことで、悶々とした日々が続いちゃうんだよね。
最終的には夢に見るようにもなって、段々と夢の内容が過激になっていってしまう。
朝起きた時、まず最初に過激な夢を見たことで頭を抱える毎日となっております……私って、もしかして欲求不満なのかな?
龍園side
「てえてえ」
「YES TETE」
石崎とアルベルトが腕を組んで何やらうんうんと頷いてやがる。馬鹿どもの視線の先にはソファーに座った零膳と伊吹の姿があった。
なんでこの女が俺たちが拠点にしているカラオケ店にいるのか、答えはシンプルであり向こうが勝手に顔を出してきたからだ。
クク、単身で飛び込んできた間抜けと言うべきか、それとも見た目より度胸があると褒めてやるべきか、それを決めるのはこいつの交渉力次第だと考えていたのだが……わざわざ来たというのに目の前の女は俺たちを無視して伊吹とイチャコラしてやがる。
お前何しに来たんだ?
「おいアイドル女」
「あ、私ってアイドルじゃないよ、どっちかっていうとTVタレントかも。本業はモデルだし」
「どっちでもいいだろうがそんなもん、それより伊吹を放してやれ」
「え~、やだぁ」
カラオケ店のソファーの一角を占領しているアイドル女は、隣に伊吹を座らせて男前のホストよろしく肩に手を回して伊吹を侍らしてやがる。
「伊吹さんってスポーツとかやってたでしょ? 筋肉の作りが格闘寄りだよね、空手かな?」
「ん……ちょ、おい、髪触んな」
「むふふ、可愛い、スポーツ少女っていいよねぇ。匂いがさ、化粧品臭くなくてすっごいそそられる」
「ぐ、む……龍園、こいつどうにかしろ!!」
伊吹の鎖骨に鼻先を突っ込もうとして抵抗されているのだが……こいつ、実はそこまで気味悪がってはいないな。
普段のこいつならば容赦なく拳骨か手刀を食らわせているだろうに、それをせずにただ押しのけようとするだけだ。
現に、迫られた最初こそ手刀を放とうとしていたのだが、それが振り下ろされることはなく。攻撃すべきかやめるべきかを悩んだ挙句、最終的には相手を傷つけないように肩を抑えて引き離そうと弱弱しい抵抗をするだけだ。
はぁ、なんで俺がこいつを庇わないといけないんだよ。
しかしこのまま放置したところでいつまでたっても話が進まねえ、仕方がないとばかりにカラオケ店の机の上に足を挙げ、踵を落としてわざとらしく大きな音を鳴らした。
「おい!! てめえは女にかじりつく為にここに来たのか!?」
「え、そうだけど」
「石崎ッ!! 馬鹿がおかえりだ、ここの会計済ませとけ!!」
「もう、ちょっとした冗談じゃないか、そんなに怒ることはないとも」
ようやくアイドル女が伊吹から離れ……ることはなく、腰を抱きながら視線だけをこちらに向けてきた。
お前、それで俺と話すつもりなのか?
伊吹は伊吹でよく知らない親戚に抱きしめられている柴犬みたいな顔になってやがる。どうやら抵抗することはもう諦めたようだ。
「で? 何をしにきやがった?」
「うん、実はさ、君の所がやってるアレで話があってさ。私の評価の為に手を引いてくれないかな?」
「……はぁ?」
「んっとね。私、生徒会に入りたいんだよね、でも断られちゃってさ……まぁ、君は話が早そうだから遠回しなことはせずにシンプルに説明するけど。要は私の利益の為にここは引いて欲しいのさ」
「話にもならねえなぁ。俺たちは須藤から暴行を受けた被害者だぜ、きっちり落とし前をつけなきゃならねえだろうが、そうだよなぁ石崎」
「てえてえ」
ダメだなこいつは、アイドル女に鼻の舌を伸ばして使い物にならねえ。
「でもさ、龍園くんって今回の件でDクラスを潰すつもりもないんでしょう」
ほう、ある程度はこっちの動きも察してるか。ただの馬鹿ではないらしいな。
「ん~……欲しいのは情報かな、もし退学者が出た時にどんなペナルティがあるかどうか、それにどこまですれば学校が介入するのか、もっと言えば他のクラスの動きや対処能力を知りたいとか、違う?」
「クク、なるほどなぁ……テメエがただの女好きの馬鹿じゃねえことはわかった」
「そうだよ、女の子が大好きな天才さ」
「黙ってろ」
さてどうしたもんか……確かにこいつの言っていることは的を得ている。
ふん、つまらん建前や遠回りな話をしたところで無駄が、一之瀬とも坂柳や葛城とも異なる思考と価値観を持ってる相手だ、そしてなによりも馬鹿ではない……いや、馬鹿ではあるんだが。
「テメエがテメエの利益の為に行動してるのはわかった……だがはいそうですかと受け入れると思ってんのか?」
「思ってないよ、だから君にも利益を提示しようじゃないか」
「ほう、何を寄越す? ポイントか?」
「あげないよ、ここでポイントを私から上げたら君って味を占めそうだしね。ポイントが欲しいなら君が勝手に稼ぎなよ……私を生徒会長にしてね」
そう言ってアイドル女は自分のスマホを操作して保存されていた資料を提示してくる。
ざっと眺めてみるとそこにはこの学園で年間運用されている予算と、その推移が記されているのがわかった。
「実際には現金じゃなくてポイントっていう電子通貨だけど、滅茶苦茶予算多いでしょ? まぁ学園で使う備品や教職員のお給料、ケヤキモールなんて街一個分の施設まである、そりゃべらぼうな予算が必要だよね、さすが国立、お金持ちだよねぇ……あ、情報は生徒会長からポイントで売ってもらった」
「で?」
「この一部を使えるのが生徒会長、まぁ勿論、私的流用なんてできないけど。逆に言えば正当な理由があれば予算内でなんでもできる。新しい制度の導入や試験への介入、もちろんポイントをどれくらい報酬にするかとかもね」
生徒に支払うポイントだけで年間で莫大なポイントが動くだろうよ。そのうちの数パーセントでも莫大な額だ。
「さてここで問題です。私と、現副会長の南雲先輩、どっちが生徒会長になった方が一年にとって利益となるでしょうか?」
「あぁ、なるほど、テメエが欲しいのは最終的には選挙の票か」
「そうとも、私が生徒会長になった暁には、清く正しい学校づくりと、みんなが笑って暮らせる環境を作ります。もちろんこいつだって稼ぎやすくするとも」
アイドル女は指先をくっつけて輪っかを作る……クク、綺麗な面してる割にはシビアな金勘定をしてやがるな。
さて、どうするか……確かに二年の副会長とやらが生徒会長になれば、ほぼ確実に二年に有利な環境を作られる。
こいつもポイントの重要性は理解してるだろう。私的流用は学校の監査もあって難しいだろうが、それらしい理屈で動かせばどうとでもできるか。
例えば、試験で得られるポイントを上乗せされるとか。
どうせこの学園はポイントが変動するような何かを仕掛けてくるはずだ。二年生有利にポイントを使われるか、一年生有利にポイントを使わせるか……まぁ、考えるまでもねえか。
「空手形で俺を動かそうとはな……だがわかってるのか? これまでの話はテメエが生徒会長になれればの話だ」
「なれなかったら今度こそポイントをあげるよ、それでいいでしょ? 契約書でも作る?」
「……いいだろう、せいぜい俺たちに利益を齎しやがれ。あぁ、だが一つ解せないことがある。何故テメエはDクラスを助けようとする? 生徒会に入る為の点数稼ぎらしいが、他にやり方もありだろうが」
「あぁ、それね、シンプルに友達が困ってるからかな」
「……そうかよ」
その言葉が事実かどうかは知らんが、まぁ今は良いだろう。
こいつが生徒会長になって試験やらイベントやらで俺たちの学年に多くのポイントを齎す。できなければこいつからポイントを奪う、どちらにせよ俺に損はねえ。
もうDクラスはどうでもいい、裁判は適当にこいつを煽ててプロレスでもしてやろう。
クク、思ってた以上に楽しめそうだな。まさかポイントが欲しいならば自分で稼げ、チャンスは増やしてやるなんて言ってくるとは……稼げるものなら稼いでみろと俺を試してやがる。
Aクラス、厄介な相手かもな。坂柳は多少はお利口だが瞬発力がねえ、葛城は真面目一辺倒でいくらでも崩しようがある。だがこいつをリーダーにしてあの二人を参謀辺りに据えればわかりやすい隙はなくなるだろう。
まずは、DクラスやBクラスよりも、こいつがどこまでやれるのかを見極めるとするか。
「餞別だ、ここの会計は支払ってやるよ」
「お、太っ腹だねえ」
「石崎、お帰りだ、見送ってやれ」
「はい……あの零膳さん、俺のシャツに石崎くん大好きってサインもらえませんか!?」
「石崎ィ!! アイドルの握手会じゃねえんだぞ、プライベートは尊重してやれ!! 常識がねえのかテメエは!!」
佐倉side
「あ、いたいた雫……じゃなくて、愛里。お久しぶり元気してた?」
「うん、一美ちゃんも元気だった?」
「そりゃもちろん、見たまえこのプリプリなお肌をさ」
相変わらず、一美ちゃんは話すのが上手だと思う。
う~ん……私とは正反対な人だけど、不思議と付き合うのが嫌にならない。そして緊張もしない。そう思うと、本当に不思議な人だと思う。
私にはない自信、私が知らない振る舞い、私にはない輝き、それを全部持っているおとぎ話のような女の子、それが零膳一美ちゃん。
その、なんというか、グラビアアイドル時代の撮影のお仕事で偶々一緒になって、それから彼女のチャンネルでコラボさせて貰ったりと……なんでこんな私を気にかけてくれるのかわからないけど、こうして話しかけて貰えるのは凄くうれしい。
友達、この学校でもできなかったから……うん、もっと頑張るべきなんだよね、きっと。
同じ学校に入学してたのは知ってたけど、こっちから話しかけられる勇気がなくてあたふたしていた私に声をかけてきてくれました。だれだっけと言われたらショックで立ち直れないけど、ちゃんと私のことを覚えていてくれたみたいでホッとしちゃった。
ま、まぶしい……これが本物のアイドル。
私もいつかこんな風になれるのかな……友達もまともに作れないようじゃ夢のまた夢かもしれない。
「いやぁ、久しぶりだねぇ。声をかけようって思ってたけど入学してからこっちお互いに忙しかったでしょ?」
「う、うん……そうかな?」
「友達と遊びにいって交流を深めたりとかさ」
「あ、わ、私はその……友達いなくて」
「え、私がいるよね」
「い、いいいい良いんですか!? そんな恐れ多い!!」
「私のことなんだと思ってんのさぁ。う~ん、相変わらず雫と愛理でキャラが違う……まぁ仕事と私生活でスイッチが変わって全然性格違うってのはあるあるだけどもさ」
そうなのかな? 雫の時も緊張しっぱなしで、撮影が長引いてしまうことも多いけど。
あぁ、でも、そんな時はいつも自信満々な一美ちゃんの姿を思い浮かべていると今更ながら気が付く。きっと一美ちゃんが私の理想像なんだろうな。
憧れることすらおこがましいくらい凄い人だけど、こうしてお話できるのは凄く幸運なことなんだと思う。
自然な流れで一美ちゃんは私を遊びに誘って、臆病な私を気付かってか人目の少ない個室の喫茶店へと案内してくれた……さりげなくこういう気遣いができる人って素敵だなぁ。
いつもいつも、なんだかんだで甘えてしまっている私が情けなく感じてしまう……頑張らないとだめだよね。
人目がない個室の喫茶店で彼女は紅茶を頼む、あまり高くないものを注文している辺り、きっとDクラスの私でも頼みやすい値段の物を選んだのかもしれない。
うぅ、また気遣わせてしまったでしょうか……。
コラボ動画を撮影する時も、緊張する私を根気よく笑顔にしてくれましたし……なんというか、本当にお世話になりっぱなしでした。
改めて見た一美ちゃんの姿は、やっぱり熱っぽい溜息が自然と出てくるくらいに綺麗で、その瞳から目が離せなくなっていく。なんとか理性を維持して視線を逸らそうとしても、チャームポイントである目元のほくろが逃がしてくれない。
「ん~? どうしたの溜息吐いて。この紅茶美味しくなかった?」
「い、いえ、そのちょっと自己嫌悪に陥ってしまって……こうはなれないなぁって」
「あぁ、なんかコラボ動画の前にも言ってたっけか? 私みたいになれたらとかなんとか、別にいいと思うけどね、あの爆乳悩殺ポーズができるんだからさ。因みにあの動画私のチャンネルで再生回数トップテンに入ってるよ」
う~ん……嬉しいような、恥ずかしいような、こそばゆいような。
「ま、お互いに学校にいる間はお仕事も休業でしょ? ゆったり過ごそうよ」
「うん、そうだね」
一美ちゃんと付き合う上で少し困ることがあります。それは彼女はとても気安く距離を詰めてくる……その、なんていうか、スキンシップを行うハードルが凄く低い。
今も私の髪へと自然に触れてくる。そんな風に距離を詰められると私は緊張と恐怖で体が硬くなってしまうのだけれど、一美ちゃんが相手だとやっぱり不思議なことに安心感が上回ってしまう。
「あ、前に私が挙げたシャンプーってまだ使ってる感じ?」
「はい、気に入っちゃって」
サラサラと、一美ちゃんの指先が私の髪を梳かしていく。それだけでいつも私の中にある警戒心や緊張が溶けていく。なんでかな、こんなことお母さん以外には感じないのに。
「そろそろ抱けるかな? いや、焦らず堅実に――」
一美ちゃんに髪を撫でられているとうつらうつらと眠気に誘われてしまいました。このまま寝落ちしそうになっているところで小声で何かを呟いていることに気が付いて、慌てて私は微睡みから意識を呼び戻しました。
「ご、ごめんなさい、眠っちゃいそうでした!?」
「あぁ、気にしないで、眠たそうな愛里の顔が最高にキュートだったからさ……まぁ、ストレスというか疲れが溜まってたのかもね」
「そ、そうなのかな?」
「見ればわかるよ。何か悩み? それともトラブル? 私でよければ話を聞くよ?」
どうするべきなのかな……確かに一美ちゃんの言う通り悩みというか、トラブルを私は抱えている。
頼れる相手が一人もいないから、どうしようもなくて、でも彼女にならば打ち明けられるのかもしれない。少なくとも、私が知っている中で一番頼りになる人だから。
巻き込むのも申し訳ない、でも私一人ではどうしようもない……そんな逡巡を何度か内心で繰り返してから、私は意を決したように抱えている悩みを伝えました。
きっと彼女を頼るのは間違いじゃない筈だから、そう思わせてくれる強い人だから。
「あ、南雲先輩!! ちょうどいいタイミングに現れましたね!! 助けてください、こいつ変態です!! 鬼頭くん橋本くんもナイスタイミング、とりあえずしばいといて!! おんやぁそこにいるのは生徒会長じゃありませんか、暇なら手を貸してください!! ストーカー、死すべし!!」
トラブルというか、悩みの元凶である男の人が、あっという間に囲まれて拘束されてしまい、何もできないまま動けなくなって……刃物を持っていて凄く怖かったのに、沢山の人を前にしてどうすることもできなかったみたいです。
さっきまで全然人がいなかったけど、言い争いをしている間にどうやら色々な人が駆けつけてくれたようで……凄く大事になってしまったけど、ケガ人はいないのでホッとするしかない。
一美ちゃんに相談するという判断が正解だったのか間違いだったのかわからないけど、私が抱えていた悩みはあっさりと、それはすごい速度で解決してしまいました。
私の悩み、須藤くんが暴力事件の容疑者になって、その現場を私がカメラに抑えていたこと、でもそのカメラは故障していて、修理しようともしていて、でも電気店の店員さんとの間でトラブルもあって。
そんな、臆病な私にはどうしようもできない問題を、一美ちゃんはあっさりと解決してしまう。
さっきまでこんなに人いなかったよね? さすがに言い争いが激しかったということなのかな?
何十人もの男の人たちと、騒ぎを聞きつけた生徒や職員、従業員、合計で百人くらいの人たちに捕まって連れていかれる男の人は、最後まで何が起こったのかわからないままだったんじゃないかな。
「一件落着かな? これで愛里も安心でしょ?」
「え、えっと、あの、はい……あの人は、大丈夫なの?」
「いやいや、ストーカーの心配とかする必要ないでしょ」
物凄い人たちにあっという間に捕まっちゃったから、恐怖よりも心配が上回ってしまうくらいの勢いだったからなんだか同情してしまいました。
「一美ちゃんが、なんだか凄く残酷なことをしていた気がするけど」
「私の愛里に唾つけといて金玉蹴り上げるだけで済ませたんだから、まだ温情だよ」
腰に手を当てて胸を張る一美ちゃん、刃物を持った男の人を前にしても彼女は変わらず自信満々だった。
「あはは……凄いね、一美ちゃんは」
「そうとも、私はすごいのさ。だから愛里も困ったらいつでも頼るといいよ。私があの人たちを頼ったみたいにね」
人に頼る、簡単なように思えてそれは私にとってとても勇気のいることだけど、きっとそうやって自分の殻に閉じこもっていても前には進めないと教えてくれているのかもしれない。
こんな風になりたいと、そう思うだけで勇気をくれる……私にとって一美ちゃんはそういう人だった。
「大丈夫? 立てそう?」
「えっと、腰が抜けちゃって」
刃物を向けられた恐怖が今更になって大きくなったのか、体が震えてあまり力が入りません。そんな私を見かねてか一美ちゃんが手を差し伸べてくれました。
「怖かったね、でももう大丈夫」
そして一美ちゃんはニコりとほほ笑んで、最後まで私を気遣ってこう言ってくれます。
「愛里が怖くなくなるまで、今日はず~と一緒にいてあげるから」
唇の端を艶めかしい舌がぺろりと舐める、どこか妖艶なその表情に、私は言いようのない胸の高鳴りを感じて――。
零膳一美データーベース(パワプロ風)
()内の数値はスキルによるプラス補正値
学力 77 B
思考 89 A
身体能力 60 C
精神力 82 A
魅力値 100 S (219)
「天才◎」「努力家〇」「戦略眼〇」「演技◎」「成長◎」「カリスマ◎」「直感◎」「支配〇」「フォロー〇」「回復◎」「統率◎」「美貌◎」「アイドル◎」「未来予測◎」「グラマー◎」「人望◎」「魅力◎」等。
金特スキル
「魅惑のほくろ」「女王蜂のフェロモン」「一番星」「心理掌握」「可能性の卵」「ローレライ」「太陽」「黄金律」「教祖」「F分の一揺らぎ」「洗脳」「女王」「サキュバス」等。