フジ「書くんだよ! チエェェェェスト!」
そんな感じで遅くなりました。
では、どうぞ
episode Ⅳ 『復讐するは我にあり』①
ヴァンとレイが赴任した翌日、午前の授業を終えた昼休み中の校舎の屋上。そこにあるテーブルの一席に陣取ったグループの一人、篠ノ之箒は不機嫌そうな態度を隠そうともせずに告げた。
「……これはどういうことだ?」
そんな彼女の不機嫌の原因である幼馴染は露骨なまでに見え見えの彼女の感情に気付きもせずに呑気に返答する。
「えっ? いや、どうせなら皆で食べた方が楽しいだろ? それにシャルルやヴァンさんは、まだ学園にも慣れていないんだし、いい機会だと思ってさ。本当はレイ兄達も誘いたかったんだけど用事があるって千冬姉と行っちゃってさ」
そんなことを宣う一夏に対し、箒の表情は更に険しくなる。
「(2人きりになれるチャンスが……昨日の昼休みは、あのレイという男と話していたから、今日こそはと思ったのに……)」
篠ノ之箒は、織斑一夏に対して恋心を抱いている。それは、小学生の頃からずっと抱いていた想いだ。
姉である束がISを開発したことにより、小学生4年生の頃、政府の重要人物保護プログラムにより転校を余儀無くされ、離れ離れになってからもその想いは変わらず、政府により半ば強制的に入学させられた。このIS学園で一夏と再会できたことは、姉により理不尽な人生を歩んで来た彼女にとって数少ない幸運だった。
約5年程、疎遠となっていた彼は彼女の記憶の中と変わらず優しいままだった。
再会した時に昔、彼に褒められてからずっと変えずにいた髪型に気付いてくれた時は、跳び上がりたくなる程嬉しかった。
剣道を辞めていたことは残念だったが、セシリアとの決闘に向けての特訓で、自分を圧倒し、初めての実戦でイギリスの代表候補生であるセシリア相手に引き分けてみせた彼の実力を見て、改めて彼に惚れ直した。
だが、そんな彼に想いを寄せるのは自分だけでは無い。
女子校に男子が一人という状況と一夏の容姿が整っていることもあり、彼に色目を使う生徒は少なく無く、加えて彼との決闘で女尊男卑の考えを改めた代表候補生のセシリアや、一夏曰くセカンド幼馴染である転校生の鈴という
それに追い打ちをかけるようにシャルルの転校の影響もあり、一夏との同室を変更され、次々とアドバンテージを失った箒は先日、勇気を振り絞り一夏にある約束をとりつけた。「今度の学年別トーナメントで私が優勝したら付き合ってもらう」と。
一夏がそれを了承(意味を履き違えている)したことにより浮かれていた箒だが、今日の朝に教室で聞いた噂の内容に彼女は頭を抱えた。その内容は【学年別トーナメントで優勝したら織斑一夏と付き合える】というものだったからだ。
「(どうしてこうなった! )」
ライバルに差をつける筈が、まさかのハイリスクを背負う羽目になり焦った箒は、何とか状況を打開すべく一夏と2人きりで自分の作った弁当を食べてもらうという抜け駆けを実行したのだが、朴念仁の想い人は、空気を読まずセシリアや鈴にまで声をかけ、挙句シャルルやヴァンも誘う始末。トドメとばかりにヴァンのセットでヴァンの指導担当である真耶までついて来るという踏んだり蹴ったりな状況となってしまった。
「させませんわよ、箒さん」
「そういうことよ」
箒の思考を読んでいるかのように薄ら笑いを浮かべるセシリアと鈴に内心で舌打ちをする箒。
「(チッ……コイツら、やはり厄介だ……というか、鈴に限っては隣のクラスなのに察知力が高すぎるだろう! クラス対抗戦は終わったんだから、2組在籍とかいう死に設定を背負ったまま『鈴は2組だから居ない』とかそんな扱いでいいだろ!)」
内心で全国のセカン党を敵に回すような発言する箒。内容もかなりメタい。
「えーっと、僕はここにいていいのかな?」
そんな修羅場の空気を察したシャルロットは、遠慮しながら一夏に質問する。
「遠慮すんなって、友達だろ?」
だが、唐変木はその空気に気付かず爽やかな笑顔で返答する。
「俺は友達じゃないので帰ってもいいですか?」
「ヴァンさん! 生徒との交流も大切なんですから、そういうことを言っちゃダメですよ!」
心底めんどくさいという顔をしたヴァンにプリプリと怒りながら注意する真耶。因みに先程、箒達から改めて紹介を受けたが名前は当然覚えることができない。
「いや、だってコレ絶対、俺は要らない状況だろ……というか、何でお前が付いてきてるんだ? 仕事は?」
「必要な仕事は済ませています。それに、ヴァンさんの管理指導も私の仕事ですから! 任せてください!」
「いや本当、1人でも大丈夫ですから……」
「私、頑張ります!」
「話を聞いてください……」
「そして、いつかヴァンさんと……ウフフ♪」
「聞けぇ……」
自分の世界に没入していく真耶に翻弄されるヴァン。その顔は疲労感に満ちている。そこに一夏からの質問が飛んできた。
「ヴァンさんってレイ兄の友達なんですよね! レイ兄って昔のことあんまり話さないからヴァンさんから聞けないかなって!」
「えっ? レイさんってコイツと知り合いなの?」
目を輝かせながら質問をしてくる一夏のセリフに、昨日の朝のHRでの出来事を知らない鈴が反応する。 因みに鈴のヴァンへの態度が、ぞんざいで砕けているのは昨日のヴァンのセリフを根に持っていることに加え、ヴァン自身が敬語を使われ無くても、気にしないと公言している為、ヴァンに対しては素の状態で接しているからである。
「友達じゃない。 聞きたいことがあるならあの野郎に直接聞け」
その言葉に一夏は苦笑いする。
「いや、昨日レイ兄に聞いてみたんだけどさ……」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【昨夜】
『ねぇ、レイ兄! レイ兄とヴァンさんってどういう関係なの?』
『寝ろ』
『眠れないよ』
『寝ろ』
『だけど……』
『寝ろ』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「そんな感じで結局、教えてくれなかったんだ」
「アンタ、それ明らかに嫌がられてるじゃない。」
「いや、鈴だって気になるだろ?」
「アンタほどじゃないわよ。まったく……ブラコンっぷりは相変わらずのようね」
呆れたような口調の鈴に対して一夏はムッとしたような表情をして反論する。
「鈴だって昔は、『レイお兄ちゃん』とか言ってベッタリ甘えてたじゃないかよ。中学に上がってからも何かと困ったらすぐ、レイ兄に相談してただろ?」
「な!? ち、違うわよ! 私は唯、身近な年上の男の人として、色々相談していただけで、アンタみたいなブラコンとかそんなんじゃないんだから!」
周りを置いてけぼりにして言い合いを始める2人。そんな2人の会話に業を煮やしたセシリアと箒が割り込む。
「ゴホン! そもそも、一夏さんはラングレン先生とどのような関係なんですの?」
「そうだな。 少なくとも私が転校した後に知り合ったのだろう?」
「あぁ、レイ兄と出会ったのは鈴の転校と同じ時期だな。 千冬姉が仕事で家を空けた日の夜に知り合ってさ。行く当てもないって言うからウチに泊めたんだよ。」
「ゆ、勇気があるんだね、一夏って」
その余りの思い切りの良い行動に、呆れ気味のシャルロット。
「今にして思うけど、よく千冬さんが許してくれたわね」
「そりゃ、最初は反対されたし、レイ兄のことも、気に入らなそうだったぞ」
「そうなの? 意外ね、私と知り合った時には、もうレイさんと千冬さんって仲良くしてたから最初から仲が良かったのかと思ってたわ」
「2人が仲良くなるように俺も色々やったからなぁ……三人で遊園地に行った後からだったかな? 2人が名前で呼び合うようになって、千冬姉の態度が柔らかくなったのは」
「千冬さんがお前以外にあんなに優しく笑いかける姿など初めて見たぞ」
「昨日、知り合った僕でも分かるくらい、良い雰囲気だったよね」
「もしかして、お二人は……その……付き合っているんですの?」
年頃の少女達にとって、恋愛話ほど盛り上がるものは無い。況してや、その相手は想い人の姉にして世界最強の称号を持つ織斑千冬だ。普段はクールで、弱みを見せる事が無く、浮いた話の一つさえ噂になったことのない彼女の恋愛模様に少女達が興味を持たない筈が無い。
「付き合ってはいないけど、千冬姉がレイ兄の事を好きなのは間違い無いと思うぞ」
「本人は隠しているつもりなんだろうけど見え見えよね……あんなに、誰かを頼りにする千冬さんなんて見たこと無いし」
千冬とレイの関係に詳しい一夏と鈴から証言に女性陣は盛り上がる。
「へぇ……あの無愛想なムッツリに惚れるなんて、お前の姉ちゃんは余程の物好きか変わり者だな」
しかし、その雰囲気を空気を読まない野郎一名が容赦無くブチ壊した。
「ヴァ、ヴァン! 失礼だよ!」
「あ? いや悪い、つい本音が」
「それ謝ってるつもりなの!?」
焦るシャルロットと変わらないヴァンのやりとりを見ながら一夏は苦笑する。
「ははっ、千冬姉も昔そんなこと言ってたな、なんか懐かしいや。でもヴァンさん、レイ兄は確かに無愛想だけど結構気配りできますよ?」
「あの野郎が? 奴が気を使う相手なんて、弟か自分のヨロイくらいのもんだろ」
ヴァンのその言葉に一夏が反応する。
「弟? レイ兄って弟がいるんですか?」
「あぁ、空気が読めない上に馴れ馴れしい奴だが、ヨロイに関しての知識はかなりのもんだったよ。レイの奴のヨロイの改造も手伝っていやがったしな」
そんな2人の会話に疑問を憶えたセシリアから質問か挙がる。
「あの、先程からヴァンさんが仰っている『ヨロイ』とは一体?」
「あ、そういえばそうだな。なんで、レイ兄のISを『ヨロイ』って呼んでるんだ?」
その質問に対して、ヴァンの出身の事情を知る真耶はヴァンに代わり質問に答える。
「え、えーっとですね。ヴァンさんやラングレン先生が使用しているISは、特殊な物でして……使用されている技術も通常のISとはかなり異なっているんです。なので、差別化する為の名称として『ヨロイ』という呼称を使用しているんです」
「確かに空から降ってくるISなど聞いたことなどないが……」
「ISスーツも使用していませんし、機体の挙動も既存のISとは異なっていましたわね……」
「特徴はどの世代にも当てはまらないわ……でも、そんな機体のこと噂ですら……」
即興で考えた設定だが、実際にヴァンがヨロイを呼び出し戦う光景を見て、通常のISとの違いを実感している一夏達は、その言葉に疑問を持ちつつも納得する。
「そんなにヴァンのI……じゃなくて、ヨロイって違うものなの?」
このグループの中で唯一、ヨロイを見たことのないシャルロットから疑問の声が挙がる。ヴァンに興味を持った彼女としてはデータ収集の件抜きで彼の事が気になるらしい。
「違うなんてもんじゃないわ。そもそもアレは何処から降ってきてるのよ。戦闘後はどっかに飛んで行っちゃうし」
そんな鈴の言葉にヴァンは頭を掻きながら難しい表情をして慣れない口調で説明する
「あー、なんだっけか、確か宇宙にあるベースとかいうのから来てる筈だったが」
簡単に言ってのけるヴァンだが、その言葉に真耶達は驚く。
「宇宙にあるベースって……人工衛星ってことですか?!」
「ちょ、ちょっと待ってよ!? じゃあ、ヴァンの機体は毎回、呼び出す度に大気圏の突入と離脱をしてるってこと!?」
「あの剣のような形態は大気圏突入用ということでしょうか……」
「……よくわからんが、それって凄いのか真耶?」
「単機での大気圏突入と離脱が可能というのは特筆すべき点ですね。少なくとも現状でそれが可能なISは存在しません。 まぁ、専用機に待機状態があるので、あんな風に呼び出す必要がないとも言えますが」
「へぇ、考えたことなかったが凄かったのかアレ」
「自分の機体だろうに、随分と適当だな……」
真耶の解説に呑気に返すヴァンに呆れる箒。
「それに機体の整備はどうなっているんですの?」
「知らん、空に戻しとけば勝手に直る」
「衛星で自動的に整備されてるってこと? ていうか、知らんってアンタね……」
「元々、俺は『ダン』のテストパイロットとやらで雇われたんだよ。『ダン』の整備や研究は『エレナ』がしていたし。正式にヨロイ乗りになってからは
「……っ!!」
再びヴァンの口から出た『エレナ』という名前に真耶が反応するが、その事を質問できる雰囲気ではないことを察し、なんとか抑える。
「そんな適当で良くテストパイロットになれたわね」
「『ダン』は元々戦闘用のヨロイだ。戦闘で問題なく動かせてるなら細かいことは別にいいだろ」
そんなヴァンの言葉にシャルロットは乾いた笑いを漏らす。
「アハハ……早くもヴァンの性格が掴めて来たよ……所で、『ダン』っていうのはヴァンのヨロイのこと?」
「あぁ、そうだ」
「たしか正式名称は『ダン・オブ・サーズデイ』でしたっけ?」
ヴァンとの尋問の中で聞いたヴァンのヨロイの名称を思い出した真耶が問い掛ける。
「あぁ、『ガドヴェド』が言うには『オリジナルセブン』とかいうヨロイらしいがな」
「『オリジナルセブン』? 前に言っていた『ダン』と同じ特別なヨロイのことですか?」
「あれと、同型が他にもいるの!?」
驚く鈴を他所に、一夏は呑気に、それを聞いて思いついたことを口にする。
「あ、もしかして名前通り7体いて、機体に曜日の名前がついてるとか? ヴァンさんのはヨロイは
「いやアンタ……そんな安直な「へぇ、よくわかったな」当たってんの!?」
まさかの的中にツッコミを入れる鈴。
「まぁ、そうは言ってもダン以外は全部、ぶっ壊れてるがな。『ガドヴェド』と『ウー』と『馬鹿兄貴』のヨロイは俺がぶった斬ったし、残りの3体は恐らくレイの奴が倒してる」
「試合で大破したってこと? ていうか恐らくってどういう意味よ」
あくまで、この世界でのISの立ち位置に当てはめて考えている鈴達は、ヴァン達が復讐の旅の中で殺し合いをしていたことを知らない為、破壊したという言葉を試合でのことだと勘違いする。唯一、ヴァンの事情をしる真耶だけが不安そうに表情を曇らせた。
「双子のヨロイを奴が倒したのは直接見たが、もう一体は俺がいない間に倒されてたんだよ。 だが、面子を考えたらアレを倒せそうなのはレイの奴くらいしかいないんでな」
『プリシラ』の『ブラウニー』では電磁シールドを発動させた『オリジナルセブン』相手では火力不足だし、無駄に技の前の口上の長いエルドラの爺さん達じゃ逃げ足の速いあの女を仕留め切れるとは思えない。消去法で考えて、レイが倒したと見て間違いないだろうとヴァンは考えている。
「へぇ、レイさんと仲悪い割に、
意外そうにする鈴に対して、その言葉で仏頂面となったヴァンが面白くなさそうに答える。
「チッ……虫の好かない奴だが、ヨロイに関しちゃ認めてるさ。それに、アレは『奴の女』が遺したヨロイだ。それを馬鹿にする程落ちぶれちゃいない。」
その言葉に一夏が反応した。
「『奴の女』? ヴァンさん!それって、どういう……」
「あ? なんだよ……アイツから聞いてないのか? ならこれ以上は本人から聞け」
「でも!」
「俺が勝手に話していい事じゃないんだよ。わかったら黙れ」
「……わかったよ」
黙り込む二人に空気が重くなって行く中、気遣いに定評のあるシャルロットが場の空気を変える為に話の続きを切り出した。
「そ、そういえばラングレン先生のISも『ヨロイ』だったよね?やっぱり空から降ってくるの?」
「……いや、レイ兄のヨロイは違うぞ」
シャルロットの疑問に、対して答えたのはヴァンでは無く立ち直った一夏だった。
「レイ兄の『ヴォルケイン』は地中から現れるんだ。武装は銃が主体だし見た目とか動きも人間に近いヴァンさんのヨロイよりロボットみたいな感じだった」
「お前、アイツのヨロイを見たのか?」
「四年前に一度だけですけどね」
嘗て、第二回モンド・グロッソでの誘拐事件で自分を助けに来たレイのヨロイの姿は今も一夏の脳裏に焼き付いている。そのことを語る一夏の表情はとても誇らしげだ。
「へぇ〜……アンタ、そんな昔から知ってたのに私には秘密にしてたってわけね」
一方で、昨日レイがISを動かせる事を知った鈴は面白くなさそうな表情をうかべている。
「仕方ないだろ、レイ兄に口止めされてたんだから。なんだ? レイ兄に仲間はずれにされて拗ねてるのか?」
「ばっ、馬鹿! 拗ねてなんかいないわよ!」
必死に否定する鈴をスルーしセシリアが疑問を口にする。
「地中から? 織斑先生がグラウンドに穴が空くと言っていたのは、そういう意味だったのですね。しかし、何故そのような事を? 」
基本的に理屈っぽい考え方をするセシリアはヴォルケインが地中から現れる理由が気になる様子をみせる。
「あぁ、それならレイ兄から聞いた。なんでも、ヴォルケインは元々、地下資源利用を目的とした機体だったらしいぜ、地下にいるのは地熱をエネルギーに変換する為で地中でなら半永久的に動けるんだってさ」
「戦闘を目的として作られていなかったものを戦闘用に改造したということですの? 」
「武装は削岩の為の技術を戦闘用に応用したものって言ってたな。流石にヴァンさんのヨロイみたいに勝手に整備はされないから千冬姉に頼んで定期的に信用できる研究所でメンテナンスさせてもらってるよ。レイ兄は、ここ数年でISの技術を勉強して結構改修したって言ってたけど 」
「でもよく研究所から協力を得られたね」
「千冬姉が言うには、ヴォルケインの地熱エネルギーの変換や光学兵器関連の技術水準は現状のIS技術より高いらしくて、一部の技術提供を条件に研究所に協力してもらってるらしい」
「第3世代機は特殊兵器の搭載を課題にしている反面、燃費の悪さが目立ちますからね。鈴さんの甲龍のような例外もありますが、各国が第3世代の実験段階である現状では、レイさんのヨロイのデータが手に入るのは大きいと思います。」
「だが、ラングレン先生はそれでいいのか? 交換条件とはいえ自分の機体の技術データを簡単に提供して」
「提供するのはあくまで、地熱エネルギー変換のデータがメインだって言ってし、IS関連以外でのエネルギー資源としての活用も約束させたらしい。よくわからないけど『これがアイツが望んだヴォルケインの本来の使い道』だって言ってたよ」
「それ程の物なのか、ヴォルケインとやらの地熱エネルギー変換というのは?」
「ヴォルケインの移動用ポッドも地熱エネルギーで動いているんだけど、そのジェネレーターだけで街一つ分の電力は余裕で確保できるってレイ兄が言ってたな。」
「それは……確かに凄いな」
「だろ? それにレイ兄自身も凄い強いからな!」
「ハイハイ、そこら辺にしときなさい」
ブラコンっぷりに火が付き始めた一夏に鈴がブレーキをかける。
「アハハ……一夏はラングレン先生が大好きなんだね」
「まぁな! あ、そうだ! 確かシャルルって、リヴァイヴについて詳しかったよな?俺さ、銃の訓練がしたいんだけど手伝ってくれないか?」
「え?」
突然の一夏の提案に困惑するシャルロット。
「俺さ、銃の扱いにも興味があるんだ。今までは白式に慣れる為に近接戦の訓練をしていたけどそろそろ、銃の訓練も始めたいと思っててさ、シャルルは説明とか得意そうだし頼めないかな?」
その言葉に面白くなさそうに反応したのは箒達だ。
「一夏、飛び道具などに頼らず男たるもの剣一本で戦え! それに特訓なら私とだな……」
「一夏さん、銃の扱いならわたくしが適任ではなくて?」
「なに? 私の教え方じゃだめだとでも?」
三者三様の、言葉に一夏は反論する。
「いや、だって箒の説明は擬音祭りだし、セシリアは説明が細か過ぎてわかりづらいし、鈴は逆に大雑把過ぎだし……」
「「「なんだと(なんですって)!」」」
「なんだ、お前ら説明が下手なのか」
「お前が言うな」と言いたくなる台詞を平然と吐くヴァンに女子三人は屈辱的な気持ちを味わう中、一夏は再度、シャルロットに問い掛ける。
「で、教えてもらってもいいか シャルル?」
「え、えっと……」
その言葉への返答にシャルロットは詰まってしまう。一夏が 友達として純粋に自分を信用して頼ってくれる事は嬉しい。だからこそ一夏に対して昨日まで彼を騙してデータを盗もうとしていた自分の汚さを思い出してしまい、罪悪感から踏み出せなくなってしまったのだ。
その時……
「いいんじゃないか……受けてやれよ」
「え?」
突如、ヴァンが口を開いた。
「難しく考え過ぎなんだよお前は。良いのか嫌なのか伝えればいいだけだろ」
「で、でも……」
迷うシャルロットにヴァンは言葉を続ける。
「なんだ? 嫌なのか? なら「そんなことない!」……じゃあいいだろ」
「でも……いいのかな?」
「俺に聞くな、自分で選べ。変わるんだろ? 」
ぶっきらぼうで突き放すような言葉だが、その言葉は、不思議とシャルロットの背中を押し勇気を与えた。
「やってみるよ……それじゃあ、よろしく一夏」
「あぁ、ありがとう! よろしくなシャルル!」
満面の笑みで答える一夏にシャルロットは決意する。
「(まずは、自分を信じてくれる友達に一歩踏み出してみよう……そうすればきっと……)」
「ありがとう……ヴァン」
「俺は何もしちゃいない」
「いいんだよ。僕が勝手に感謝してるだけなんだから」
「チッ……そうかよ」
照れ隠しなのかヴァンは立ち上がり背を向ける。
「レイの野郎にはお前の事を説明しておく。 後はお前の好きにしろ」
そう言ったヴァンは扉に階段へ向けて歩きだす。
「やっぱり、優しいな……」
その背中を見つめるシャルロットは嬉しそうに微笑んだ。
「あ!? もう昼休みが終わっちゃいます! 皆さん教室に戻ってください!」
そこで、時間に気付いた真耶から焦った声をあげる。
「マジか!? 話に夢中で昼飯食ってねぇ!」
「(しまった! 折角一夏にお弁当を、つくったのに!)」
「ヴァンさん! 放課後に食堂で歓迎会を行うので来てくださいね!」
午後の授業ではヴァンは、二年生のグラウンドでの実習の見守りを担当するため一緒にいられない真耶はヴァンに放課後に行われる歓迎会の事を伝える。
「あぁ、わかった食堂だな」
そう言って去って行くヴァンを見送ったあとに真耶はあることを思い出す。
「いけません……ヴァンさんに返却するはずだった所持品を渡し忘れました」
そう言って真耶はバックから学園が押収していたヴァンの所持品をとりだす。
「山田先生、それは?」
それに気付いたシャルロットが、声をかける。
「えぇっとですね、訳あって学園で預かっていたヴァンさんの所持品なのですが……」
「そうなんですか?随分と少ないんですね」
真耶のバックの中身は、見たことがない通貨が少しと、何かが抜けたような溝のある六角柱型のパズル、そして……
「これは、写真?」
ヴァンとレイ、そして知らない人物達が写る集合写真だった。