「俺が総監部? 冗談でしょう」
「私は一般出ですし、あり得ないのでは。まだ乙骨くんや狗巻くんの方が現実的です」
伏黒と七海は辞令片手に五条に抗議をしていた。
抗議というよりも戸惑いが大きいが。姉が目覚めたという知らせや虎杖が行方不明な事から、もう一杯一杯でこれ以上大変なのはよしてほしいのが伏黒の正直な所だ。
「もう決定事項だから。人手がないんだよ、本当に。過半数が敵呪詛師の紐付きだったからね。罠依頼に行かされるのは嫌でしょ? それに棘ももう少し落ち着いたら総監部に引き入れるから安心して。今回は緊急で意思疎通が必要な会議が続くから除外しただけだよ。乙骨は今呼び戻してる。今夜には到着するけど、資料を読む時間はないからフォローをお願い」
「それもう、乗っ取られてるじゃないですか。よくもち直せましたね」
「上のやり口というか、まんま敵だったわけですか」
「そういうこと。資料用意したから、読み込んどいて。今晩から会議するよ」
「これが国内の呪霊や術式についての情報流出をどうするかの会議の資料」
どさっ
「これが他国からの呪術界への問い合わせの内容」
どさっ
「これがスペシャルズらしき、東京タワーおよび渋谷で暴れていた呪詛師団体の資料」
どさどさっ
「恵にも関係あるけど、全国で呪いにより眠っていた人が目覚めた、あるいは受肉した事件について」
どさどさどさっ
「今後の運営についてと引き継ぎと真総監部メンバーの確定について」
どさどさっ
「任務の振り分けについて」
どさどさどさどさどさっ
「呪霊や術式についての情報公開と呪術規定の一時緩和について」
どさどさどさっ
「傑を操ってた敵対呪詛師の報告まとめ」
どさどさどさどさどさっ
「この8件が大至急の議題かな。夜までに目を通しておいてね」
二人はドン引きする。
「俺なんかで決められる事ではないですよ」
「私達が書類仕事で忙殺されるのは問題なのでは」
二人がせめてもの反撃をするが、それが通る事ではないのは分かっていた。
「それでまた罠依頼行くわけ? 津美紀の処遇についてだってあるんだよ。人任せだと死ぬって分かった結果の今でしょ。僕ですらこうして資料配るのとか手伝うくらいなんだし、本当大変なんだから手伝ってよ。ここ疎かにすると同じ事だから、今はデスクワーク優先。敵対派閥だってたくさん入ってきてるんだから、二人には助けてもらわないと困る」
この辺、禪院家派閥の直哉が味方だったり、直毘人は染まってなかったり、マシと思っていた加茂家派閥がまさかの当主と次期当主以外呪詛師の残党だったりと五条の予測を覆すことばかりなのだが、それを今の五条は知るゆえもない。ただ、こんなことがあったばかりではあったから、きちんと警戒はしている。伏黒、七海の両名の加入は最悪の場合を考えると絶対の条件だ。若手全員がまだ汚れてないと考えるほどお花畑ではないのだ。何より、特級呪霊がわんさか出てきて、逃げ果せているのも多い。それを五条が対処するのは決定事項なので、大事な会議に欠席になるかもしれない。当事者として発言力が大幅に削られる議題もある。五条の代弁者は必要不可欠だ。
「伊地知さんは」
「伊地知にこの状況でこんな簡単な事させるわけないでしょ。あいつ今一番忙しいよ。この資料の作成だって監督してるし。広範囲にメスを入れられる機会なんて今回だけなんだから、他の補助監督だって総動員だよ、総動員」
「確かに、皆さん忙しそうですね」
仕方なく、七海は資料に目を通し始める。
今から目を通さないと間に合わない。だって今夜である。
伏黒も諦めて資料を手に取った。
「とりあえず、伏黒は野薔薇、七海は猪野を手伝いに使っていいから。情報共有もOK」
「マジで誰が呪霊退治するんですか」
「呪術界が潰れたら元も子もないからね。ある程度の被害は目を瞑る。やばいと思うなら、デスクワーク早く片付けちゃおう」
永遠に終わらないのでは? その言葉をぐっと飲み込み、二人は電話で新たに認められた助手を呼びながら、資料を読み進めた。
マシュマロ
https://marshmallow-qa.com/lucaluca
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