のんきなエルフとくたびれオオカミ   作:ターキィ

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58.奪われた鏡(あとパンツ)

 

 一行はオークの国の一つであるセプティマーニュに入った。この国はオークの部族社会から脱却し、王と領主による統治が行われている国であった。また、首都トゥーロ・マルテは神龍教の聖地であり、多数の巡礼者が訪れる観光都市でもあった。とはいえ、血生臭い風習のいくつかは受け継がれている。一行は現在、セプティマーニュ北西の城塞都市カルサックを訪れていた。丘の上のオッピドゥムを近代化改修した石の城塞の建設が進められている。北隣のオークタニアとの戦争に備えたものであった。下町には城塞建設の為の出稼ぎ労働者でごった返していた。

 

「求人情報を見ると、普通に冒険者やるより儲かりそうですね!」

 

 ステラが目を輝かせてそう言うと、ジロの方を向いた。

 

「嫌だ」

「まだ何も言ってませんけど!」

 

 一行の次なる目的は、きさらぎの鏡を起動するためのクソデカ魔石を手に入れることであった。この大きな街にその情報は存在するのだろうか? 一行は街を歩き回りながら情報を集めることにした。酒場や鍛冶屋、冒険者ギルド、ケセランパサラン屋などを訪ね歩くも、これといった情報は得られなかった。路地裏にも入ってみるが……。

 

「ハナ、ハナはいりませんか」

 

 ハナ売りのオークの少女がいた。少女は小さな籠を持ち、道行く人々に声をかけていた。

 

「ハナはハナでも新鮮な人間の鼻だがねぇぇーーーッ!!!」

「ひぃっ!? 猟奇殺人者!!」

 

 彼女は衛兵に連れて行かれた。

 

 「今のくだりはなんなの……?」

 

 一行は街外れにある墓地を訪れた。そこは荘厳な雰囲気に包まれていた。墓石が並ぶ中、一つの墓の前に男が一人佇んでいた。男は黒いローブに身を包み、フードを深く被っていた。彼は振り返り、ジロたち一行の姿を見た。

 

「フッ……よく来たな、ゲンザブロー」

「いえ、人違いです」

「あ……すみません……」

 

 男は慌てて謝罪すると、再び墓の方へと向き直った。しばらくすると、狼人、エルフ、人類種、砂猫人、ドワーフの五人組が現れ、彼と話を始めた。

 

「えぇ……」

 

 狐につままれたような心地でそれを見守る一行であったが、彼らは既に男の術中にハマっていたのである。男は稀人であり、例の女神の神託を受け、きさらぎの鏡を狙う刺客なのである。彼は幻惑魔術の使い手であった。ジロたちは彼の胡乱な幻術にまんまと騙されてしまう。一行のコンパチみたいな連中は幻覚であり、男は彼らの物資を物色していた。しかし、そんな幻術にかかっていない者がいた、ステラである。エルフの肉体は強い抗魔法能力を持っており、幻術を打ち破るのだ!

 

(ああいう悪党って、何されるかわからないですし、黙って見ておこう……)

 

 が、恐怖に抗う力はなかった。ステラの属性は悪、悪はより強い悪に弱いのである。男はきさらぎの鏡を盗み出すと、その場を後にした。すると、幻惑術が解除される。

 

「あれっ、あいつら急に消えたぞ」

 

 ウルバンが辺りを見渡し、耳をそばだてる。先程まで墓地にいた男たちは姿を消した。

 

「あれは幻惑術です! 男の狙いはきさらぎの鏡! 私達の馬車を荒らしていました!」

「え、ホントに!?」

 

 急いで馬車に駆け寄る一行、荷物は荒らされ、きさらぎの鏡(とアカネのパンツ)は盗まれてしまっていた。

 

「私のパンツが!!」

「しかしステラ、よく幻惑術を看破したな、しかも盗むところまで見ていた……なぜ男を止めなかったんだ」

「そ、それは……」

 

 鋭い視線のウルリーケに問い質され言葉を詰まらせるステラ。しばらくして、意を決したように口を開いた。

 

「それは、わ、私が、弱っちくって、人生の何事からも逃げてばかりだからですぅっ!」

「いやそこまで追い詰めたつもりじゃない! ごめん! ごめんね!」

 

 手で顔を覆うステラを慰めようとするウルリーケであったが、これはステラの保身術である。相手に罪悪感を抱かせることで自己正当化を図るという高等テクニックなのだ! 両手のひらの下でステラはほくそ笑んでいた。最低だ。とにかく一行は、男の行方を追うことにした。

 

「あのクソ野郎、パンツ絶対返してもらう……!」

「一回盗まれたパンツをまた履くつもりなのか?」

「……むぅ」

 

 

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

「くふふ……処女のパンツは良いパンツ……!」

 

 なんだか気色の悪い最悪のフニクリ・フニクラみたいな事を言いながら道を歩くのは先程の幻惑術の男である。まんまときさらぎの鏡とアカネのパンツをせしめた彼は、上機嫌で街を練り歩いていた。

 

「さて、このきさらぎの鏡……どうやって女神に届ければいいのか?」

 

 彼は頭を悩ませていた。女神は手に入れた鏡をどのように渡すかを指定しなかったのだ。置き配とかでいいのだろうか? 届け先の住所はどこなのか? というか本当に実在するのだろうか? 疑問は尽きないが、とにかく鏡は入手できたのだから良しとしよう。そう自分に言い聞かせて帰路につく彼であったが、追手はすぐそこまで迫っていた。

 

「ボケェ〜〜〜!! 殺すぞ〜〜〜〜!!」

 

 鬼の形相のアカネが追いかけてくる!

 

「わっ、早い! もうバレたのか!?」

 

 魔法を使う間もなく取り押さえられてしまった。

 

「ひひぃーん!」

「この腐れ変態野郎! 私のパンツ返せ!」

 

 追いついた他の面々にも取り囲まれ、男は観念するしかなかった。

 

「い、いやだ! 処女のパンツは手放さない!」

「気持ち悪いよ! てか私処女じゃないし!」

「は?」

 

 その発言に男の動きが止まる。そしてゆっくりと立ち上がるとこう吐き捨てた。

 

「チッ、淫売が……」

 

 男はローブを脱ぎ去る、すると四つ足と蹄、面長な頭、そして角が顕になる。この男はユニコーンであった!

 




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