IS×SWORD   作:フジ

5 / 23
なんか、無駄に長くなったレイ兄さん篇、第二話
ドラマCDネタ➕ ぼくのかんがえたふくしゅうをおえたレイ兄さんとなってしまっていて読書から「レイ兄さんは、そんなこと言わない」とボコられるんじゃないかと不安でしょうがない。

後、千冬も何故かツンデレブラコンになっているけど、19歳の頃ってことで勘弁してください

しかし、アレだ。ガン×ソード知らない人の感想(知らないひとが読んでるか、わかりませんが)ってのも気になってくるもんですね


episode Ⅱ 帰らざる日々……

男、【レイ・ラングレン】と少年、【織斑一夏】の出合い、それは千冬が家を空けた一週間前の夜に遡る。

 

その日、学校から帰宅し日もくれてきた頃、一夏は一人、夕食の準備に取り掛かっていた。

 

「今日の夕食は、カレーとサラダにでもするか」

 

普段に比べれば、あまり手の混んでいない料理だが、姉が家を空けている今、毎食、子供一人分の料理を作るというのは、逆に手間だし、モチベーションも上がらない。その為、何回かに分けて食べられる物を作り置きしよう、というのが今の一夏の考えである。

 

「しかし、千冬姉は一週間も海外で仕事なんかして、ちゃんと生活できるのかな?」

 

基本的には、手際良く『デキる女』と評価される姉だが、私生活は結構だらしない。料理は出来ないし、片付けも苦手、風呂上がりはリビングを下着姿で歩き周り、遅い時間に仕事から帰り、スーツも脱がずに、そのまま爆睡、というのも珍しくない。

 

その反動からか、一夏は小学五年生にして炊事、洗濯、掃除と何でも御座れの、主夫小学生となっていた。だが一夏は、そのことに微塵も不満などと思っていた。

 

物心のつく前から両親がいなかった一夏にとって、唯一の肉親であり、自分の事を、ずっと守り続けてくれた10歳近く年齢の離れた千冬の存在は、姉であり母の様なものだった。

 

そんな姉の負担が少しでも減らせるなら、疲労が少しでも癒せるのならと、彼は自分にできることを必死に増やしていく。

 

自分の料理を「美味しい」と言って笑ってくれる姉の笑顔が、一夏にとっては何よりも嬉しかった。

 

だからこそ、ISの日本代表となり世界大会で姉が優勝してから、家族で過ごす時間が減ってきていることは、幼い一夏にとって、寂しいことであるが、彼は決して、その事を口に出しはしない。

 

強く凛々しい姉に憧れ、その姉が自分を守る為に頑張ってくれている事を一夏は誰よりも知っているから……。

 

だが、最近の一夏には、少し気になっていることがあった。

 

「父親って、どんなものなんだろう?」

 

そう思ったのは、先日、クラスメイト達が休み時間に父親と遊んだ内容を自慢しあっているのをきいたからだ。

 

クラスメイト達は、「肩車してくれた」「キャッチボールをした」「遊園地に連れていって貰った」など、それぞれの体験を楽しそうに語り合う。五年生に進級して、中国からやってきた転校生である凰 鈴音も、また中華料理屋を営む父のことを楽しそうに話していた。

 

姉である千冬は、多忙であるため機会こそ少ないが、それでも時間を作り自分と遊んだり、出掛ける時間を作ってくれる。それに不満は無いし、とても嬉しい。

 

しかし、父親について話し合うクラスメイト達の会話には、一夏自身、具体的に説明は出来ないのだが、女性である千冬とのふれあいとは、また違うものがあることを感じたのだ。

 

今更、自分たちを捨てた両親に、戻ってきて欲しいとは思わないが、それでも、1度気になってしまった事は、中々頭から離れない。

 

「父親は無理にしても、千冬姉みたいに年齢の離れた兄さんがいれば、父親がどんなものか、わかったりするのかな?」

 

といっても、いきなり自分に兄ができるわけがない、千冬が結婚でもすれば、その相手は自分の義兄になるのだろうが、姉である千冬に、今の所、誰かと付き合うような気配は無い。

 

「駄目だな……こんな事、考えてても千冬姉を困らせるだけだ。早く夕食を作ろう」

 

気を取り直し、一夏は夕食の準備を始めようとするが……。

 

『ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ』

 

突如、地面が揺れる。

 

「じ、地震!?」

 

そして……

 

『ドゴォ!』

 

 

自宅の庭から、大きな音が響く。

 

「な、なんだ!?」

 

驚き、窓を開けて、庭の様子を見る一夏

 

「こ、これって……」

 

目の前に広がる光景に一夏は驚愕する。

 

自宅の庭には、いつの間に掘られたのか巨大な穴が空いていたのだ。

 

「な、なんだこりゃあ!」

 

近づき、穴の底を眺めて見る。日はくれて、暗くなってきた為に、よく見えないが、その深さはチョットやそっとのものではない。

 

そして……

 

「あれ、人が……?」

 

巨大な穴の近くに男が倒れているのだ。

 

「だ、大丈夫!?」

 

慌てて、一夏は男に駆け寄る。

 

「うぅ……」

 

「!? 大丈夫?ケガしてるの? 立てる?」

 

「お、俺は……一体……シノ……どこにいるんだ」

 

「と、兎に角、家にあがって、ソファで横になっていいから」

 

混乱した様子の男に、一夏は落ち着かせようと声をかける。

 

本来なら即座に警察に連絡すべき得体の知れない男だが、男の尋常ではない様子を見た一夏は放っておけなかった。

 

「……ジョッシュ?」

 

一夏の声が、聞こえたのか、男はヨロヨロと立ち上がる。意識が朦朧としているのか、一夏を誰かと勘違いしているようだが、今は、それどころではない、自分に手を引かれて、男は何とか居間のソファに辿り着いた。

 

なんとか、男をソファに仰向けに寝かせ、先程の地震と轟音を心配して、駆けつけてきた近所の大人達に、男の事は秘密にしながらも「大丈夫です」と伝える。

 

そして、一夏は居間に戻り、一息つき、改めてソファに眠る男の姿を観察した。

 

「ケガは、してないみたいだけど……」

 

ソファに横になり、再び意識を失った男を一夏は観察する。

 

男は、肩甲骨あたりまで届く長髪で色素が薄く、くすんだ金髪を束ねず下ろしており、長身で細身。だが、かなり鍛えられている様に見える。

 

身体中に巻かれた黒色の包帯の様な物の上から白とグレーを基調とした、マンガでやアニメで見た流れ者の武士が着ている様な和服に近いデザインの服を纏っている。

 

首には、朱色のマフラーが巻かれ、家にあがる際に脱いだ白い靴は、女性の履いているヒールのようなものがついていて、「走り辛そう」という感想を一夏に抱かせた。

 

しかし、何よりも、一夏が気になったのは、男の腰に巻かれた帯に差してあった『ソレ』である。

 

『ソレ』は日本刀の鞘に似ていた。長い物と脇差の様に少し短い二本の『ソレ』を男は腰に差していた。

 

しかし長い方の鞘の先、鍔らしきものはあるのだが、刀であれば柄があるべき場所に銃が取り付けられているのである。

 

「ほ、本物なのかな……」

 

一夏は、わかっていないが、その銃は、間違いなく殺傷力を持った本物の銃だ。

鞘の様に見える部分は、巨大なマガジンであり、装弾数は長い方は100発、短い方で60発となっていて、鍔の様な部分を回転させる事で、撃発と装填を行う特殊な構造となっている。

 

興味本意で恐る恐る、銃に触れようと手を伸ばした瞬間……。

 

「ハッ……?!誰だッ!?」

 

目を醒ました男は、跳び起き。距離をとる。

 

「貴様は何者だ? カギ爪の仲間か?」

 

腰の銃に手をかけつつ、一夏に詰問する男。その眼光は鋭く、適当な誤魔化しは許さないと告げている。

 

「か、カギヅメ? なんのこと? 俺は、お兄さんが庭で倒れてたから……」

 

「何だと……そうだ……俺は……それに……どうなっている?」

 

何かに気づき混乱する男に、一夏は恐る恐る話しかける

 

「あ、あの、よくわかんないけど、よければ、夕御飯作るから食べる?お腹が一杯になれば、少しは…その……落ち着くかも……」

 

一夏の予想外の提案に、男は少しだけ驚いた顔をした。

 

 

 

----------------------------------------------------------

 

料理を作る子供が、妙な真似をしないか監視しながら男は、自分の置かれた状況に混乱していた。

 

「(何故、俺は生きている? 俺は確かにカギ爪の男の計画を破壊して、復讐を果たし……そして……漸く……シノのいる所に)」

 

 

「(身体に撃たれ傷は無い、確かに致命傷だった筈だが……それに視力も回復している……俺は、夢でもみているのか?)」

 

男の思考を遮る様に、料理を作っていた少年が話し掛けてくる。

 

「どうかしたの?もしかして、料理に嫌いなものでもあった?」

 

「……いや、問題ない」

 

「そっか!よかった!」

 

的外れではあるが、裏表の無い純粋な少年の気遣いと笑顔に、男は表情には、出さないが、対応に困っていた。

 

嘗て、男は、全てを切り捨てて生きてきた。酒も女も食物も権力も金も興味を示さず、カギ爪の男への憎しみだけを胸に走り続けた。例外として、唯一の肉親である弟の存在が、あったが、復讐を終えた今、目の前の少年の優しさを拒絶する理由は、男には無い。

 

だが、男は、その優しさの受け止め方が、思いだせないのだ。復讐を誓う前の様に、人と接することが出来ない……。

 

「よし、完成!じゃあ食べようぜ! お兄さん!」

 

少年の作った料理は、かなりのものだった。男は復讐の旅をしていた二年間は、必要最低限の食事しかしておらず、手の込んだ料理を食べたのは、カギ爪の男との最終決戦に同行していた女が出してきたものぐらいだが、それを差し引いても、美味いと思う。

 

「どう、おいしい?」

 

「……悪くない」

 

「そっか! 良かったぜ!」

 

素っ気ない答えだが、それを聞いた少年は嬉しそうに笑う。

 

「じゃあ、お皿片付けるから、お兄さんは休んでてくれよ!」

 

皿を洗い始める少年から目を離し、部屋を見渡した男の目にある物が止まる。

 

少年の物であろう、独特のデザインをした黒いリュック。その近くに置いてある幾つかの本に目が止まる。

使われている字は惑星エンドレスイリュージョンにもマイナーだが存在していた文字である。

 

「(たしか、ヒラガナとカンジといったか?)……ん? これは!」

 

和風テイストな彼の服は、元々、亡き妻であるシノが作った物である。

彼女は、和風のデザインが好きで、それに関わる文化にも詳しく、彼女を通じてレイも、また、それらの文字を知っていたのだ。

 

そして……本に目を通している男は、あるページを見て驚愕する。

 

「どうしたの? お兄さん? 俺の学校の教科書なんか読んで」

 

「……ひとつ聞く……この地図は何だ?」

 

男の言葉に少年は、男の読む教科書を背伸びして覗きこむ。

 

「何って、世界地図だろ?この星、地球の地図だよ」

 

当たり前の様に答える少年だが、男はその言葉に衝撃を受ける。

 

「(チキュウだと?たしかマザーの別称だったはず、カギ爪の故郷の星!)」

 

嘗て、カギ爪の男への復讐の過程で彼は、カギ爪の男の情報を調べ、その計画や自身が暮らす囚人惑星エンドレスイリュージョンの成り立ちを知った。

 

囚人惑星エンドレスイリュージョンは、その名の通りマザーと呼ばれる星の罪人達を閉じ込める宇宙の流刑地だ。

 

100年以上も前にマザーから島流しにされた罪人達の子孫がレイ達なのである。

 

カギ爪の組織の記録によれば、マザーは100年前に『ある兵器』の誤作動により滅亡しており、カギ爪の男は、その星、唯一の生き残りとのことだ。

 

「(別の惑星、しかも過去にでも跳ばされたというのか?)」

 

困惑する男に、少年は尋ねる。

 

「なぁ、お兄さんは、何処か行く当てはあるの?」

 

「……ない」

 

「家族は?」

 

「……もう、会えない」

 

「そっか……じゃあさ、ウチに住みなよ」

 

少年の突然の提案に男は疑問を投げかける。

 

「……何故だ? 出会ったばかりの得体の知れない男だぞ」

 

「だって、一人って寂しいだろ? 俺も親がいないけど、俺には千冬姉が居たから……でも、お兄さんは、本当に一人っきりなんだろ?放っておけないよ」

 

少年は、あいも変わらず、純粋な優しさを男へと向ける。

 

「……済まん、頼めるか」

 

「任せとけって!お兄さ「レイだ」えっ?」

 

「レイ・ラングレン……俺の名前だ」

 

「わかった! ヨロシクな!レイさん!」

 

それが、二人の出会いだった。

 

 

----------------------------------------------------------

 

翌日、一夏が学校へと出掛け、レイは家で一人、この世界の情報収集を行っていた。

 

元々、開発責任者である妻とともにヨロイの開発に携わる程の知識を持ち、復讐のために情報収集を続けてきた経験を持つ男は、家にあるパソコンをすぐに使いこなし、この世界の情報を集めた。

 

因みに、持っていた銃は、一夏にこの国での銃の所持が犯罪であることを、教えてもらったため、自室となった部屋に隠している。

 

「『白騎士事件』『IS』『篠ノ之 束』『女尊男卑』『織斑 千冬』か……」

 

世界を歪めた兵器、IS

 

「製作者以外、作製不能な467のコア……俺達の世界にとってのヨロイのようなものか……迷惑な話だ……いや、国により管理されているだけ、好き放題だった俺達の世界よりマシか」

 

男の世界ではヨロイを持つものの地位は絶対だった。レプリカのヨロイであろうとも、唯の銃器しかもたない一般人にとっては、その力は絶対的だ。

そして、それらを持つ者の大半は無法者ばかりで、好き勝手にその力を奮う。

暴力や略奪が珍しくないエンドレスイリュージョンでは、ヨロイは、『力』の具現の最上位の存在と言えた。

 

「そして……『織斑 千冬』」

 

IS開発者の篠ノ之束の親友であり、自分に家を提供した一夏の姉であるらしい。

 

「世界最強か……どう考えても、『白騎士事件』に一枚噛んでいるように見えるが……まぁ、今は置いておくとしよう」

 

そして、情報収集に区切りをつけ一息つこうとした所に。

 

「ただいま! レイさん!」

 

「帰ったか……遅かったな」

 

学校から、一夏が帰宅した

 

「ゴメン、転校生の子、鈴っていうんだけど、遊んでたら遅くなっちゃって……」

 

「別に、責めている訳ではない」

 

「今、夕御飯を作るよ……あ」

 

「どうした?」

 

「二人分作るには、必要な食材が少し足りないんだ。近所のスーパーで買い足してくるよ」

 

「時間も遅い、俺が行こう」

 

日中、既に近隣の地理は把握している。

居候という立場から、進んで手伝おうとするレイ。だが……。

 

「大丈夫だって、十分もしない距離だし、お金なら千冬姉が沢山置いて行ってくれてるから」

 

「だが……」

 

「気を使わなくていいって!足りない分を買い足すだけだし。昨日、倒れてたんだから安静にしてなよ」

 

そう言って一夏は、家を飛び出して行った。

 

しかし……

 

「遅い」

 

50分経っても一夏は帰って来ない。

 

「チッ……らしくもない」

 

男は、立ち上がり急ぎ足で玄関へと向かった。

 

 

 

----------------------------------------------------------

 

買い物を終えた帰り道、一夏は厄介な事態に巻き込まれていた。レイを待たせては悪いと近道を使い帰ろうとし、人気のなくなった、建物の工事現場を抜けようとしたところ……

 

「ガキが、こんな時間に買い物かぁ?偉いなぁ〜」

 

「ホント、ホントォ」

 

「ついでに、俺達にも何か奢ってくれよぉ〜」

 

ドラマでみるようなベタな展開ではあるが、八人程のチンピラどもに絡まれているのである。

 

「嫌に決まってるだろ!」

 

「おぉ〜怖い」

 

反論する一夏をバカにした態度で男は、一夏の手から財布を、奪いとる。

 

「あ! 返せよ!」

 

「うわぁ、餓鬼の癖に結構もってやがるぜ。生意気だなぁ〜」

 

「貧しい俺達にも分けて貰おうぜぇ〜。具体的には全額ぅ〜」

 

「いいねぇ!ギャハハ!」

 

「このっ!離せっていってるだろ!」

 

一夏の言葉を無視し金を奪おうとするチンピラ共に、姉が一生懸命働いて稼いだ金に手をつけられた一夏は激昂し、財布を持った男の右脚を蹴飛ばす。

 

「イッテェなぁ!この餓鬼ぃ!」

 

「あ〜あ、これは折れちゃってるんじゃね」

 

無論、骨折などしていないが大袈裟に言いオチょくる男達。

 

「これはオシオキだよなぁ〜」

 

「とりあえず平等に脚でも折ってもらおうぜ」

 

「は、離せよ!」

 

そう言って男達は工事現場に置いてあった鉄パイプに手を伸ばす。一夏は、別の男によって抑えつけられた。

 

男達にいいようにされ、一夏は悔しさに唇を噛む

 

「(なさけないなぁ、いつも千冬姉に守られてばっかりで、なんで俺は……)」

 

無力さを痛感し、これからおこる事を覚悟し一夏は目を瞑る。

 

だが、そこに……

 

「おい……貴様ら何をしている?」

 

昨日、知り合い家に住まわせている男、レイ・ラングレンが現れた。

 

「なんだぁ?妙な格好した奴だな」

 

「怪我したくなかったらひっこんでろよ。俺達は、仲間の脚を折ってくれたクソ餓鬼に社会ルールを教えてやるんだ」

 

だが、男はチンピラ共に目もくれず抑えつけられた一夏の元に近寄る。

 

「くだらん連中に絡まれて……だから、俺が行くと言ったんだ」

 

「ご、ゴメンなさい。レイさん」

 

「別に責めているわけじゃない……」

 

チンピラ共を完全に無視した男のやり取りに、男達は怒りを露わにする。

 

「いい度胸だなぁ!オマエ!」

 

一夏を掴んでいた男が、片手を離しレイを掴もうとするが。

 

ボキィッ!

 

工事現場に嫌な音が響く

 

「ぎゃああ! あ、脚がぁ!」

 

レイの放った蹴りが掴みかかろうとした男の右脚を撃ち抜き、その骨を折ったのだ。

 

痛みに苦しみ転げ回る男の姿に仲間達は、唖然とする。

 

「テメェ! 何をしやがる!」

 

「何の話しだ? 脚が折れていたんだろう? 興奮状態が収まって、痛みを感じ始めたんじゃないか?」

 

男の仲間の怒りに対して、レイは、白々しく、悪びれもせずに淡々と言葉を続ける。

 

「それとも……骨折していたのは、コイツでは無いのか? なら精々、気をつけることだ。誰が骨折したのかは知らんが、妙な動きをしたら痛みで、その男のように転げ回る事になるかもな」

 

「舐めやがって!」

 

脅し交じりのレイの言葉に、キレたチンピラ共は、鉄パイプを握り襲いかかる。

 

「……少し、下がっていろ邪魔だ」

 

「う、うん……」

 

一夏は、レイの言葉に従いレイの後ろにさがる。

 

「くたばりやがれ!」

 

レイは、最初に近付き鉄パイプを振るってきた男の攻撃を難なく躱し、膝蹴りを腹に叩き込む。

 

「ガハッ!」

 

苦しみから手を離れた鉄パイプをキャッチし逆手持ちに構えたレイは、振るわれる鉄パイプの攻撃を全て捌き、男達の右脚に鉄パイプを叩き込んでいく。

 

瞬殺と言えるレベルでチンピラ共は、全員が地面に転がった。

 

「て、テメェ……こんな真似してタダで済むと「なんだ? 折れていたのは左脚の方だったのか?」ひ、ヒィッ! わ、悪かった勘弁してください!」

 

捨て台詞さえも、意に解さずや告げるレイの容赦の無い言葉にチンピラ達は完全に心を折られた。

 

「もういいか……おい、戻るぞ」

 

「う、うん!」

 

一夏を、連れ家に戻る途中、一夏はレイに質問した。

 

「レイさんって強いんだな!」

 

「さぁ……どうだろうな」

 

目をを輝かせる一夏の言葉をレイは受け流す。

 

「強いよ……俺なんか……守られっぱなしで……あんな連中にやりたいようにされて……」

 

「お前は、まだ子供だ。それが当たり前だろう……」

 

「だけど、俺だって誰かを守れるくらいに……レイさんみたいに強くなりたいよ!」

 

「……なら、尚更だ。誰かを守りたいなら俺のようになど、ならない方がいい」

 

レイの言葉を境に、二人の間に沈黙が流れる。

 

「……レイさん、今日は本当にゴメン……」

 

「何度も言わせるな。別に責めてなどいない」

 

「だけど「それよりも、腹が空いた。待たされた分、期待しても構わないか?『一夏』」 !! う、うん!任せてよ『レイ兄』!」

 

「……何だ?その呼び方は?」

 

一夏の呼び方に困惑するレイ。

 

「レイさんって兄貴っぽいから何と無く……い、嫌だったかレイ兄?」

 

取り戻したかけた元気が再び搾もうとしているのを見て、レイは、小さくため息をつく。

 

「……勝手にしろ」

 

「!! うん、そうするよレイ兄!」

 

そして、そこから千冬が帰宅するまでの5日間で、一夏はすっかり、レイに懐いてしまったのである。

 

 

 

 

----------------------------------------------------------

そして、時間は、千冬の、帰宅した時間へと戻る。

 

 

 

「それで……庭に大穴と一緒に現れた得体の知れない男と一週間生活していたと?」

 

「うん! そうだよ千冬姉!」

 

顔を引きつらせながら、問いかける千冬に一夏は満面の笑みで答える。

 

「何を考えているんだ!お前は!」

 

「千冬姉、だけど……」

 

「だけど、では無い! その男が何をするかわからないんだぞ!」

 

「レイ兄は、そんな人じゃないぞ」

 

「今だに、そいつは自分のことをロクに説明しないのだろう?信用ならない、何で問題無いと言い切れるんだ!」

 

「だけど…「そこまでだ一夏」レイ兄?!」

 

「その女の言うことは何も間違っていない……今まで世話になったな」

 

そう言ってレイは立ち上がる。

 

「待てよレイ兄!? 行く当ては無いんだろ?」

 

「一週間で、有る程度知識も得た。仕事も……まぁ、何とかなるだろう……」

 

「だけど!……なぁ頼むよ千冬姉……一生のお願いだ。せめて、レイ兄が一人で暮らしていけるようになるまでウチに置いてやってくれよ……お金が掛かるなら、俺が大人になったらしっかり働いて返すから、だから……家族のいない辛さは千冬姉だって知ってるだろ?」

 

「一夏……」

 

物わかりのいい弟の初めての我儘についに、千冬が折れた。

 

「もし、弟の信頼を裏切ってみろ。雪片の錆にしてやる」

 

「憶えておこう……」

 

千冬の鋭い視線を受けたレイは、目を逸らさずに、そう答えた。

 

「(しかし、地震だと?一週間前の夜にそんな物が計測された報道は、されていないようだが……)」

 

 

 

----------------------------------------------------------

 

そして翌日、一週間の纏まった休みを得た千冬は早速、一夏と姉弟水入らずで過ごそうとするのだが……。

 

「なぁ……レイ兄は、何してんの?」

 

「この世界の技術についてを少しな……」

 

「そんなの後で、いいだろ? 一緒に遊ぼうよ。そうだ、しりとりしよう!」

 

「なぜ、しりとりなんだ……」

 

「なんとなくだけど?」

 

「チッ……一度だけだ。」

 

「やったぁ!」

 

弟は何故か、得体の知れない穀潰しにご執心だった。

 

「じゃあ、俺が最初の言葉を決めるよ……えぇっと……ルーレット!」

 

「ドクロ……」

 

「ロマンチスト!」

 

「毒薬……」

 

「クインテット!」

 

「ドメスティックバイオレンス……」

 

「炭!」

 

「皆殺し……」

 

「……し、真理!」

 

「リストカット……」

 

「……と、豆腐!」

 

「復讐……」

 

そして流れる沈黙

 

「……どうした?」

 

「暗い!暗いし恐いよレイ兄! 何?しりとりやりたくなかったのか? もしかして怒ってる?!」

 

「別に、そういう訳ではないが?」

 

「狙ってないのに、あぁなるの?! なんか嫌なことがあるなら聞くよ?!」

 

そんな、二人のやり取りを面白くなさそうに見つめる。ブラコン(本人は隠しているつもり)の千冬。

 

「な、なぁ一夏……「じゃあ今度はレイ兄と千冬姉が勝負ね」何だと!?」

 

弟の提案に露骨に嫌そうな声をあげる姉。

 

「一度だけと、言ったはずだが?」

 

「俺とはね」

 

「い、一夏、その男も嫌がってるようだ。別に無理にやる必要など……」

 

「……迷惑かな」

 

しょぼくれる一夏。

 

「さぁ、勝負だ! かかって来い穀潰し!」

 

光速で掌を返す千冬

 

「……今度こそ一度だけだ」

 

嫌々ながら付き合うレイ

 

「いくぞ……剣道!」

 

「売れ残り」

 

「立体!」

 

「行き遅れ……」

 

「連呼!」

 

「婚期……」

 

「……切手」

 

「適齢期……」

 

「……貴妃」

 

「独り身……」

 

そして、再びの沈黙

 

「……どうした?」

 

真顔で尋ねるレイ。

 

「喧嘩を売っているだろう!貴様ぁぁ!!」

 

「落ち着いて! 千冬姉!」

 

「? よく分からんがお前は今の言葉が挑発になるような人生を過ごしているのか?」

 

「表に出ろ! 今すぐ叩き切ってやる!」

 

「レイ兄!頼むから千冬姉を煽らないで!」

 

そんなこんなで、織斑家は賑やかだった。

 

そして時間は過ぎ休日の、最終日。

 

「(結局、この一週間、一夏は事あるごとにレイを誘い三人で行動するから、姉弟二人での時間は持てなかった……)」

 

凹む千冬、しかも、トドメとばかりに今日の遊園地への外出も案の上、一夏の誘いでレイの参加が決定した。

 

そして、三人は遊園地を訪れている。

 

レイは、最初に着ていた服ではなく、一夏の家にあった、恐らくは両親が置いていったものであろう青い作務衣を着ている。

 

そんな中、千冬の表情は険しかった。

 

「(一夏は、一緒にいられない私よりあの男の方が一緒にいて楽しいのだろうか?)」

 

そんな、不安が頭を過る。

 

「どうかしたのか?」

 

遊園地のアトラクションを巡り、現在、子供専用のアトラクションに乗る一夏を、アトラクションの外で見守っている途中で、千冬を悩ます元凶から、声をかけられた。

 

「……何でもない」

 

不貞腐れたように返答する千冬。

 

「(これでは、拗ねた子供じゃないか……私は、こんなにガキっぽい人間だったのか?)」

 

だが、胸の内のモヤモヤは晴れない。

 

「……何を不貞腐れている」

 

「不貞腐れてなどいない……」

 

「なら、良いが……少し落ち着け、一夏の奴が気を使ってしまっているぞ」

 

「っ!!」

 

「!? おい何をしている!」

 

急に駆け出した千冬。

何処までも、大人の対応をとる彼に千冬は、自分が保護者として、酷く惨めに感じ、それが耐えられなかった。

 

何も考えず遊園地の中を、走り抜ける千冬。漸くたどり着いた人気のない場所で、その頬から涙が零れた。

 

「何をしている……」

 

いつの間にか、追い付いたレイが話しかける。

 

「……お前こそ、早く戻れ……一夏は私ではなく、お前と遊びたいんだ」

 

「……本気で、そう思うのか?」

 

「だって「アイツは、お前が帰ってくる一週間、お前のことばかり、俺に話していたぞ」えっ?」

 

「『強くて優しい自慢の姉』だとな」

 

「お前が思っている程、アイツの中のお前は軽くない。アイツは……一夏は、俺とお前に仲良くして欲しいんだろう。だから、この一週間、アイツは三人での行動にこだわっていた。」

 

レイの諭すような声を千冬は初めて聞いた。

 

「俺だけでも、お前だけでもアイツは納得しない。わかったら、戻るぞ。これ以上、時間を無駄にするつもりはない」

 

「……うん」

 

2人は急いでアトラクションへと戻った。

 

「あ!、千冬姉!レイ兄!どこいってたんだよ」

 

「す、すまなかった、一夏」

 

「あれ? 千冬姉もしかして泣いてた?」

 

涙のあとに気付く一夏。

 

「い、いやこれは「あぁ、俺が、少しキツイ事を言ってな」な!?」

 

いきなりのレイの発言に驚く千冬。

 

「……レイ兄……いくらレイ兄でも千冬姉を泣かせたら、俺は許さないぞ……」

 

「一夏!?」

 

「あぁ、今後は気をつける。すまなかった」

 

「まぁ、わかればいいんだ。じゃあ、気を取り直して次行こうよ!」

 

そういって駆け出した一夏。

 

「だから、言っただろう?」

 

「あぁ、そうだな……」

 

 

 

そして日もくれて行き、一夏の希望で最後のアトラクションである観覧車に乗ろうとした一行だったのだが……。

 

「俺やっぱり、さっきの子供も用のアトラクションに乗ってくるから観覧車には2人で乗って!」

 

そう言って一夏は、観覧車からおりてしまう。

 

「な?い、一夏?!」驚く千冬だが、観覧車の扉は閉まってしまう。

 

2人きりになり気まずい沈黙が流れる。

 

「さっきは、その……すまなかった」

 

「……事実を、言っただけだ。お前に気を使ったわけじゃない」

 

「それでもだ」

 

「……フン」

 

「やはり、保護者としても姉としても未熟だな私は……」

 

「それは違う」

 

「え……」

 

「お前は、保護者としても家族としても、俺より余程、しっかりしている」

 

「だがお前は「俺には弟がいた」お、お前にも?」

 

「だが、俺は現実と向き合わず、自分の目的の為に弟と決別したあげく、最終的には、その目的に弟を巻き込み危険に晒した」

 

男の口から初めて語られ過去。

 

「そして、俺は目的を果たした。」

 

「お前の弟は?」

 

「おそらく無事だ、だが、もう2度と会えない」

 

「心配じゃないのか?」

 

「アイツは、少し場の空気が読めない所があるが、俺より余程強くて賢い奴だ。おれがいなくても自分の夢を見つけられるだろう……無責任な話だがな」

 

「なら……お前はこの先、どうするんだ?」

 

「わからない……俺は、もうあの日々には戻れない。だが、『生きて、向き合わなくてはならない女』がいる。まずは、そこからだろう」

 

「そうか、なら暫く一夏を頼む」

 

「何?」

 

「その……また、あまり、家に帰れない日が増えるんだ。わ、私程ではないが、お前も一夏に気にいられているからな!だから……その、宜しく頼む『レイ』」

 

「……まぁ、いいだろう『千冬』」

 

夕日に照らされ笑いかける千冬にレイは、ぶっきらぼうに答えた。

 

 

 

 

episode Ⅱ 『帰らざる日々……』

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。