個性 カードの精霊   作:0101シュート

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轟とカード

「ハア·······体が痛いよ·······」

 

エンデヴァーの娘である轟焦凍は父の虐待とも言えるほどの

個性の特訓を日々強要されていた。まだ4歳にも関わらずこんな環境にいる彼女だが決して

つらいことばかりではなかった。

夜になり家の人間たちが静まり返るころ彼女はいつも自分の部屋を抜け出し彼の部屋に

向かった。そう、大好きな兄のいる部屋に。

 

「燈矢兄さん·······」

 

「おう今日も来たのか焦凍。こっちおいで」

 

兄の手招きに従い彼女はゆっくりと彼の所へ歩く。そしてちょこんと

彼の前に座った。そして燈矢は優しい手つきで彼女の頭を撫でた。

 

「またお父さんに特訓させられたのか?」

 

「うん·······もう本当につらい······」

 

「クソ·······焦凍ばっかり·······なんで俺を見てくれないんだよ父さん」

 

「兄さん?」

 

「ああ·······悪い。お前はなにも悪くないもんな」

 

そういって申し訳なさそうな表情をみせる兄に彼女は首をかしげる。

その時燈矢の頭に黒い何かが乗っかる。

 

「キュー!」

 

「レッド、急に頭に乗っかるなって」

 

燈矢は頭の上に乗った黒いものを抱きかかえる。その黒い物の正体は

黒竜の雛。燈矢に懐いているカードの精霊である。二人はレッドと呼んでいる。

 

「フフフ·······二人とも本当に仲良しだね」

 

「ああ。こいつは俺の数少ない友達だからな」

 

軽く微笑みながらレッドの顎を優しくなでる燈矢。

 

「よし!じゃあデュエルするか焦凍」

 

そういって彼は立ち上がり部屋にある棚からいくつかのデッキケースを

手に取る。

 

「今日はなに使うんだ?」

 

「ブラックマジシャンガール!!」

 

「はいはいわかった。ほれ」

 

彼女は兄からデッキケースを受けて取りすぐさまカードを取り出す。

そしてブラックマジシャンガールのカードを手に取り目を輝かせた。

 

「焦凍は本当にブラックマジシャンガールが好きだな。いつも

それしか使ってねぇじゃん」

 

「だってこの子可愛いんだもん!私も兄さんみたいに実体化出来たらいいのにな·······」

 

「そうか·······俺が実体化できればいいんだが俺はレッドしか実体化できないんだ。

ごめんな焦凍」

 

「ううん。気にしないで兄さん。それより早くやろ!」

 

「やっしゃ!じゃあいくぜ」

 

二人はデッキをシャッフルさせ地面に置く。そして五枚手札を引いた。

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

 

 

 

私はそんな兄が大好きだった。けど兄さんはある日突然·······帰らぬ人となった。

レッドアイスのデッキを持って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ君の兄さんは僕と同じようにカードの精霊を実体化出来たってこと?」

 

「そう。緑谷のそのハネクリボーみたいに」

 

僕、緑谷出久は今クラスメイトの轟焦凍とファミレスで話をしている。

その会話の内容は僕と同じくカードの精霊を実体化ができる彼女の兄のことである。

 

「そっか·······僕以外にもいたんだ。カードと心を通わせることができる人が」

 

「緑谷はいつその力を手に入れたの?」

 

「んー。ハネクリボーのカードを手に入れた次の日に確かもうできるようになってな。

それにしても君のお兄さんもデュエルモンスターズが大好きだったんだね。

僕その人とお話してみたかったな」

 

僕がそう言うと彼女は懐かしそうな表情でクスリと笑った。

 

「そうだね。君なら兄さんとも意気投合できてたかも。けど兄さんはもう·······」

 

彼女は笑顔から一変し少し俯き悲しみの表情を見せる。僕はこのままじゃあ

彼女を悲しませてしまうと悟り、話題を変えた。

 

「そういえば君はデュエルモンスターズは続けてるの?」

 

「実はもうやってないんだ·······父親にデッキを燃やされちゃって」

 

「え!?」

 

「そんなことをしてる暇があるなら訓練でもしろってさ·······

まあ元々私の相手してくれる人は兄さんしかいなかったし·······」

 

そして彼女は鞄から一枚のカードを取り出し机に置いた。

それはボロボロで所々傷のあるブラックマジシャンガールのカード。

 

「これは·······」

 

「私のデッキのエースだったブラックマジシャンガール。これだけは

なんとか父親から守りぬいたんだ。兄さんとの大事な思い出だから·······」

 

僕はそのカードをじっと見つめる。

 

(このカードから感じる·······彼女の心を·······そうか······

君は彼女を········任せて!なんとかしてみるよ)

 

「轟さん。このカード僕に預けてくれない?この程度の傷ならなんと

修復できるかもしれない」

 

「え·······?」

 

 

 

 

 

 

 

その後僕は轟さんからカードを受け取りカードショップへと向かう。

そして店長やカード仲間の協力を得てカードの傷やへこみの修復を試みた。

そして次の日·······。

 

 

 

 

 

 

 

「ハアハア·······!!」

 

僕は廊下を駆け抜けA組の教室に前に着く。そしてすぐさま教室に入った。

 

「轟さん!!」

 

僕の声が教室に響き渡りみんなの目が僕に向けられる。その声に少し轟さんはビクっと少し体を

震わせた。しかし僕はそんなことを気にせず彼女の席へと向かって行った。

 

「見て!なんとか修復できたよ!」

 

そういって僕はブラックマジシャンガールのカードを彼女に手渡した。

受け取った彼女は目を見開いて驚いた。

 

「う、嘘!?あんな傷だらけだったのに」

 

そう。ブラックマジシャンガールのカードは傷一つなくデコボコもない

綺麗なカードへと戻っていたのだ。

 

「実はさ。僕のカード仲間にカードの繊維を操作する個性の人や

視力を上げてくれる個性の人がいてさ。そして店長の修復技術と

僕のカードを感じる力でなんとか以前の姿に戻せたんだ」

 

「な、なんでそこまで·······」

 

「だって大切なカードなんでしょ?それにボロボロのままなんて

カードも可哀そうじゃん。ああ。あとこれ」

 

僕はポケットから一つのデッキケースを取り出し轟さんに手渡した。

 

「これは?」

 

「ブラックマジシャンガールを中心に活用できるように調整したデッキだよ。

もしその気があるならさ、またデュエルモンスターズを始めなよ。ほら

相手なら僕がいつでも受けるし、もしよかったらカード仲間たちも紹介するからさ」

 

彼女は少し唖然とした。けどしばらくして彼女はデッキケースを大事そうに

握りしめてとびっきりの笑顔を僕に向けた。

 

「ありがとう緑谷」

 

「う、うん///どういたしまして///」

 

僕は彼女の可愛らしい笑顔に少し顔を赤らめてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回、USJ事件。緑谷出久のデュエリストとしての運命が大きく動き出す。

 

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