・オリ設定乱立なので何でも大丈夫な人向け
・FGOシナリオ既読前提です。プリヤ、EXTRA、アポクリファの設定もあります。そちらは未読でも大丈夫ですが、無論読んでいただいた方が理解しやすいです。
【side:オルガマリー】
それはどこか、私にむず痒さを与える光景だった。
フジマルが戦うのはいい。それは彼に私が与えた役目であり、必定だ。
アンジェリカが力を振るうのもいい。カードの製作者が使えないというのもおかしな話だから。
「来たぞ! 隙を作ってくれ、フジマル!」
「わかった!」
出会って間もないにも関わらず、三人での連携が形になり始めていた。正確に言うのならフジマルとアンジェリカが上手くカウレスに合わせられるようになっていた。オケアノスを経て追加されたトレーニングが実を結んでいるようで何よりではある。あるのだが――
「甲冑が硬くて銃弾が弾かれてる!」
「偶にいるなそういう奴。じゃあトドメまで俺がやるからもう少し任せる!」
銃が効かないと見てすぐにフジマルがカードを切り替える。盾を呼び出してから敵とアンジェリカの間に割り込んで前衛を交代した。即座にアンジェリカも『メドゥーサ』から『織田信長』へと転身して、接近戦をするフジマルの為に援護射撃を開始した。
「アンジェリカさん、よくフジマルには当たらないように射撃できるな……」
『よく見なさい。当たりそうな弾は置換魔術で避けてるのよ。アンジェリカだから出来る芸当ね』
より正確に言うと、フジマルに当たりそうになったらその弾道を敵に当たるように置換していた。2人ともそれを理解しているから被弾を気にせずに戦っているというわけだ。
「よし、もう十分だ。――行くぞ!」
新手の接近に気づいた敵がそれを防ごうと魔力弾を放つが、アンジェリカの方が先手を取っていた。
「行ってください、カウレス!」
「助かる!」
アンジェリカの銃弾で逸れた魔力弾を躱し、カウレスが己の射程圏内に敵を収めることに成功した。いくらカードから具現化した強力な存在と言えど三対一ではかなり分が悪いようで、そのことを理解したかのように苦難の声を上げ始めた。
「■■■ーーーっ!!」
「悪いな、これで終わりだ――!」
フジマルが鍔迫り合いから強引に弾いて体勢を崩し、そこにメイスを振り上げたカウレスが急接近する。
銃弾や斬撃では弾かれる甲冑であっても、彼のメイスであればそのインパクトをもって敵を戦闘不能に出来るだろう。
「■■■ッ!?」
咄嗟に受け身を取ろうとした敵の身体を、衝撃と共に電撃が貫いた。これがカウレスの持つカードのもう一つの特性であり、ずっと充電していたのもこの為だった。その二つの乗算ダメージにより、今度こそ敵が崩れ落ちるのを確認した。
『お疲れ様、大したものね』
「ホントホント、色んな英雄がやっぱりいるんだなぁ。敵が硬くても攻撃が通るのはいいかも」
「絶賛するのは結構だけど、そう簡単なもんじゃないからな? 使い始めは色んな意味で痺れがあったんだし」
軽口を叩きながら排出して、元の姿に戻っていく三人。そのうち一人は厳密には違うのだが、それ以上に目につくのはその服装だ。
カルデア制服と似た白い装束。違いとしては金の装飾が施されている点だろうか。それはあたかも貴族のようであり、事実としてある一族の制服として用意されたものだった。
カウレス・フォルヴェッジ・ユグドミレニア。
私の知る彼とは異なる道を歩んだのだとしても、こうしてまた舞台に上がっている様を見るとどこか思うところがないでもない。
『……周囲に反応はないわね。このまま進みなさい』
三人に指示を出しながら、先ほどの情報交換をふと思い出す。これまでの特異点でも様々な出会いがあったが、今回もまた一筋縄ではいかない邂逅だった。
☆
「結論から言うとだな、多分俺たちはマスターだったからここにいるんだと思う。カードを核にして受肉した上で、マスターの意思が宿った存在。それが俺と姉さんだ」
カウレスの案内でやってきたセーフハウスで腰を落ち着けて少し。私たちは早速情報共有を開始したのだが、いきなりの爆弾発言で早速頭を抱える羽目になった。
『マスターだったって……。まさかあなたも聖杯戦争に参加していたの!?』
「やっぱりカウレスも白野みたいに月の聖杯戦争に?」
「月の……? いや、俺たちが参加したのは聖杯大戦だ。14騎のサーヴァントが二チームに分かれて戦う聖杯戦争。けどオルガマリーさんが知らないってことは――」
『えぇ、はっきりしたわ。あなたと私は違う世界のお互いを知っているだけのようね……。少なくとも私は聖杯大戦なんて知らないもの。あと今14騎って言った? 聞き間違いじゃないわよね?』
月の聖杯戦争も大概だが、聖杯大戦とやらもなかなか規格外の話だった。しかし今はその顛末よりも、その渦中の一人だったこのカウレスの方が問題だ。
「俺はその時バーサーカーのマスターだったんだ。そして今、俺の核にはアイツのカードがあるのを感じてる。俺がここにいる因果はそれとしか思えなくてな」
「かつてのマスターが、クラスカードを介して顕現した……?」
『そんな話が――いえ、こうして特異点にいるのだから、どうやっての方を考えましょう』
最早特異点では何が起こっても不思議ではない。ならばいちいち驚くよりも思考の方にリソースを割くことにした。けどそれよりも先に思い当たったのはアンジェリカだった。
「もしや英霊の座……? いえ、そんなことが」
「アンジェリカさん、何か心当たりが?」
「確証はありませんが……。クラスカードもサーヴァントも、共に英霊の座からその力を引き出していることは変わりません。しかしサーヴァントは英霊本人の意思があり、各々が認識し記憶する力がある。そうですね、カウレス」
「あぁ、その通りのはずだ」
この辺りの情報は岸波白野から得た情報でもある。月と聖杯大戦とでシステムに違いがないかを確認していき、段々と推測を進めていく。
「勝敗がどうであれ、サーヴァントは退去時にその活動記録を座に持ち帰ると聞きます。次の召喚の時にその記録が
『かつてのマスターの情報から記憶と人格が再現されうるってわけ? ……何とか筋は通っているけど、どうなのこれは』
いっそ驚きよりも感心してしまう所業だ。こんなことはクラスカードを触媒にして英霊召喚を行うことよりも複雑怪奇かつ困難であるはずで、そもそもそこまでしてかつてのマスターの人格を呼び起こす理由も不可解だ。むしろ一種のエラーのようにも思えてくる。
『いえ、むしろ事故とそう考える方が自然かもしれないわね。オケアノスでも事故が発生していたようだし』
「子ギルもそんなこと言ってたんだっけ。つまり今回の特異点にもマシュがいたりして……」
「これ以上推測に推測を重ねるのは危険でしょう。物証が見つかるとも限りません。ひとまずカウレスの話に戻るべきかと」
「いいよ、もしろ俺も情報を整理出来てよかった。どうして呼ばれたのかは、おいおい探っていくさ」
ひらひらと手を振って返すカウレスも、どういう経緯を経たのかはあまり気にしていないように見えた。きっとマスターとサーヴァントの関係ありきならこういうこともあると受け止めているのだろう。だからどうやってよりも、何故の方を知りたがったのだ。
「それで、ロンドンに現れた後は何があったの?」
「あの黒い奴、黒化英霊に襲撃されたんだ。状況が読み込めてない俺たちの不意をつくようにな」
『それは何故? 襲われるような何かをしたのか、或いは何かを奪われたのか、襲撃自体が目的だったのか。見当はついているの?』
「悪いが、それもまだ不明だ。元々意思疎通が出来るような奴らじゃないし、俺たちも必死だったからな」
奇襲を受けながらも自らの力を瞬時に理解し、応戦した辺りは流石魔術師と言える。或いはマスターとしての経験が活きたのかもしれないが、それでも善戦までもっていくには足りなかったらしい。
「その時に俺が避け切れなかった攻撃を姉さんが庇って……気づいたら、あの力に飲み込まれちまったんだ。俺が庇われてどうすんだよ、くそ」
「…………」
その時のことを思い出したのか、小さく悪態をつくカウレス。その姿に思う所があったのか、フジマルも言葉を返さなかった。空気が気まずくなりかけた所で、アンジェリカが先を促す。
「姉君は何の力に飲み込まれたのですか? あのカード、相当強力なアサシンのようでしたが」
「……そうだな、話を戻そう。言った通り情報抹消のせいで厄介だが、真名は判明してる。そもそも遭遇するのも初めてじゃないしな」
「まさか聖杯大戦で?」
「ご名答だ。アイツの真名は『ジャック・ザ・リッパー』。まさかまた戦うことになるとは思わなかったけどな」
『切り裂きジャック、ね。まさしくこのロンドンの舞台に相応しい相手じゃない』
その名を聞けばピンと来る者も少なくないだろう。かつてロンドンで起きた未解決殺人事件の犯人であり、未だその正体は明かされていない謎の存在。そのくせして世界的な知名度を誇っており、フジマルですら反応を示したほどだ。
「あのカードに乗っ取られた後はどこかに行っちまった。後を追っている限り、何か目的があるようには思えない。俺と同じように、他の黒化英霊から魔力を吸い上げようとしているみたいだな」
「同じようにとは、まさかあなたも活動に魔力を必要としているのですか?」
「そういや言ってなかったな。カードを核に受肉したっていってもやっぱり存在としては不安定みたいで、魔力切れはそのまま消滅を意味する。俺はバーサーカーのスキルである程度融通が効くんだが、姉さんはそうもいかないからな。そういう意味でも早いところ何とかしないといけないんだ」
『……いいわ、これであなたの事情はおおよそ把握出来た。今度はこちらの事情を話すことにしましょう』
彼の現状や目的がある程度把握できた所で、攻守交代を宣言した。
この説明ももう何度目かこなしているので、話すたびにどんなリアクションが見られるかを楽しむ余裕すら今回はあった。いやあっていいわけないじゃないと最終的にお互い頭を抱える羽目になっていたけども。
「なるほど人理の危機……。アンタらはアンタらで大変なことになってたんだな。だからこそ俺たちみたいなイレギュラーがここにいるとも言えるのかもしれないけど」
「もう遭遇すること全てがイレギュラーだから、逆にそれが予定調和みたいに思ってたよ何なら」
「器が大きい発言ですね……」
『いや思考放棄と同義じゃないのそれ』
それでも私たちは三つの特異点を解決してきたのだ。今回も何が起こるか見当もつかないが、こうして巡り合うことも出来たのだ。まずは一歩目として、話を切り出した。
『カウレス・フォルヴェッジ。あなたは召喚されただけで、私たちの事件には巻き込まれただけなのかもしれない。けれど私たちの為にどうかその力を振るってほしい。頼めるかしら?』
「…………そうだな、確かに俺にはあまりアンタたちの戦いに参加する理由はない。結局俺は再現されただけの存在で、大元の俺たちがどうかなるわけではないんだろうな」
目を閉じ、考えこむようにカウレスが告げる。白野はネロを助ける為に、間桐シンジもまた己の為に剣を取っていた。彼らはサーヴァントではなく元マスターだ。そこには私たちの世界を救う義務や必要は生じない。もしここで見捨てたとしても、何ら不都合はないのだ。
「言っちゃ悪いが、どちらかと言えば家族を、姉さんの方を優先したい。だから、俺としては同盟を希望するよ。俺もアンタたちと一緒に戦う。だからアンタたちも俺の目的に付き合ってほしい」
そういって、彼は頭を下げた。同盟と言っておきながら、早速どちらが立場が上か分からなくなるような態度。交渉としてはあまり褒められたものではなかった。
「全然大丈夫! 俺は元々お姉さんを助けるのに協力するつもりだったし」
『……まぁ、あなたならそう言うでしょうね』
けど今回が相手が相手だ。あのフジマルがこの状況でこの姉弟のことを放っておくはずがない。その上でカウレスも力を貸してくれるのなら、及第点と言えるだろう。
「私としても今回の事象は興味深いので、行動を共にすることに異論はありません」
「……はは、ならよろしく」
ようやく少し安心したのか、小さく笑みを浮かべたカウレス。聖杯大戦なんてものを経験したとしても、姉以外に知り合いのいないこのロンドンでようやく一息つけたのかもしれない。そういう意味でも、この出会いは価値があるように思えた。
「正直オルガマリーさんの組織って聞いたから、割と身構えてたんだ」
「ちょっと、どういう意味よそれ!?」
☆
「着いたぞ、この辺りだ」
「これは、見事に瓦礫の山ですね」
カウレスに連れられ進んだ先は、かつての姿を想起させることも難しいレベルで崩壊した何かの跡地だった。それだけ聞くと徒労に終わりそうな光景だが、目的はその下にあった。
『あの大英博物館がこの有様とは、残念ね』
「所長は来た事あるんでしたっけ」
『そうよ。入り口としても使うこともあったし、博物館としてもまぁそれなりに思うところはあるけど、今はいいでしょう。ほら、さっさと階段を探しなさい』
「はーい」
魔術協会、時計塔。それはロンドンを中心とした学術都市であり、その本拠地がここ大英博物館の地下に存在していた。上の建物は何者かに破壊されてしまったようだが、その地下は依然として侵入が可能なのだとか。そんな場所に来ることになったのは、やはりカウレスが発端だった。
「こんな所で召喚されたというのも不思議な話ですね。近くに行った術師がいるということでしょうか」
「ならむしろソイツをとっ捕まえればいい話だから楽でいいんだけど、あの時は近くに誰かいる気配はなかったんだ。けど、何か痕跡くらいは残ってるかもしれないだろ?」
「ひとまずそれに期待して……お、あった!」
それぞれが夢幻召喚して瓦礫をどかしていくと、フジマルがその入り口を発見した。無論その中でも高い魔力反応が点在しており、何かしらのエネミーがいることは明らかだ。そのこともあって探索を諦めていたカウレスが、頭数が増した今ならばと提案したのだ。
『ロンドンの地下、まさかアルビオン程ではないでしょうけど、十分に警戒なさい。閉鎖空間であることも考慮して戦闘すること、いいわね?』
「了解です」
地下というよりは何があるか分からない魔術協会の本拠地に入るため、あらかじめ伝えられるだけの注意事項を告げた。アンジェリカは大丈夫だとは思うが、フジマルはどうしても無茶するような気がしたのでそこは念入りに。
「ちゃんと上司してるんだな、オルガマリーさん。ちょっと先生を思い出したよ」
『やめて、私とあの二世とならロードとしても上に立つ者としても全然違、……違うわよ』
「今一瞬間があったような」
『さぁ早く行きなさいフジマル。地上もまたいつ黒化英霊が出てくるか分からないでしょうほら早く』
勘のいいフジマルの言葉を誤魔化すように先を促す。かつて出会ったあの二世の苦労面を、今の私がしていないかと問われたら微妙に否定出来ないような気がしたのを隠す為では断じてない。
「危険なのは本当のことでしょう。二人とも、改めて警戒を」
最後にアンジェリカの言葉で気を引き締めなおしてから、三人は地下への階段を降りて行った。
☆
――あら、お客さんが来たのかしら?
魔術協会の地下、その一室。来訪者の足音に、その■■は浮き足たつような声を上げた。
英霊の座について言及してる作品どこ……?