のんきなエルフとくたびれオオカミ   作:ターキィ

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63.アクの(強い)稀人登場

 

「きさらぎの鏡を渡してもらう」

 

 虎獣人のおっさんの一言により一行に緊張が走る。さぁ、戦いだ!

 

「戦いって言っても、いつもしょっぱい塩試合ばかりじゃないですか」

 

 だ、だっていい感じのを書けないし……。

 

「それはインプットが足りてねえんですよバカ!」

 

 とにかく、虎獣人のおっさんは、斧を掲げる。その斧はきらびやかな装飾が施されており、魔術的オーラを放っていた。

 

「僕の名はサンダーアックス将軍だ!」

「サンダーアックス将軍って、適当過ぎるよ! そんな名前でいいの!?」

 

 ツッコミを入れるアカネであったが、もちろん相手は聞いていなかった。

 

「まず僕からいかせてもらおう、"雷鳴の召喚(コールサンダー)"!」

 

 彼が呪文を叫ぶと、たちまちドス黒い雲が空を覆う。そしてゴロゴロと雷が轟く。

 

「稀人は天候も自在にするのか」

 

 珍しく目を見開き、ガチ驚きを見せるジロ。

 

「その通り、これが僕の祝福(チート)だ。この雲を呼び雨を降らせ、風を起こし嵐を呼ぶことができるのだ。さらに、落雷で敵を焼き払うこともできる!」

「なるほど、それは厄介だ」

 

 それを聞いたジロたちは姿勢を低くすることにした。ここは岩山であり、城の他に避雷針になりそうなものはない上に、魔術によって呼び出された雷は通常のそれとは異なる性質を持つ場合が多い。

 

「伏せても無駄だ! 行け! 雷よ!」

 

 ピシャッと稲光が閃くと、電気の柱は凄まじい音を立て、真っ直ぐとサンダーアックス将軍の持つ斧に突き刺さった!

 

「ぎゃああああああああ」

「金属製のものを高く掲げてるから……」

「どうせまたこんなオチになるような気がしてたんですよね」

 

 将軍が倒れると、雷雲はすぐに晴れ、元の青空に戻った。今のところ勝手に自滅し、特に何かされたという訳でもないので、アカネは彼を治療してやることにした。しかし気絶したまま目を覚まさないので、城壁に寄りかからせておいた。

 

「……」

「……」

「……」

 

 沈黙がその場を支配する。みんなもうぶっちゃけ帰りたいと思っているのだ。やっぱり罠だということもわかったし。

 

「考えていることを当ててあげましょうか」

 

 ステラはそう切り出すが、ジロとアカネは首を振った。

 

「いや、入ろう。せっかくここまで来たんだし」

「せっかく来たからで命まで懸けたくはないけどね……」

 

 そうして彼らは城内へと入っていったのだった。

 

 

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 城の謁見の間では一人の稀人の青年が、一行がこの城に入ったことを察知した。

 

「ついに来たか。きさらぎの鏡は俺のもの……そして俺の悲願を達成する!」

 

 玉座に座る彼の周りには四人の稀人の男たちが立っていた。

 

「オデ……人間……壊スぅ……!」

 

 ブクブクに肥えた巨体と醜悪な顔を持つトロルのような男。

 

「ゲキョキョキョキョキョ!!」

 

 凶悪な面構えをしたガーゴイルの男。

 

「うじゅらうじゅら……」

 

 巨大な単眼と触手に覆われた球状の肉体を持つ男。

 

「……ホントに元現代人なのかこいつら!?」

 

 異様な様子の三人に青年は戦慄する。残りの一人の男の見てくれは普通ではあった。しかし。

 

「あのアカネって子、可愛いし輪姦(まわ)そうぜ」

「いやそんな事をするつもりはない……それは鏡を奪った後にお前だけで好きにしろ!」

「えー。勿体ないよ」

 

 そう言って男は青年の肩を叩く。

 

「まぁいいじゃねぇか。俺たちは仲間なんだしさ。みんなで楽しくやろうぜ?」

「……お前など、いつでも殺せるんだからな……」

「別に、気を悪くするようなこと言ってないだろ?」

 

 彼らを統べる青年の名はヨカゲ・キラ(吉良 夜影)。彼も転移者、稀人であり、女神から祝福(チート)を授かっていた。彼の異世界生活は恵まれたものではなかった。彼はクラスメイトと共に召喚されたのだが、彼の能力はあまりにも凶悪過ぎた、人殺しにしか使えない能力だったのだ。元から仲の良い友人などがいなかった事も災いし、彼は腫れ物に触るかのような扱いを受けることになる。誰も彼を怒らせて死にたくはないため、彼の言う事には誰も逆らわない。無論、それが好意や尊敬によるものではないと彼はわかっており、孤独感を更に強めるだけであった。そして女神からのお告げを聞き、きさらぎの鏡を手に入れ、新たな力を手に入れて自身の思うような平穏な生活をと考えていた。そのために、同じく鏡を狙う稀人たちを集め、この城に陣取ったのだが……。

 

(クソっ、碌なやつがいない!)

 

 彼は内心毒づいた。この四人は皆性格、というか人格、というかそれ以前に色々と難がある、いやありすぎるのであった。唯一のまともな人材は今、城門で伸びている。一応彼らなりの何らかの思惑はあるようだが、今はどうでもいいだろう。とにかく早く鏡を手に入れたい一心であった。

 

「もういい、全員で行くぞ! 奴らを始末し、きさらぎの鏡を手に入れる!」

 

 そして彼らは謁見の間を飛び出した。

 

 

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 ジロたち一行は中庭に入っていた。そこにはかつての女神信仰の儀式の痕跡や装飾の残骸が残っており、石畳には所々に雑草が生えていた。かつては綺麗に整えられていたのであろう庭園も、今では見る影もない。その荒廃した光景を見て、ステラは言った。

 

「邪教が滅んでいる光景を見るのはスッキリ爽やかないい気分ですねぇ!」

「最悪な感想だ……」

 

 呆れた様子でアカネはぼやく。そんな彼らの前に五人の男たちが現れた。ヨカゲたちである。

 

「ついに来たか……アカネとやら」

「ええっと、来たのはあなたたちの方ですけど」

「いや、この城にってことだよ!」

 

 ステラの言葉にヨカゲがツッコむ。しかしすぐに気を取り直したようで言葉を続ける。

 

「この城は、あの女神の信徒がかつて儀式を行っていた場所らしい……あの女神に聞いた。つまるところ、きさらぎの鏡を手に入れればすぐに渡すことが出来る」

「ちょっと聞きたいんだけど、きさらぎの鏡を手に入れて女神は何をするの?」

 

 アカネは尤もな質問を彼にぶつけた。

 

「それは俺の知ったことではない」

 

 しかし彼は首を横に振った。他の四人も知らない様子であり、アカネは憤慨する。

 

「なんにも知らないのになんで渡さなきゃいけないの」

「……女神は報酬を用意しているらしい。その後のことなんてどうでもいい。お前のこともな」

「腹立つなぁ……」

 

 そんなやり取りをしている間、ジロと、四人の男たちは静かに臨戦態勢を取っていた。特にガーゴイルの男とトロルのような男の二人は涎を垂らしながら舌なめずりをしていた。

 

「クキャキャキャ! オレサマのデータによれば、まともに戦えるのはあの狼男だけ! ギョギョギョギョ!」

「オデのでーたでは……獣人のぱわー、油断ならない……!」

「お前たちデータキャラなのかよ!?」

 

 ヨカゲが驚愕した。続けて触手の男も声を上げた。

 

「うじゅるじゅる……ワタシのデータでは、『妖術』なる力を使うと出ておりますじゅる」

「お前もなの!?」

「あ、俺はレイプキャラだぜぇ」

「そうか、どうでもいい」

 

 触手の男にもツッコミを入れるが、軽薄そうな男には塩対応のヨカゲであった。そんな中でもジロたちは警戒を緩めない。

 

「ジロさん! リーダーっぽいやつと触手とトロルとガーゴイルとチャラ男の相手をお願いします!」

「全部じゃないか」

 

 無茶振りをするステラにボヤくように言いつつも、当然そのつもりで刀を抜くジロであった。

 




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