スパロボBXが発表されてテンションが高いフジです。
ガンソが無いのは残念でしたが、真とSKLのダブルマジンガーやナイトガンダム参戦でテンションがヤバイです。
そして、勇者王参戦で木星関係の連中が心配でしょうがない今日この頃
では、どうぞ
歓迎会の翌日。
朝の食堂は、朝食を摂りにきた生徒達でごった返していた。
「アンタ朝からそんなに食べるの? 体重がヤバイとか言ってなかったっけ?」
「うっ……いいじゃない。朝はきちんと食べた方が良いって、この前、健康番組で……」
「そうなの? 私が聞いた話じゃ……」
女子校という事もあり、朝から展開される女性特有の会話。賑やかな声があちらこちらから聞こえてくる中に一夏達の姿はあった。
「一夏、本当に体の調子は大丈夫なのか? 何か後遺症は……」
「無理すんじゃないわよ。昨日は奇声あげてぶっ倒れたんだから」
席に陣取ったいつもの面子。箒と鈴は、一夏の体調に気をかけるように声をかけた。
「もう! 箒さん! 鈴さん! 人の料理を毒物みたいに仰って!」
そんな二人の言葉に昨夜、一夏をダウンさせた元凶であるセシリアは、失敬なというような反応を見せるが……。
「人の意識を飛ばす食べ物が毒物で無いとでも?」
「同感ね」
「うっ……そ、そんなことは」
昨日の惨状を知っている箒と鈴はセシリアに対し、冷やかな態度をとる。そんな二人の視線にセシリアはたじろいだ。
「全く……料理の経験がないなら今度からは、まず自分で味見をしなさいよね……」
「は、反省しますわ……」
鈴の言葉に項垂れながらも自身の非を認めるセシリア。そんな時、箒は、ふと違和感を覚える。いつもなら積極的に会話に参加する一夏が、この状況に何も言葉を発しないことだ。
「どうしたのだ? 一夏? さっきから黙りっぱなしだが……まさか!? 本当に、まだ体調が悪いのか!?」
「うそ!? アンタ、調子が悪いなら早く言いなさいよ!」
様子のおかしい彼の身を案じる二人。その二人の言葉に黙っていた一夏は、ハッとした表情をし慌てて否定する。
「あ! いや! なんでもない! ちょっと考えごとをしてただけだ。体調は、もう大丈夫だよ」
いつものように元気な調子を取り戻して喋る一夏。だが、箒には、それが何かを取り繕うように見えた。
「本当か? 調子が悪いなら今日は授業を休んだ方が……」
「本当に大丈夫だって! そ、それよりさ、昨日の歓迎会は結局どうなったんだ? 俺は途中で抜けちゃったけど……」
話題を打ち切る一夏。一夏本人としては、話題を逸らして誤魔化すつもりでの言葉だった。しかし、その言葉を聞いた箒達の表情が曇る。
「え? 俺、何かマズイ事でも聞いたか?」
一夏は目に見えて表情を暗くした女性陣の反応を見て焦ったように問いかける。
「いや、なんと言ったらいいのか……」
「わたくし達も、よくわかっているわけではないのですが……」
「変な形でお開きになっちゃったのは確かよね……」
歯切れの悪い口調で微妙な表情を浮かべる3人。当然と言えば当然だ。ヴァンに婚約者がいたという事実だけでも驚愕ものだったというのに、その婚約者が結婚式の日に死んだなどという話を聞かされたところで、歓迎会はお開きになったのだ。箒達からすれば気まずい事この上ない。
「正直なところ、ヴァンさんと顔を合わせづらいですわね……」
「うむ……興味本意で辛いことを聞いてしまったのは確かだからな……」
「ねぇ、デュノア。確かアンタってアイツと同じ部屋なのよね? アイツは、歓迎会のあと、どんな感じだった?……ちょっと、聞いてる?」
一夏と同じく先ほどから言葉を発さないシャルロットに対して、鈴は、
「え!? えぇっと……ヴァンなら…「きゃあああああ! 出たわ!」……な、なに!? なんの声!?」
鈴の声に気づきハッとした表情となったシャルロットは慌てて問いかけに答えようとする。だが、その声は女性の声に遮られ、シャルロットは何事かと驚く。
そして一同は声が響いた、食堂の注文受付へと視線を向ける。
そこには……
「あの、ですからメシの注文を……」
「料理人殺し『料理レイパーのヴァン』よ! こ、今度は誰を犠牲にするつもりなの!」
「いや……別にそんなつもりは……俺は、メシと調味料をありったけ欲しいだけで……」
「やっぱり! また犠牲者を出すつもりじゃない! なんて危険な奴! こ、今度は、どんな風に料理を台無しにするつもりなの!」
「話を聞いてください……」
いつもと変わらないテンションで、厨房で働く女性達ともめているヴァンの姿があった。朝っぱらからカオスになり始める食堂。そんな事態を収拾すべく山田真耶が現れる。
「朝から何してるんですかヴァンさん……」
どこか呆れたような表情で問いかける真耶に、ヴァンは困った表情で返答する。
「知るかよ……俺は、メシを食いにきただけで何もしていない……」
「ハァ……昨日、食堂で働いてる方を卒倒させたのを忘れたんですか?」
「………………………そうだったか?」
「そうです! 何ですか、その大きな間は!? あんな事したら、警戒もされます
! だから調味料を沢山かけるのはやめましょうよ!」
「いや、でもアレをしないと食べた気がしなくて……」
ヴァンの奇行を真耶が注意するという2人にとっては、お約束となり始めたやり取りが始まる。だが、今回は、お説教だけで終わらなかった。
「もう、しょうがない人ですね……そ、それならヴァンさん、時間もないですし、ひとまず朝は、これを食べませんか?」
先ほどまでのお説教モードの顔付きが消え、頬を僅かに染めつつ、躊躇いがちに真耶が手に持っていた物をヴァンに見せる。それは大きめな四角い形状の何かを、明るい黄色い布で包み、結んだ物だ。
「何だソレ?」
「こ、これはですね! 偶には、お昼をお弁当にしようと思って作ってみたんです」
「あ? お前の昼メシなのか? 俺が食べてもいいのかよ?」
「は、はい! 私は、昼は学食で食べますから!」
「そっか、悪いな。 っと、結構大きいな、お前って意外と食べるんだな」
「え?! あ、いや!? それはその……」
礼を言い弁当箱を受け取るヴァン。側から見ても、真耶の持つ弁当箱は女性が食べるにしては量が多く、どう考えても男性の為に作った物としか考えられないのだが、ヴァンがそれに気づくことはない。だが、それでも真耶の表情は嬉しそうだった。本来は昼に渡す計画だったのが早まったとはいえ、無事、手製の弁当をヴァンに渡せたのだ。作ってから時間を置かず食べて貰えるという点も大きい。真耶からすれば、今の事態は良い誤算だったのだが……
「それじゃあ、早く食っちまうか。あ、スイマセン。調味料をありったけください」
さらなる誤算に襲われ真耶の笑顔が引き攣る。今しがた注意したばかりの行為をヴァンは今度は真耶の弁当で実行しようとしたのだ。上げて落とされた真耶の心境は穏やかではない。
「ヴァ〜ンさ〜ん?」
「……なんでしょうか?」
「普通に食べてください」
「いや、だから、それだと食べた気が……」
「普通に食べてください」
「いや、でも「ふ つ う に ! た べ て く だ さ い !」……スイマセン」
そんな漫才めいたやり取りを見て、割と深刻な雰囲気で話していた鈴達は、思わずガクリと芸人めいたリアクションを見せる。
「なによアレ……昨日、深刻なカミングアウトかまして去っていった人間とは思えないわよ」
「山田先生も元気ですわね。 昨日の話を聞いた時の様子からして、落ち込んでいたのかと思っていましたが……」
「むしろ、積極的になっているように見えるが……何かあったのだろうか?」
同じ女性として何かを感じとったのか真耶の変化に気づく3人。しかし、そんな中、シャルロットだけはヴァンと真耶のやり取りを神妙な顔付きで見つめていた。
「なんか俺だけ置いてけぼりなんだけど……って、どうしたんだシャルル? 」
その表情に気づいた一夏はシャルロットへと声をかける。
「え? いや! なんでもないよ! ヴァンは変わらないなぁ、と思っただけ!」
誤魔化すように作り笑いを浮かべるシャルルに一夏は、内心ではやはり変だなと感じるが、本人がそう言うのなら、とそれ以上の追求をやめる。
「あっ! そうだ! 一夏、昨日言ってた銃器の取り扱いの訓練なんだけど、今日の放課後に良かったらどうかな?」
話題を変えたいシャルロットは、昨日一夏と約束した銃器の取り扱いを教えるという約束の話をする。
「え? あ!? その話か……えぇっと、うん……それじゃあ頼む」
シャルロットの言葉に一瞬驚いた表情を見せた一夏は、少し悩んだ後に、その提案を受けた。だが、昨日と違い、何処か歯切れの悪い一夏の反応に、鈴は違和感を覚える。
「一夏、アンタどうかしたの? 昨日はレイさんみたいに銃も使えるようになりたいってノリノリだったじゃない」
その言葉に一夏は露骨に反応した。
「な、何もないぜ! いきなり何言ってんだよ鈴」
誤魔化すような一夏の言葉に、鈴は呆れたようや表情を浮かべる。
「ハァ……明らかに何かあったって反応じゃない……何? レイさんとケンカでもしたの?」
その言葉に一夏が表情を更に暗くする。
「本当になんでもないよ……レイ兄とケンカもしてない。きっと、俺の勘違いなんだ……そうに決まってる……」
どんどん声を小さくしていき最後は聞き取れないほどの声で、ポツリと自分に言い聞かせるように言葉を発した一夏は、立ち上がると食事を乗せたプレートを持ち食器を下膳する場所へと歩き始める。
「い、一夏? 殆ど食べていないではないか? いいのか?」
食事に殆ど手をつけずに終わらせた一夏に箒が心配そうに声をかける。
無理もない。
健康を意識し、普段なら朝食を大盛りで食べることを習慣にしている一夏が、食事を殆ど残しているのだ。調子が悪いのかと思うのが当然だろう。
「大丈夫だって。今朝は少し食欲がわかないだけだから」
そう言って歩いて行く彼の背中を、箒は心配そうな表情で見つめ続けた。
episode XⅥ 『素壊の果て』 ①
時間は飛び、放課後。篠ノ之箒は1人、誰もいない剣道場で道着を着て木刀を構えていた。
本来ならば剣道部員達が練習を行っているであろう時間帯なのだが、箒以外の人間が姿を見せない事には理由がある。6月の下旬に一週間かけて行われる学年別個人トーナメントを控え、学園の部活動は現在休止中だからだ。
一応、部活動ほ施設自体は解放されている為、使用するのは個人の自由なのだが、そこはISを学ぶ為の学園ということもあり、部活よりもIS関連を優先するのが普通である。
学園別個人トーナメントは、一年生は浅い訓練段階での先天的才能評価、二年生は、そこから一年間、訓練を積んだ成長能力評価、三年生はより具体的な実戦能力の評価を目的としており、各学年の生徒達は、それぞれがトーナメントに向けて様々な形で励んでいる。特に三年生試合にもなれば、企業や国の重鎮がスカウト目的で顔を出す為、生徒達の力の入り方も比ではない。加えて、今年は一年生にも各国の試験的な第三世代の専用機持ちや織斑一夏の存在がある為、其方も注目されるのは間違いないだろう。
その為、例年よりも力が入っている今回のトーナメントに生徒達もヤル気を出しており、練習機の貸し出しの申請は凄まじい競争率となってしまっている。貸し出しができなかった生徒達は、作戦を練ったり、機体の特性や起動パターンを頭に入れるなど、様々な形でトーナメントに向けて自身の力を磨いていた。
かく言う箒も、同じであり、訓練機の貸し出しの申請に一歩出遅れ、本日はISを使用した訓練ができない彼女は自身が得意とする剣道で体を動かしていた。
それは実家が剣術道場であったこともあり、幼い頃から剣術をたしなんでいた彼女にとって、自身を鍛える行為=剣道、だっからだ。
体育会系のノリと言えばそこまでだが、ISがパワードスーツであり、人の動きをトレースする以上、自身の地力をあげる行為というのは、強ち間違いという訳ではない。加えて、箒の剣の実力は中学時代の全国大会でも優勝する程のものであり、同学年の中でも剣を使用した戦闘なら間違いなく上位に食い込める程のものだ。
だが、逆に射撃兵装の使用や対応、IS特有の三次元的な起動に関しては彼女は不慣れであり、箒自身、そこが自分の欠点だと理解しているため、射撃兵装への対応や、ISの起動パターンに関しては個人的に学習し訓練を行っていた。
だが元々、策を弄する戦いよりも、直感的な戦いを得意とする彼女としては、やはり訓練の比重は、体を動かす物が多く、付け焼き刃よりも長所を伸ばす方針をとり、こうして剣術を鍛える形に落ち着いているのだ。
箒は、手に持った木刀で、想定した敵に様々な型で斬りかかる。より速く、より鋭く、無駄のない動きを心がけ集中して、長い時間、剣を振るっていた箒は、動きを止め、大きく息を吐いた。
「……ふぅ、一夏は今頃どうしているだろうか」
昨日まで箒は、学年別個人トーナメントに向けて優勝すると意気込んでいた。理由は単純、先日、一夏に対して自分が優勝したら交際して貰うと告げたからである。
その発言は、なんの間違えか、気づけば『トーナメントに優勝した者は一夏と付き合える』という噂話として、生徒達の間で語られており、焦った箒は、俄然必死になっていたのだが……
『一夏の野郎に惚れてるなら、やることなんて他に幾らでもあるだろ。恋人ってのは、景品じゃないんだ』
昨日の歓迎会でのヴァンの言葉が蘇る。
言われてみればその通りだった。一夏の返事も碌に聞かずに優勝して彼と付き合うと思い込んでいた自分は、どこまでも独り善がりだと思わされた。だが……
「(では、どうすればいい? 一夏は、守る為の力を手に入れる事を目標にしてどんどん先へ行ってしまう。このままでは私は……)」
彼と一緒にいられなくなってしまう。
現に、今も一夏は白式という専用機を手に入れ専用機持ちの少女達と訓練に励んでいる。訓練機すら貸し出せず、1人で訓練をしている自分とは雲泥の差だ。近くに居るはずなのに一夏と自分の間に大きな壁があるように箒は感じていた。
IS開発者である束が原因で家族が離散し幼少期から振り回され、このIS学園に強制的に入学させられた箒にとって、唯一の救いが一夏の存在だった。だというのに、今、彼の近くにいるのはセシリアや鈴といった専用機を持った少女達だ。専用機を持たない箒では、一夏と過ごす時間にどうしても差ができてしまう。それが一層、彼女を焦らせた。
「力さえ……専用機さえあれば……私も一夏と……」
そして、箒は考えてしまう、本来なら手に入らない専用機を簡単に手に入れる事のできる手段を……。
「そうだ。姉さんなら……」
圧倒的にズレた価値観を持っているとはいえ、姉である束が自分に甘い事を箒は理解していた。箒が束に頼めば専用機を手に入れる事など簡単なことだろう。そんな考えが頭を過ぎったその時……
「あー、何処だココ?」
間の抜けた声とともに剣道場に似合わないタキシードを着た男が現れた。
「ヴァ、ヴァンさん?!」
唐突なヴァンの登場に箒は驚きの声をあげる。
「あ? なんだ……一夏と一緒にいた、しかめっ面か」
「箒です!」
登場と同時に失礼なセリフを宣ったヴァンに箒、声を荒げて訂正する。
「あー、そんな名前だったか。ところで此処が何処だかわかるか? 迷っちまってよ」
「迷ったって……ハァ……此処は、剣道部の為の道場です。何処に行くつもりだったんですか?」
「ケンドージョー? おかしいな、アリーナを目指してた筈だったんだが」
「なんで、アリーナを目指して、此処に辿り着くんですか……」
学園に勤めている大人とは思えないヴァンの方向音痴っぷりに箒は呆れる。
「無駄に広いんだよ、この学園は……邪魔して悪かったな」
そう言ってヴァンは立ち去ろうとするが……
「……ヴァンさん、そっちの出口はアリーナとは逆方向です」
「……ホントか?」
再び見当違いの方向へと向かうヴァンに箒は声をかけながらも内心で諦めたように、ため息をついた。
「……もう少し体を動かしたらアリーナに向かうつもりだったので、待っていただけるなら案内しますが……」
「お、そりゃ助かる。悪いな。」
箒の言葉に助かったとヴァンは礼を言う。
「それと、ヴァンさん」
「ん? なんだ?」
「ここは土足厳禁です」
「……スイマセン」
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靴を脱いだヴァンは、最初は剣道場が珍しいのか暇つぶしに色々と見て回っていたが、すぐに飽きたのか、壁に寄りかかり、剣を振るう箒を見始めた。
箒はその視線が多少は気になったが、再び集中し剣を振るう。そして幾分が時間が経ち、箒が構えをとき息を整え始めた。
「ん? 終わりか? 」
箒が動きを止めたのを終了と判断したヴァンが声をかける。
「はい……待っていてください。すぐに着替えてきます」
「いや、別に急がなくていいぞ」
「……ヴァンさんは仕事中でしょう? いいんですかそれで……」
「一応、巡回ってやつはやってるし大丈夫だろ……」
適当な物言いのヴァンに箒の表情がさらに呆れた物となる。
「適当ですね……では、なぜアリーナに行こうと? 」
「あ? なんだっけか……もう少しでナントカトーナメントがあるだろ? この時期はアリーナで訓練してる奴が多いから事故やトラブルが起きやすいんだとさ。だから、そっちを見といた方がいいと思ってな」
「……それは、山田先生の助言ですか?」
「お? よくわかったな」
「まぁ、なんとなくですが……」
「しかしアレだな。今日は一人なのか? てっきり、あのお嬢様やチビと一緒に一夏の奴のところにいるもんだと思ってたが……」
ヴァンの中ではすでに四人がグループとして一括りされていた為、箒が1人でいた事が純粋に意外だったのだろう。しかし、丁度、グループのなかで専用機を持っていない事を気にしていた箒の心にその言葉は刺さった。
「っ!……訓練機の申請が順番待ちの状態なので……」
感情を抑えて言葉を漏らす箒。だが一方のヴァンは、その事に気づく様子はない。
「あー、そういや、基本的に訓練機ってのは借りなきゃならないんだっけか。面倒くさい話だな。一夏の奴みたいに自分の機体とか貰えないのか?」
好きな時に機体を呼び出せるヴァンからすればわざわざ機体に乗るのに順番待ちさせられるというのは、純粋に面倒くさい感じたのだろう。手続き関連の作業とは無縁の生き方をしてきたヴァンとしては他意の無い率直な意見だったのだが……。
「……簡単に言わないでください。ISは総数の都合で専用機なんて簡単には手に入らないんです……。それに、学園の生徒達は代表候補生になって専用機が貰えるように努力しているんです……そんな軽々しく専用機が欲しいなんて……」
ヴァンの軽率な言葉に箒は怒ったように反論する。しかし次第にその声は小さくなっていった。
「ん? どうかしたのか?」
言葉を止めてしまった箒にヴァンはどうしたのか尋ねる。
「(『軽々しく専用機が欲しいなんて言うな』だと? どの口で言っているんだ私は……ついさっき、姉さんを頼って専用機を手に入れようなどと考えていた癖に……)」
先程の自分の考えが如何に軽率だったのか、気づいた箒は自己嫌悪から黙り込んでしまう。
「(他人の努力を軽視して、自分の事しか考えていない……これじゃあ『あの時』と何も変わらないではないか……)」
嘗て、自分が犯した過ちが脳裏を過ぎり、箒は俯いてしまうが……。
「おい、話しかけてんだろ。返事しろって」
次の瞬間、俯いた箒の視界にヴァンの顔がデカデカと映り込んだ。
「な?! 何ですかいきなり!?」
しゃがみ混んで至近距離で顔を覗き込んできたヴァンに対し驚いて距離を取る箒。そんな彼女に対しヴァンは面倒くさそうに返答する。
「いや、お前がいきなり黙り込んで動かなくなるからだろ」
「す、少しくらい、そっとしておいてもいいじゃないですか!」
「あ? なら今は話しかけるなって言えよ。急に黙り込まれたってわかんねぇって」
「うっ! それは、すいませんでした」
お前の都合なんぞ知らんと言わんばかりのマイペースな物言いだが、元はと言えば突然黙り込んだ自分に非があると考え箒は素直に謝罪する。
「いや、別に謝れってんじゃないんだがよ……まぁ、いいや、少しは休めたろ? 案内頼んでいいか?」
「あっ、わかりました。待っていてください」
少しは調子を少し取り戻した箒は、道着を着替えるために更衣室へと向かう。そんな箒にヴァンから声がかかる
「あー、そういや、このケンドージョーだっけか? 良くわからんが、剣を振る場所なんだよな? 俺も使っていいのか?」
その言葉に箒は少し驚きながら振り返る。
「ヴァンさんが……ですか?」
正直言えば意外だった。剣士として腕が立つとは聞いていたが、普段の脱力した態度からヴァンが自身を鍛えるイメージが湧かなかったからだ。
「鍛えるとか、そういうのではないんだがな。どうにもこっちは平和過ぎて、体を動かす機会が無いもんだからよ、偶には体を動かそうかと思ったんだが……駄目か?」
旅の先々で荒事に関わっていたヴァンとしては、学園生活というのは些か退屈過ぎたのだろう。先程、剣を振るっていた箒の姿を見て彼なりに思うところがあったようだ。
「いえ、織斑先生も稀に使っていますし、仕事の時間でなければ構わないとは思いますが……」
そんな、彼の言葉を聞いて箒は、問題無いだろうと返答する。
「おっ、そうか、なら偶に使わせてもらうぞ」
ヴァンがそう言った次の瞬間、突如、道場の扉が勢いよく開かれた。
「い、いた! ヴァンさん!」
見覚えの無い生徒だが、恐らくは一年生だろう。息を切らせて駆け込んできた彼女にヴァンはどうしたのか問いかける。
「オイオイ、慌ててどうした?」
「た、大変なんです! アリーナでボーデヴィッヒさんが!」
続く言葉にヴァンは眉をひそめた。
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「これで、基本的な説明は終わったから後はアリーナで実際に訓練してみようか」
「そうだな。シャルルの説明はわかりやすかったけど、やっぱ俺としては実際に体を動かして覚えるのが一番だ」
アリーナへ向けて歩くシャルロットと一夏。放課後となり、銃器の取り扱いについてのレクチャーを始めたシャルロットは、まず最初に簡易的な座学を行いISでの銃器の扱い方や注意点を説明した。銃の扱いに関してズブの素人である一夏に対しては、実践より先に基本的な説明をする必要があると判断したからだ。
一夏もそれは理解しており、文句も言わず集中してシャルロットの説明に耳を傾けた。朝の時点では様子がおかしかった二人だが、さすがに訓練に臨む際は集中しており、少しはいつもの調子を取り戻していた。
「そう言えば、オルコットさんや凰さんはどうしたの一夏?」
箒が訓練機の貸し出しができなかったことは聞いたが、他の二人が一夏についてこなかった事に疑問を覚えたシャルロットが一夏へと問いかける。
「ん? あの二人か? なんか先にアリーナに行って準備してるって言ってたけど、今回はシャルルに頼んだ訳だし、二人共、無理して俺の訓練に付き合わなくてもいいのになぁ……」
単純に自分の都合にみんなを付き合わせてしまうことに一夏なりに負い目を感じているからの発言なのだが、それを聞いたシャルロットは呆れたような表情を浮かべる。
「一夏って……やっぱり鈍いんだね」
「……へ?」
「箒達が不憫だなぁ……」
「え? どういう意味だ?」
「……自分でかんがえなよ」
そんなやりとりをしながら二人はアリーナへ到着するが……
ズドォォン!
突如として鳴り響いた爆音に二人は驚愕の表情を浮かべる。
「な、なんだ?!」
「この音……大口径の射撃武装の音だ!」
二人は顔を見合わせるとアリーナの観客席へと走りだす。
そして観客席へ到着した二人の目に飛び込んできた光景は……。
「な?!」
アリーナの中央には三機の専用機が存在していた。その内の二機は、一夏もよく知っている。セシリアのブルーティアーズと鈴の甲龍だ。
だが、その二機は遠目から見てわかる程ダメージを受けていた。装甲には所々亀裂が奔り歪んでおり、二人の表情も苦々しげに歪んでいる。
そして、その二人と相対する一夏の知らない黒いISは反対に傷一つ負っておらず空中から二人を悠然と見下ろしている。その黒い機体を操るのは……
「あれは……ラウラか!」
美しい銀髪をなびかせながらその紅い瞳で二人を冷たく見下ろしているのは、他でもないドイツの代表候補生、ラウラ・ボーデヴィッヒだった。
「アイツ!」
再び動きを見せたラウラは機体のリアアーマーから射出したワイヤーブレードをセシリアと鈴の首へと巻きつける。
「させるかよ!」
「一夏!?」
それを見た一夏の動きは速かった。瞬時に白式を展開し近接ブレードの雪片弐型を装備し攻撃対象のエネルギーを消滅させるワンオフアビリティ、零落白夜を発動させる。
雪片弐型が変形し展開されたエネルギーの刃でアリーナのシールドの一部を切り裂いた一夏はスラスターを吹かせて一気にラウラへと肉薄する。
「ッ! 貴様は!」
一夏の存在に気づいたラウラは、彼の振るう刃がワイヤーブレードを切断しようとしているものだと察し、巻きつけたワイヤーブレードを解除し回収することで回避を行う。空を切った斬撃だが、一夏は体勢を立て直し二人をラウラから庇うように立ち塞がった。
「無事か! 二人共!」
「「一夏(さん)……」」
視線をラウラから外さないように構えながらも一夏は二人に声をかける。
少し苦しげではあるものの二人はしっかりと、その声に応える。白式が表示した情報を見る限り、ダメージはあるもののティアーズも甲龍も深刻なレベルではない。
二人の無事に内心で安堵しながらも一夏はラウラを睨みつける。
「お前……こんな真似して、どういうつもりだ!?」
「………」
友人を傷つけられた怒りを隠そうともせず吠える一夏。だが、一方のラウラは何も語らない。まるで、今は一夏の存在に興味などないかのように……
「(コイツ……どうしたんだ、昨日までは、俺に対してあんなに噛み付いてきたのに……)」
皮肉の一言すら言わないラウラの態度に疑問を覚える一夏。だが突如としてラウラが動いた。
「うおっ!?」
一気に肉薄したラウラは手首に装備されたプラズマ手刀で切りかかる。一夏は驚いたものの、とっさにブレードでその攻撃を受け流した。
「ッ!」
まさか、凌がれると思っていなかったのだろうラウラの目が一瞬、驚きに見開かれた。
「こうなりゃ、少しばかし手荒いけど大人しくしてもらうぞ!」
斬撃を受け流した一夏は、一度距離を取るとすぐさま、最接近し右手に握ったブレードを振り下ろし攻撃を仕掛ける。
ラウラよりも速く踏み込んだ一夏の斬撃がラウラを捉えるかと思われたが……
「な!?」
突如として振り下ろそうとした体勢のままブレード諸共、白式の動きが止まる。
「……この程度か」
右手を前に出したラウラがつまらなそうに言い放つ。恐らくは彼女のISの能力により動きを封じられたのだと一夏は気づいたが……
「もう遅い……」
一夏の眼前に、迫ったラウラが左手のプラズマ手刀を横薙ぎに払い一夏へと切りかかる。拘束された一夏にそれを防ぐ術は無い。
たが……
バチィ!
響き渡るスパーク音。
ラウラの表情が今度こそ驚愕に染まる。
横薙ぎに振るわれたプラズマ手刀は防がれた。量子化と再展開により逆手持ちに切り替わった事によりプラズマ手刀を、振るった軌道に現れた雪片弐型の刃によって……。
「なに!?」
拘束状態で攻撃を防がれるとは考えていなかったのか、驚きの声と共に一夏の拘束が解除される。その隙を逃さず逆手持ちの雪片弐型でプラズマ手刀を受け流した一夏はその勢いのまま回転し回し蹴りをラウラへと叩き込む。
「ぐっ! 貴様!」
まさか毛の生えた素人程度だと認識していた男に一撃入れられるとは思ってもいなかったのだろう。
ラウラの表情に怒りの感情が現れ始める。
「少しばかしやり過ぎじゃない? そこまでにしたら?」
そこに、オレンジ色を基調としたIS、ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡを展開したシャルロットが援軍として現れる。
実質的には四対一の状況だ。さすがにラウラも退くだろうと一夏達は考えたが……
「「「「!?」」」」
ラウラは退かなかった。リアアーマーの四機のワイヤーブレードを射出し攻撃を仕掛けた彼女に、予想外だった四人は反応が遅れる。
しかし……
ガキィン!
ダダダダダァン!
鳴り響く金属音と銃撃音。
突如現れた二つの影。
タキシードを纏った男は、その手の蛮刀で二機のワイヤーブレードを受け流す。
一方でグレーのスーツを纏った男は手に持った拳銃を連射し、放たれた弾丸はワイヤーブレードの一点に寸分違わず着弾したことにより、その軌道が僅かにズレ、もう一方のワイヤーブレードと接触して地面へと突き刺さった。
「ヴァン!」
「レイ兄!」
シャルロットと一夏が現れた二人の男の名を呼ぶ。
「おいおい……何やってんだよチンチクリン」
調子を崩さずヴァンはマイペースにラウラへと声をかける。だが、当のラウラはその声に応えず、レイへと視線を向けていた。まるで漸く、狙っていた本命が現れたとでも言うかのように……。
「レイ兄……その「全員、ISを解除しろ」……ッ!」
躊躇いがちにレイへと声をかける一夏だが、レイはラウラから視線を外さずに一夏へと背を向けた状態で冷静に告げる。
「生徒からの連絡で来てみれば……一体、何を考えている? このアリーナにはお前たち以外の生徒も訓練を行っていたんだぞ? 派手にやりあうなら少しは周りの状況も考慮しろ」
その言葉に一夏は声を詰まらせる。状況が状況だったとはいえ配慮が足らなかったのは確かだからだ。
「でも、レイさん! 元はと言えばアイツがいきなり「詳しい事情は後で聞く。わかったら指示に従え」……はい」
反論しようとした鈴を有無を言わさず黙らせるレイ。一夏達は、指示に従いISを解除する。
しかし……
「おい……あのチンチクリンは、まだやる気みたいだぞ」
ラウラは指示に従わずISを展開したままだった。
「どういうつもりだ? ボーデヴィッヒ」
レイはラウラへとその意図を問う。
「何故、私が貴様らに従わなくてはならない? ISモドキの出来損ないを使っているだけの貴様らなどの指示に……」
容赦の無い返答。それは挑発の意味も含んだ物だったのだろう。
その言葉にほんの一瞬だけ、ヴァンとレイの目が細まり鋭さを増す。
「はぁ……ガキが、お仕置きにケツ叩きだな」
面倒そうな表情のまま、ヴァンは人差し指をテンガロンハットのリングにかける。だが、その行為はレイにより遮られた。
「奴の相手は俺がする。お前は周りの生徒達を巻き込まれないように退避させろ」
アリーナのシールド内部には一夏達を含め訓練機を使用していた生徒が残っている。レイはそれを退かせるように言う。つまる所、ラウラとサシでやりあうつもりなのだ。
「あ? なんで俺が? お前がやれよ……」
「奴の狙いは俺のようだ。ならお前しかいないだろう。普段は対して働いていないんだ。それくらい役に立て」
「嫌だね。お前の命令なんざ聞きたくない」
「ガキか貴様は……貴様が好き勝手にやると事態が面倒になる。下手に事を大きくすれば貴様を気にかけているあの女も責任を問われるだろうが、それでもいいのか?」
下手に事を大きくすればヴァンの指導の責任者である真耶にも被害が及ぶと半ば脅迫じみた発言をするレイに、ヴァンは忌々しげに舌打ちする。
「チッ! そういう所は相変わらずかテメェ……」
「なんだ? 気づいていなかったのか」
「あぁ……女の尻に敷かれて、ガキの相手をしてるくらいだったもんだからな」
「………」
「………」
いつの間にか目の前のラウラを無視して罵りあい始める二人。明らかに空気が剣呑になり、背後から見ている鈴とセシリアは、冷や汗を流すが、やがてヴァンが踵を返し此方に歩いてきたことで、二人は安堵の息を零した。
「あの野郎が邪魔だから退いてろとさ。行くぞ」
レイの指示に従うことが気にくわないのか忌々しげに、告げるヴァン。
「え!? だけどレイさんは?」
「知るかよ……人に偉そうに命令しやがったんだ。何かしら考えがあるんだろ……ほらお前も突っ立ってないで、早く来い」
「え?! ちょっ!? ヴァンさん! 離してください!」
鈴のセリフを適当に流しながら。動こうとしない一夏のISスーツの襟を掴み引き摺りながらヴァンはアリーナのシールド内部からの出口へと向かっていく。騒いでいる一夏の声は完全にスルーしており、残りの生徒達もヴァンの指示に素直に従った。
そしてシールド内部に残されたのはラウラとレイの二人のみとなる。
「フン……まさか貴様から御誂え向きの舞台を用意してくれるとはな。一体どういうつもりだ?」
問いかけるラウラ。だが、レイは黙ったままその言葉に応えることは無い。
「だんまりか……まぁ、いい。お前を勝負の場に引き摺りだせたんだ……後は、貴様を無様に敗北させれば教官もきっと目を醒まして「言いたいことはそれだけか?」……なんだと?」
「悪いが、これ以上、時間をかけるつもりは無い」
ダァン! ダァン!
ラウラの言葉を切り捨てたレイは、靴の踵に仕込まれたジングウを呼び出す為のマーカー弾を作動させる。
「っ! 何を!?……これは!?」
レイの行動の意図がわからず警戒するラウラ。そして気付く、まるで地震のように足元が揺れ始めた事に。
「俺と勝負するのが目的だったと言ったな……」
レイは表情を崩さず淡々と告げる。
「ならば、見せてやる……お前に」
その言葉と共にレイの背後の地面に亀裂が奔る。
「これが……」
地を割いて現れたジングウが開き、その中に佇む赤褐色の彼の愛機が姿を現わす。
「シノが造った……」
「ヴォルケインだ」
一応、言っておきますが、箒はあくまで一夏のヒロインです