実家に帰ってるのでスマホから投稿です。打ちにくい…。
あたしには大切な親友がいる。
「お助け大将」なんて呼ばれるくらいには困っている人を放っておけないあたしのことをフォローしてくれたり、逆に時々とんでもないことをするダイヤちゃんに巻き込まれたり……。いつも冷静なようでいて、実のところ誰より意志が強いのがダイヤちゃん。
そのダイヤちゃんが、初めて泣いているのを見たのはマックイーンさんが繫靭帯炎を発症したと聞いた時だ。
ウマ娘なら誰でも聞いたことがあるその病は、オグリキャップさんという伝説のスターを除けばほぼ不治の病とされていて。……なんであの人復活できたんだろう?
憧れの人の苦しみを想って涙を流すダイヤちゃんの気持ちは、あたしにも痛いくらい分かった。テイオーさんの骨折とか、菊花賞とか、骨折とか、春の天皇賞とか、骨折とか、宝塚記念とか………。それでも復活するのがテイオーさんなんだけど! テイオーさんはやっぱり強くて、カッコ良くて、最高の――――じゃなくて。
ともかく悲しむダイヤちゃんに何も言えなかったあたし。それはダイヤちゃんの家の人たちも同じで。
ある意味、他人という無責任な立場だからこそだろうか。
妙に自信満々なその人に断言されると、なんとなく納得させられるような、奇妙な確信のようなものをその人は抱いていた。
『もう無理だ、と言われたテイオーの復活を信じているヤツがいるんだ。だからテイオーはターフに帰ってきた。まあマックイーンには無理かもだけど。信じてくれるファンもいないみたいだし』
『っ! わ、私だって信じたいです! でも、マックイーンさんが一番辛いのに……』
『まあ気持ちがなきゃ復帰しろなんて言われても辛いだけだろうな。でもさ、最高のライバルが奇跡の復活をして、黙って諦める性格なのか。メジロマックイーンは』
有マ記念―――ビワハヤヒデが勝つだろうと思われたそのレース。三度も骨折し、一年ぶりの復帰レースでもなお、4番人気になったトウカイテイオー。人気はあった。けど、それはきっと彼女の元々の人気も込みの順位で。
『勝つよ、トウカイテイオーは。………それはそれとして、俺はライス応援するからキタちゃんこのテイオー応援グッズよろしくな』
がくっときた。
なんかいい感じのこと言ってるのに、締まらない人だった。
ダイヤちゃんも呆れてジト目になっていた。
『だってテイオーが勝つし……ライスなんて5番人気だぞ。応援しなきゃ』
『むむむ。それはそうですけどぉ……お兄さん、ライスさんのこと大好きですよね』
『そりゃあファンだからな。キタちゃんだってテイオー以外応援しないだろ』
『それはまあ』
結果は、知っての通り。
テイオーさんが劇的な復活勝利を飾り――――それに負けじと、マックイーンさんも治療とリハビリに打ち込み始めた。
ちなみにお兄さんの応援していたライスさんは5着で、何故か首を捻っていたけれど。
『あれ、ライスって5着だっけ? なんか掲示板外だったような……』
『ファンなのにひどくないですか…? さっきまで「うおおおライスが来た! ライス来た? あれ、ライス来てる!? ライスー!」とか大はしゃぎだったのに……』
その後も『ライスは春天勝つよ』とか言っておきながら『なんか変だなー』とか言っていたり、春の天皇賞三連覇でマックイーンさんを超える最強ステイヤーと言われるようになると『あれなんでライス去年の春天勝ってたんだっけ?』と言い始めたり。
まあそんなヘンテコなところのあるお兄さんではあるけれど、ライスさん以外の大きなレース結果はピタリと的中させることから、あたしとダイヤちゃんもレースの前は頼りにしていた。結果を当てるとウイニングライブが前の方で見れるので。
それはともかく、ダイヤちゃんもマックイーンさんの復活が見られて。お兄さんに言われてあたしと同じように手作りのお守りを渡していたらお礼も言われて大満足!
それからだろうか。
なんやかんやでお兄さんにダイヤちゃんが打ち解けたのは。
レース後に寄り道してみんなでスイーツを食べたり、お兄さんの受験勉強の息抜きの名目で遊びに行ったり、あえなく受験に失敗したお兄さんのために、ダイヤちゃんがお父さんを説得してアルバイトで雇ったり―――。
『……別に、借りを返しただけですもんっ』
『うん、そうだね』
いつもお淑やかにしてるから、拗ねたりツンツンしているダイヤちゃんも可愛いなーと思っていたり。
そんなダイヤちゃんだから、トレーナーを選ぶと聞いた時に自然とあのお兄さんに頼むんだろうなぁと思った。あたしはテイオーさんがいるスピカに入れて貰ったけれど。ダイヤちゃんは乗り気じゃなかったし。
だから、ダイヤちゃんの最初の模擬レースの時――。
自然とあの人を探していたから、遠くの方でこちらを見ているのにも気づいた。
「あっ、お兄さんだ」
「えっ、本当!? キタちゃん、私大丈夫かな。変なところというか……からかわれたりしそうなところ、無い?」
「うんうん、大丈夫! いつものダイヤちゃんだよ!」
「いつもの……ううん、それはそれでなんとなく気になるような……」
えー。ダイヤちゃんならいつでも可愛いのに…。
心なしか気合が入りなおしたダイヤちゃんは、あたしとの模擬レースに臨んで。油断はこれっぽっちもしてなかったのに、ハナ差で差し切られて誇らしいような悲しいような…。
「まあキタちゃんはこれからだよ。大器晩成というか……どちらかというとマックイーンタイプ」
「マックイーンさんかぁ……ダイヤちゃんに聞かれたらちょっと拗ねられちゃうかも!?」
「かもなぁ。まあこれからだよ。気持ちさえあれば、君はもっともっと強くなる。あのゴールドシップを超えるくらいに」
「えっ。ゴルシさんかぁ………ゴルシさんかぁ……」
「あの人くっそ名ウマ娘だからな? 普段の言動はともかく」
「うぅ~、分かってはいるんですけど……もっとこう、「お祭り娘!」みたいな感じがいいです」
そんなこんなで和やかに話している間に、ダイヤちゃんとサトノ家の人からトレーナー選抜試験の説明があり。
「うーん。さすがダイヤちゃん。大規模だなぁ……お兄さんも頑張って下さいね!」
「えっ? あー、俺はパス」
「ええっ!?」
「だってほらサトノのご令嬢なんてプレッシャー辛そうだし。気安すぎて逆にやりにくそうだし」
安心させる意味では気安い方がいいだろうし、ダイヤちゃんなら指示を聞かなくて〜なんて心配もいらないだろうからいいことずくめな気がするけど…。
「もしかしてお兄さん、もう担当決めちゃった、とか…!?」
「いや、ないけど。キタちゃん、心抉るのやめて」
良かった…。ダイヤちゃんに何も言わずに担当決めるなんてしたらどうなることか…。
普段怒らない人が怒ると怖いらしいし。
「お兄さんは、ダイヤちゃんの走りは興味ないんですか?」
「えー。うーん、まああの差しのキレは好きだけど……キタちゃんに勝てるあたりかなりのものだし」
「あたしが基準なんですね」
「キタサンブラックだからな」
なんだかラスボスみたいな扱いのような……って、それはないか。
でもお兄さんだし……とりあえずダイヤちゃんのトレーナー選抜試験、受けるだけでも受けてくれるといいんだけど。
「というか、無視されたらダイヤちゃんが悲しむと思いますよ?」
「えー。コネで担当選びたくないし……最初のパートナーだぞ?」
「もしかしてトレーナーさん、ライスさんみたいな可愛い子を担当にしようと…!?」
「ないから。トレーナーは教師だから」
でもドリームトロフィーリーグに行ってすぐ結婚したタマモクロスさんとか、愛の力で生涯無敗のとんでもない記録を打ち立てたサイレンススズカさんとか、割とトレセン学園ではけっこうあるような…?
「サイレンススズカのトレーナーはほら、なんかもうアレだし」
「みんなもトレーナーとそういう関係にーって、結構意識してるみたいですけど」
「そんなんだからトレセン学園は婚活会場とか言われるんだよ…」
「あはは…」
まあみんな恋バナとか大好きだから…。
ダイヤちゃんは……うーん。
「というわけで、試験受けましょう?」
「嫌だ。大丈夫だって、ダイヤなら放っておいてもGⅠ勝つから」
「うーん。じゃあダイヤちゃんに頼まれたら?」
「断る」
お兄さんも結構頑固だからなぁ……ダイヤちゃんほどではないけど。
これはもうダイヤちゃんが直接説得しないとどうにもならなそうだ。
そんなことを考えてたら、ダイヤちゃんが泣かされてた。
………まあ、ちゃんとトレーナーになったみたいだし、今日のところは見逃してあげよう。