多分、このクロス篇が終わったらこの作品はひと段落になると思います。
此方の完結を優先させますが、終わったら今度は、今気晴らしで書いてるISと禁書(というか上条さん)のクロス短編でも投稿しようかとかと思ってる次第ですハイ
episode Ⅰ ツインズ・ガード ①
【IS学園】
それは、女性にしか扱うことの出来ない、現状で地球上最強と言われる兵器【インフィニット・ストラトス】通称ISについてを学ぶ為に作られた教育機関の名称である。
IS学園では世界各国から、様々な人種の女性が集まり、知識・操縦・整備などについてを学んで行く。……と文章でまとめた限りでは堅苦しい場所のように感じられるが、実際の所は、そうでもない。何せ、人種は違えど集まってくるのは、年頃の少女達だ。3人寄れば姦しい、数百人なら言わずもがなである。
織斑千冬と山田真耶が担当するクラス1年1組もそれは例外ではない。寧ろ、世界に一人しかいないISを使える男、織斑一夏が在席し話題に事欠かないという点で考えれば、その賑やかさは学園内でもトップクラスだろう。
そんな華の女子校(一名除く)の朝のHR、普段であれば千冬の注意があるまでは生徒達が、賑やかに話しながらHRが行われている筈の1組の教室は……
「テメェ……なに勝手に生きていやがる」
「……生憎と貴様の都合で生きてはいない」
長身の男2名が睨み合う、一触即発のバトル空間と化していた。では何故、そうなったのか? 事態は数分前に遡る。
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episode Ⅰ 『ツインズ・ガード』①
クラス対抗戦で起こった正体不明のISの襲撃事件。
ヴァンによって両断された正体不明機を解析し判明したことは、ISが無人機であったことと、そのコアが現存する467のコアのどれにも該当しない未登録の物であったこと位だった。千冬は、その報告を受け第二回モンド・グロッソで起きた一夏誘拐事件から胸の内にある親友、篠ノ之束への疑念を強くする。
また、無人機を撃破したヴァンの扱いについても、学園の教師陣は頭を抱えた。
ヴァンは当初、彼と接する機会の多かった真耶と、一夏絡みの問題への対処に追われ、余りヴァンの件に関わっていなかった千冬を除く教師達からは、一種の治外法権であるIS学園へ侵入した何処かの国の回し者か、女尊男卑の社会を恨む過激派か何かかと思われており、それが尋問を経て、意味不明な発言をする少し頭のおかしい男、といった認識をされていたのだ。
しかし、クラス対抗戦での襲撃の際にヴァンは、学園の教師陣が手をこまねいていた状況に、何処からともなく現れ、空から舞い降りた全身装甲の白いISを纏い、無人機を意図もたやすく両断し、絶対絶命の危機にあった山田真耶を救い。結果としてアリーナに取り残された生徒達も全員が怪我無く無事に救出されたのである。
現生徒会長がトップを務める対暗部組織、更織家の調査協力を得ても、微塵も情報を得ることが出来なかった謎の男は有ろうことか謎のISまで所持しそれを使うことができる。しかも実力は折り紙つきとくれば、学園の手に余るのも無理はない。
そこに、学園の運営者である轡木十蔵から一つの提案が出される。
「彼の言い分をある程度信用して学園で雇ってみては? 織斑君の一件で近々、学園に配属されることになった『彼』の事もありますし丁度いいかと……」
真耶が聞き出したヴァンの情報は、内容自体は突拍子もない物だが、もしそれが事実なら、彼の情報が全く見つからないことや彼の扱う未知のISについても説明がつくのもまた事実である。また、ヴァン自身にも学園への敵対する意思はなく、それどころか先の事件では、体を張りわざわざ真耶を助けて見せたのだ。とてもスパイのやることとは思えない。
加えて、ヴァンの発言内容の情報を確認した千冬までもが、その内容に肯定的な意見を出し、轡木に賛成したことによって、ヴァンを雇う提案は可決され、この提案を聞いたヴァンも、以外な程あっさりと提案を受け入れた。
因みにヴァンの監視担当となったのは真耶であり、後日そのことを知った真耶が大喜びしたのは別の話である。
そして、この物語はヴァンの出勤初日、フランスとドイツからきた転校生の紹介後、一夏に対して平手打ちを放とうとしたドイツの代表候補生、ラウラ・ボーデヴィッヒをヴァンが止め、自身の名を名乗った場面から始まる。
「『ガンソードのヴァン』だと? そんな二つ名を持つ男の事など聞いたことがないぞ」
「そりゃ、名乗り始めたのは今日からだからな。昨日までは、『寝たまんまヴァン』で通っていた」
「……私を馬鹿にしているのか貴様?」
掴み所のないヴァンの態度に苛立ちを覚えるラウラ。
「馬鹿にはしていない……だがな、いくらお前が喧嘩っ早いチンチクリンのガキでも初対面の相手にその態度は問題があると……」
「やはり馬鹿にしているだろう貴様! わたしはチンチクリンでもガキでもない!後、お前の態度も十分失礼だ! 」
「スイマセン」
「まったく、いきなり失礼な……な、なんだ貴様ら! その生暖かい目は!」
ヴァンとのやり取りで調子を崩され冷たいイメージが一瞬で崩壊したラウラを、いつの間にか1組の生徒達が微笑ましい物を見る目で見ていることに気付き、ラウラは顔を真っ赤にして叫ぶ。
「まぁまぁ、ボーデヴィッヒちゃん落ち着いて♪」
「転校初日で緊張しちゃったんだよね♪」
「ほら、飴舐める?」
「こ、コイツら……いい加減に」
ヴァンとのやり取りが切っ掛けで同級生からも年下の子をあやすような態度をとられ怒りに震えるラウラ。我慢が限界に達しようとした時……。
「そこまでにしろ織斑とボーデヴィッヒ、転校早々問題を起こすな」
「きょ、教官!? ……了解しました」
「千冬姉!? 俺は何も「織斑先生だ馬鹿者」イテッ!」
畏まるラウラと出席簿で軽く頭を小突かれる一夏
クラス担任である織斑千冬の登場により、ラウラの態度は先程までとは別人のように大人しくなるラウラにヴァンは「なんだコイツ」と言うような目を向ける。
「織斑先生、すみません……私がしっかりと仕切らないといけなかったのに……」
「いや、気にするな山田先生、私も君には愚弟の件で色々と迷惑を掛けている。お互い様というやつだ。 まぁ、この一ヶ月間、気にかけていた男と一緒に働けるからと言って浮かれるのは関心できないがな」
「お、織斑先生!」
「フッ……冗談だ」
親しげに会話を交わす2人に置いてけぼりを食らったヴァンはダルそうに話しかける。
「あー……どちら様で?」
ISで世界最強の肩書きを持ち、今のご時世で知らぬ人などいないであろう千冬に対して、ヴァンの物言いに生徒達は目を丸くする。
「お前がヴァンか……私は、織斑千冬だ。 今日からお前は、学園のガードとして雇われることになる。基本的な仕事は学園内の見回りやISを使用する授業での事故防止の見守りになる。まぁ、細かい点は追い追い伝えていくだろうが、宜しく頼む。」
一瞬、ヴァンを見る千冬の目が、ヴァンと誰かを比較するようなものになったことに気付いたヴァンだが、追求するのも面倒なのでスルーする。
「ん? あぁ……確か、真耶が言ってたクラスタンニンってやつだったか? まぁ、任せろ、荒事は得意だ。これでも『縁の下の力任せヴァン』と呼ばれていたからな」
「いくつ二つ名を持ってるんだお前は……所で、その服装は何とかならないか? 流石にタキシードというのはな、スーツなら此方で用意するぞ?」
「いやぁ……これはちょっと……」
千冬の提案に渋る様な反応をするヴァンに周囲の生徒達は「そう言えば、何でタキシードなんだ?」と疑問を覚える。
「……まぁ嫌ならいい。さて諸君、今日は転校生の他に2名程、この学園で働くこととなった男がいるので紹介する。1人はそこにいるヴァン。主に学園の警備を担当する。要は用心棒のようなものだ」
千冬の言葉に教室がざわつく。何せ二人目の男子であるシャルルに続き唐突に女子校に2名の男性が赴任してくるのだ。生徒達も驚くであろう。
「静かにしろ。 そしてもう1人は教育実習という形で主にこのクラスで働くことになっている。 レイ、入ってきて構わないぞ」
千冬の言葉に教室の扉が開く。そこに、グレーのスーツを着て、長い金髪を後頭部で束ねた男が入ってくる。
「紹介しよう。今日から学園で働く、レイ・ラングレンだ。因みに、この男もヴァン同様、特殊なISを使うので覚えておくように」
千冬が2名の男の紹介を終えた瞬間、教室が揺れた。
「大人の男キターーー」
「ワイルド系とクール系キターーー」
黄色い悲鳴を上げる女子達に千冬は「またか……」というようなゲンナリした顔をする。
「レイ兄!?」
そんな中、急展開により頭がフリーズしていた一夏が復帰し声をあげる。
「え? 織斑君のお兄さん!?」
「いやいや、思いっきり日本人じゃないでしょ……」
「まさか、お義兄さん!?じゃ、じゃあ千冬様の?!」
「えぇ!? そうなんですか織斑先生!?」
一夏の発言を切っ掛けにヒートアップする女子達。真耶まで、その発言にノってしまう始末である。
「ば、馬鹿者共が! 違う! レイと私は……その……そうゆうんじゃ……山田先生もノるなんじゃない! おい! レイ! お前もなんとか言……レイ?」
普段のクールなイメージが崩れかけ、取り繕うとする千冬は、レイに説明させる為に声を掛けるが、そこで彼の様子がおかしいことに気づく。
「ヴァンさん?どうしたんですか?」
真耶もまた、ヴァンの様子がおかしいことに気づく。
そして……
「テメェ……なに勝手に生きていやがる」
「……生憎と貴様の都合で生きてはいない」
睨み合う二人から、明らかに因縁があると言わんばかりのやり取りが発せられる。
「弟をほっぽり出して、こんな所で何をしていやがる? テメェも『ミハエル』の野郎と同じく『馬鹿兄貴』の仲間入りか?」
「そう言う貴様は、懲りもせず、トラブルに首を突っ込んでいるようだな? やはり、馬鹿は死なんと治らないようだ」
「ポンコツめ、相変わらずの減らず口だ」
「ガラクタが、俺は事実を言っているだけだ」
一触即発の空気に誰もが動けない。だが、そこに意外な救世主が現れる。
「えぇ〜とぉ〜、ヴァンヴァンとレイレイは、お友達なの?」
「「断じて違う」」
だぼだぼの袖の制服を着た、ほんわかした雰囲気の少女、布仏本音の質問に張り詰めていた空気が少しだけ緩んだ。
「しょ、諸君、一限はISを使用した授業になる。グラウンドに遅れずに集合しろ。ほら、レイもいつ迄睨みあっている!急げ!」
「お、織斑君はデュノア君を男性更衣室に案内してあげてください!あと、ヴァンさんと、レイさんもそこで着替えるようにお願いします。け、喧嘩はダメですからねヴァンさん!」
「……了解した」
「チッ……しょうがねぇ」
本音の作ったチャンスを全力で掴みに行った千冬と真耶の連携によりなんとか衝突は免れ、生徒達は、更衣室へ移動を始める。
「えぇっと……織斑君? 僕は……」
「挨拶は、後だ! 急ぐぞシャルル! 遅れたら千冬姉にどやされる。 レイ兄とヴァンさんも!」
シャルルの挨拶を遮り今年から増設された男子更衣室へと急ぐ一夏。シャルル達もそれに続く。
そんな彼らの姿をラウラは怒りの表情で見つめていた。
「織斑一夏……レイ・ラングレン……アイツらが教官を……」
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更衣室へと到着した一夏は、すぐにISスーツへと着替え始める。
「急がないと、ていうか、やっぱりピッチリして着辛いなISスーツって……って、こっち見て、どうかしたかシャルル?」
「へ? な、何でもないよ!? えっと……着替えるけど恥ずかしいから見ないでね? ヴァンさん達も」
「興味ねぇって……」
「? 男同士だろ?気にすることなくないか?」
「……一夏、遅れるぞ急げ」
更衣室に入ってから妙にテンパっているシャルルに疑問を持つ一夏だが、大人2名は気にせずにいる。
「そう言えば、レイ兄もヴァンさんも、ISスーツは必要ないから着替えなくてもいいのか」
ISスーツはISの操縦の際、電気信号の増幅、伝達を行い操作性を向上させる機能を持っている。操縦に必ずしも必要というわけでは無いが、使わない道理も無いだろう。
「そのピッチリスーツの事か? 嫌だね、着たく無い。着心地が悪そうだ」
「ヴォルケインは、根本的にはISでは無い、そのスーツを着るメリットが無い以上、必要無いだろう」
ISとは根本となっている技術が違う機体を扱う2人は服を着替える必要が無い。2人が扱っているのは、あくまでISに近くなったヨロイなのだ。もっとも、オリジナルセブンを操る為の改造手術を受け、神経電気が増幅されるようになっているヴァンには、例え機体が完全にIS化したとしてもスーツは必要無いのかもしれないが……。
「え?! お二人のISは、スーツを着る必要が無いんですか?」
三人の会話にいつの間にか着替えを終えたシャルルが加わる。
「うお?! 着替えるのが早いなシャルル、何かコツとかあるのか?」
「え? あぁ、まぁね!? それで、お2人のISって……」
「質問なら後にしろ。時間が無い、行くぞ」
詳細不明の2人のISに興味を持ったのか質問をするシャルルだが、一夏が、着替え終えた事を確認したレイは話を打ち切りグラウンドへ向かう。残された一夏とシャルルも慌ててそれに続き。最後に面倒そうな表情でシャルルを見ながらヴァンがそれに着いて行った。
一夏達は開始時刻ギリギリでグラウンドへと到着する、そこには合同で授業を行う1組と2組の生徒達が集まっていた。
「レイさん!お久しぶりです」
「鈴か、久しぶりだな、両親は元気か?」
「はい! お陰様で仲良くやれてますよ」
嘗て、レイが此方の世界に跳ばされた当初、働かせて貰っていた料理屋の娘、凰 鈴音が彼に声を掛ける。
彼女は、レイが織斑家に現れたのとほぼ同時期に一夏の通う学校に中国からやってきた転校生であり、中学二年の時、家庭の事情で中国へと帰国したのだが、最近になって、中国の代表候補生として、IS学園の2組へと転入してきたのだ。
因みに、鈴が中学生の頃、彼女の両親は
女尊男卑や店の経営の問題で夫婦間の溝ができ不仲になっており離婚の危機にあったのだが、レイや周りの人々のフォローもあり、一度、中国に帰りお互いの関係を見つめ直し、紆余曲折を経て、関係を修復している。
「積もる話もあるだろうが、授業も始まる、後にしろ。それと、一夏がいるからと言って浮かれるなよ」
「わ、わかってますよ!」
「だといいんだがな……」
鈴に限らず、何かと女子に好意を持たれる一夏は、女性関連で何かとトラブルを起こす。この数年でそれを嫌というほど知っているレイはこの女性ばかりの学園での今後の弟分のトラブルメイカーっぷりを予期し、嘆息する。
「揃っているな諸君」
そこに白いジャージに着替えた千冬が現れ授業を開始する。
「今日は、まず実戦形式の演習を行い、その後、グループに分かれISの操縦訓練を行う。凰、オルコット、前に出ろ」
「わたくし、あまり見世物になるようなことは気が向かないのですが……」
「えぇ〜、私ですかぁ……」
あまり、やる気の無い2人だが
「ほう、アイツに良いところを見せるチャンスをやろうと思ったのだがな。なら他の奴を……」
「さぁ!始めましょう! 相手はセシリアかしら? 悪いけど手加減無しよ!」
「あらあら鈴さん。わたくしに勝てるつもりですか? 失礼ながら大爆笑ですわね」
「話は最後まで聞け馬鹿者共、お前達の相手は……」
態度をコロリと帰る2人に、狙い通りとはいえ呆れる千冬だがそこに上空から声が響く。
「あわわわわわ! どいてくださぁぁぁぁい!」
生徒達が上空を見上げるとISのラファール・リヴァイヴを纏った真耶が態勢を崩し落下してきていた。
「オイオイ……なんでコッチに来るんだよ」
「ヴァ、ヴァンさん! 避けてください!」
叫びながら落下してくる真耶を、めんどくさそうに見上げるヴァン、そして……
「へいへい……」
「あだっ!」
ヴァンは真耶の発言に従いリヴァイヴをさらりと回避し、真耶は見事に地面に激突する。
「う、受け止めてくれるかなと、少し期待してしまったんですが綺麗に躱すんですね……」
「すいません、つい……というか避けろと言ったのはお前だろ」
「……ハイ、その通りです」
漫才のようなやり取りを繰り広げる2人
「というわけで、お前達の相手は山田先生が務める」
目の前の事態を華麗にスルーし千冬は話を進めていく。
「えぇっと2対1でですか?」
「流石にそれは……」
「いや、問題無いだろ」
「「なんですって!?」」
千冬達の会話に突如割って入ったヴァンの2対1だろうと真耶の勝ちを確信しているような物言いを聞き。鈴とセシリアの闘志に火が付く。
「アンタ、私達が弱いって言いたいの?」
「別に……唯、それでもアイツが勝つと思っただけだ。なんたって、『先生』だからな。なぁ、真耶?」
「は、はい! 」
自分の『夢の続き』を見届けると言ってくれた男の前で情けない姿は見せられないと、真耶の表情が引き締まり普段の柔らかい雰囲気が消える。
「(ほう……ただの代表候補生止まりという訳ではないらしい)」
真耶を見ていたレイもその変化から彼女の本来の実力を察する。
「では、始めろ!」
千冬の掛け声と共に飛行した3機のISは空中で戦闘を開始する。
「前のクラス対抗戦の時も思ったけど山田先生って強かったんだ……」
「うん……正直意外だったかも」
上空で専用機2機を相手にしても上手く立ち回り、お互いの動きを阻害させ確実にダメージを与えいく真耶のテクニックに生徒達は普段、弄られて慌てている真耶のイメージを改める。
「上手いもんだな、飛び道具を上手く切り替えていやがる。幾つあるんだアレ」
刀一本で戦うヴァンとは対象的な射撃と多種の武装での戦闘を珍しく真面目に見つめるヴァン。
「ラファール・リヴァイヴはデュノア社が作成した第二世代ISで武装を収納する拡張領域と汎用性はトップクラスだからね。武装事態は通常の実弾兵器だから火力は光学兵器搭載機には劣るけど、その分、手数は量産型の中でも圧倒的だから、使いこなせる人が使えば、どんな相手にでも上手く立ち回れるよ。 器用貧乏ではあるけどね」
「あ? あぁ、つまり沢山武器を積めるってことだろ? 俺には向かないなありゃ、戦う時に小難しいことを考えるのはな……で、えぇっと……なんて言ったけお前?」
「……シャルル・デュノアだよ」
「あ? どうした? 自分の名前が嫌いなのか?」
「え!? べ、別にそんなことないよ!」
「そうか? ならいいんだがな」
一瞬暗くなったシャルルの様子に気づいたヴァンの言葉をシャルルは慌てて否定する。
「なぁ、シャルル。もしかして、シャルルってフランスのデュノア社の関係者なのか?」
そこに一夏が会話に加わってくる。
「あ? どういうこった?」
「いや、ヴァンさん……だって、シャルルの名前にデュノアって」
「……あぁ、そうだったか?」
「……まぁね。デュノア社の社長は、僕の父だよ」
「やっぱりか、なんか育ちの良さそうな感じがしたからさ」
「……育ちが良い、ね」
「……興味が無いな。さて……そろそろ終わるみたいだぞ」
表情を、暗くするシャルルに気を使ったのか、それとも本当に興味が無かっただけなのかはわからないが、ヴァンは会話を打ち切る。上空では、真耶の発射したミサイルが直撃したセシリアと鈴が仲良く墜落している所だった。
「アンタねぇ! あっさり攻撃を見切られてんじゃないわよ」
「鈴さんこそ、良いように踊らされて此方の射線に入るのをやめていただけます」
コンビネーションが最悪だった2人は言い合いを、繰り広げている。
「ふぅ……なんとか勝てました」
「謙遜するなよ。直撃なんて一発も貰ってないだろ『先生』?」
「も、もう! ヴァンさん!その呼び方は、私をからかってるんですか!?」
「いや、別にそう言うわけじゃないんだがな……」
照れ隠しで顔を赤くしながら怒る真耶に、どう対応すればいいのかわからないヴァン
「さて、これで諸君も教員の実力も分かっただろう。量産型といえども、実力さえ伴えば専用機にだろうと決して勝てないわけではない。山田先生のようにしっかりと技術を身につけていくことが、最終的に諸君の地力を上げ、候補生への道にも繋がっていくことになるだろう。専用機を持っていないからといって、無条件で勝負を捨てるような考えを持つことはするな。全力で戦え。いいな?」
『ハイ!!!』
千冬の言葉に思う所があるのか生徒達の多くが大きな声で返事をする。
「よし……では先程言ったようにグループに別れて……」
「織斑せんせ〜い、私、ヴァンさんとラングレン先生のISも見てみたいで〜す」
「あ、私も! クラス対抗戦の時に見れなかったんですよ。噂では空から降ってくるんですよね!」
千冬の声を遮った一人の生徒の発言をきっかけにヴァンとレイの機体を見たいという声が増えていく。だが……
「別にかまわんぞ? グラウンドにできるであろうクレーターと大穴をお前達が埋めてくれるのならな……」
千冬の発言に全員が一瞬で黙りこんだ。
「フン……ではグループに別れろ」
千冬の言葉に従い生徒達が動き出す。
そんな中……
「(デュノア社のデータに無かった織斑一夏以外の2人の男性操縦者。話を聞く限りかなり異質な物みたいだし、社長が欲しがっているデータになり得るかも……)」
シャルルは作り物の笑顔を浮かべ、周りの生徒達と会話しながら、ヴァンとレイを見つめる。
「(同じ男として、警戒されずに彼等に近づいて何とか機体のデータを手に入れないと……)」
内心で決意を固める『彼女』は知らない。レイ・ラングレンという男の勘の鋭さを……そして一夏やレイといった男性の名前はしっかりと覚えているヴァンという男がシャルルの名前だけ覚えようとしないことが何を示しているのかを……。