サトノダイヤモンドが砕けたら   作:アマシロ

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トレーニング、始動!

 

 

 

 

 

 

――――担当トレーナーの仕事は多岐にわたる。

 

 

 

 担当ウマ娘の体調管理、練習メニューの構築、出走レースの考案、練習場所や道具の確保、各種申請など。

 

 マネージャーみたいなことまでするので、そりゃあ担当がいないウマ娘がトゥインクルシリーズに出走できないというのも頷ける。忙しすぎて学業と練習に加えて両立させるのが厳しすぎるのだ。

 

 

 

 特に樫本理事長代理みたいな管理主義のトレーナーに言わせると、学生が自分を完璧に管理するなんて無理なのでトレーナーが代わりに管理するべきとのことであり。睡眠時間から食事量までの管理が推奨されていたりもする。

 

 

 

 ダイヤ――――サトイモはそのあたりしっかりしているので、妙な暴走さえ始めなければ任せておいてもいい。

 

 

 とりあえず優先していることとしては、情報収集と練習メニューについて。アプリトレーナーかな?と思われるのは今のところサイレンススズカのトレーナーくらいで、クラシック無敗三冠からの海外でも無双して無敗十冠という明らかに意味不明なことをしている。そして担当と結婚している。チームリギルのサブトレでもあるし、ヤバすぎて誰も文句言えない。無敵か。

 

 ついでにネットでも愛を叫ぶトレーナーの動画がMAD素材として流通し、レースの時期になるとヤツの叫び声とともにサイレンススズカがどこからともなくぶち抜いていくMADが出てくる。なんでや工藤。

 

 

 

 

 

 他はほぼ“史実”通り――――なんか怪我で引退したはずのサニーブライアンが無事だったりするが、あとはライスシャワーが最強ステイヤーになってるくらいだ。

 なんか女性トレだったので噂のお姉さまだろうか。

 

 ダイヤのクラシック期の最大のライバルであるマカヒキと、あとなんかあの……レコードで皐月賞勝った……名前忘れたけど、聞けば多分思い出すはずのウマは全然見当たらないし、モブウマ娘になってるっぽいのでとりあえず大丈夫だろう。

 

 急にアプリトレーナーによって育成された頭サイレンススズカなウマ娘が出てきてぶっちぎられる心配は多分いらない。いらないよね?

 

 

 

 

 

 後の問題は真似してどうぞとばかりにサイレンススズカのトレーナーがアンクルを使ったプールトレーニングを公開していることだろうか。

 

 アンクルと青汁(ロイヤルビタージュース)!? メイクラことクライマックスに幽閉されたハズでは!? 自力で脱出を!?

 

 

 

 

 

 とはいえ実際アンクルつけてウマ娘を泳がせるのは簡単じゃない。

 安全対策もあるのだが、単純に死ぬほど辛いのでヒシミラクルみたいな普通の?ウマ娘だと嫌がってトレーニングにならないらしい。

 

 悪名高いロイヤルビタージュースも「そんなの飲まされるくらいなら休みます!」とキレるウマ娘が多いらしいし。ミホノブルボンもそうだが、スパルタトレーニングには適性があるのだろう。うん。なんかキタちゃんがエグいスパルタトレーニングしてる映像が脳裏を過った。なぜ崖登り…?

 

 

 

 

 

 笑顔で泳いで、水着でトレーナーとイチャついてるサイレンススズカのせいで何か勘違いしたウマ娘が続出して、そのまま呪われた練習法扱いになっているが。

 

 

 

 

 

 

「――――と、言うわけで。すみません他のアンクル無いでしょうか」

 

 

 

 

 やってきたのは覇者の魔窟やら日本近代レースの結晶、独占禁止法違反チーム、最近では(サイレンススズカが海外で勝ちまくったことで容認されつつあり)日本オールスターチームなんて言われたりするチームリギルの部室。

 生徒会特別顧問の称号を得て、何食わぬ顔でトレーナーに寄りかかっている最速の機能美こと栗毛のウマ娘がキャラ崩壊級のほわほわしたゆるーい笑顔なのを頑張ってスルーしつつ、そのトレーナーに直談判。

 

 

 

 

「あー、他のアンクルね。タキオンが作った速筋にアプローチするための瞬発練習に最適化されたスピードアンクルならあるんだけど……エアロバイクとセットなんだよね。スズカが走る練習ばっかりやりたがるし、プールのスタミナアンクルがあんな感じだから不評でさ」

 

「でもお兄さん、走る練習の方が気持ちいいですよ?」

 

 

 

 

「うん、スズカはそうだろうね。そんなわけで、気乗りしないならあんまり効果も出ないだろうしお勧めはできないかな…」

「いえ、是非お借りしたいです」

 

 

 

 このヤベートレーナーが使っているトレーニングなら、うまく使えればダイヤの助けになれるはず――――そんな想いが出ていたのか、サイレンススズカのトレーナーこと先輩は気まずそうにしつつ言った。

 

 

 

 

「まあ結局のところ、コイツが――――サイレンススズカが凄いだけだから。俺たちはウマ娘に才能と努力と運があると信じて、僅かに後押しするくらいしかできない。あまり思いつめすぎないようにな」

「お兄さ―――トレーナーさんはそう言いますけど、きっと大丈夫ですよ」

 

 

 

 

 急に大人びた雰囲気になったサイレンススズカにちょっと気圧されつつも、お礼を言ってスピードアンクルとエアロバイクの場所のメモを手にトレーナー室に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 するとちょうど授業が終わって着替えてきたのだろう、ジャージ姿のダイヤが興味深そうに練習メニュー案を眺めているところだった。

 ……うん。まあ説得は―――どうだろうか。変わった練習とか好きそうなイメージはあるけど、コイツも一応良いところのお嬢様だ。拒否された時の説得はちゃんと考えておかねば。

 

 

 

 

「サトイモー。ちょっと変わった練習用意したんだけどさ」

「変わった練習、ですか?」

 

 

 

「そうそう、サイレンススズカのトレーナーに頼んでアンクルを借りてな。騙されたと思って――」

「いいですよ、やりましょう!」

 

 

 

 

 満面の笑顔で頷かれた。

 俺のここへ来るまでの苦悩は一体なんだったのか。

 

 

 

「まだ詳細話してないんだけど!?」

「あ、それもそうですね。では、ご説明をお願いします」

 

 

 

 てへ、とおどけるダイヤ。無駄にかわい……あざとい。

 デコの♢流星に肉って書いてやろうかこのあざとさの権化め……。

 

 

 

「……うん。まあ単純に言うとアンクルを付けてエアロバイクをやる練習なんだけど。瞬発力の強化のために最適化されてるらしいから、スピードが重要な皐月賞に良いと思うんだ」

「―――はい! じゃあ早速参りましょう、トレーナーさん!」

 

 

 

「……まあいいや。たぶんめちゃ辛いと思うけど覚悟はしとけよ」

 

 

 

 

 何といっても世界一のウマ娘が使っていた(走りたがって使ってない)練習法だ。並大抵のものじゃないだろう。少なくともアンクル×プール練習はクソキツイと評判だし。

 

 

 

 

「――――覚悟なら、できています。サトノ家の悲願のために、なすべきことをなす。できるだけのことをする覚悟が」

 

「昔から、こうと決めたら絶対譲らない頑固っぷりだからな……。とりあえず俺が休めって言ったら休めよ」

 

 

 

 

 うん、どちらかというと手綱を引く心配をしておいた方がいいかもしれない。

 そんなこんなでアンクルを使ったスピード練習と、あとプールでのスタミナ練習も始まった―――。

 

 

 

 

 

 

 

「―――――っ!? お、重い…っ!? こ、こんな設定で――――いいえっ! ダイヤは負けません……!」

「(胸が揺れて目に毒なんだけど)」

 

 

 

 

 

「―――――っ、はぁっ、まだまだ――――っ!」

「(胸……じゃなくて体幹のブレが抑制できてきたな――――いや! ちゃんと脚で見よう。うん、そうしよう)」

 

 

 

 

「はぁぁぁああああ――――っ!」

「はい休憩! フォームがブレたら違う筋肉を鍛えることになる。本番で崩れたら勝てるものも勝てない――――落鉄しても動じない、強固な下肢と体幹を鍛えるんだ」

 

 

 

「……っ、はいっ!」

 

 

 

 落鉄しても動じないというのは流石に無茶ぶりだが、それでも想定して鍛えておけばまだマシなはず。……妙な鍛え方にならないように、あまり練習できないのは悩ましいが。

 

 

 

 

 

………

……

 

 

 

 

 

 

 

「(……やばい、胸の揺れ具合で体幹の乱れが分かるようになってきた気がする。これはサトノダイヤモンドとのトレーニングに活かせるかもしれない! ……いや活かせるけどさぁ)」

 

 

 

 

 絶対本人には言えないヤツ…。

 ダイヤの奴は「僅かな乱れも見抜いてくるなんて……」みたいな、ものすごーく珍しいことに尊敬の視線を感じるのだが。

 

 これバレたら白い目で見られるどころか処されるのでは?

 笑顔で去勢を迫ってくるダイヤ……無いとは言えないか……。トレーナーは宦官だった?

 

 

 

 

 そしてダイヤは練習に集中しているからいいものの、乳揺れをガン見しているトレーナーとか傍から見たら事案でしかないんだよなぁ……。

 

 ……女性は視線に敏感っていうけど、流石に練習中なら気づかれてないよな? 大丈夫だよな? 少なくともダイヤはなんか嬉しそうだし大丈夫なはず―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の、サトノダイヤモンドの人生はいつもサトノ家の悲願と共にあった。

 サトノの至宝と呼ばれ、お父さまとお母さまのためにもと己を高めんとする日々―――お父さまとお母さまは優しいけれど、なおのこと自分を高めなければと思っていて。

 

 

 だからこそ、キタちゃんの――――そして、あの人の存在も大きくなったのだと思う。

 

 

 

 子どもらしく、一緒にレースで一喜一憂して。

 マックイーンさんに贈るお守りという、自分から一歩踏み出す切っ掛けをくれた人。

 

 

 意地悪で、悪ぶっていて、子どもっぽいのに、実は気配りばかりしていて。レースの結果を殆どいつも当てているのに、誰よりも一生懸命応援して。それに応えるように予想を覆すライスシャワーさん――――初めはマックイーンさんを破った好敵手だからなんとなく好きになれないと思っていたけれど。

 

 

 

 今思えば、子どもらしい独占欲だったのだろう。

 

 

 

 

 

『わたくしは……ダイヤは、ほんとうに――――お父さまとお母さまに寄せていただいている期待に、応えられるでしょうか――――』

 

 

 

 

 本当は、いつだって不安だった。

 だって、知っている人たちだ―――これまで走ってきたサトノ家の方々がどれだけ努力していたかを知っている。それでも勝てなかったのがGⅠで。

 

 

 

 

『大丈夫、お前なら必ず勝てるさ――――サトノダイヤモンド』

 

 

 

 

 根拠のない言葉だと思っていた。

 でもそこに込められたのは、期待ではなくて。

 

 いつだって形のない期待を背負っていた。それが当然だと思っていたし、それに応えたかった。

 

 

 

 

 でも、どこか優し気に微笑むあの人から向けられている感情は。

 きっと、信頼だった。そして同時に、あの人が当ててきたレース結果という実績が、いつの間にか根拠に変わる。

 

 

 

 

 

 

 

『お前はちょっと頑張りすぎなんだよ、キタちゃんほどお祭り娘にならなくてもいいけど、偶にはやりたいようにやればいい』

 

『ちょっ、お祭り娘を悪口みたいに!?』

 

 

 

 

 

 

 

 きっと、年上だからカッコつけたいとかそんな理由だったかもしれない。

 けれど、期待も何もない関係はとても居心地が良くて―――。それでも、必ず勝てるという信頼がほどよく私の背中を押してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう、私もトレーナーさんを信じているから。

 ちょっと変わった練習でも、わざわざ世界一になったサイレンススズカさんのトレーナーさんにまで聞きに行って、少しでも勝てる可能性を上げてくれようとしているのだから文句なんて無い。

 

 この人は悪ぶっていても、頑張っている人が認められないのを何より嫌う人だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 肝心の練習中はなんとなく胸を見られているような気がして仕方のない人だなーと思ったけれど、的確にフォームの崩れを見抜いてくるあたり無駄な才能をしている。なんで胸を見ながらフォームも見れるのだろうか。

 

 

 

 ……まあその、かなり恥ずかしいですけれど。

 毒を食らわば皿までと言いましたし……必要経費……でしょうか? もともとそういう人なのは知っているのでそこまで――――嫌というわけじゃ、ないですし。

 

 

 

 ……………もしもGⅠ取れなかったら、責任取ってもらおうかなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








全然関係ない後書き



イクイノックス君つよい……応援してたけど強すぎて笑うしかなかったですね。
とんでもレコードでまさかの二次創作(ウマ娘自体が二次なら三次創作?)のワキちゃんより速いかもと思いましたが、よく考えたら秋天走ってなかったです


イクイノックス君のエクレアめっちゃ可愛くないです?



 
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