この物語はフィクションです。
実在する人物、団体、地名、事件とは一切関係ありません。
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ベルベットブルーに統一された不思議な喫茶店内。ボックス席の片隅で、一人の少年がゆっくりと瞼を開く…。
燻んだ赤色の髪に、やや切長の瞳。
どこか排他的な雰囲気を纏うその少年に、しわがれた不気味な声が呼びかける。
???『ようこそ、我がベルベットルームへ』
声の主は、奇怪な相貌の老人。
血走った瞳、猛禽類の嘴の様な鼻。
不気味ながらも紳士然とした人物。
少年『誰だい?アンタ…』
赤髪の少年は怪訝に訊ねる。
???『ワタクシの名はイゴール。精神と物質の狭間に位置する、この部屋の住人でございます』
少年『…狭間?』
イゴール『左様。貴方は近い未来、この部屋の客人となるさだめにある』
そう告げると、イゴールと名乗った老人は古びた青い鍵を取り出す。
イゴール『コレは、貴方が客人である証。いずれ貴方は自らこの部屋を訪れる事となるでしょう…』
青い鍵は淡く発光すると、赤髪の少年の体に溶けるように吸い込まれていく。
少年『…ずいぶん勝手だな』
やや不満そうに少年は呟く。
イゴール『不躾で申し訳ない。しかし、これは貴方にとって逃れえぬ縁なのです…』
顎の下に添えた両手を組み直し、イゴールは続けて告げる。
イゴール『それでは、いずれ来るその時まで、ご機嫌よう…』
◆
アナウンス『
少年『…ようやく到着か』
身をくすぐる揺れが止まり、無粋ともとれるブレーキ音に目を覚ました少年は独りごつ。
202X年 4月 17日【曇】
内陸部に位置する地方都市“
これから数年間、自分が暮らす町。
割と新しい駅舎の周りは閑散としている…。ざっと見て目に付くのは交番と、こじんまりとした郵便局くらいだ。
(…まぁ、地方だしこんなもんだよな)
3時間弱の長旅で凝った体をほぐしつつ、事前に教えてもらった住所を目指す事にする。駅前からだと、徒歩で20分くらいか。
(よし!)
やや眠気の残る頭に喝を入れ、歩き出す。
着信音『〜♪〜♪』
出鼻を挫く音が懐にしまったスマホから鳴り響く。確認すると、メッセージアプリに一件の着信通知。
メッセージ文面『着いたか?仕事で急遽家を空ける事になった。家の合鍵を郵便ポストの中に入れておく、勝手にあがって寛いでてくれ。
追伸・先に届いた荷物は2階の部屋にある』
目的地である居候先からの連絡だ。着いたらまずポストを確認する必要があるな。
話には聞いてたけど、多忙な人なんだな宇月さん…。
兎に角、気を取り直して宇月家に向かおう。
◆
道中気になった商業施設などをチェックしつつ、目算通りの時間に目的地である居候先へと到着する。2階建ての平凡な家屋。自分にとって新たな生活拠点となる場所…。
(可もなく不可もなく、と言った佇まい…。悪くないな)
事前の連絡通りにポストから合鍵を入手して家に上がり込む。
長旅で疲れた…、当てがわれた2階の部屋で少し休むとしよう。荷解きはその後でも構わないだろう。
手狭ながらも掃除の行き届いた部屋の中央に大の字で寝そべる。
(引越しのゴタゴタで中途半端な時期の入学になったけど、明日から高校生活がスタートする。上手くやれるだろうか…)
若干の不安感を抱きつつ寛いでいると、途端に睡魔に襲われる。寝よう。
意識が遠のいていく…。
◆
???『しっかりして!伊吹くん!』
???『立てるか!?敵も弱ってる、一気に畳みかけるぞ慶!』
自分の名を呼ぶ、
その声に鼓舞され眼前の敵を睨み据える。
それは、巨大な両手に身を包む異形の道化師。個体識別名“マジカルマグス” 。
どうやら自分はその攻撃をモロに受け、意識を飛ばしていたようだ。
『大丈夫だ、問題ない』
2人の仲間にそう告げ、懐からアンティーク調のジッポライターを取り出し、慣れた手つきで着火する。
途端に噴き出す青い炎。
身を焦がしそうな程の勢いのソレは、しかし熱も痛みも感じさせない。感じるのは寧ろ高揚感。
炎はやがて人形を成し、その威容を晒す。
ペルソナ。
ある老人曰く、それは仮面の鎧。
そして、もう1人の自分自身。
『さぁ、キミの出番だ。シャルロック!』
ステレオタイプな探偵風衣装を纏った自分のペルソナに俺は呼び掛ける。
すると彼は応えてくれる。
目の前に迫る異形道化師に肉薄し、携えた煙草パイプ型の鈍器で殴りかかる。
その攻撃に相手が怯むと距離を取り、疾風の魔法攻撃を炸裂させる。
異形の道化師は、それによって蒸発霧散し完全に消滅する。
???『ナイス!流石だな!』
仲間の1人である眼鏡をかけた少年が俺に声をかける。その声からは確かな信頼を感じる。
(…アレ?この人誰だっけ?名前何だっけ…)
というか、この場所は何処なんだろうか。
頭の中がクラクラする…。
???『大丈夫?さっきダメージ受けすぎた?回復アイテム使う?』
もう1人のフードを目深に被った少女はこちらの身を案じてくれている。彼女が間違いなく仲間であると実感できる。
(何なんだ、この感じ…)
なのに、彼ら2人に関する記憶が自分の中に無い…。
感情と記憶の齟齬。
次第に頭のクラクラも増していき、やがて俺の意識は途切れた…。
短くてすみません…。