A お、おれは悪くねぇ! TOZが俺を絶望させたせいだ!(親善大使並の感想)
あくまでメインはIS×SWORDなのでご安心ください
では、どうぞ
episode XⅢ 『さよならのありか』 ②
「こ…ろ……され…た? エレナさんが?」
震える声で真耶は、何とか言葉を吐き出した。
「どうして……? だって……結婚式なんですよ? ヴァンさん言ってたじゃないですか……『幸せで、幸せで、幸せの絶頂の時』だって……そんな時に……どうして……そんなことに……?」
先程、エレナの死を聞かされた際、真耶はそれが不幸な事故による物だと思い込んでいた。
だってそうだろう? 最愛の人と永遠の愛を誓い合うその場所で、その最愛の人物を殺されるなど、そんな不条理で巫山戯た話が本当にあるのかと誰でも思う。
だが、真耶はヴァンの怒りに満ちた、その表情を見て彼が嘘などついていない事を理解する。
「ガドヴェドが……あぁ、俺とエレナの知り合いなんだが……ソイツが奴を教会に招待したらしい……奴が、どういうつもりでエレナを殺したのかは知らないし興味も無かった。俺にとって重要なのは奴がエレナを殺した事実だけだ……!」
復讐の旅の中で再会したヴァンにとって師とも言えた存在、『ガドヴェド・ガオード』。彼は、ヴァンと同じ特別なヨロイ『ディアブロ・オブ・マンデイ』の搭乗者であり、囚人惑星エンドレスイリュージョンの監視・制裁・処刑執行を司るオリジナルセブンのメンバーだった。
だが、彼を除くオリジナルセブンは代を重ねる毎に腐敗し、その力を我欲の為に使うようになっていき、まともに世代交代すら行わなかった為、長年、正式な搭乗者不在のヨロイまでだしてしまう体たらくとなっていた。
その事を嘆いていたガドヴェドは、ある日、カギ爪の男と出会い、エンドレスイリュージョンに平和をもたらすという彼の掲げる理想に共感し、彼がオリジナルセブンに変化を与える存在となる事を期待して、ヴァンとエレナの結婚式に招待した。当時、正式な搭乗者不在のオリジナルセブン『ダン・オブ・サーズデイ』の研究を行っていたエレナの結婚式にはオリジナルセブンのメンバーも全員参加する予定だったからだ。
そして、カギ爪の男は確かに変化をもたらした。ガドヴェドを除く結婚式の参列者をオリジナルセブン諸共、皆殺しにするという形で……。
「奴に重傷を負わされて倒れた俺が最後に見たのは、真っ白なウェディングドレスを血に染めたエレナの姿だった……」
目を見開き、歯を噛み締める、普段は見せない彼の激情的な一面を初めて見た真耶は、何も言う事ができない。
「死んだと思った……だけど、俺は生き残った。エレナが俺を救ってくれたんだ……自分の命を犠牲にして……」
瀕死の重傷を負ったエレナとヴァンだったが、ヴァンに比べて傷の浅かったエレナは、自身の状態を省みず、一刻を争うレベルだった重傷のヴァンを救うべくガドヴェドと共にヴァンの改造手術を行い、その結果、ヴァンを救うことは出来たものの自身の命を落とす事となる。そして、生き残ったヴァンは改造手術により正式なオリジナルセブン『ダン・オブ・サーズデイ』の搭乗者となった。
「俺とエレナはあの日、確かに幸せの絶頂の中にいた……だが、奴は俺から全てを奪った……だから……ッ!」
男は復讐を誓った。必ず最愛の女性の仇を見つけ出し、この手で息の根を止めると……。
「……復讐、それが……ヴァンさんの……」
真耶は否応なく理解せざるを得なかった。想いを寄せる男が心に持つ傷痕と血に濡れた過去を……。
「……それじゃあ……さっき、ケリをつけたって言ってたのは……」
先程の昔話で、ヴァンは旅の目的を果たしたといっていた。そして、エレナの件についてもケリはつけたと……。復讐の旅の目的を果たした。
それは、つまり……。
「仇はとった……カギ爪の野郎を俺は、この手で、ぶった斬った」
静かに、しかしハッキリとヴァンは言い切った。この手で人の命を奪ったのだと。
「……ッ! そんな! そんなのって!」
想いを寄せる男が、その手で人を殺した。その事実に真耶は思わず声を荒げる。
「……他にやり方は無かったんですか? ヴァンさんの辛さを分かるなんて言うつもりはありません……ヴァンさんのいた世界と私達の世界じゃあ環境が違うことも理解しているつもりです……けどッ! そんなことしたって「『死んだエレナは戻って来ない』か?」……ッ!」
語気を強める真耶の言葉をヴァンは静かに遮った。
「わかってるさ、エレナは死んだ……そんな事は、俺が一番よくわかってる。俺は、この手でエレナを埋めたんだから……」
「!! 」
ヴァンの言葉に真耶は言葉を詰まらせる。
「旅の中でお前みたいな事を言う奴もいたよ『死んだヤツは仇討ちなんて望んでいない』『仇を討っても、残るのは虚しさだけ』『過去を忘れて新しい人生を生きろ』 なんてな」
「けど、それはッ!」
「あぁ、別に間違いじゃない。エレナは仇討ちなんて望んじゃいないし、喜びもしない。けどな、俺には無理だ。エレナを殺した奴を生かしておいて、新しい人生を生きて行けるほど、俺は物分かりのいい人間じゃねぇ」
良くも悪くも、真っ直ぐで純粋な男は、最愛の女性を思い出にして新たな人生を歩む事など出来なかった。
「俺が絶対に許さないと思った……それだけだ。それが正しいか間違っているかなんて関係無い」
誰に肯定してもらいたい訳でもなかった。間違っていたとしても、どうしてもケリをつけなければならなかった。
「実際、復讐を果たして残ったものは虚しさだけだったさ。だがな、それがどうした? そんなもん当たり前だ! 奴への恨みだけで生きていた俺自身がケリをつける為の復讐だ!
激情を滲ませるヴァン。その言葉を聞いていた真耶は、どこか不安そうな声でヴァンへと問いかけた。
「ヴァンさん……ヴァンさんは、復讐の中で死のうと思っていたんですか?」
その言葉に、ずっと俯きながらはなしていたヴァンが少し驚いたように隣に座る真耶へ視線を向けた。
「ヴァンさんの話を聞いて、なんとなく、そう感じたんです。ヴァンさんにとっての幸せな明日っていうのは、エレナさんと一緒に歩んで行く筈のもので……だから、エレナさんのいない明日は、ヴァンさんにとって……」
1人の女性を一途に想い続ける彼にとって、彼女と共に歩んでいく以外の幸せというのは考えられなかった筈だ。ならばそれを失った彼に、復讐以外の生きる理由は残されていなかったのではないのか。ヴァンの持つ危うさを感じた真耶は、彼を案じてその思いを吐き出した。
「……この世に幸せなんかある筈ないと思っていた……エレナはもう、どこにもいないんだから……。だから、復讐の先で、奴を殺せれば、その先で俺が死ぬことになっても構わないと思っていた」
生きる理由として残されたものは復讐だけだった。エレナと同じ場所に行く前に復讐だけは果たす。そんな思いで彼は生きていた。
「ヴァンさん……」
そんなヴァンを真耶は悲しそうな表情で見つめる。
「けどな、旅の途中で自分が本当に死ぬと思った時、俺は死にたくないと思った。復讐も何もかも投げ出して、尻尾を巻いて逃げ出してでも生きたいと思った。情けないことにな」
「……ッ!そんなの当たり前です! 自分の命が大切な事の何が情けないんですか!」
その言葉に真耶は怒ると同時に、喜びを覚えた。彼は決して生き急いでいた訳ではないのだと……。
「その時に気付いたんだ。今の俺があるのはエレナのおかげで、エレナはもう俺の中にしかいない。なら……アイツと一緒だっていうのなら、何も恐ろしいことなんて無いんだって……だから、カギ爪とのケリをつけて、もう少しだけ生きてみようと思った。まぁ、奴とのケリをつけてから、一年も彷徨った挙句、今だに新しい目的は見つかってないんだがな……」
その言葉を聞いて真耶の顔に少しだけ、笑顔が戻る。
「良かった……」
「あ?」
「いえ、今のヴァンさんは、少しずつだけど明日にむけて進み始めているんだなと思ったら安心して……」
真耶の反応にヴァンは少し意外そうな表情をする。
「なんだ? てっきり、奴を殺したことに、まだ何か言ってくるもんだと思ってたんだか……」
その言葉に真耶は表情を引き締めて返答する。
「私は……やっぱり復讐というやり方を認めたくはありません。そこにどんな理由があったとしても……何もなくしたことが無いから言える綺麗事かもしれないけど……それでも、教師としても、人としても認めたくはないです」
ハッキリと力強く答えた真耶の真っ直ぐ瞳を見てヴァンは、目を閉じ、口元を緩めて薄い笑みをつくる。
「そうかい。まぁ、お前はそれでいいと思うぞ。そっちの方がお前らしいさ」
そう答えながら、ヴァンは内心で自嘲する。
「(こりゃ、明日からは今まで通りってわけにはいかないな。明日からの見回りは迷ったら野宿確定だな)」
この世界が自分の世界に比べて命を奪うということに対して否定的な事は、最初に捕まってた時の真耶の説明で理解している。今更、復讐の事を悪びれるつもりはないが、それでも真耶のような真面目でお人好しな人間は自分のやったことを嫌悪し距離をとるだろう。だが仕方が無い、誰に軽蔑されようとも構わないと思って貫いた道だ。言い訳地味た真似をするつもりはヴァンには無い。日課になってきたお節介な彼女の説教が無くなると思うと、それはそれで調子が狂いそうだなと思いつつ、ヴァンは話を終えて立ち上がろうとする。
だが、真耶の言葉はまだ終わりでは無かった。
「けど……ヴァンさんが新しい生きる目的を見つけようとしているのなら私はヴァンさんの力になりたいです」
その言葉にヴァンは再び真耶へと視線をむける。
「復讐っていうやり方は納得できませんけど、それでもヴァンさんは復讐を終えて、今もこうして生きています。だったら私は私なりにヴァンさんのこれからに協力します」
「……なんで、お前がそこまでする」
自分のやった事を否定した上で、それでも自分の力になるといった真耶にヴァンはストレートに疑問をぶつける。
「ヴァンさんと、同じですよ。私が、そうしたいからです。勝手ですけど、私はヴァンさんに幸せになって欲しいと思ったんです。それは昔ヴァンさんが望んだ『夢の続き』とは違うものかもしれないけど、それでも、ゆっくり前に進もうとしているヴァンさんが、いつか新しい生きる目的を見つけて欲しいって……だからヴァンさん」
ベンチから立ち上がり座っているヴァンの目を真正面から見つめ真耶は満面の笑みで言い放つ。
「改めて、これからよろしくお願いしますね ♪」
その言葉を聞いてヴァンはどこか諦めたような、或いは呆れたような表情で真耶に返答する。
「いいのかよ? これ以上、俺なんかに構ってて……いつか、俺は自分の世界に帰るつもりなんだぞ?」
「でも、少なくとも、私の夢の続きを見届けてくれるんですよね? なら大丈夫です。任せてください! なんたって教師ですから! 頭の悪いヴァンさんも安心です ♪」
「……お前、最近ちょくちょく毒吐くよな」
ため息をつきながらヴァンはベンチから立ち上がる。
「その調子じゃ何を言っても無駄みたいだしな……勝手にしろ」
「はい ♪ 勝手にします ♪ 覚悟してくださいねヴァンさん ♪ いつか、今の自分はエレナさんと私のおかげなんだって言わせてみせますから」
その真耶の言葉に困惑したヴァンは、その意味を問おうとする。
「あ? それってどういう……」
だが、真耶はそれに答えること無く先行して早歩きで寮の方向へ歩きだしてしまう。心なしか街灯に照らされた耳が真っ赤に見えたような気がするが、一体なんなのだろうとヴァンは首を傾げる。
「まったく、妙な奴だ……」
そう言ってヴァンは一度、夜空に浮かぶ月を見上げる。
「本当にお節介な女だよ……悪いなガドヴェド。どうやら『同じ夢の話』をするのは、まだまだ先になりそうだ」
その呟きは誰にも届かず風に消えていく。
「ヴァンさ〜ん、どうしたんですか〜? ちゃんとついて来ないとまた迷子になりますよ〜」
「……俺の保護者かお前は」
振り向いた真耶の言葉にヴァンは嫌そうな顔をしつつ歩きだした。
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真耶とヴァンが去った中庭の外れ、そこに動く人影があった。
「別の世界? それに復讐って……」
美しいブロンドの髪が風になびき、その瞳は困惑に揺れている。離れた位置にいる2人の話が気になったのか、頭部にはISのヘッドセットが部分展開されていた。
「ヴァン……」
ヴァンの真実に足を踏み入れたもう一人の人物、シャルロット・デュノアは混乱し静かに立ち尽くしていた。
ヴァンはカギ爪の話はしないん? と思われた方がいるかもしれませんが、ヴァンは、殆どカギ爪の事情だとか計画とか、知らないしどうでもよかった奴なので、しません。(というか原作25話で初めての会話ですし)。カギ爪をヴァン側の視点で語るのにベストなのは、やはりウェンディなんですが、登場予定は無いという……
次回はレイ兄さん&千冬サイドの話です