夢幻召喚で戦うカルデアの話   作:棚木 千波

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~Attention~

・オリ設定乱立なので何でも大丈夫な人向け
・FGOシナリオ既読前提です。プリヤ、EXTRAの設定も多いですが、そちらは未読でも大丈夫ですが、無論読んでいただいた方が理解しやすいです。



#16 デブリーフィング、そして紋章構想

 

【side:オルガマリー】

 

「人形!? アンジェリカさんが?!」

 

「言葉の通りです。私のこの身体はフジマルのような生身ではありません」

 

 何でもないように言い放つアンジェリカ。フジマルも狼狽えてはいるが、どこか腑に落ちたような表情もしていた。あの姿を見た時から、薄々そんな気はしていたのだろう。

 

 

 

 

 時はオルレアンから帰還して二日後。フジマルが休息がてら完成させた報告書を片手にデブリーフィングが始まった。特異点での出来事の詳細を所々注釈を頼みつつ補完しているうちに、その話題になったのだった。

 

「あの時のアンジェリカさんは結局どういうことなんですか? ヒビが入るなんて何をされたんですか?」

 

「あれは攻撃を受けただけでなく、器が限界を迎えただけです」

 

「だけじゃないですよそれ。つまり死にそうになってたってことですよね」

 

「……いいわ、アンジェリカ。ある程度説明してあげてちょうだい」

 

 話が逸れそうだったので、いっそいい機会だと思いアンジェリカに説明を促した。私の言葉の意図を察したのか、フジマルの方を向いて口を開いた。

 

「フジマル、エインズワースのことはどの程度知っていますか?」

 

「エインズワース? えっと、アンジェリカさんの実家ってことくらいしか」

 

「はい。私が属する魔術師の家系であり、置換魔術の行使を得意とします。置換魔術については?」

 

「すみません、分かんないです」

 

「本当に素人ねアナタ……」

 

置換魔術(フラッシュ・エア)とは言葉の通り、モノとモノを置き換える魔術です。下位の基礎魔術ではありますが、それのみに特化したエインズワースのこれはかなりの自由度を誇ります」

 

 アンジェリカが右の掌を上に向けると、そこにコップが落ちてきた。驚いているフジマルの席のの前に痕跡があることから、彼女が空間を一部置換してみせたのだと分かった。

 

「いちいち動く必要なくてめっちゃ便利ですね!」

 

「エインズワースの置換魔術が可能にするのはそんなレベルじゃないのよ。そうよね?」

 

「条件さえ整っていれば形のない概念上のモノであっても置換が可能です。私はそのエインズワースの置換魔術で人格の概念置換を施された、人形です」

 

「人形!? アンジェリカさんが!?」

 

「言葉の通りです。私のこの身体はフジマルのような生身ではありません」

 

 それが真実だと、こちらをみたフジマルに肯定の意を添えて頷いた。魔術の世界においては何が起こっても不思議ではない。ならとっとと受け入れて対策の一つでも立てたほうが効率的だ。

 

「けど、別に不死身ってわけでもないんですよね?」

 

「もちろんです。器に予備がないわけではありませんが、人格の概念置換は不可能ではないだけで十分難度が高いのでおいそれとは出来ません。特異点で器が壊れてしまえばそのまま朽ちるでしょう」

 

「つまりあの時死にそうになってたってことじゃないですか!」

 

「正確には内側の魔術回路を使いすぎて耐久度が下がった結果です。それを含めても私の不徳の致すところではありますが」

 

「アンジェリカは果たすべき役目を果たしただけよ。それに死にかけだったのはアナタもでしょう?」

 

「いやまぁそれはそうなんだけど」

 

 このブリーフィングまで日が空いたのもそのせいだ。芥ヒナコを医務室で寝かした後にコイツもぶっ倒れたのだ。折角特異点を修復したのに肝を冷やさせないで欲しい。

 

「アンジェリカが私たちとは違うから何だって言うのよ。それでアナタは態度を変えるような奴じゃないでしょ?」

 

「そういうことじゃなくて……! オレたちがもっと早く来ていれば、そんなことにはならなかったんじゃないかって」

 

「フジマル、たらればの話をしても無意味です。私たちはあの状況でも最善を尽くしていた。その事実はまっすぐに受け止めるべきです」

 

「……はい」

 

 納得していないというよりは悔しさを滲ませるフジマル。今回の特異点でもやはり思うところは多いのだろう。というかデブリーフィングなんだからそれを言いなさいよ。

 

「いや、確かに強くならなきゃいけないけど、それは努力を積み重ねるしかないってことは分かってるんで。それはそれとして悔しいものは悔しいなって」

 

「傍から見れば十分早い方よ。多少の個人差はあるでしょうけど、使いこなせるまでのペースはBチームでもここまではいなかったわ。一度だけとはいえ霊基再臨も為したのでしょう?」

 

「みたいなんですけど、あんまり実感がないんですよね」

 

「それはいけませんフジマル。霊基再臨は今後戦う上で必ず必要になります。成功したときの感覚は忘れるべきではない」

 

 このことに関してはアンジェリカが一番驚いていた。夢幻召喚を一段階上に押し上げる霊基再臨を果たしているのはAチームの面子だけだったので、成長次第によっては彼らに並ぶ可能性が出てきたのだ。現在の筆頭戦力としてはこれを逃す手はない。

 

「そう、ですよねー……。うん、何とかします」

 

「頼むわよ。今後のレイシフトでも当分はアナタ頼りなんだから」

 

「それって、やっぱり芥先輩はまだ……」

 

「お察しの通り、まだ意識が戻らないわ」

 

 謎の魔力に取り込まれていた芥ヒナコは、それの除去に成功しても消耗が激しかった。特異点から帰還してすぐに医務室、そして治療室へと担ぎ込まれた。結果的に特異点で保護した他のマスターと同程度の重症であると診断されたのだ。更に経緯が経緯であるために全快するまでにどれだけかかるかは未知数だった。

 

「場合によっては凍結保存も視野にいれるしかないでしょうね。物資の問題もあるし、こればっかりはどうしようもない」

 

「……芥先輩を襲ったアレは一体何なんですか。所長は心当たりがあるって言ってましたよね」

 

「私自身あまり信じてない、いや信じられないんだけどね。魔術王と言われたらアレしか浮かばないもの」

 

 アンジェリカも然りと首を縦に振る。そういった知識に疎いフジマルだけがピンときていないようなので、確認がてら説明を始めた。

 

「魔術王と謳われた人物が過去一人存在するのよ。それが古代イスラエルの王、ソロモンよ」

 

「ソロモンの秘宝とか言われてる人?」

 

「それは最近の創作物としての話ね。この場合は旧約聖書の登場人物で、魔術の祖と言われた人物。そんな彼が使役したのが七十二柱の魔神なのよ。もしそいつが本当にソロモンに関連する何かなら、あの柱はその魔神に関連する何かになる」

 

 もちろんこれは情報が抜けた現段階での推察であり確証はない。そもそもソロモンがこの時代まで生きているわけがないし、その力を行使出来る術があるとも私には思えなかった。

 

「レフ・ライノールやマシュの後ろに何があるのかは不明ですが、何かしら手を打ってくるとみて間違いない。我々が既に三つの特異点を修復した事実はあちらも認識しているでしょうから」

 

「今後も妨害はあるでしょうね。というかあの間桐シンジもその一環よね」

 

「彼と芥ヒナコの言葉から、マシュが召喚するサーヴァントも障害として立ちはだかってくると考えるべきです。やはり戦力の増強は必須かと」

 

 結局課題がそこに落ち着くのであれば、私としても対策を講じなければならない。その為にいくつか考えていたアイディアを形にする時がきたようだ。

 

「さて、こんなものでしょう。フジマルは次のレイシフトまで休息を取りつつ、訓練として出来る限り霊基再臨をこなしなさい。アンジェリカは依頼があるから残るように。ほら、解散!」

 

 集中力の限界が来たのか、フジマルが船を漕ぎそうに見えたので頃合いだとデブリーフィングを打ち切った。指針は決まったし、これ以上は話さなくても大丈夫だろう。

 

「…………霊基再臨、か」

 

 退出時にぽつりと漏れた誰かの言葉に、私は気づかなかった。

 

 

 

 

【side:オルガマリー】

 

 そうして次の特異点への準備が整うまで、しばしの日数が流れた。

 その間に、フジマルはいくつかのカードの霊基再臨を成し遂げていた。本来であれば一人につき一枚のカードしか与えられていないはずなので、その時点でマスターとしての実力は申し分ない域に達していることになる。成長速度が恐ろしいことになっているような気もするが、実力が増していることに変わりはないのでむしろ歓迎する事態だろう。

 

「アンジェリカさん、これが新しい礼装ですか?」

 

「私はコマンドコードと呼んでいます。このようにクラスカードと併用することを想定して制作しました」

 

 日課のトレーニング中に、アンジェリカが開発された新礼装をフジマルに手渡していた。ガラスフィルムのようなそれを、フジマルは透かすように眺めていた。

 

「普段着用している制服にも魔術礼装が備わっていることは知っていますね?」

 

「応急手当、瞬間強化、緊急回避の三つがついたアレですね。応急手当は戦いが終わった後に使うこともあるけど、他はあんまりだなあ」

 

 ここでいう制服とは無論カルデアのマスター全員に支給しているあの白い礼装のことだ。全員に配るものであるため性能は控え目であり、一端の魔術師であれば自前でどうにかなるものばかりだ。なので実は一番有効活用している部類かもしれない。

 

「夢幻召喚してからは? 今までは戦闘中に使おうと思うこともないのではないでしょうか」

 

「確かにそのカードの力だけでどうにかしようとしてる気がする……。あと口調がなんかテレビショッピングみたいです」

 

「実は戦闘服といった他の魔術礼装にも同様の機能があるのですが、あまり有用ではないと判断しました。その改善を兼ねて開発したのがこのコマンドカードです」

 

「ということはこのコマンドカードがあれば、もしかして?」

 

「はい。カードにつき一種類ではありますが、夢幻召喚中にも使える魔術或いは特殊効果の付与が可能です」

 

 試しにとアンジェリカが二枚のカードを取り出した。そのどちらもクラスが黒く塗りつぶされており、どの英霊とも繋がらなかった失敗作だと分かる。しかし片方には紅い剣のようなコマンドカードが重ねられていた。

 

「これは単に瞬間強化をコマンドカード化したモノです。そのまま使えば――この通り」

 

 両手で限定展開した二本の全く同じ剣同士をぶつけると、一方がもう一方を容易くへし折った。折られた方はそのまま一枚の割れたカードへと戻り、無事だったもう一振りの剣にコマンドカードの効力があったことを証明していた。

 

「他にもガンドや全体回復などの種類を用意していますが、コマンドカードによる利点はもう一つあります。コマンドカードによる魔術効果は、クラスカードのスキルによる上乗せが発生する点です」

 

「それって、例えば魔力Aのクラスカードであれば瞬間強化の倍率も上がるってこと?」

 

「理解が早いですね。言葉選びはともかく、そのように効果が上昇するのは間違いありません。ある程度の組み合わせは考えていますが、実際に使うフジマルが最終的にコマンドカードを選んでください」

 

「デッキ作りみたいでちょっとわくわくする……!」

 

 何が琴線に触れたのかは分からないが、幾つか渡されたコマンドカードに目を輝かせていた。そんな調子に呆れつつも、私も声をかけることにした。

 

「フジマル、私からも渡すものがあるの。これよ」

 

「あれ、所長も? というかいつから見てたんですか?!」

 

 アンジェリカが入室してから少し後に私も来たのだが、アンジェリカの話を遮るほどでもないと待っていたのだ。というか別にアンジェリカに託してもよかったのだが、これは彼女が得意とするカード関連ではなくカルデア技術班の品なので私が預かったのだった。いやなんでよ、担当者が渡しに行きなさいよ。

 

「腕輪ですよね、コレ」

 

「私としては確認が容易であれば何でもよかったのだけど、結果的にこのデザインになったそうよ」

 

 フジマルに渡したのは黒い金属製の腕輪だ。その表面をぐるりと回るガラスの窓から、ライトグリーンの光が幾つか灯っていて、見ようによっては不気味にも思える腕輪だった。

 

「フジマル。アナタはレイシフト適性はともかく、魔術の素養は大したことないわ。よって魔力量もお世辞にも多いとは言えない。そのせいでどうしても長期戦または連戦がキツい、そんな問題を解決するためのアイテムがこれよ」

 

「やっぱり今日はなんかテレビショッピングの空気だ!」

 

「これまでは活性アンプルとかを使わせようとしてたんだけど、それに加えてバングルも使わせることにしたわ。ちょっと付けてみなさい」

 

「えーっとこうかなって痛っ!? なんかチクっとした!?」

 

「オーケー、それでちょっと宝具を使ってみて。多分うまくいくから」

 

「そこはかとなく不安を感じるんだけど……。ええい夢幻召喚、『約束されざる守護の車輪(チャリオット・オブ・ブティカ)』!」

 

 半分やけっぱちで宝具を発動するフジマル。彼を中心として魔力の球が形を為し、その中にいる者たちに力を与える宝具。初めて味わう感覚に内心感心していると、その違いに気づいたフジマルが驚きを露わにした。

 

「もっていかれる魔力が、少なくなってる!?」

 

「つまりは魔力の肩代わりね。急激な魔力消費に反応してそのバングルに入ったマナプリズムが優先的に代用される仕組みになってるの。ある程度はこれで対応出来るはずよ」

 

「凄い、こんなの作れるんですね!」

 

「技術班の連中に感謝するのね。前から構想していた礼装ではあるけど、この短時間で形にしたのは彼らの尽力あってこそなんだから」

 

 実際はかなり無理なスケジュールをさせたのだが些細なことだ。このバングル一つでカルデアの、ひいては世界の運命が左右されるかもしれないと考えれば、やむなしと言えるだろう。

 

「そのライトグリーンのゲージが装填されている残りのマナプリズムを示しているから、確認を怠らないこと。攻撃宝具であれば最大で三発は撃てる計算ね。装着者の魔力が減っているとみなされれば自動で魔力補充が始まる機能もあるから、覚えておきなさい」

 

「すごい便利だ! ……いやもしかして、デメリットがあったり?」

 

「……常に魔術回路に干渉してるから、あまり身体にいいとは言えないわね。まぁきっと大丈夫よ、多分」

 

「言葉を濁さないで! 安全保障はしっかりして!」

 

「うるわいわね、じゃあ次の特異点でそれを装着すること、それを所長命令とします。いいわね?」

 

「上からの押さえつけだ!」

 

 ぎゃあぎゃあと叫ぶが本気で嫌がってはいないと見て、用事は済んだとばかりに背を向けた。カルデアの所長として、いつまでもサボってはいられない。装備面も整ってきたし、あと数日で次の特異点へのレイシフトの準備が整う。それまでに片づけなければならない仕事も幾つかあるからだ。

 

「でもきっと、不測の事態は起きるんでしょうね……」

 

 例えば異境のマスターと出会ったり、Aチームと再会したり。次の舞台である霧の都ロンドンでは何が起こるのか、心の準備くらいはしておくべきなのかもしれない。

 

 

 

 

【side:???】

 

「一気に装備が増えたなぁ。少し重い、いやそんなこともないか」

 

「大丈夫ですかフジマル。何か改善点があれば聞きますが」

 

「いえ、そもそもコマンドカードは軽いから元々邪魔にはなってないです。あ、けどちょっと聞きたいことがあって……」

 

「何でしょうか?」

 

「アンジェリカさんは――――戦うことを、どう思っていますか?」

 




原作とは違う所その1でした。
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