のんきなエルフとくたびれオオカミ   作:ターキィ

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93.エロ城での対峙

 

 ついに一行は敵の本拠、エロ城に突入することになる。こういう時は幹部との戦いが付き物であったが……どうやらメンバーが見当たらないようである。

 

「麿の部下である二人は前線を指揮しておる。徳川組にはまともな指揮官がおらんであろう」

「余計なことするやつだゆ!!」

 

 タヌマロとイエユナはここに来て揉めていた。もう相手は目前まで迫っているのに!

 

「例の稀人を呼ぶゆ! 特にやつは"魂縛術師(テイマー)"、最低のゲスだゆ」

 

 彼女には切り札があった。魂縛術師(テイマー)は強力かつ反社会的な存在であり、多くの国や魔術機関において公にその存在や研究を認められていはいない。そのような恩恵を得た稀人を一人囲っていたのである。ところがである!

 

「……麿をテイムしようとしてきたから殺しちゃったでおじゃる」

「あぁ、あぁぁ……最低のゲスだったゆ……」

 

 性格がダメだったようであった。じゃあこの一連の流れはなんだったの?

 

「とにかく、衛兵! お前ら全員でなんとかして止めてくるゆ!」

「ええ、へい」

 

 とりあえず、その辺にいた衛兵にジロたちを止めさせようとした。

 十数分後、衛兵たちは戻ってきた。

 

「なんか、勝ちました」

「勝っちゃったゆ!?」

 

 衛兵たちは満身創痍のジロたち一行を引きずりながら彼女らの部屋に入ってくる。

 

「……待つでおじゃる、罠じゃ」

 

 しかし、タヌマロは衛兵を静止した。そして腰に差していた刀を抜くと、傷だらけで蹲りうめき声を上げるジロの身体に一太刀を入れる。

 

「ぐわっ!」

「えっ!?」

 

 普通に斬られたジロであった。一発ネタのためにだって命を張る様は紛れもなく本物であった。そんなに面白くもないのに。

 

「コノエ……お前の首を討ち取る為に、這い上がってきたぞ」

「あっ、そのまま続けるでおじゃるな……死に損ないめが」

 

 一行はのそのそと起き上がり、ナムヒの蹴りが衛兵をなぎ倒す。城内で迷子になっていた一行は衛兵が来たのをこれ幸いと、やられたふりをしてここまで案内させたのである。

 

「俺はこいつと決着をつけなければならない。その女は皆に任せた」

「ジロさんも気をつけて下さいね!」

「来い、コノエ。二人だけで決着だ」

「よかろう、麿もそなたが生きていると知った時から、決着をつけるべきだと思っておった」

 

 ジロとタヌマロは双方睨み合う。

 

「決着をつけるのに相応しい場所に行くとしようかの」

「ああ、決着をつけさせてもらう」

「決着決着うるさい会話だな」

 

 すると、二人は刀を抜き、窓の外へと飛び出す! そしてドラマの高いところから落ちるシーンで人形を代わりに使っているやつみたいな感じにそのまま下へと落ちていった。

 

「あれ大丈夫なのかゆ!?」

「さて、次はテメーの番だぜ」

 

 ナムヒが構えると同時に、他の二人も戦う姿勢を見せた。ステラはその後ろに隠れている。

 

「あなたが、指定暴力団徳川組の組長?」

「その通り、私がイエユナ。お前たちになんもかんも邪魔されている女だゆ……尤も、征伐隊さえなんとかすればどうとでもなるゆがねぇ」

 

 イエユナ、扶桑の人類種の女であり、その手腕で徳川組の絶頂期を作り出した女であった。特に悲しい過去もなく、のびのびと悪事を働いてきたタイプである。彼女の野望は組織の繁栄であった。

 

「揃いも揃って金稼ぎの邪魔をするんじゃないゆ! 金さえあれば、地位も、名誉も……オタクに優しいギャルも、セックスなしの彼氏も……」

「後半はそもそも実在しなくない!?」

「裏切り者を買うことも出来るゆ」

 

 そう言って、彼女は懐から金貨袋を取り出した。そしてその場に投げ捨てる。袋から飛び出した金貨や宝石が辺りに散らばった!

 

「そんなことして何になる? 私達は裏切ったりしないよ!」

 

 アカネは毅然とした態度で、金貨には目もくれず言い返す。

 

「そうですよ! そうですけどこれは一応貰っておきますね」

「貰えるもんは貰っておくぜ」

 

 が、ステラとナムヒは散らばったものを拾い集めていた。

 

「あなたたち……」

「ううむ、しかし様子が変だぞ」

 

 明らかに様子がおかしい。元からまあまあおかしいが、より一層おかしいのである。

 

「ねぇ、ステラはともかくナムヒ?」

「金ぇ〜〜……」

「ぐへへへ……」

 

 二人は一心不乱に金貨を集め、そして眺めたり、小粋な口説き文句を聞かせてみたりしていた!

 

「様子がおかしいのはいつものことだけど、一際おかしい!」

「まさか、幻惑術か」

「ふふふ、その通りだゆ」

 

 イエユナは幻惑魔法の使い手であった! 幻惑術は魂縛術と並び、反社会的魔術であるとして使用者は偏見に晒されていた。彼女のように悪用するからである。指定暴力団徳川組が巨大な組織となり、一地方を支配するまでになったのは彼女の手腕とともに、この幻惑魔法が大きな要因である。

 

「カ~ネ~」

「なんかヤバそう!」

「お前ら二人はこの後、鉄砲玉にでもしてやるゆ! あ、"鉄砲玉"というのは使い捨てにしてやるという意味の言葉の訳語であって…」

「誰に釈明してるのかわかんないけど、戦うよエルヴィンさん!」

「おう!」

 

 アカネは手をかざし、エルヴィンは両手剣を抜いた。その様子を見ても、イエユナは不敵な笑みを浮かべ続けていた。

 

「ふふふ、私の幻惑術を侮るなゆ?」

「ふん、吾輩たちはどんな強大な敵でもだいたい一話で倒してきた!」

「一話言うな」

 




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