のんきなエルフとくたびれオオカミ   作:ターキィ

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53.やっぱり定番、迷宮探索

 

 一行は村で支度をすることにした。人数分の洗濯物を報酬とともに村の女性に預けると、女性の友人や娘たちがこぞってやってきて手伝っている。

 

「ダンジョンの深さは」

「まだわからんそうだ」

 

 ジロとウルバンは冒険者たちからの情報を整理していた。とはいえ商売敵なのであまり有益な情報は入ってこない。

 

「どんな魔物が生息している」

「まだわからんそうだ」

「……どういったタイプだ、洞窟か、遺跡か」

「それもまだわからんそうだ」

「そうか」

「何もわかってないじゃん!」

 

 何もわからないということが判明し、事前調査は成功した。

 

「失敗だよ!」

 

 しかしながら、なぜわからないかというとそれには理由があり、まだ帰還した冒険者がいないからだ。つまりは階層が深く攻略や帰還に時間がかかるか、さもなくば恐ろしく危険な場所だということになる。それがわかっただけでも収穫だったかもしれない。たぶん。

 となれば、実際に入ってみることが一番であろう。危険を察知し意見を翻して入るのを嫌がるステラを引きずり、一行はダンジョンへと足を踏み入れた。

 

「あーしは人間に厳しいギャルなんだけどぉ。第一階層の守護者やってまーす」

「いきなりヤバい奴が出ちゃった!?」

 

 ダンジョンに入るとすぐに目の前にいたのは一人の女であった。見た目は人類種のようだが、足があるはずの部分が黒いモヤのように揺らめき実体があるのかどうかも定かではない。そんな謎めいた女が軽い口調で挨拶をしてきたのである。しかも血のついた鉄の棒を持っていた。

 

「まさか人間に厳しいギャルとは!」

「知っているの、ウルバンさん!」

「うむ、あやつはな……」

 

 ウルバン曰く、人間に厳しいギャルとは上級の魔物であり、その名の通り知的生命体全てに対して厳しい態度を取る。その強さは並の冒険者では逃げることさえも叶わず、敵対すれば死は免れない。とはいえ言語を解し、いきなり襲ってくるという様子でもないので、ジロたちは会話を試みることにした。

 

「失礼ですが、お嬢さん、ここを通していただけませんか。我々はその奥に用事があるのです」

「無理でーす。あーし門番だしー」

「そこをなんとか……」

「ダメだしー」

 

 どうやら簡単に通してくれる気はないらしい。だが、こちらもはいそうですかと引き返すわけにもいかないのだ。ここで引くぐらいならば最初からこんなところまで来ていないのだから。

 

「仕方ない。奥の手を使う」

 

 ジロが彼女の前に立つ。奥の手とは一体何なのか!?

 

「くぅ〜ん、くんくぅん、くぅ〜〜ん……」

 

 彼はウルウルとした瞳と甘えた声を出しながら上目遣いで彼女の顔を覗き込み始めた! 一同はドン引きである。

 

「えぇ……」

「うわぁ……」

 

 しかし、ギャルには効果は抜群だったようだ。

 

「かわえかわえ……んもー、特別だよ?」

 

 そう言って彼女はあっさりと道を開けてくれた。

 

「さぁ、行こうか」

「う、うん……」

 

 釈然としないまま第一階層を突破した彼らは奥へと進んでいく。第二層は密林のような場所だった。湿気が高く、足元はぬかるみ、草木や蔓植物が多く生えていて視界が悪い。

 

「ここは、森とは違いますね……?」

「ううむ」

 

 熱帯雨林というものを知らないジロとステラは目を丸くしていた。この世界にももちろん存在するが、一般には知られていない。そのため二人が驚くのも無理はないことであった。一方で元現代人の二人と知識人であるウルバンは知っている。

 

「すごいすごい、洞窟の中にこんな密林があるなんて!」

「たまげたもんだね」

 

 感心するようなアカネとウルリーケであったが、ウルバンは恐怖を感じている様子であった。

 

「油断するな、この先に何があるかわからんぞ……南方の森林には多様な動植物が存在する、つまりは多様な魔物も存在するということだ」

 

 そしてこの密林の深さ、このダンジョンに潜った冒険者が一人も帰還しないのも頷ける。とにかく、一行は先に進むことにした。

 

「あれを見ろ!」

 

 歩いていると、突如ウルバンが叫んだ。彼が指さす方向を見ると、そこには長いマズルに豚鼻、そしてアライグマのような体毛、鋭い爪を持つ生き物がいた!

 

「見ろあの爪! 我々を袈裟斬りにしてしまうぞ!」

「いや、アカハナグマだよあれ」

 

 そう、その動物の正体はアカハナグマであった! この宇宙で最も可愛らしい哺乳類である(作者調べ)。雑食で虫や小動物を食べるが果実も好物であるとのことらしい。可愛いのである。

 

「可愛いな」

「かわいいですね〜」

 

 ウルリーケとステラはその愛らしさにすっかりメロメロになっているようだった。しかしジロはそれが不服な様子である。

 

「いや、俺の方が可愛いだろステラ」

「え、いや流石にそれは……」

「俺の方が可愛いし」

「ジロさんなんで張り合ってんの!?」

 

 密林に笑い声が響く。一行はダンジョンの中ということも忘れ、のんきにジャングルクルーズを楽しんでいた……。

 

 

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

「さて、ようやくお初にお目にかかるな。お二人さん」

 

 ダンジョンの最奥部には、鱗に覆われた巨体を持つドラゴンがいた。ヘビのように長い身体と短い手足、しかも単なるドラゴンではなく、神龍と呼ばれるあらゆる事象を司る存在である。

 

「血を流しながら歩め、茨の先に道がある……トキジロー・ホージョー、ステラ・シュコダ……」

 

 この神龍こそ、迷宮と時の試練を司る神龍、カクリヨノヤチホコノアメノカガチであった。

 

「名前長いからこの者の事はカクちゃんって呼んでね!」

 

 カクちゃんは神話で言うところのトリックスターである。この者はいたずら好きであり、時に人を助け……ることは殆どない、主に人を困らせる存在であった。とはいえ、それは世界をより良い方向へと向かわせる……時もある、殆どの場合は荒らし・嫌がらせ・混乱の元になる。

 

「この者はお前たちを見ていたぞ……ずっとな……」

 

 カクちゃんはジッと壁を見つめて喋っていた……この者の目にはジロとステラの行動が映っているのだろう。ではなぜ、この二人を見ているのか。彼らには、この世界の命運を分ける重要な使命があったからだ。そーなの!?

 

「だが、無事この者の元へと辿り着けるか……まあ辿り着けなかったらそれまでという話だが」

 

 薄暗い洞窟で不気味な笑みを浮かべるカクちゃんは大層不気味……あえて言うならキモかった……。

 

「え!?」

 




どうでもいい設定
 ドラゴン
あらゆる事象や概念を司る神龍、特に何も司っていないその辺にいるドラゴンの二種類に分けられる。
知能を持つ巨大な異形の存在であればだいたいドラゴン扱いされる。
一般的なドラゴンの姿はデカいトカゲに翼が生えたもの。
信仰の対象となっているものもいるが、人の世に迷惑をかけるならず者ドラゴンも少なくはない。
神聖なようで邪悪、遠いようで身近な不思議な存在である。


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