ヴァンが優し過ぎる気がするけど本編後ってことで勘弁な!
後、山田先生がヒロイン補正掛かかりまくってるのも勘弁な!
episode Ⅱ 『夢の続き』
行き倒れた男、ヴァンは、不機嫌だった。カギ爪の男を殺し新たな目的も定まらないまま再び世界を彷徨っていた彼だが、気づけば知らない場所でぶっ倒れていたからだ。
空腹で、再び倒れた後、目を覚ませば知らない独房の中におり、二週間尋問の様な真似をされる始末
「どこからきた」「何が目的だ」
「ISを奪ってどうするつもりだ」
尋問に来るのが女性ばかりなのが少し妙だったがこの際それは良い、問題は、相手が言っている言葉が一々、訳がわからなかったことだ
『IS』『学園』『アリーナ』『男のくせに』『強奪』『何処の国の差し金だ』
良くはわからないが、自分は、泥棒か何かだと思われているらしい、加えて此処は男の肩身が狭い場所のようだ。
頭の中に一瞬、旅の中で立ち寄った水着集団の町を思いだし寝たい衝動が沸き上がる
わからないなりに真面目に質問に答えているのに、「嘘をつくな!」「馬鹿にしているのか!」と言われ、わからない言葉でいつまでも同じ事ばかり尋問され、ついイラっとして
「わからない言葉で喋るなって言ってんのがわからないのか、アンタ、バカだな」と言い放ち用意された昼飯を食い始めた時の尋問を行っていた女の顔は、凄まじかった
まぁ、そんな中での救いとして、割とマシな奴が一人いる
「ヴァンさん!また、適当に相手をして担当になった人を怒らせて!そんな風にしてると、要らない誤解を受けちゃいますよ!」
緑の髪にサイズが少しあってないメガネを掛けた女性、外見だけなら十代に見えるがこれでも20歳以上らしい
「俺は、『真面目のヴァン』で通ってるんだがな……ええっと……なんて言ったっけアンタ?」
「山田真耶です! ……ヴァンさんが真面目に答えてるのはわかりますが、ヨロイや囚人惑星エンドレスイリュージョンなんて聞いたことないですし……」
「俺だってISだの地球だの日本なんて知らん」
半信半疑では、あるが少なくとも他の奴に比べれば、目の前の女は、こちらの話に真剣に耳を傾ける。最初から、嘘付きや頭がおかしい奴と否定せず、しっかりと自分が置かれている現状を自分にわかるように噛み砕いて説明してくれた。
そんな彼女だったからこそヴァンも彼女が説明したこの世界の説明を信じることにした
他の連中との相性の悪さもあり、最近は、自分への尋問は、ほぼ彼女の担当になっている。そして彼女に生活態度について説教されることもまた彼の日課となってきた
「(最初は力づくで、さっさと出て行こうと思ったが、どうやら思いの他、面倒なことになってるみたいだし、どうしたもんか)」
カギ爪の男を殺すという目的があった頃なら、さっさと『ダン』をよんで強行突破していただろうが今回は、そうもいかない、誰かに縛られるのは御免だし、いつまでも、ここにいるつもりもないが、目的も目標も定まらない以上焦る理由が無いのも事実だ
「(それに、こっちに来てから『ダン』に乗ってないのに体の調子が問題ないのも気になる)」
訳あって彼は、定期的にヨロイに乗らないと生きられない体になっている。ここに来る前は最長で、一週間あたりが限界だったが、ここにきてから、ヨロイに乗ってないにも関わらず体調は問題ない
「ヴァンさん!?聞いてますか?『真面目のヴァン』なら、ちゃんと聞いてください!」
「生憎だが今の俺は『タダ飯食らいのヴァン』だ…………うまぁぁぁぁぁぁぃ!」
真耶の言葉を聞き流しながらヴァンは、真耶が来る前に出されていた昼食に、調味料をありったけぶちまけた物を食べ、大声をあげる
「また、そんな食べ方をして、体に悪いって前も言ったじゃないですか!」
「スイマセン」
私怒ってますと言わんばかりに頬を膨らます彼女に、困った表情で謝るヴァン、出会った当初は、自分に対してビクビクしていたというのに今では、すっかりお節介な発言が板についてきている。彼女の様なお節介なタイプは、どうにも苦手だ
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ヴァンが現れてから一ヶ月ほどが過ぎクラス対抗戦を控えたある日、真耶は仕事を終え、もはや日課となったヴァンへの面会を行っていた。その熱心さは、事情を知る同僚からは呆れられ、事情を知らない生徒からは、恋人ができたのかと勘ぐられ、千冬には、「教師たるもの健全にな」と冷やかされる程だ
真耶にとって、当初ヴァンという男は、理解するのが難しい人間だった、現れ方は謎、語ることの内容は噛み合わずぶっ飛んでいたし、頭は決して良くはない、発言も直球でデリカシーに欠けているものばかり、無気力という言葉が似合う
だが真耶は彼のことが嫌いでは無かった。
確かに彼は無気力でバカだが、その実、とても純粋だということを知ったからだ。
元々、男性と接する経験が少なく、加えてその身長に見合わない豊満な胸をいやらしい目でジロジロ見られることが多く男性への苦手意識の強かった真耶だがヴァンという男は、自分に対して、そういった目を向けなかった
「(メガネをかけていないだけで「誰だお前」と言われた時は、女として少し傷付きましたが……)」
他の教員は、今だに慣れないらしいが、この一ヶ月で彼女は、彼の事を少しずつ理解し始めていた。彼は物を知らないだけで、決して嘘をつく人間ではない、此方がしっかりと説明し質問すれば下手ではあるが彼なりに、真剣に説明しようとしてくれる。相手を突き放すような捻くれた面もあるが、その姿はどこか大きな子供を見ているようで微笑ましかった
「(やはり、彼が言っていた事が適当な言い訳とは思えません)」
囚人惑星エンドレスイリュージョン、そして大型の戦闘マシンであるヨロイ、多くの教員は、出まかせだと思っているが、それを語る彼の目は真剣だった。
最近では、気が向いた時に、旅をしていた時の話をしてくれる、下手くそな説明だったが、何故かその話は真耶の心を引きつけた。
「なぁ、アンタはどうして教師になろうと思ったんだ?」
その日、珍しくヴァンの方から質問がとんできた
「そうですね……きっと私は生徒が成長していくのを見れるのが嬉しいんです」
「嬉しい?ソイツが成長したところでアンタが何か得をする訳でもないのにか?」
ストレートなヴァンの発言に真耶は苦笑しながら答える
「私は昔、日本の代表候補生をやってたんです……ええっと分かり易くいうと」
「あぁ、ISとやらを戦わせる大会の代表を目指してたんだろ?まぁ俺の世界にもヨロイを戦わせる大会があったしな。何と無くわかるよ」
「そうなんですか?良ければ今度その話、聞かせてください。まぁ、それで結局私は、代表にはなれなかったんですが……落ち込んでた時に同級生の友達が言ってくれたんです『真耶のISの教え方はとても上手なんだからそれを活かしてみたら』って」
「代表になる私の夢は、もう叶わないけど教師として生徒達の成長を手伝うことで、一緒に笑って、悲しんで、その先で『同じ夢の話』ができるのが、私は嬉しいんです」
「……凄いなアンタ」
「へっ?あ、あの、ちょっと熱く語っちゃいましたね!でも私はまだまだダメダメで威厳は無いし、緊張してすぐドジを踏むし……」
「いや、凄いよ……俺には一生出来ない生き方だ」
普段人を褒めない男のストレートな賞賛に真耶は頬を染め焦りながら否定するが、ヴァンは、それでも褒めることをやめない
その彼の言葉が真耶にはとても嬉しく、同時にとても恥ずかしかった。
「しかし、アンタがそこまで入れ込むものってのも少し興味が湧いたな」
「へ?ヴ、ヴァンさんのエッチ!ダメですよそんな、いやらしいこと考えたら!?」
瞬間部屋の空気がカオスになった
「うぇえぇえええ!?なんだそれは!?どうしてそうなる?!」
珍しくテンションの高くなるヴァン
「え?だって、女子高生に興味が湧いたって」
「そうゆうことじゃない!エッチでいやらしいのはオマエの頭の中だ!」
「ち、違いますよ!?エッチなのは女遊びで頭がいっぱいのヴァンさんです!」
「俺は童貞だ!」
「わ、わたしだって「言うな!はしたない!」」
完全に暴走していく空気に危機感を覚えた真耶 は無理矢理話題を変えようとする
「そ、そういえば私からも質問していいですか?、ヴァンさんってタキシードみたいな服を着てますよね!」
「あ、あぁ……みたい、じゃなくて実際タキシードだった服だぞこれは」
強引な手だったが話題を変えることに成功した真耶は、すかさず畳み掛ける
「へぇ!そうなんですか!タキシードっていうとやっぱり結婚式を、想像しちゃいますね」
その言葉でほんの一瞬だけヴァンの表情が曇ったことに真耶はきづかなかった
「私もいつか、結婚できるでしょうか・・・職場が職場ですし女尊男卑になってから出会いが無いんですよねぇ……」
「……焦るようなもんでもないだろ、いつか、心底惚れられる相手が現れるさ、その出会いを大切にすればいい」
「そうですかぁ?急がないと婚期をのがしそうで・・・」
「そういうもんじゃないだろ、お嫁さんってのは、『幸せで、幸せで、幸せの絶頂の時になるもんなんだ』」
そう言った彼の目は、いつもの無気力なものでは無く、とても真剣だった
「そ、そうですね!わたしも、そんなひとが現れたらその出会いを大切にします!」
「そうかい……ところで、時間は、大丈夫なのか?」
「あ!?本当だ、明日はクラス対抗戦があるので、そろそろ帰りますね!それでは、ヴァンさんまた明日!」
「あぁ、またな『真耶』」
「!?はっ、はい!」
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夜が明けていくのを独房の窓か眺めながら、男は考えていた
「『同じ夢の話』か……、なぁエレナ……ガドヴェド、俺には、もう一度そんなことができる奴が現れるのかな……」
最愛の女性と自分を鍛え、敵となっても、嫌いになれなかった男、その2人は、もういない。
そして男の言葉に答えるものもまた、どこにもいない
「らしくないな、まったく。そろそろクラス対抗戦とやらが始まるらしいが、俺には関係ないし、もう一眠り 」
ドガァァァァァアアアアアアアアン!!
直後響いた爆音にヴァンは目を開く。
それは、明らかにアリーナ内から響く試合の音ではない
『一緒に笑って、悲しんで、その先で『同じ夢の話』ができるのが、私は嬉しいんです』
そう言った彼女の言葉が頭をよぎる
「チッ!」
ヴァンは、舌打ちし、腰に巻かれた布に取り付けられたグリップに手をかけた