のんきなエルフとくたびれオオカミ   作:ターキィ

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85.Everybody say HO!

 

 それぞれが思い思いに好き勝手な行動をしていたが、ついにサーカスの演劇が始まる時間が来た。

 

「皆さん急がず慌てずに、こちらへどうぞー! チケットを出していてくださーい!」

 

 人々が大テントにぞろぞろとなだれ込む。その中にはアカネとエルヴィンもいた。

 

「わぁ、すごい熱気」

「アカネ、手を」

 

 彼らははぐれないように互いの手を握る。羽毛が彼女のてをくすぐり、触り心地が良い。

 

「しかしチケットが買えたのは僥倖であったな」

「そうだね。楽しみ〜」

 

 人混みに流されながらも、なんとか二人は観客席についた。

 

『さあさ、紳士淑女の皆さん! サカキバラ曲芸団の大曲芸会へようこそ!』

 

 円形の舞台の中心で、派手な格好の男性が大げさな身振り手振りで話す。

 

『司会を務めさせていただくのは私、団長のサカキバラです! 自己紹介を、と言いたいところですが、皆さんもう待ちきれませんよね? さっさと演目を始めてしまいましょう!』

 

 団長は舞台袖に向かって合図を送る。同時に音楽が鳴り響き、舞台袖から仮装した団員が走り出てきた。観客たちの間から拍手喝采が起こる。それから次々と芸が披露され、サーカスの演劇は進んでいく。世にも珍しい動物や魔物が芸をするものや、変なおじさんが南京玉すだれを披露するもの、魔法を使ったド派手なイルミネーションもあった。南京玉すだれは全然盛り上がらなかった。

 

『次の演目は特別ゲスト! なんと珍しい西方エルフの登場だ!』

 

 それを聞いたアカネとエルヴィンは顔を見合わせた。

 

「……絶対ステラだ」

「うむ……」

 

 二人は確信する。そうして舞台袖から現れたのは、白いスーツと帽子にサングラスを身に着けたステラの姿であった。

 

『YO! YO! YO! みんな盛り上がってるかい!? 俺は"MCクイーン・ステラ"!』

「"ステラ・ザ・パフォーマー"は!?」

 

 事前に見かけていた姿とは全く異なる出で立ちであった。

 

『パーティータイムの始まりだ! 今日は俺のダチを紹介するぜ、"ジロ・ザ・ラッパー"だ!』

 

 それに次いでニット帽とタンクトップ、ダボッとしたジーンズを身に着けたジロも登場する。

 

『みんな! 盛り上がってるかい!』

 

 その声に応えた観客たちが沸く。

 

「え、何これ……」

「わからん……」

 

 アカネとエルヴィンは混乱したが、諦めて会場の盛り上がりに流されることにした。そしてファンキーな音楽が流れ始めると、ステラとジロの二人はビートにノッて歌い始める。

 

∠川 °ヮ°lト、 ―X――A―BB―

   「諦めろ人生良いことなんてない!」

 

ミ •ᴥ•ミ   ―X――A―BB―

   「諦めろ人生良いことなんてない!」

 

「なんか流れてきた! 音ゲー!?」

「しかも歌詞がかなり後ろ向きだぞ!」

 

 ポップな音楽に合わせてめっちゃ暗い歌詞を歌う二人。しかし観客はノリに流されているのか気付いていないのか盛り上がっていた。

 

ミ •ᴥ•ミ    ―B―B―A―[L1]―

    「Everybody say HO!」

    『HO!!』

 

ミ •ᴥ•ミ    ―A―A―X―[R1]―

    「Everybody say All right!」

    『All right!』

 

 アカネとエルヴィンだけが、取り残されているような気がしていた。一体何がAll rightだと言うのだろうか。

 

「ちなみにこのパート、投稿サイトによってコントローラーの種類が違うらしいぞ」

「そんなしょーもないとこに力入れなくていいから……」

 

 会場の熱気も高まりこれからクライマックスという時、突如として舞台袖から乱入者が現れる。

 

餓者髑髏(がしゃどくろ)召喚(イジェークト)!」

 

 現れた、セーラー服を着た人類種の少女が札を持ってそう叫ぶと、巨大な骸骨のような魔物、餓者髑髏が突如として会場内に現れる。観客たちはそれを見てパフォーマンスかと思ったのか、大盛り上がりした。一方で、ジロとステラはそれに気がついていない。

 

「踏み潰せ!」

 

 そして彼女が命令を出すと、その餓者髑髏は足を上げて、舞台で歌う二人を上から踏み抜いた。それを見て、観客たちは流石にただ事ではないと感じたのか、一斉に逃げ始めた。

 

「な、なんだこれ!」

「演出か!?」

 

 混乱の中、アカネとエルヴィンは群衆に飲まれて席を立てずにいた。

 

「敵の襲撃?」

「わからないけど、多分そう! どうしよう、エルヴィンさん!」

「吾輩、エルヴィン・ホッジャ航空にお任せあれ!」

 

 エルヴィンはアカネの身体を抱えると、背中の翼を広げて飛び上がった。

 

「わ、飛べるの!?」

「もちろん、鳥人だからな」

 

 彼女を抱えたまま、彼は円形の舞台へと降り立つ。そして謎の少女と対峙した。

 

「貴様は何者だ」

「お前らも女神様の敵だな」

 

 謎の少女は彼らを睨んだ。

 

「その札、魔力を込めているな。この巨大スケルトンも貴様の仕業だな」

「私は魔術札の闘士、決闘者(デュエリスト)ってとこね」

「あの、エルヴィンさん、私を降ろしてから話を始めてくれる?」

 

 お姫様抱っこされたままであることにアカネは不満を抱くが、彼はそれを無視して話を進める。

 

「生憎だが、その足の下にいるのは吾輩の友人でな。返して貰おう」

「そうはいかない。女神様の邪魔をするやつは始末するように命令を受けている」

「哀れだな、その女神様とやらが本当に正しいことをしていると思っているのか?」

「あの、降ろして……」

 

 睨み合いを続ける二人と恥ずかしくなってきたアカネ、そして餓者髑髏の足の下でいいから早く助けてくれと話を聞きながら思うステラとジロであった。

 




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