今回は日常回その2です。最終回AND戦闘回は次回に延期です。全国のヴォルケインファンの皆様ゴメンナサイ
千冬のヒロイン力を上げようと思ったんですがその……ねぇ?
いや、だってレイと千冬の絡みをメインに書いてたら長くなっちゃって、……つい……
まぁ、長くなったわりにはあんまり甘くないですが……
だって俺、童t(ry
「やれやれ、漸く家に帰れる」
20歳となった織斑千冬は、海外での仕事を終え、一週間振りとなる自宅へと向かっていた。
「そういえば、アイツと出会った日も、こんな感じだったな……」
ISの世界大会である第2回モンド・グロッソを控えた彼女が思いだすのは、半年前、自分と弟が住む家に突如現れた男、【レイ・ラングレン】のことだ。
「まったく……一夏の奴は……あんな得体の知れない……無愛想で……失礼な奴を……」
出会った当初の彼とのやりとりを思いだす彼女は、ブツブツとレイに対しての文句を言う。
「ま、まぁ……一夏が信用するだけあって、悪人ではなかったが……わ、私の力にもなってくれているし……」
当時の遊園地での、普段の自分らしくないやりとりを思い出し、恥ずかしさを覚えた千冬は、頬を赤くする。
レイが織斑家の一員となってから半年、元々、彼に懐いていた一夏は最早、レイを本物の兄の様に慕うようになり、姉である千冬も表面上では彼に強気なもの言いをしているが、その言葉には出会った頃の様なトゲトゲしさは無くなった。
そもそも、彼女にとって最も大切な存在である弟を留守の間、任せている時点で弟と同様に彼女もまたレイを信用していることが伺える。
そして、回想を終えて、千冬は自宅へと到着する。
「あ、おかえり千冬姉!」
玄関を開けると、彼女の帰宅に気が付いた一夏が笑顔で、出迎える。
「帰ったか……遅かったな」
続けて、リビングで調べ物をしていたレイが、千冬に声をかけた。
「ただいま、一夏……ついでにレイ」
半年経った今でも、相変わらず、レイに対して素直に対応できない千冬。
「相変わらずだなぁ……素直になりなよ千冬姉……」
そんな姉を呆れたように見つめる一夏。
「なんだ、その目は」
「べっつにぃ〜」
睨む千冬に、戯けて対応する一夏。
「まぁいい、どうだった? 留守にしていた一週間は? ……まぁ、しっかり片付いているのは、見ればわかるが」
「……散らかす人間が留守にしていたんだ綺麗で当然だろう……」
ボソリと呟くレイ。
「な、なんだとレイ!」
「違うとでも? 缶ビールや脱いだ服を片付けず、帰ってくる度に部屋を散らかすお前がか、千冬?」
「うぐっ!」
レイの指摘に呻く千冬。まぁ事実なので、しょうがない。
「そもそも、自宅でのお前は、人としても女としても、だらしない。 下着を脱ぎ捨て、風呂上がりにタオルや下着姿で歩き回るなど……」
「あぅ……うぁ」
レイの淡々とした指摘に千冬は顔を真っ赤にして狼狽する。
実際、千冬はレイが住み始めた当初、一夏と二人暮らしだった頃と同じようなノリで行動した結果。リビングで風呂あがりの無防備な姿をレイの前に盛大に晒したことがある。
まぁ、レイは表情一つ変えずに「はした無い女だ」と言い捨て、淡々と脱ぎ捨てられた服や下着を片付けてさっていったのだが……因みに、そのことは千冬の羞恥心や女としてのプライドをズタズタにしたと言っておく。
「……お前、女のあられもない姿を見ておきながら……」
「見たくて見たわけではない」
「どうだかな!お前のようなムッツリに限って……」
「俺にだって、相手を選ぶ権利ぐらいあると思うのだがな……まともな、ガサツじゃない女をな」
「な、なぁっ!」
容赦のない言葉に怒りを覚える千冬だが……
「お前が仕事で忙しいのは知っている。一夏の為に精一杯、努力していることもな。だが、そういった所は少しは直せ、一夏の教育上良くない。」
「っ〜〜! 」
打って変わり、自分のことを認める言葉を発したレイに今度は照れて顔を赤くする。
「まぁ、居候の俺が偉そうに言えた義理でもないが……」
「そ、そんな事は無いだろう! お前だって四ヶ月前から働いているじゃないか」
自傷気味のレイの発言に対して、それを否定するように千冬はフォローしようとする。
「稼ぎはお前よりずっと低いし、働けるのもお前と一夏の協力があったからだ。」
元々、この世界の住人ではないレイには戸籍がない為、働くのは難しい。そんなレイが働くことができるのは、千冬が手を回したからだ。
千冬は、親友である篠ノ之束に頼み、戸籍などのデータを偽造し、そこから様々な身分証明となる登録をすませたのだ。
頼まれた束は、興味のない人間の為にどうしてそんなことを……と文句をいったが、そこは、千冬が説得し押し切った。おそらく、現在の束の頭のなかには、レイのことなど欠片も残っていないだろう。
「私は、そんな事は気にしていないんだが……そういえば、どうなんだ仕事の方は? 私は今だにお前が料理屋で働く姿は、想像できないぞ……」
「……まぁ、なんとかやっている」
レイは現在、一夏の紹介で彼のクラスメイトの鈴の両親が営む中華料理屋で接客担当として働いているのだ。
「そうか、慣れない仕事だ。あまり無理はするなよ?」
「此方のセリフだ。仕事の多忙さならお前の方がずっと上だろう。」
「よ、余計な心配だ。私はそんな弱い女では……」
「……なぁ、俺ってもしかして邪魔? どっか行ってた方がいい?」
口喧嘩をしていた状態から、いつの間にか仲良く会話をしている二人に蚊帳の外になった一夏が声かける。
「ば、馬鹿者! 妙な気を使うな! 別にそういうのじゃない!」
「そうだ、妙な気を使うな一夏」
「………………………」
「……何故、睨む?」
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時間は進み、三人は一夏の作った夕食を食べながら、この一週間での出来事に、着いて話合っていた。
「-------そう言ったら鈴が怒っちゃったんだよなぁ〜」
「バカ者……お前は、いつも女の子に対して少しばかり配慮が足りんのだ」
現在の話の内容は、昨日一夏がクラスメイトの凰 鈴音を怒らせてしまったことについてだ。今までの半年間で一夏から鈴の話を聴く限りレイと千冬は、鈴が、一夏に好意を寄せていることを察しているが、如何せん当の一夏は、そのことに微塵も気づいていない。彼に想いを寄せる鈴の苦労に2人は同情する。
「わかってるよ、男が女の子を泣かせたら駄目だよな! 男は女の子を守らなくちゃ!」
「だといいんだが」
姉弟2人のやりとりを見つめるレイの頭には、昔の光景が過る……
『ジョッシュ……お前の発言は配慮に欠けている……特に女性に対しての発言はな』
『そ、そうでしょうか……ゴメンなさい、兄さん……』
『フフ、あまり落ち込まないでジョシュア君、レイは貴方のことが心配なのよ』
『シノ……あまりジョッシュを甘やかしては……』
もう、戻ることのない暖かな夢のような時間が……。
「ん? どうしたのレイ兄?」
レイの雰囲気が変わったことに気づいた一夏は、心配し声をかける。
「……いや、なんでもない」
「ならいいけど……そうだ! レイ兄は、女の子のことって、どう思う? レイ兄ってモテそうだし男としての女の子との接し方の参考になるかも!」
「この無愛想なムッツリが? 一夏、悪いことは言わん、コイツに惚れるのは、余程の物好きか、変わり者だ。参考にするのは……」
レイに対しての相変わらずな千冬の物言い。本人は自覚していないが、それは現状でレイの一番近くにいる女性としての余裕から来るものだ。
「でも、鈴の家の料理屋で、レイ兄って結構人気なんだぜ?」
「……なんだと?」
だが、そんな彼女の余裕の態度は、弟の発言の前に、あっさり崩れる。
「じ、冗談だろう、一夏。こんな接客業だろうと笑顔を一切見せずに淡々と注文をとって食事の配膳をしていそうな男を目当ての客などいるわけが……」
実際、レイの接客態度は、千冬の言う通り淡々としたものだが、動きはテキパキしているし、細かい配慮はしっかりできている。加えて、レイ自身の容姿も良く、『無愛想な態度もクールっぽくていい!』といった層から密かに人気がでて、女性客のリピーターが増えているのだ。
「いや、鈴の親父さんが言ってたよ。レイ兄が働くようになってから女性客が増えたって……だから千冬姉も少しは焦って積極的に……」
「何故! そこに! 私の名前が出る!」
「ハァ……」
「なんだ! その溜息は!」
相変わらず、自身の感情に気づいていない不器用な姉の今後を思い、弟は嘆息した。
「そうだ! レイ兄は、店に来る女の人達ってどう思う? 好みのタイプの人とかないの?」
「お、おい! 一夏!」
そして、子供特有の好奇心からくるストレートな質問がレイに飛んでくる。
「俺は……」
千冬も興味がないようなフリをしているが。しっかりと聞き耳を立てていた。
だが……
「俺は、お前達と出会う前に、既に一人の女を愛している。二度と会うことはできないが、その想いは今も変わらない。だから俺は、新しく恋をする気は無いし、誰とも付き合う気は無い……」
「……え?」
今まで見たことが無い、普段の彼らしくないストレートな言葉、だからこそ、その言葉に込められた想いが、とれほどの物か、半年間生活を共にした姉弟は理解してしまう。
そんな彼の言葉に、千冬の表情が、固まる。
「もういいだろう……俺は、部屋にもどる……夕食、美味かったぞ一夏……おやすみ」
「ち、ちょっと! レイ兄!?」
一夏への感謝を述べ、レイは自室へと向か ってしまう。
残された千冬は俯き、そんな姉を心配して一夏はオロオロとしていた。
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「我ながら、らしくないな」
自室にて、レイは隠していた銃の点検をしながら先程の自分の発言について思いかえしていた。
自分はあの様な発言を堂々とするような人間だっただろうか? 違った筈だ、少なくとも、あの様なことを誰にでも言ったりはしない。
「それ程、あの2人が、俺にとって身近な存在になっているということなのか? 」
復讐を終え、あの姉弟と暮らすなかで、自分は確実に、昔の心を取り戻し始めている。
軽口や憎まれを叩き合い、自分に信頼を寄せる姉弟と自分との間には、確かな絆が存在しているようにレイは感じていた。
そしてそれは、レイをとても困惑させるものだが決して不快なものではなく、暖かく優しい感覚だった。
だからこそ……
「こいつは……もう必要ないな」
自身の銃を見つめながらレイは呟く。
この世界で、初めて自身の銃を、点検した時、レイはある違和感を覚えた。
攻撃とヴォルケインを呼び出す為の武器でしかなかった自身の銃に覚えのない機器が、あったのだ。
そのことが気になり、レイは居候になった当初から、時間さえあれば、この世界の技術についてを学んでいた。
千冬のお陰でIS関連の、知識に関しても学ぶ分には困らなかった。
そしてレイは一つの結論に達する。
取り付けられた機器は、ISの待機状態に関わるシステムと非常に近いものだった。
専用機となったISは、非展開時は、アクセサリーのような形状となり、簡単に持ち運ぶことができる。
レイの銃には、それに近い機能が追加されていたのだ。試した所、予想通り銃は小型のアクセサリーに姿を変えた。
『大丈夫……ヴォルケインも力になってくれる。』
この世界に跳ばされる前の、シノの言葉が頭を過る。
「まさか……いるのか?ヴォルケイン……だが……だとしても、俺にはもう力は必要ない。このまま休ませてやるほうがシノにとっても……」
コンコン……
その瞬間。扉をノックする音がして、レイは急いで銃を待機状態にする。
「レイか? 私だ。少しいいか?」
「千冬か? かまわないが……」
「そうか。では、入るぞ」
そう言って、部屋に入ってきた千冬は風呂上がりなのか白いパジャマを着て、肌は少し火照っている。
健全な男なら理性が飛びそうなシチュエーションだがレイは普段と変わらない。
「どうかしたか?」
「さっきは、その、一夏が変な質問をして済まなかった……気分を害したなら謝る」
「言ってなかったことだ、知らなくて当然なことを、言っただけで責めるつもりはない」
「それでも……だ」
「そうか……」
「あぁ……」
「……」
「……」
気まずくなり、2人の間に沈黙が漂う。
「千冬……ひとつお前に聞いておきたかったことがある」
「……何だ?」
「嘗て世界を変えた『白騎士事件』そのIS『白騎士』の操縦者は……お前か?」
「ッ!?」
レイの言葉に千冬は、動揺を見せる。
その反応にレイは、自身の予想が当たっていることを確信した。
「……軽蔑するか? ISの力を示す為に世界を巻き込んだ茶番劇を演じた私を……」
自傷するような表情で千冬はレイに質問する。
「もうひとつだけ聞く……どうしてお前は、そうしたんだ?」
「弟を……一夏を……守りたかった……小娘でしかなかった私が、確かな立場を掴むために……それが……私の理由だ」
「そうか……なら、俺から言う事は何も無い」
「軽蔑しないのか? 私を」
「お前の行動について被害者でも、加害者でもない俺が、どうこう言う権利は無い。それに、俺自身、お前を責められるような人間ではない」
「どうゆう……」
「いい機会だ。お前の、過去を聞いたついでに、俺の事も話しておこう。お前には知っておいて欲しい……」
そしてレイは語る。自身の世界のこと。最愛の妻のこと、カギ爪への復讐のこと、そしてその決着を……。
「…………」
「信じられないか?」
「いや、信じるよ……お前は嘘をつくならもっと上手く嘘をつける男だ」
「軽蔑したか? 目的の為に女も子供も殺した俺を……」
先程と同じ内容の質問を千冬へと返すレイ。
「それは……」
「遠慮しなくていい。今更、悪びれるつもりも、許しを請うつもりもないが、俺がやったことは軽蔑されるべきことだ。理解したうえで選んだ道だ」
「……」
その言葉に千冬は何も返せない。
「お前が。俺を嫌悪するのなら俺は、この家から消える。二度とお前達の前に現れもしない。だから「……馬鹿者」千冬?」
レイの言葉は、彼を抱きしめた千冬によって遮られた。
「お前の選択が正しかったとは言えない……だが、私は知ってるんだ……お前の愛した女性には遠く及ばないかもしれないけど……それでも……お前が……レイが復讐だけしかない人間などではないと……不器用で無愛想だけど……優しさをもっている人間なんだと……だから……」
涙を流しレイを見つめながら千冬は続ける。
「これからも、ここにいてくれ。一夏も……私も、お前にいて欲しいんだ」
その言葉にレイは観念した。
「後悔するぞ?」
「しないさ……絶対に」
「わかった……千冬」
「なんだ?」
「これからも世話になる」
「……あぁ」
2人の間の空気が柔らかくなっていく……
「くしゅんっ!」
「湯冷めしたようだな、今日はもう遅い……部屋に戻って休め」
「この流れでそれか……」
「何がだ?」
「なんでもない! もう寝る!」
「そうか……千冬」
「何だ!」
「おやすみ」
「……あぁ、おやすみレイ……」
その日、彼女は初めて自分の中にある想いが何なのかを明確に自覚した。
episode Ⅲ 『ハートに火をつけて』