エルドラチームの説明話を書いてたら一話分になっていた。さすがは勇者。
それではご一緒に
ア・ミーゴ!
episode Ⅷ 『復讐するは我にあり』⑤
「さて、次となると『エルドラ』の爺さん達だな」
真耶とシャルロットによるカルメンについての追求をなんとか打ち切ったヴァンは旅の話を再開する。ヴァンから出た言葉に最初に反応したのは真耶だった。
「『エルドラ』というとヴァンさんが言っていたオリジナルセブン以外で二足歩行が可能だったというヨロイのことですか?」
「あぁ、そういや真耶には前に話してたな。 写真に写ってる爺さん達が乗っていた『エルドラⅤ』ってヨロイのことなんだが」
そんなヴァンの説明に薫子から質問がとぶ。
「えぇっと、このお爺さん達四人で動かしているんですか? というか先程から会話に出てくるヨロイって一体……」
ヴァンの事情を知る教師陣や取り敢えずの説明を受けた一夏達以外はヨロイという言葉に混乱しており薫子はそれらを代弁する形でヴァンへと質問をぶつけたのだ。その質問に対してヴァンのフォローに入ったのは真耶と千冬だった。
「え、えっとですね! ヨロイというのはヴァンさんやラングレン先生が使っている機体の総称のことです。 ISと異なる技術が多く使われている為、区別するために他称として使われているんです」
「加えて説明すれば、ヨロイというのはISと違いそれぞれの機体に使われている技術や大きさが統一されていない。 ヴァンやレイの機体の外見はISに近いが、他もそうだという訳では無い、ヨロイに明確な定義は無いらしく、あくまで大雑把な総称のようなものだということだ」
「IS以外にもそのような技術があるとは……ジャーナリストを目指す身として、今までそんなことを知らなかったのが恥ずかしくなってきました……」
教師2人の説明で少しはヨロイについての意味が理解できたものの、今までヨロイを知らなかった薫子は凹み気味だ。まぁ、実際は異世界の技術なので知らなくて当然なのだが……。
「まぁ、知らなかったなら知ればいい! 気を取り直して行きましょう! では、その『エルドラ』というヨロイはどんな機体なんですか、ヴァンさん?」
気を取り直した薫子はヴァンへの質問を再開する。
「どんなって言われてもな。取り敢えずかなりデカイな。人型だが、この建物で言うと15階分くらいは必要になるんじゃないか?」
その言葉に生徒達から驚きの声が上がる。
「え!? 15階って50メートル以上はあるんじゃ!?」
「まぁ、五体のヨロイが合体するからな。そりゃデカイだろ」
さらっと答えるヴァンだがそれにより生徒達は更に混乱する。
「まさかの合体ロボですか!?」
「いやいや、いくら機体ごとに規格が違うからってぶっ飛び過ぎじゃ……」
「言っておくが外見は割とまともな方だぞ? さっき言ったブリッジシティのヨロイは戦艦から上半身が生えてるようなのだったし、他にも龍やら潜水艦みたいなのもあったからな」
「本当に機体によって別物なんですね。 ヨロイって……」
オモチャ箱でもひっくり返したのかと言いたくなる機体の統一感の無さに、流石に予想外だったのか生徒達だけでなく真耶達教師陣も驚いている。
「まぁな、終いには只の改造車をヨロイだと言い張る奴までいたしな……」
嫌な思い出でもあるのか、それを語るヴァンの表情はどこかゲンナリしている。
「あはは……話を戻しましょうか、それでこのお爺さん達とはどういった形で知り合ったんですか?」
話が脱線しつつあることを感じた薫子は話を戻すべくヴァンにエルドラチームについての質問をする。
「切っ掛けは他とあまり他と変わらないぞ。旅の途中で爺さん達のいる町を通りかかって、そこで飯を食おうとしていたら爺さん達に話しかけられてな、いつも通り名乗ったら、なんでか一方的に気に入られたんだが……どうやらウェンディの町やヒゲ野郎との戦いが噂になってたらしい」
「ヴァンさんもトラブル体質ですね。因みにこの方達のお名前はなんというんですか?」
「名前か? 覚えてはいるが、一度も名前で呼んだことは無かったからな……妙な感じだ」
基本的に『爺さん達』と一括りに呼んでいたヴァンとしては今更名前で呼ぶ事に違和感しか感じないのだが、説明しづらくなるので仕方なく彼らの名前を伝えていく。
「えぇっと……この少し太り気味の方が『ネロさん』で、体の細い方が『ホセさん』、体の大きい方が『バリヨさん』、眠っている方が『カルロスさん』でいいんですね?」
エルドラチームの名前を教えられた薫子は名前と写真に写っている姿を比べながら再確認していく。
「あぁ、それで間違ってない」
その問いを肯定したヴァンへの今度は一夏から質問がとぶ。
「なぁ、ヴァンさん。このバリヨって人はレイ兄と仲が良かったんですか? 親しげに肩を組んでますけど」
「む、本当だな。 レイからそのような話を聞いことは無いが……」
やはりレイの知らない部分は気になるのか続いて一夏に続き千冬も会話に加わってくる。
「いや全然」
その問いをヴァンはあっさりと否定する。
「え? でもこんなに親しげに」
「レイの面を良く見ろ、どう見てもそういう感じじゃないだろ」
ヴァンにそう言われて織斑姉弟がもう一度写真をみてみると、確かにレイの表情は、どこか鬱陶しそうだった。というかレイ1人だけ写真撮影なのに視線がカメラの方を向いていない。
「その爺さん達は基本的に初対面の相手だろうと凄まじく馴れ馴れしんだよ。その写真を撮った時もレイの奴は爺さん達に無理矢理カメラの前に連れて来られたんだ」
「あのレイさん相手にその勢いで行けるなんて凄い人達ね」
鈴もどこか呆れと関心が入り混じった表情になっている。
「俺も良く絡まれたからな、昔は勇者とか呼ばれてナントカ帝国と戦っていただの、ヨロイ乗りの心得だの、正義講座だのと……終いには勝手に俺を弟子扱いし始める始末だ」
ゲンナリした表情で告げるヴァンに薫子は引っかかることがあったのか苦笑いしながらも問いかける。
「あははは……所でネロさん達が言っている話って本当なんですか? 昔は、そのナントカ帝国と戦っていて勇者って呼ばれてたというのは?」
お伽話にでも出てきそうな突拍子もない内容に流石に疑いを持ったらしい。周りにいる生徒達も半信半疑のようだ。
「いや、流石にそんなアニメの中みたいな話は大袈裟に言ってるだけなんじゃない? 思い出補正というか……」
「正義のロボットで悪と戦う勇者なんて、流石にねぇ?」
そんな声が生徒達から発せられる。
「え〜そうかな〜? カッコイイと思うけどな〜? かんちゃんが聞いたら喜びそうだけど。実際の所は、どうなのヴァンヴァン?」
そこでヴァン話の続きを催促してきのは、だぼだぼの袖の制服を着た少女、布仏本音だ。
「その妙な渾名はヤメろ……。どこまで本当の話なのかは俺も知らんが。 少なくともあの町の若い奴らからは酔っ払いのホラ吹き呼ばわりされていたよ。 1日中、その写真の女の酒場に入り浸りってデカイ声で話続けて、終いにゃ他の客とトラブルまで起こしてたからな。当然と言えば当然の気もするが」
眠りっぱなしのカルロスを除く3名が酒場で乱闘騒ぎを思い出すヴァン。
「あ、写真のカルロスさんの隣に座って女性もグローリアの方なんですか?」
「あぁ、名前は覚えてないがな。なんでもその女の婆さんが爺さん達の仲間だったんだとよ」
写真の女性の名は『ユキコ』。エルドラチームの紅一点であった『チヅル』の孫であり祖母が遺した酒場『ピンクアミーゴ』を一人で切り盛りしていた女性である。
「この方の名前は覚えて無いんですね。ところでこの方のお婆さんがネロさん達の仲間だというのは?」
「そのまんまの意味だ。 その婆さんもヨロイに乗って戦ってたんだとよ。爺さん達が言うにはメンバーのなかで酒も喧嘩も一番強かったらしい」
「なるほど、五体合体なら五人いるはずですもんね。その方は?」
「もう死んでる」
その言葉を聞いて薫子の表情が申し訳無さそうに変わる。
「あ、その……済みません」
「俺に謝られてもな」
「そ、そうですね……。しかし、話を聞く限り今回は荒事も起きなさそうなんですけど?」
「だろうな。実際、あの町は平和な田舎町だったよ」
そう語るヴァンにセシリアから声がかかった。
「あの、一つ気になるのですが……お爺様達は確かにヨロイを持っていたんですわよね? どうしてホラ吹き呼ばわりされていたんですの? 実物を見せれば……」
両親を事故で失って自分の力を周りに見せつけ黙らせることでオルコット家を守ってきた彼女には、それだけ昔話を自慢しているにも関わらず何故、言いたい放題の若者達を黙らせる一番確実な方法をとらないのか理解できないのだろう。純粋な疑問をセシリアはぶつける。
「『ヨロイは見せびらかすものじゃない』だとさ。それが爺さん達なりの『掟』なんだろうよ」
その言葉の意味が飲み込めないセシリアはヴァンが口にした言葉を反芻する。
「『掟』……ですか?」
「あぁ……周りの連中が何と言おうが頑固に貫く、他の誰でもなく自分自身に誓った『掟』だ」
「わたくしには……よくわかりません」
「別にそれでいいと思うぞ。正直な所、賢い生き方じゃ無いからな」
「それでは、お爺様達は結局ホラ吹き呼ばわりされたままだったんですの?」
どこか納得できないといった表情で、セシリアはヴァンに話の続きを問う。
「そうでもないぞ、俺達が町を去ろうとした日、いきなり現れたヨロイが町で暴れ始めてな」
その言葉に生徒達は驚く。
「え!? 平和な町だったんだよね? 」
「ヨロイに乗ってた奴は町の住人の一人だったらしい、何だっけか……確か、一度実験に失敗して町で除け者にされたとか叫んで暴れてた筈だ」
グローリアに住むマッドサイエンティスト『ブッチ』彼は町の発展の為に効率的なエネルギー循環システムの研究をしていたが、過去に大きな爆発事故を起こし、町の住民達から白い目で見られていた。町の為を思った自分の研究を理解して貰えず除け者扱いされた彼の負の感情は爆発し、自身が作り上げたヨロイ『バッドローズ』で町を襲撃したのだ。
「そ、それじゃあヴァンさんが何とか「俺は戦ってないぞ」えぇっ!?」
「ダンと似たような物を使ってるヨロイは気に入らなかったが、助ける理由が無かったからな」
今までの話の流れから再びヴァンが事件を解決したのだと思った薫子の言葉をヴァンはバッサリと切り捨てた。
「そ、それじゃあ誰が……って、もしかして」
何かを察したようにヴァンへ視線をむける薫子。
「あぁ、戦ったのは爺さん達だ」
町で暴れるバッドローズが酒場『ピンクアミーゴ』を破壊しようとしたその時、現れたのはグローリアの町の外れにある遺跡型の基地から現れた四機の機体が合体したヨロイだった。ネロ達の話が嘘では無かった事に驚く若者達の前でヨロイ同士が激突する。しかし……
「で、ですが……エルドラⅤは五体合体のヨロイなのでは?」
「あぁ、本調子じゃない状態だったみたいでな、押されてたよ」
元々、エネルギー効率が悪く、数十年前に現役を退いた機体であることに加え、機体も一機欠けた状態での戦い。比べて敵はオリジナルセブンにも使用されているG-ER流体を使用した最新型のヨロイである。どちらが有利かなど目に見えている。
「……どうして、お爺様達はそこまでして戦うんですの? 町の人達からずっと馬鹿にされてきたのに……」
そのセシリアの問いにヴァンは答える。
「『思い出を守れるだけで良い』だそうだ」
「え?」
「まったく、変なジジイ共だよ……だが、気持ちがわからないわけでもなかったからな」
「加勢したの?」
シャルロットの言葉にヴァンは首を横に振る。
「そこまで野暮じゃない、残ったヨロイを爺さん達に届けただけだ」
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『なんでだ! お前達だって、馬鹿にされてきただろ! 要らないって言われてきただろ! 誰も分かってくれない! 認めてなんかくれない! それなのに! どうしてこんな町を守る! どうして!』
溜め込んできた感情を吐き出すように叫びながらエルドラへ攻撃をしかけるブッチにネロ達は静かに答える。
『若いな、若造』
『俺たちはそんな物の為に戦ってるんじゃない』
『皆の思い出が守れれば、それだけで……』
『それだけで……』
『それだけで……』
『それだけでいいんだ!』
そして彼らの『思い出を守る』という言葉にヴァンもまた触発される。
『ハッ!まったく……変な爺さん達だ』
ダンを召喚したヴァンは残された鳥型のヨロイ『ピンクアミーゴ』を力任せにぶん投げ、エネルギー切れ寸前のエルドラの背中に装着させる。
誰も座らない操縦席がエルドラⅤのコックピットへ現れる。だが、ネロ達の目には一瞬、確かに亡きチヅルの微笑む姿が見えた。
『揃った!』
その言葉と同時にエネルギーが回復したエルドラは本来の姿を取り戻す。嘗て、エンドレス・イリューシンに存在するヨロイを片っぱしから打ち倒し、現在のヨロイの絶対数を減らす原因を作った伝説の姿へと……。
『効率の悪いヨロイだ。進歩が無い!』
その姿をブッチは嘲笑う。意に返さないネロ達は静かに告げる。
『若造……進歩とは』
『ヨロイと人の心の』
『合体だ!』
そして放たれたフルパワーの拳はバッドローズの触手を真っ向から突き破り本体へと叩き込まれる。
『アァァァァァディオォォス』
『『『ア・ミーゴ!』』』
一撃でバッドローズを粉砕し、拳を天に掲げ、決め台詞を叫ぶ彼らの姿は間違いなく勇者そのものだった。
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「まぁ、そんな感じで爺さん達のエルドラが勝って俺達は次の町に向けて出発した。それで爺さん達の町での話は終わりだ」
「いいですね! 凄い熱い話です!」
漫画のような熱い展開に興奮気味の薫子。
「思い出の為に……ですか。フフ……そうですわね。凄くカッコイイお爺様達です」
セシリアもどこか楽しそうに微笑む。彼らの生き方に思う所があったのかもしれない。
「ヴァンさん、その暴れたヨロイの方はどうなったんですか?」
先程の話で気になったのか真耶が質問する。
「無事だよ。事件の後は改心したらしい。
爺さん達のヨロイの改造も手伝って、二足歩行で動ける『エルドラソウル』にしたのもソイツなんだとさ」
「そうなんですか……良かったです」
元々は町を想っての研究をしていた彼が改心したことを真耶は喜ぶ。
「もっとも、合体システムは無くしたとかで文句も言われてたけどな」
「問題あるのか?合体システムなど非効率的だろう」
「そうか? 俺はカッコイイと思うけど?」
「貴様の意見など聞いていない!」
一夏に噛みつくラウラだが、ヴァンはスルーし話を続ける。
「その後は、カルメンの奴が連絡をとってたらしくてな、旅の終盤で合流してきた」
「え? なんの為にヴァンさんと合流したんですか?」
ヴァンの旅に何故彼らが合流したのか気になる薫子が質問する。
「俺が追っている奴を『悪の親玉』と認識したんだとよ。爺さん達の理屈だと『悪の親玉=世界征服を目論む』って発想らしく、一緒に戦うとかいって町を出てきやがったんだ。爺さん達が心配でついてきたあの女には同情するよ」
ホバーベースないでも酒ばかり飲んでいた爺さん達の面倒を見ていたユキコの事を思い出すヴァン。
「この方はネロさん達が心配でついてきたんですか?」
「詳しくは知らんが、もっぱらウェンディと一緒に料理を作ってたよ。まぁ爺さん達の関係者だけあって肝の座った女だったがな」
「というと?」
「レイの野郎を引っ叩いたらしい」
その言葉に織斑姉弟が飲んでいた飲み物を吹き出した。
「え、レイ兄は何をしちまったんだ?」
女性に引っ叩かれるようなことをしたレイの事が気になったのか理由を問う一夏。
「知らん」
その言葉に一夏は肩透かしを喰らう。一方で千冬はと言うと……
「そうか、そうか……女性に引っ叩かれるようなことをしたのかレイ……これはきっちり問いたださんとなぁ……」
何やら呟きやがら黒いオーラを発していた。その雰囲気に周りの生徒達は引いている。
「まぁ、爺さん達に関しゃ合流後も大体そんな感じだな……合流後も相変わらずの調子でやりたい放題だったよ」
そんな千冬をスルーしてヴァンはエルドラチームの話を終えた。
「いやいや、面白かったです! それで、次は写真の中のどなたと出会ったんですか?」
興奮気味で続きを訪ねる薫子だが、答えるヴァンの表情は少し険しくなる。
「次か……ならレイの奴だよ」
その言葉に織斑姉弟と鈴、ラウラが反応する。楽しみな表情を浮かべる一夏と鈴。対照的に苦虫を噛み潰したような表情のラウラ。そして千冬だけが瞳に不安の色を浮かべていた。
お気に入り500越え!
こんな駄文を読んでくれて嬉しいです
グラッシアース!
尚、次回は鬼いさんの模様