IS×SWORD   作:フジ

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とりあえずレイ篇完結。

今回の敵キャラはオリキャラとオリ設定のISです

では、どうぞ!


last episode その絆に用がある

千冬と約束を交わした日から一ヶ月後、一夏とレイは、千冬が出場する世界大会、モンド・グロッソの開催地であるドイツへと来ていた。

 

順調に勝ち進んで行く、千冬を見てレイは関心した。

 

「刀一本で他を寄せ付けない実力……流石といった所か……」

 

「な? 千冬姉は凄いだろ! レイ兄!」

 

レイの頭に、一瞬、大刀しか武装のないヨロイを使うタキシードの男の姿が過るが、興奮した一夏の声で掻き消される。

 

「次で決勝だが……まぁ、今までの試合を見る限り、優勝は確実だろう」

 

「俺、千冬姉の控え室に行ってくる!」

 

そう言って走りだした一夏は、レイを置き去りにし千冬の控え室へと向かう。

 

「まったく……元気なことだ」

 

呆れたような苦笑を浮かべつつ、レイもまた、控え室へ向かい歩み始めた。

 

そして、控え室の近くに差し掛かった廊下で、突如レイの耳に声が届く。

 

「ふ〜ん……オマエが、ちーちゃんと、いっくんが、気に入ってる居候?」

 

その声に振り返ったレイの先には、童話にでも出てきそうな服を纏い、ウサギの、耳のようなヘッドセットをつけた女が立っていた。

 

「篠ノ之束……」

 

「へぇ〜、束さんのこと知ってるんだ?まぁ当然だよね。なんたって、束さんは世紀の大天才だし〜」

 

レイの口から漏れた言葉を目の前の女は、当たり前と言うようにヘラヘラしながら肯定する。

 

「そうか? 俺には、お前のことが馬鹿の類の人間に見えるが?」

 

レイの皮肉を込めた言葉に女の表情がヘラヘラしたものから冷たいものへと変わる。

 

「……言ってくれるねオマエ」

 

「以前も、馬鹿共に縁があったものでな、まぁ、少なくとも奴らは貴様程、迷惑な人間ではなかったが」

 

その言葉に束の表情は更に無表情な物になった。

 

「オマエさ……なんでちーちゃん達の近くにいるの? 」

 

「貴様の許可が必要なのか?」

 

束の容赦の無い言葉も歯牙に掛けず、返答するレイに束の目は最早、睨みつけるような目付きへとなっていく。

 

「お前が現れてから、ちーちゃんは変わった……お前が現れて、ちーちゃんは弱くなった」

 

「いけないことか? あの一人で潰れかけていたアイツが、そのままで居た方が良かったとでも?」

 

「ちーちゃんには私がいる。お前はいらない」

 

「アイツは、俺が必要だと言った。アイツが俺に消えろと言わないなら俺はアイツらの近くにいる、それがアイツとの約束だ。」

 

「それで、オマエ程度に何ができるの? 高々、生身での戦闘が、得意なだけのオマエがISの世界にいる、ちーちゃんの力になれるとでも本気で思ってるわけ?」

 

「必要ならな」

 

「自惚れてるねオマエ」

 

「かもな、それで言いたいことはそれだけか? 悪いが、貴様の癇癪の相手などしたくないんでな、失礼させてもらう」

 

そう言って歩き出そうとしたレイの持つ携帯が鳴る。発言してきた相手は……

 

「千冬か?どうした?」

 

「レイか! 一夏は? 一夏は戻っていないか!?」

 

「一夏がどうかしたのか!」

 

「一夏が……誘拐された」

 

「!? すぐに行く待っていろ……」

 

レイは控え室に向けて走り出す。

 

「千冬!」

 

「レイ……」

 

「一夏の情報は?」

 

「ドイツ軍の情報では、会場から港に向かう不審車両の目撃情報があったそうだ。私は決勝を、棄権してISで一夏を助けにいく」

 

「なら俺も」

 

「駄目だ! 不審車両にはISが積まれていたという目撃情報もある、一夏やお前が傷付いたら、私は……だから私を信じて待っていてくれ!」

 

「待て! 千冬!」

 

会場の外へ走っていく彼女を追うが、外に出た瞬間IS『暮桜』を展開した彼女は、そのまま、飛びたってしまう。

 

それを見送ってしまった、レイは胸元のアクセサリーを掴み、静かに見つめる。

 

「誰かを守るなど、柄ではないが……済まないシノ、俺はもう一度……コイツを……」

 

その、言葉と共に、レイの目が嘗ての鋭さを取り戻す。

 

覚悟は決まった。

 

 

 

---------------------------------------------------------

 

港にある廃工場の中で、一夏は目を覚ました。

 

「なんだ?ここ?」

 

「あら、起きたの?」

 

「誰だ! お前ら!」

 

一夏の周囲に10名程の武装した女達とISを纏った女がいた。

 

「おねぇさん達はちょっとした仕事を頼まれてね。もう少しで君のおねぇさんを呼びだして目標を達成するだけだから静かにしててね」

 

甘ったるい声で優しそうに告げる女だが、一夏には、とても目の前の女が、優しい人間には見えなかった。

 

「お前ら! 千冬姉に何を! ぐぅッ!」

 

「五月蝿いわね、少し黙っててよ」

 

一夏の、腹を蹴飛ばした女はめんどくさそうに告げる。その目は、まるで虫でも見るように冷ややかだった。

 

「隊長、ISの反応が、近づいてきます!」

 

「どうやら、来たようね」

 

突如、爆音と共に壁が破られ衝撃で武装していた女たちは吹っ飛び、そこに暮桜を纏った千冬が現れた。

 

「一夏!無事か!」

 

「決勝を躊躇わずに棄権して弟を、助けに来るか……麗しい姉弟愛ね」

 

「……貴様ら覚悟はいいだろうな?」

 

怒りの形相で睨みつける千冬に、その場に居た者たちの背筋が凍る。

 

「……流石は世界最強ね」

 

隊長と呼ばれた女も、その気迫に冷や汗を流す。

 

「でも……そう簡単に、行くとおもわないでね!」

 

女のISの周囲に現れた4機の浮遊するアンロックユニットと手に持ったライフルから3筋のレーザーと二筋の実弾が千冬目掛けて発射される。

 

「光学兵器に自立兵器?! まさか?!」

 

「感がいいわね。私達の依頼主が用意してくれたの。なんでも現在開発中のイギリスの次期第三世代機のプロトタイプのデータをハッキングしてロールアウトしたらしけど……この自立兵器……BT兵器は、試作段階で現状では自分の周囲からあまり離れられないし改善点は多いわね。けど、性能は、折り紙つきよ」

 

そして再び千冬に向けて攻撃が、掃射されるが……

 

「舐めるな!」

 

「嘘?!」

 

レーザーを手に持った雪片で切り裂き、一気に距離をつめる千冬に驚愕する女。

 

「これで終わりだ!」

 

決着がつきそうになった瞬間

 

「動くな、弟の命がどうなっても知らんぞ!」

 

部下の女に銃を突きつけられた一夏を見て千冬の動きが止まる。

 

「くっ!」

 

「まさか、ここまで実力差があったとはね……悪いけどここまでよ。弟が大切ならISを解除しなさい」

 

落ちつきを取り戻した女から告げられる脅し。

 

「心配しなくても、私達の目的は貴方の優勝の阻止と可能であれば、貴方のISを奪取することよ。目的さえはたせれば危害は加えないわ」

 

優しそうに告げる女の言葉に、一夏の安全を優先し、千冬は暮桜を解除した。

 

「……これでいいか」

 

暮桜を、女に渡す千冬。

 

「えぇ、これで任務完了……なんだけど気が変わったわ」

 

女の顔が笑顔に歪む。

 

「やっぱり。あなたの弟さんは殺しちゃいましょう。」

 

「な!?」

 

「よろしいのですか隊長?依頼では最終的にクライアントに引き渡す筈では?」

 

「だってこのガキ、男の癖にISを使えるかもしれないんでしょう? クライアントの目的が何かは知らないけど、そんな奴が、もし生き残って将来的に男がISを使えるようにでもなったら困るじゃない」

 

「貴様ら……最初から一夏を返すつもりなど! それに、一夏がISを使えるだと?!」

 

怒りに震える千冬の言葉に女は笑いながら返す。

 

「あら、貴方は知らなかったのね……あの天災が言っていたと聞いてたからてっきり貴方も……」

 

「っ! 束が何だと!?」

 

「私も間接的に聞いた程度だし、答える義理はないわ。任務は失敗になるけど、イギリスの試作機のデータと、暮桜を手土産にすれば私達を匿ってくれる国なんていくらでもあるしね」

 

「やめろ……」

 

「それじゃ、そのガキをさっさと殺っちゃってくれる?」

 

「了解」

 

女の命令に、部下は倒れている一夏の頭に銃を向けた。

 

「やめろぉぉぉ!」

 

そして、銃声が響いた。

 

 

 

 

----------------------------------------------------------

 

情けない。

 

何が守れるようになりたいだ。

 

何が強くなりたいだ。

 

姉の晴れ舞台を台無しにして。

 

助けにきた姉の足を引っ張って。

 

そして、また姉を悲しませようとしている。

 

「(これじゃあ、レイ兄に助けられた時とおんなじだな)」

 

だが、今度は、あの時のように助からないだろう。

 

目の前の女の部下が銃の引き金を引こうとしている。

 

一夏は、覚悟し目を瞑った。

 

「(ゴメン。千冬姉……レイ兄)」

 

そして連続して響く銃声。

 

だが、痛みはない。恐る恐る目を開けるとそこには肩を撃ち抜かれた女が倒れていた。それも一人ではなく、ISを纏った女の部下達全員が、手足を撃ち抜かれ無力化されている。

 

そして……

 

「貴様ら……何をしている?」

 

髪を後ろで束ねて、初めて会った時に着ていた白い武士の様な服を纏った、兄のように慕う男が、あの日の夜と同じように現れた。

 

 

----------------------------------------------------------

 

「「レイ(兄)!」」

 

初めて出会った時に着ていた服を纏い、刀の様なデザインの銃を持ったレイ。

彼の思いがけない登場に2人は、思わず彼の名を呼ぶ。

 

「何? 男?」

 

知らない男の登場に困惑する女。

 

「無事か一夏?」

 

一夏に歩み寄り無事を確認するレイ

 

「な、なんとか……」

 

「そうか……良かった」

 

「一夏!」

 

駆け寄ってきた千冬が、一夏を抱きしめる。

 

「ちょ、苦しいよ千冬姉!」

 

「良かった……本当に……」

 

心の底から、そう思っていると感じさせるだけの力が千冬の言葉には篭っていた。

 

だが……

 

「カッコ良く登場した所、申し訳ないんだけど、まだ事態は解決していないわよ」

 

そう言った女は再び一夏に銃口を向ける。

 

「! させるか!」

 

其れに反応した千冬は、反射的に一夏を庇う様に立ち塞がる。しかし、その更に前にレイが立ち塞がった。

 

「レイ!?」

 

「あら? 確かに腕に覚えがあるみたいだけど、男の分際で正義の味方気取りでISの前に立つなんて、少しばかり自惚れ過ぎじゃない?」

 

完全にレイを見下した女の台詞。そこには自らの敗北など、微塵も考えていない高慢なまでの自信があった。

 

「……生憎だが正義の味方になど縁の無い人生だ。これまでも、これからもな」

 

顔色を変えずにレイは銃を構える。

 

「やめろレイ! 無謀だ! 一夏を連れて逃げてくれ!ここは私が……」

 

「な、何を言うんだよ千冬姉!」

 

「黙っていろ千冬……俺が戦う。 お前は一夏を……」

 

「嫌だ! お前を犠牲にして生き残っても……頼む……もう失いたくないんだ……一夏も……お前も……だから「心配するな」え?」

 

必死にレイを止めようとする千冬の言葉を遮り、銃のマガジンを切り替えながらレイは、告げる。

 

「犠牲になんてなるつもりは毛頭ない。俺は唯、俺にアイツを失う前の『昔の俺』を思い出させてくれた、お前達との繋がりを失わない為に此処にいる」

 

ご大層な正義などではなく……ちっぽけな絆の為に……

 

「あらあら、かっこいい。出来もしない大口を「問題ない」は?」

 

 

 

男は、その手に再び制裁の銃をとる。

 

 

 

 

「ゴミ掃除だ。すぐに終わる」

 

 

 

その言葉と共に、銃を構えたレイは突如、その場で跳躍し、回転しながら、自分を中心に円を描くように床を銃で撃ち抜いていく。

 

「い、いきなり、何を」

 

その意図が理解できず女は、困惑する。

 

そして撃ち抜かれ崩れた床に出来た穴の中にレイは姿を消した。

 

「は、はははぁ! 何よ大口を叩いて何をするのかと思ったら一人で尻尾を巻いて逃げるわけ? とんだ腰抜け……」

 

嘲笑いレイを罵る女、だがその言葉は突如、廃工場そのものを揺らし鳴り響く轟音に掻き消される。

 

 

『ゴゴゴゴゴゴゴゴ』

 

「な、何よ!? 地震?」

 

「これって、レイ兄と出会った日の……」

 

驚く女を余所に一夏の脳裏には、初めてレイと出会う直前に起きた不自然な地震の事が蘇る。

 

そして、『ソレ』は地を裂き現れた。

 

「全身装甲のIS……?」

 

「レイ……なのか?」

 

赤銅色の無骨なボディ、バックユニットから伸びる青いエネルギーライン、全身に仕込まれた火器を覆い隠すような黒いマント

、それこそがレイの最愛の女性が遺したヨロイ……。

 

サンクションズチャージ(制裁突撃)……ヴォルケイン」

 

レイの言葉に反応し、彼の愛機、ヴォルケインが起動する。

 

「下がっていろ千冬、一夏」

 

レイの言葉に千冬は、戸惑いながらも一夏を連れて離れていく。

 

「そんな、織斑一夏以外にも……男の分際で!」

 

驚愕し、憤る女は、感情に任せ、四機のBT兵器とライフルによる一斉攻撃を仕掛ける女。

 

だが……

 

「フン……」

 

脚部に取り付けられたローラーを起動したレイは、つまらない攻撃だと言うように、全ての射撃をギリギリで回避していく。

 

「(やはりヴォルケインも変化しているか……サイズはISに近づいたが、身に纏い、身体を動かす事の延長で扱えるようになった分、前より操縦しやすくなったが……さて、先ずはどこを貫くか……)」

 

元々、オリジナルセブン以外のレプリカヨロイは一部を除き、操縦桿などを、使用して操縦する物だったが、それがパワードスーツ化したことにより、寄り速く精密な動きが出来るようになったことをレイは実感する。

 

「ローラーダッシュ? 武装も量子化せず固定されているだけのようだし、録に飛行もできないなんて、唯のISモドキだったのかしら? まぁ、男にお似合いの出来損ないの機体ね」

 

「なら、さっさと当てて見せろ三流。達者なのは口だけか?」

 

「こいつッ!!!」

 

女はヴォルケインのISと、異なる点に疑問を覚えると同時に馬鹿にしたような物言いをするが、レイは動じない。逆に、見下していた男である、レイの言葉に女は冷静さを欠いていく。

 

「さて、そろそろ行くぞ……ヴォルケイン」

 

その言葉と同時に、ヴォルケインの右手のガトリング、左手のエナジーキャノンの側面に取り付けられた二機の機銃、身体に装備された四つの機銃の全てが火を噴いた。

 

「!? そんな攻撃!」

 

レイの攻撃を回避する女だがレイの狙いは、IS本体ではなく……。

 

「こいつ! BT兵器の回避先を!」

 

弾幕を張り行動を制限したレイは、実弾タイプのBT兵器二機に狙いを定め左手のエナジーキャノンで撃墜したのだ。

 

「(先ずは、第一段階クリア……続けて)」

 

続けてヴォルケインのバックユニットからミサイルが発射される。女は撃墜しようとするが、ミサイルは女の手前の地面にあたり、あたりを爆炎が覆う。

 

「何処を狙って……ガァッ!?」

 

次の瞬間、女の側面から煙を裂き現れたヴォルケインのエナジーキャノンが至近距離で放たれ、女のISは吹き飛んだ。

 

「こ、この程度で!」

 

だが、吹き飛んだ女はすぐに体制を立て直す。

 

「(流石にチャージなしでは至近距離での射撃とはいえ一撃で撃破はできないか……となれば……やはり『アレ』を使うか……)」

 

 

「……認めない……私がこんな男と、出来損ないのISに……」

 

「勝手にしろ……だが……ヴォルケインを舐めるなよ」

 

「ッ!?」

 

淡々と自分を追い詰めるレイの威圧感に怯える女、しかし次の瞬間、女は邪悪な笑みを浮かべる。

 

「そう……なら、これはどうかしら!」

 

「!」

 

そう言った女は先程、退避した千冬達の方へとライフルとBT兵器の銃口を向けた。それに反応したレイは、反射的に、射線に飛び込む。それに気づいた千冬は叫ぶ。

 

「やめろ! レイ!」

 

だがもう遅かった。

 

「もらった!」

 

勝利を確信して女は最大出力のレーザーを発射する。だが……。

 

「やはり、そうくるか……」

 

レイは慌てずにヴォルケインの纏ったマントでレーザーを受ける。するとレーザーはヴォルケインを貫くことなく霧散した。

 

「ビームの拡散!? だから、実弾タイプを優先して破壊してきたのね! けど、無駄よ! 貴方は、その姉弟を守る為にそこを動く事は出来ない」

 

レーザーを千冬達に連射することで、それを庇うレイをその場に縫い付けた女は、勝利を、確信し、醜く嗤う。次の瞬間、女のISの腰部分のアーマーが動きミサイルが姿を現した。

 

「実弾は防げないでしょ! 隠し玉は、残しておくべきよねぇ! 卑怯だなんて言わないでよ? これはスポーツじゃないんだからさぁ! あはははははは!」

 

その台詞を聞いたレイは薄く笑う

 

「フン……勝つ為に手段を問わないことを否定するつもりは無い……俺、自身そうやって生きてきた。 だがな……アイツらを狙ったことは、高くつく……容赦はしない、精々後悔しろ」

 

「もう、遅いわよ!……消えなさい!」

 

そう言ってレーザーから千冬達を守るヴォルケインへとミサイルが発射される。

だが、女は気づいていなかった。自身の放ったレーザーを受けるヴォルケインの周囲に拡散したレーザーのエネルギーが纏われていることに……。

 

そして……

 

「ヴォルケインを舐めるなと言った筈だ……」

 

レイの言葉と同時に、ヴォルケインの周囲に纏われていたエネルギーが女のISへ向けレーザーとなり放たれ、ミサイルを貫き女へと迫る。

 

「な!?」

 

驚愕しつつも、女はその攻撃を瞬時加速で、回避するが……。

 

「エネルギーチャージ完了……ターゲット軸線上……」

 

攻撃を回避した女のISの後方に地面を割り現れたドリル型のポッド。それに接続されたヴォルケインのサイズを大きく超える巨大なロングレンジビームランチャーの銃口が女に向けられていた。

 

「(アレはマズイ!)」

 

危機感を感じた女の勘は、間違っていない。ロングレンジビームランチャーは、その大きさから固定砲台としてしか利用できないことに加えて、ヴォルケインの地下移動用ポッド『ジングウ』のジェネレーターに接続し長いチャージ時間が必要になる。だが、その威力は嘗ての復讐の旅の中で二機のオリジナルセブンを一撃で葬った程の威力を備えている。直撃すれば、ISの絶対防御すら貫通するだろう。

 

「その程度で!」

 

だが、女は二段瞬時加速でロングレンジビームランチャーから放たれた赤いレーザーをギリギリで回避する。

 

「これが切り札? 残念だけど、当たらなければ意味がないわよ!」

 

「それは、どうかな?」

 

「え?」

 

回避に成功した女は勝ち誇るが、次の瞬間その表情は凍りつく、回避されたレーザーの射線に飛び込んだヴォルケインは、マントを使いレーザーを反射・拡散させ、分裂した五本のレーザーが女のISに直撃しスラスター、ライフル、BT兵器を、まとめて破壊したのだ。

 

爆炎の中で女は、パニックに陥る。

 

「(ま、まずいわ! もう勝ち目は無い。

に、逃げるしか……)」

 

急上昇し、その場を離脱しようとする女、だが、その判断は読まれていた。

 

「逃がすと、おもうか?」

 

「ヒィッ!!」

 

上昇した先には既に跳躍したヴォルケインが左手のエナジーキャノンをチャージし待ち構えていたのだ。ヴォルケインのカメラアイが鋭く光り、女は、恐怖する。

 

「デリート……」

 

レイの言葉と共に放たれた最大出力のエナジーキャノンは、女のISを吹き飛ばし地面に叩きつけ完全に機能を停止させた。

 

「あぐ……」

 

ISが解除され呻く女に、ヴォルケインを解除したレイが近付き銃を突きつける。

 

「死にたくなければ、今回の計画を、依頼してきた連中について。洗いざらい吐け」

 

「し、知らないわ、私達が教えられたのはあくまで、依頼と報酬についてだけで、ISもアイツらが用意していたものよ。そ、組織については、何もわからないわ」

 

「ほう、しらばくれるか……」

 

冷たい目でレイは銃のトリガーに指かける

 

「う、うそじゃないわ! 知っているのは、依頼してきた2人が、女だったことと『スコール』と『オータム』っていうコードネームだったことだけ! 織斑一夏がISを、動かせる可能性があるって言ってたのもアイツらよ! なんでも、篠ノ之束が、織斑一夏の為のISを開発している情報を掴んだとかで……」

 

必死に答える女に、レイはこれ以上引き出せる情報が、無いと察しトリガーにかけた指に力を、込めようとする。

 

「ま、待って!? 私は質問に答えたじゃない?!」

 

「生憎だが、俺はお前のような奴との約束を守るような善人じゃない。それに言った筈だ、精々、後悔しろとな」

 

「い、いや助け……」

 

「やめろ! レイ!」

 

容赦無く引き金を引こうとするレイ。遠くから、その異変に気づいた千冬は、レイを止めようと駆け寄る。

 

しかし……

 

「デリート……」

 

 

レイは躊躇わず引き金を引いた。

 

---------------------------------------------------------

 

「れ、レイ!」

 

駆け寄った千冬は女の様子を見る。

女は、生きていた。恐怖で気を失い、レイの放った銃弾は、頭の上を掠めていっただけだったのだ。

 

「俺も甘くなったものだ……」

 

「ば、馬鹿者! 焦らせるな!」

 

レイが人を、殺すかもしれないと、本当に心配した様子で千冬はレイを怒鳴りつける。

 

「何を焦っている? お前が言ったんだぞ、俺は復讐だけの人間ではないんだとな……」

 

「うっ……思いださせるな……恥ずかしくなってくる」

 

レイの、言葉で自分のとった大胆な行動が脳裏に蘇り悶える千冬。

 

「レイ兄! 千冬姉! 」

 

そこに、離れていた一夏が叫びながら駆け寄ってくる。

 

「とりあえずは、ひと段落だ……」

 

「そう……だな」

 

駆け寄ってくる一夏を見つめながら2人は言葉を交わす。

 

「千冬……」

 

「何だ……?」

 

「もう少し俺を頼れ……それと……無事で良かった……」

 

「……うん」

 

 

こうして、一夏誘拐事件は幕を閉じた。

 

 

 

----------------------------------------------------------

 

それから一ヶ月後、三人は日本の空港にいた。あの事件で、ドイツ軍に一夏探索の借りが、できた千冬は、一年間ドイツ軍で教官として働くことになったのだ。

 

全く帰って来れないわけではないが、帰宅できる日数は、更に減ってしまう。

 

千冬が搭乗の手続きをしている間、レイと一夏は2人で話していた。

 

「レイ兄……千冬姉は……」

 

見るからに元気のない一夏にレイは言葉を返す。

 

「一夏。もし責任を感じているのなら、それはお門違いだ」

 

「だけど! 俺が弱かったから、千冬姉は危険な目にあって優勝も逃して……」

 

「アイツにとって一番大切な物は、お前だ。だからこそ、アイツはお前を見捨てなかったんだ。アイツは後悔なんてしていない。それを謝るのはアイツへの侮辱だ」

 

その言葉は、決して口先だけの慰めではない。

 

「でも、俺はやっぱり強くなりたいよレイ兄……千冬姉の名を傷つけないくらい……周りの人を守れるくらい……だから、俺を鍛えてくれ!」

 

決心した一夏の言葉にレイは困ったように返す。

 

「前にも言った筈だ。俺は守り方など教えられない。」

 

「そんなことない、あの時も今回もレイ兄は、俺を守ってくれただろ!」

 

真剣な眼差しにレイは諦めたように溜息をつく。

 

「ハァ……基本的な部分だけだ、それ以上は自分でなんとかしろ」

 

「!! うん、ありがとうレイ兄!」

 

その言葉に喜ぶ一夏。

 

「ん? 2人してどうしたんだ?」

 

そこに搭乗手続きを済ませた千冬が戻ってくる。

 

「男同士の約束だから千冬姉には、ひ〜み〜つ〜」

 

「な、なに?! オイ!どういうことだレイ!? 私にも教えろ!」

 

一人除け者にされたからか必死になる千冬

 

「さて、なんだったかな……」

 

「お、お前まで……」

 

「あらら、千冬姉ってば……」

 

レイにまで秘密にされ、いじけそうになる千冬に一夏は、苦笑する。

 

そこに、千冬の乗る飛行機の搭乗時間を知らせるアナウンスが響く。

 

「……そろそろ行かなくてはな」

 

「千冬姉……」

 

「そんな顔をするな一夏……お前の所為ではない。連絡もするし、可能な時は必ず帰るようにする……」

 

気持ちが沈む一夏を千冬は優しく励ます。

 

「一夏の方は、俺が責任を持って見守る……お前も、気をつけて行ってこい。」

 

「あぁ……頼りにさせてもらうさ……では、行ってくる。」

 

ゲートに向かって歩きだした千冬を2人は見送る。すると、ゲートをくぐる直前で千冬は立ち止まり振り向いた。

 

「レイ! ドイツでの仕事が、片付いたら、お前に伝えたいことがある! 必ず聞いてもらうからな! 待っていろよ!」

 

「あぁ……」

 

その、千冬の言葉にレイは困惑しつつ頷く。

 

それを見た千冬は、満面の笑みでゲートをくぐり出発して行った。

 

因みにこの台詞を聞いていた同乗のお客様達に機内で生暖かい目で見られた千冬が羞恥で真っ赤になるのは、また別の話。

 

「行っちゃったな千冬姉」

 

「あぁ……帰るぞ一夏」

 

「うん! わかった! 」

 

歩き出す2人。

 

「そうだ! なぁ、レイ兄」

 

「なんだ?」

 

満面の笑顔で一夏は告げる

 

「改めて、これからもヨロシクな!」

 

「フッ……あぁ」

 

復讐を終え、男は悪夢から覚めた。

 

 

そして、男のちっぽけで温かい新しい夢が始まる。

 

大切な姉弟と共に……。

 

 

 

 

last episode 『その絆に用がある』

 




レイ篇完結。

いや、レイ兄さんのキャラって難しい!
復讐後のレイ兄さんを想像してかきましたが、コレジャナイ感も結構ありますハイ……

とりあえず今後は、特別篇を予定しています。
いつ更新できるかわかりませんので気長にお待ちください
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