・オリ設定乱立なので何でも大丈夫な人向け。
・FGOシナリオ既読前提です。プリヤ、EXTRA、アポクリファの設定も出てきます。そちらは未読でも大丈夫ですが、無論読んでいただいた方が理解しやすいです。
#2 異境のマスター
【side:オルガマリー】
「よかった、間に合って」
凛とした声が戦場に響く。怒号と土煙が飛び交うこの場には適さない、少女の声だった。
「一体誰が……」
『何なの、この反応……は?』
私ことオルガマリーと現地のフジマルは同じものを見て絶句した。ある意味、特異点の空に浮かぶ光輪を発見した時と同じくらい、とは流石に言い過ぎかもしれないが。
フジマルに当たる所だった敵の拳を、妙に絢爛な装飾が施されたお盆、いや鏡で受け止めた彼女。
整った顔立ちで、恐らく年はフジマルと同じくらいだろう。薄茶の髪を頭の後ろにて青いリボンでまとめ、纏う衣装も青い和服でとにかく目立つ。加えてケモミミしっぽと更に属性が盛られており、コスプレ以外の何物でもなかった。
「コスプレとは失礼な。
「やっぱり夢幻召喚なんですか!? 成功するとこうなるんですか!?」
「むしろ服装が変わらないあなたの方が、っておっと」
飛んできた敵の蹴りを再び鏡で受けとめ、お返しとばかりに回し蹴りを叩きこむ少女。更にカードのようなものを三枚前方に展開した。恐らくあれは東洋の呪符だ。呪術を駆使するということは彼女の使用するカードはキャスターなのだろう。その割にはインファイト味が強すぎる気もするが。
「我が、道を、行いを、邪魔する、か……!」
「英霊、なんか黒いけどやっぱりサーヴァント、クラスはバーサーカーかな。言動が不明瞭だし」
「ラァァァアアア!!」
「ふっ!」
謎の少女と相対する敵。金の鎧のあちこちを黒く染め、雄叫びを上げながら飛び掛かる姿はまさしく獣のようで、狂戦士の名に相応しい迫力を秘めていた。それでも少女は冷静に、攻撃をさばいていく。そうして一歩引き、敵がその一歩を詰めた瞬間に、周囲に冷気と熱気が同時に走った。
「氷天よ砕け、炎天よ走れ!」
「この、程度、この、程度、で!」
先ほど配置した呪符が発動し、敵の足首を氷が捉え、その隙を狙って全身を覆う程の火柱が立つ。ただの人間であれば即死級のコンボだが、その狂気の前には足止めが精々のようだった。それを行った少女の顔にも余裕はないが、まだ眼には光が灯ったままだ。まだ策は尽きていないと言わんばかりにフジマルに目を向けた。
「ほら君も立って。二人で倒した方が早い」
「あ、あぁ。俺は藤丸立花。キミは?」
「フランシスコ……ザビ……!」
「え?」
「違った。訂正。リトライする」
「――岸波白野。よろしく」
『……いや、流石にキメ顔されても無理よ』
こうしてカルデアが次に介入した第二特異点セプテムにおいて、私たちはカルデア外のマスターに遭遇した。
不思議な雰囲気を纏う少女との出会いは、まさしく私たちにとってのターニングポイントだったのだと、後に私はそう思うことになる。
☆
「よくぞ無事だった、奏者よ!」
「ありがとうネロ。そっちも無事で何よりだよ」
「むふん、余が負ける訳なかろう! だからこそ心配したぞ、急に駆け出していくから何事かと」
「ごめんごめん、視界に入っちゃったから、ちょっとね」
謎の和服キャスター・ハクノに連れられて到着したのは首都ローマ、その宮殿たる王の間の一室だった。緊張したままのフジマルを置き去りに、ハクノと金髪の美少女が仲睦まじく歓談を始めてしまった。一応は謁見という形なのかフジマルは固まってしまって役に立たない。単に観光地に来て舞い上がってる顔にも見えるが、ここは私が口を挟むべきだろう。
『ご機嫌麗しゅう皇帝陛下。少しお話よろしいでしょうか?』
「むっ!? 突如空中に透明美女が!? なかなか悪くないが何者だ!」
『失礼。私たちは――』
少し興奮度が上がった皇帝に道中ハクノにもした最低限の事情説明をする。
人理継続保障機関カルデア。七つの特異点による人理焼却を覆す為のレイシフト。戦力にクラスカードを装備したマスター。特異点の原因たる聖杯、それにより特異点で発生している歪み。カルデアの目的は特異点の始点である聖杯、爆発事故によって流出したマスター及びクラスカードの回収。特異点の歪みの1つ、クラスカードがひとりでに霊脈、聖杯と繋がってしまったことによる黒化英霊の暴走が、敵である連合ローマ帝国の正体だと予想していること。
異境のマスターであり理解度の深いハクノにも伝達を手伝って貰い、この特異点に起こっている問題、すなわち皇帝の戦いに助力したいと申し出た。
「ふむ、よく分からなかった点もあるが大まかには了解した。ならばいいだろう! 我が奏者が認めたのであれば少なくとも悪人とはなるまい。余、ネロ・クラウディウスの名においてそなたらの剣、借り受けるとしよう!」
交渉はうまくいった。この後腕っぷしを確かめると言って戦闘が始まったりもしたが、第二特異点攻略の滑り出しは順調だと、少なくとも私はそう思った。
☆
ローマ皇帝ネロの軍勢と共に敵に占拠された都市ガリアへと進撃していく。ゲリラのような戦い方が多かったオルレアンの時と比べると余裕があった。何より、カルデアと関わりのない漂流者であるマスター、ハクノの存在が特に大きかった。フジマルにとって同じマスターであり、学べる点が多くあったからだ。なぜカードを持っているかなど、不明な点は多かったが。
「私にもよく分からない。聖杯戦争で勝ち残って、それで気が付いたら様々な世界を漂流してた」
『聖杯戦争ですって!? あなた一体どこの人間なの!?』
「私はそもそも
「聖杯戦争って、確か七人の魔術師が聖杯を求めて戦うアレだよね?」
「七人? 私の時は百二十八人だったけど」
『ホントに戦争じゃない……。よっぽどの田舎でも秘匿できないわよ』
「いや、月でやったから大丈夫だった」
「月面でやったのか!?」
もはやカルチャーショックの域に到達していた。それだけ彼女の生きてきた世界はエクストラであり、本来であれば交わるはずのなかった世界出身のようだ。一定間隔で更なる別の世界へと漂流しているの為に、様々な経験を積んだことで肝の据わり方が段違いになったとのこと。
「いつの間にか私のサーヴァントとも別れちゃって、気付けばこのカードが手元にね」
「このカードは、カルデアから流出したモノではないんですね?」
『はい。このカードは私が制作したものではありません。形式だけを真似た別物、と評するべきでしょう』
『アンジェリカが言うのなら間違いなさそうね。しかし、見て分かるくらい違うの?』
『はい。使用されている術式がエインズワースとはまるで違います。それに出力も大幅に上げられていて、Aチームへ配布したものに並ぶランクのカードですね』
そういって私の横で画面を眺めているのは、カルデアの技術顧問の一人であるアンジェリカだ。
年はあまり変わらないはずなのだが私より背丈が大きく、長い金髪をツインテールにしている。めったに表情筋を使わないというハクノ以上に人形のようなルックスにネロ陛下も目を輝かせていたが、当人としては仕事以外に興味はないようだった。というよりオルレアンの時は工房から出てこなかったのに……。
「アンジェリカさん、後で眼鏡かけてもらえませんか?」
『? 私の視力が低下したわけでもないのに何故ですか?』
何故かハクノもアンジェリカに反応していたが、突き返されてしょんぼりとなっていた。
閑話休題。
そんなアンジェリカも認めるほど、ハクノのマスターとしての実力は凄まじいものだった。ただ火力や速度を持っているというわけではなく、力の使いどころを押さえている。状況判断力とそれを可能にするだけの眼を持っているのだろう。そういった飛び道具に頼らない、工夫に秀でた戦い方はフジマルにとっても参考になる。
『いい機会よフジマル。ハクノから盗めるだけ盗んできなさい。あなたにはないモノばかりなんだから』
「もちろんです。ところで所長、今回はうるさく言わないんですね」
『何ようるさくって……。そうね、前回は戦力が一人しかいないのにあちこちに首をツッコんでいたからよ。これだけ味方がいるのなら今回は多少の無茶は大丈夫だろうし』
「そうだ立花、前の特異点の話も聞かせて。どうしてマスターになったのかも気になるから」
「…………」
『そろそろ次の町に着くわ。警戒を』
一瞬顔を曇らせたフジマルが前を向きなおす。ハクノもきょとんとして口を開きかけたが、私の声で周囲の警戒を始めた。
フジマルの懸念材料、不安の火種はまだ燻ったままだ。けど再点火することがないに越したことはない。特異点Xで負った傷。出来ればその傷を忘れるまでずっとこのままであればいいが、そうはならないと、そんな予感が消えなかった。
☆
「助けに行きましょう、今ならまだ間にあうはずです!」
ガリア攻略後の拠点にて勝利を分かち合ったり今後の相談をしている最中、慌てて飛び込んできた兵士が告げたのは、敵勢力の奇襲により後方の軍が打撃を受け、近くの砦にて籠城戦を始めたとの情報だった。何より厄介だったのは、そこの砦にはクラスカードを持ったマスターもそこにいるという点だった。敵の狙いはそのクラスカードの奪取だろう。
「ごめん、クラスカードは一枚あるだけで戦況が大きく変わる。君たちのカードとは知らずに配置した私のミスだ」
「そんなことない。むしろ俺たちが来るまでに黒化英霊を倒してくれてたんだ、非難することなんてない」
「そうだぞ奏者よ、そもそも全てを率いているのは余だ。ならば余にも責任はある。だから顔を上げよ、な?」
珍しくあのハクノが気を落としている。私たちカルデアが来るまで、発生していた黒化英霊に対処できていたのはハクノただ一人。クラスカードに関する知識、というより予想によって運営できた彼女の判断によって適正を持つ者、おそらく救出したカルデアのはぐれマスターにとある都市を守らせていたとのことだ。戦火がそこまで広がることはないと思っていただけに、ショックが大きいのだと語った。
「黒い英霊を倒した時に助けたんだけど、意識があるだけで戦える状態じゃなかった。あのカードを奪われるのはちょっとまずいから急いだ方がいいとは思う。けど」
その一言をきっかけに、フジマルの目の色がうっすらと変わった。
『落ち着きなさいフジマル、なにか嫌な予感がするわ』
「うん、ガリアを攻略したことで敵も私たちの戦力を把握したはず。このタイミングでまだ襲撃を続けているのなら、何か狙いがあるはず」
「でも、助けに行かないわけには……!」
「よかろう、では本拠地へこのまま攻め込む我々と、後方の砦へと救出する別働隊に別れよう。それで問題あるまい?」
『分担が目的だったらどうするの? 敵勢力がどれだけ残っているかは不明だけど』
「だとしても叩き潰す! 奏者、フジマル、頼めるか!」
「もちろんだよ、ネロ。任せておいて」
「了解です、絶対に助けます」
「うむ、吉報を待つ。一気呵成に倒してみせよ!」
うなずきあうハクノとネロ皇帝陛下。フジマルも拳を握りこんでそれに応えた。迅速な行動が求められる作戦だが、ハクノがいれば十分可能だろう。
だが再び感じた悪い予感。フジマルの目の色がどうにも私の胸をざわつかせるのだ。だからこそ、私は彼女に言伝を頼むことにした。
☆
『少しいい、ハクノ? 頼みたいことがあるの』
「フジマルの上司、みたいな人だっけ。 構わないけど何?」
作戦前夜。見張りで一人になった時を狙って声をかける。正確には念の為にと渡した予備の通信礼装越しだが。
非戦闘時のハクノはポケットの多く付いた上着を纏った姿であり、足を大きく露出することで動きやすさを重視した冒険家のようだった。
『フジマルのことよ。明日の作戦中、無茶しないように気にかけていてほしいの。実際に手が出せるのはきっとあなただけだから』
「……分かった、引き受けるよ。確かに彼、なんだか危なっかしいし」
『そう、助かるわ』
快諾してくれたことに胸をなでおろす。なんだかこれだけのことを頼むのに随分と精神力を使ったような気がして、ため息すら出そうだった。
「その代わりに理由を聞いていい? どうして彼をそんなに気にかけるのか」
『……なによ、私は人理永続保障機関カルデアの所長よ? たった一人しかいないマスターがつぶれちゃ困るの。何ならあなたがカルデアに来てくれてもいいくらい。フジマルのサポートとして重宝するわ』
「悪かったよ、ついね」
何が悪いと思ったのか、片手で謝ってくるハクノ。何だか先ほどより顔がにやけていたのでつい口調が強くなってしまったが、嘘は言っていない。それに危なっかしいという評価は同感だった。
「というより、一人しかいないマスターがそもそも新鮮かも。クラスカードを使うマスターは皆そうなんだけど、サーヴァントがいないって意味で。まぁサーヴァントがいなくなっちゃうと死んじゃう世界だったからかもしれないけど」
『やっぱり、あなたの世界にはサーヴァントが存在するのね。羨ましいことだわ』
「え、それってどういうこと?」
首をかしげるハクノと違って、私は頭が痛くなってくるのを感じた。
違う世界の聖杯戦争参加者であり、そんな彼女から日中にサーヴァントという単語が出てきた時は少なからず動揺したものだ。加えていえば、このことについて話がしたかったからというのもこの機会を設けた理由の1つだった。もしかすれば、一人にかかっている負担を少しでも減らせるかもしれないという希望にかけて。
『私たちカルデアもクラスカードから発展させて、英霊をサーヴァントとして召喚しようとしたのよ。でも、届かなかった。だからあなたの世界の英霊召喚を聞かせてほしいの。守護英霊召喚システム・フェイトを完成させる為に』
サーヴァント召喚が全くないプリヤ時空ともまた違う感じです。