・オリ設定乱立なので何でも大丈夫な人向け
・FGOシナリオ既読前提です。プリヤ、EXTRA、アポクリファの設定も出てきます。そちらは未読でも大丈夫ですが、無論読んでいただいた方が理解しやすいです。
・もしかして、毎回Attentionは必要ない?
#F1 はじまりの記憶
【side:フジマル】
「――、―輩」
不意にかけられた声によって目が覚める。聞き慣れないはずの声だけど、自分に向けられたものだと思ってそちらに顔を向けた。
「うん……?」
「よかった、気が付いたんですね」
「えっと、誰?」
「え。ええと、その」
自分を起こしてくれた淡いピンク髪の少女と目があう。言い淀んでしまった少女がそらした目線につられて周囲を見渡して、ここが廊下のど真ん中なことに気づいた。慌てて立ち上がって少女と目線を合わせると、少女が申し訳なさそうに言葉を続けた。
「すみません、私もあまり自己紹介に慣れていないので答えづらいというか……。いえ、それよりも先輩のことです。ここで倒れていたようですが、もしや体調でも悪いのですか?」
「いや、調子は悪くないよ。なんで倒れてたかは覚えてないけど」
「どこか頭を打ったのではないですか? 医務室に行かれた方がよろしいのではないかと――」
「ううん、大丈夫! 身体の感覚はちゃんとしてるし、記憶と意識がはっきりしてないだけだから!」
「なるほど、やはり医務室に行きましょう。もしかするとアルコールが検出されるかもしれません」
「まだ未成年だし飲んでないから!」
不安にさせまいと正直に言ったのが裏目に出てしまった。少女が身を案じてくれるのは有り難いが、実際何ともないのだからそれは
「ここにいたのかマシュ。おや、君は……」
レフ・ライノールと名乗った男とも話すうちに、ここがカルデアという機関の施設であることや、目の前の少女がマシュという名であることを知った。もうすぐ始まる新人向けの説明会が始まる中、ここで自分が倒れているのを見つけたらしい。
「ふむ、記憶に混乱があると。一般人からのスカウトだと慣れないことが多いからかもしれないね。何か覚えていることは?」
「うーん、日本で献血したら勧誘を受けて、そのままここに連れてこられたことくらいしか。その後は……えっと……?」
「カルデアに来てからここで倒れるまでの記憶はないということか。であるなら疑うべきは召喚テストの負担だが……すまない、もう説明会まで時間がないんだ。話はその後にしよう。この廊下を真っすぐいけば管制室に……マシュ?」
「レフ教授、この人を管制室まで案内してもよろしいですか? 目を離すべきではないと私の中の何かが告げています」
「マシュがそこまで言うとは珍しい。……まぁ、どちらにせよ所長に目を付けられるなら、急ぐとしようか」
「所長……?」
気になる所は多いが、まもなく集合時間らしい。マシュとレフ教授の2人に連れられて管制室へと向かうことになったが、途中からまた意識がおぼつかなくなってきた。二人がいなければまた倒れていたかもしれない。
「……………………レフ?」
「しまったな、もう始まっているようだ。私は少し話をしてくるよ」
「先輩はこちらです。席は……最前列ですね。……先輩?」
ふらついたりはしなかったが、目や耳から入る情報がはっきりしない。マシュに飲酒を疑われていたが、酩酊感とはこんな感じなのかなと未成年なりに推測してみる。加えて言うなら授業中に意識が飛ぶか飛ばないかの瀬戸際辺りの感覚にも近かった。
「時間通りとはいきませんでしたが、全員揃ったようですね。わたしは――」
そんな感じのままにマシュに促された所に立つと、それを確認したようにすぐさまミーティング、もとい説明会が始まった。どうやら自分の所為で開始が遅れたようで悪い気がしたので精々真面目に話を聞こうと集中力をかき集めるが、あまり長くは続かなった。
「なん、と、か、起き……………………」
「――あなた、最前列で堂々と居眠りとはいい度胸してるわね?」
「………………ふぁい?」
意識が僅かに引き戻される。いつの間にか席についていた自分の前に誰かが立っている。それが誰かを確認する前に、バチンという音と共に頬に衝撃が走った。
「立ったまま寝てるとかわたしの見間違いとも思ったけど、そうじゃなかったのが残念でならないわ」
急に目の前の少女に焦点が合う。長い銀髪の少女が平手打ちをした後の姿勢のまま、瑠璃色の冷ややかな目でこちらを見下していた。
「もしかして、所長?」
「よかった、最初の方はまだ起きてたのね。……いやつまり私が話をしてる間に寝たってことじゃない。そんなに退屈だったならいいわ、もう一度だけ言ってあげる。――君含めて、新人のあなた達は人類史を守る為の道具にすぎません。つまり、わたしの指示は絶対ということよ」
そう強く宣言する所長に再び周囲から不満の声が上がる。反論は受け付けないとばかりに一喝して宥めるその姿が、不思議と強がっているように見えた。
「まったく、余計な手間をかけさせてくれるわね……。それで、君は一体どこの所属よ……ちょっと、ID見せて」
不機嫌なままにこちらに近づいて何かを確認すると、その顔がみるみる赤くなっていく。
「実戦経験も仮想訓練もなしってなによこれ、ただの一般人じゃない!」
「そう言われても、誘拐されて記憶も曖昧だし……」
「わたしのカルデアでそんな勧誘方法が行われてるわけないでしょ!? もういい、ちょっとこっち来なさい!」
返答がお気に召さなかったのか、手首を掴まれてずるずると引っ張られていく。唖然とするマシュらの視線を背に受けながら、管制室の入り口前に連れてこられてしまった。
「ただの素人を投入して何かあったらたまったもんじゃないの。せめて最低限の訓練を済ませてから来なさい!」
「いや、ちょ――」
返事をするよりも早くドアが閉まり、廊下に締め出されてしまったことを少し遅れて理解した。どうやら、思ったより所長に嫌われてしまっているらしい。
「……どうしよう」
未だに状況が飲み込めておらず、見かねたマシュが様子を見に来てくれるまで途方に暮れることしか出来なかった。
☆
「ここがマイルームか」
案内してくれたマシュと分かれて入室したのは、誰もいない広めの個室だ。机やベッド、簡単なシャワールームもあって生活するにはまず困らない作りだ。それらを見渡しつつ、ひとまずベッドに腰を下ろして息を吐いた。
「特異点にレイシフト、だったっけ」
ようやく回るようになった頭で先ほど聞いた単語を口にしてみる。詳しいことはよくわからないが、世界の危機をどうにかするべく自分も集められたらしい。まさか気紛れで参加した献血からこんなことになるとは思わなかったが、所長の話を信じるなら帰ることもままならない。
「いやいや、何を不安に思ってるんだ。カルデアの人たちもいっぱいいるんだから、自分にも出来ることがきっとあるはずだ」
知人もさっき会った二人、いや三人だけで心細さはあった。魔術とか聞きなれない単語もあってますますここが自分の知る世界とはまるで違うことも思い知らされた。だけど話が通じないわけじゃない。それだけでひとまず頑張ろうと思えるくらいには活力が戻ってきていた。
「……よし、もう一度行くか」
あの時は聞きそびれたけど過去を変えていいのかとか、実質拉致されたようなものだったんだとかの聞きたいことや言いたいことも浮かんできた。休憩も十分に取ったしこれ以上じっとしている理由もなかったので再び管制室に行こうと立ち上がる。
「確か……こっちだ」
例の特異点へのレイシフトが始まる前に所長かマシュに話をしにいこうと、カルデアの廊下を迷いなく突き進んでいく。何となく、その足取りは急かされたように速かった。
☆
「よし、全員コフィンに入ったわね。ってあなた!?」
戻ってきた管制室の中は先ほどとは雰囲気が一変していた。新人たちのどこかうわついた空気が完全に払拭され、スタッフの誰もがピリッとした緊張感の中で各々の作業に追われていた。そんな中に飛び込むのは少し気が引けたけど、自分だけ何もしないというのは何だか嫌だった。
「マシュも、皆も、機械の中に入ってる……?」
「これはコフィンって言って、レイシフトの為に人間を霊子化する装置――いやそんなことより何しに来たのよ。このファーストオーダーにあなたの席はもうないけど?」
「…………」
「当たり前でしょ? 何も知らない素人をわたしのカルデアスに関わらせるわけにはいかないの。用無しだと分かったらさっさとマイルームで待機してなさい」
「……所長はレイシフトしないんですか?」
「っ……私はこの組織の頂点、司令官なのよ。最前線になんて出るわけないじゃない。馬鹿な事聞いてる暇があったら早く戻って。私も今から着替えるんだから」
「それって皆が着てるスーツみたいなアレ? レイシフトしないのに?」
「失礼ね! この作戦の為に特注した礼装があるのよ! ここであなたに構ってなければもっと前に着替える余裕があったの! もう、レフ! とっととこの不躾者をたたき出して!」
先ほどまで纏っていた緊張感をだいぶかなぐり捨てて叫ぶ所長と話していると、どうも自分と相性はよくないのかもしれないなと思ってしまう。気分を損ねる気はなかったのだが……。
「レフ? いないの? さっきまでここに――」
頼りの相手を探して天球から離れる所長。或いはまた説明会の時のように自分で管制室から追い出そうとしたのか。その僅かな数歩が大きな歪みとなることを知らないままに。
灼熱が、突如として管制室を包み込んだ。
☆
「う……いっつ……」
後頭部や背中のジンジンとした痛みが意識を呼び戻す。耳も目もどこか熱を感じていて状況が分からない。自分の身体も不思議と重くて動かしづらかった。
「一体何、が………………」
仰向けの体勢のまま首を動かして自分に身体を確認しようと目を向ける。結果として確認することは叶わなかったが。
「う……ん……」
自分の身体を隠すように覆い被さっているのは、銀髪の少女だった。長くて麗しい髪もぼさぼさになっていて一つ、いや二つ見間違えれば毛虫的な何かに見えたかもしれないが、流石に先ほどまで話していた人物を間違えたりはしない。
「所長……?」
「……あなた、あの憎たらしい新人、ってちょっと!?」
「へぶっ!」
いきなり所長が飛び起きた反動で床に叩きつけられ、更なるダメージが後頭部を襲った。所長も状況が読み込めずに尻もちをついたまま後退したと思ったら、そのままキッと睨みを利かせて声を上げた。
「なっ、なっ、何を……って痛っ」
「! 所長、管制室が……」
顔を赤くしたまま声を上げようとして、何かの痛みで中断せざるを得なかった所長。それも気になるが、それ以上の光景が所長の後ろに広がっていた。
赤と黒。ついさっきまで青と白で近未来的な印象を与えていた管制室が崩壊していた。壁や天井から崩れ落ちた瓦礫があちこちに転がっており、炎すら上がっていた。
「何なんだこれ……。事故? 爆発でもあったのか……?」
「うそ、カルデアスが……!」
あまりの惨事に思考がまた追いつかない。所長も混乱のただ中にいるようで、二人してただ変わり果てた管制室をただ見つめ続けていた。だけど、それも長くは続かない。
「! げほっげほっ、息が、そうか火が!」
煙を吸いすぎたことによる咳き込みでどうにかパニックから脱却する。しかし座り込んだ所長は未だ目の焦点を合わせられないまま、呆然とうわ言を呟いていた。
「所長、しっかり!」
「所、長? わたし、いや、レフ、誰か――」
肩を掴んで揺することでどうにか落ち着くように誘導する。効果があるかとかは分からなかったけど、それ以外にやることも分からなかった。
「新人? ……まだ、カルデアスは、そこにあるわよね?」
「そこに浮かんでる奴なら黒くなってるけど割れたりはしてない! だから!」
「そう、よね。なら消える前に……!」
どうにか正気に戻った所長の目に光が戻る。だけど立ち上がろうとした矢先にまた顔をしかめてその動きを止めてしまった。
「……背中をやられたみたい。いや、これだけで済んでるのなら幸運ね。いいわ新人、今から地下の発電所に向かうわよ。カルデアスの火を絶やすわけにはいかないわ」
「わ、分かっ――」
痛みに耐えながら立ち上がった所長を支えようとして回り込んだ際に、それが視界に入ってしまった。
「マシュ!?」
慌てて駆け寄った先にいた眼鏡の少女。瓦礫の隙間に倒れ込む彼女を見つけて、伸ばした手が一瞬止まってしまう。炎とも違う朱の液体が腹部に刺さる破片によって漏れ出ていて、またも絶句するしかなかった。
「もう動けないのね、マシュ」
「……すみ、ません、所長」
「……行くわよ、新人。マシュに出来ることはもうないわ」
「っ! でも……!」
「いいん、です。先輩、はや、く」
途切れ途切れの言葉の合間に微かな笑みを織り交ぜてマシュは言った。まさしく残った力を振り絞るような、健気とも呼べるような最後の取り組み。だからこそ余計に、離れることが出来なかった。
「何してるの、いつまでもここにはいられないわ! 私たちが動かないと!」
「せめて、ここから出してあげないと……!」
「ああもう、いいわよ、好きにしなさい!」
痺れを切らした所長がふらふらとした足取りで管制室を後にする。その後ろ姿に胸が締め付けられるような感覚を覚えるが、どうにか振り切ってマシュの近くにしゃがみ込む。
「どう、して」
「だって、こんなところに一人でなんて、自分だったら嫌だから」
「わた、しよりも、所長を、手伝えば」
「あの人は自分で立ち上がったよ。支えてあげた方がいい気もするけど、その時になったらきっと何とかしてくれる人だと思う」
背後の入り口は既に炎によって塞がれ、退路はない。マシュに刺さった破片も自分の力では抜くことは出来なかった。ここまで来ると笑うしかないが、それを今の彼女に見せるべきではないことは明白だった。何も出来なかったなりに、せめて彼女の不安が減るような何かを、
「手を、握ってもらっても、いいですか? せん、ぱい」
不甲斐ない先輩に先んじて答えを出してくれた彼女の手を掴む。例え一瞬でも、このぬくもりだけはせめて彼女の為になったと信じて――
《全行程
☆
意識は続く。世界が変わる。気づけば、崩れ落ちた別の世界の真ん中に立っていた。
「は? なんだ、ここ。日本……?」
炎も瓦礫もあの管制室と似ているが、こっちは一部屋ではなく一つの街がそうなっていた。破片に混じる日本語の看板がどうにかここを自分の故郷に近い何かだと告げていた。
「マシュ、どこかにいるのか!? 所長!?」
不意に誰かいないのかと周囲を見渡す。だけどそれらしい影はどこにもなく、代わりに別の影が応えるように動きを始めた。
「…………」
「え、骨が、歩いて」
人間の肉が削がれた者、すなわちガイコツが数体こちらにゆっくりと近づいてきていた。声に釣られたのかは分からないが、その手に握られた武器を見ると足がすくんでしまいそうになる。
「やばいやばい、逃げないと!」
太腿に拳を振り下ろしてどうにか震える足を動かす。幸い追いかけてくるスピードは大したことないが、それでも追ってくるというだけで恐怖心が刺激されて仕方がない。涙すらうっすら浮かびそうなまま瓦礫の街を駆け抜ける。
「! 他にもいたのか……!」
走った先にまた別の骸骨たちが待ち構えていた。乱れた息を整えて逃げ道を探す内に最初の骸骨たちに追いつかれ、挟まれる形になってしまう。今度こそは逃がさないと言わんばかりに、じわじわとその円を狭めてきていた。
「石でも投げて、どうにかするしか」
何も分からないまま襲われてたまるかと、足元の手ごろな石を掴もうとした矢先。
それは、飛来した。
「――先輩!」
目の前の骸骨一体をひしゃげさせる巨大な盾の一撃と共に、見覚えのある少女がそこにいた。服装も変わっているけど、これまた見間違えるはずがない。
「マシュ!? どうして――」
「後ろです先輩!」
急に現れたマシュに気を取られた自分の背を突かんとする一体の骸骨。どうにか振り返ってソイツと目があうが、驚くよりも先に自分の手にあった感触が身体を動かしていた。
「う、うおおお!」
いつの間にか右手に握られていた剣を横に薙ぐ事で、骸骨のあばらと脊椎のもろともを両断する。防御を捨てた姿勢ではどうにもならなかったということだろう。
「その調子です、先輩!」
「助かったよマシュ、このまま残りも倒そう!」
急に活気づいた自分たちに残った骸骨たちが慄いたように見えたのが好都合だ。動揺しているうちに一気に叩くしかない!
「敵はスケルトン、ですが数が少なく脅威度も低いです。落ち着いていけば撃破は可能かと!」
「うん、段々と分かってきた。これなら戦える!」
骸骨の振りは速いとは言えず狙いもまちまちだ。その辺りは自分も実はどっこいどっこいな気もするが、マシュと一緒になら苦戦はほぼあり得なかった。
「せいっ、これで!」
「――――状況終了。お見事です、先輩」
「……ふぅ、何とかなったー」
最後の一体を仕留めてからようやく息を吐く。まだ余力のあるマシュが周囲を警戒してくれているようだが、ひとまず脅威は排除出来たようだった。
「…………いやいや、なんでゲームみたいに戦えたんだ自分!? このカードか!?」
戦いが終わったことで我に返って、自分が今何をしたのかを再確認する。確かに戦えることに憧れる時期はあったけど、ここまでの動きなんて出来るはずがない。そう思って自分の手を見るとさっきまで剣だったもの、今は一枚のカードがそこにあった。
「それがカードの力ですから。でも先輩も訓練の時に使ったはずじゃあ……あ」
「うん、その辺りは覚えてないというか……。だからマシュと合流出来たから何とかなった感じ。ホントにありがとう」
「……本当に、そうみたいですね。こほん、それで移動は出来ますか? またいつ襲われるとも知れませんし、安全な所を見つけて何とかカルデアと連絡を――」
『――誰か、聞こえる!? 応答しなさい!』
突如として声だけが周囲に響き、咄嗟に左右を見渡す。対照的に落ち着いた様子でマシュが何やらごそごそすると、空中に見覚えのある人物のホログラムが出現した。
「はいこちらAチーム、マシュ・キリエライトです」
『え、マシュ?! ……どうしてかは分からないけどレイシフトしてたのね。コフィンなしでの稼働記録で事故だと思ってたけど、やっぱり特異点に……。それにその姿は……』
何がなんだかといった様子で現れたのは、あの時別れた所長の姿だった。あの後無事だったということが分かって密かに胸をなでおろすが、そんな自分と所長の反応をひとまず置くようにマシュが報告を開始した。
「所長、私は先輩とここで二人ですが、周囲に誰かいますか?」
『今のところ反応はないわ。むしろ私の方があなた達に探して欲しいくらいよ。コフィンのマスターの殆どが消失だなんて……。ああもう、レフもスタッフもいないし、なんで私がこんな……!』
「やっぱりあの爆発事故の所為でみんな……」
『ええそうよ、何とかあなた達を観測するだけの人数は管制室に集めたけど、カルデアの機能の大部分は死んだまま。……ってあなたもレイシフトしてたの!?』
通信越しに所長が自分を見て頭を抱えていた。マシュがここにいるんだから管制室に残った自分もいるかもしれないとは思わなかったらしい。
「マシュと一緒に閉じ込められて、気づいたらここにいまして」
『……本当に逃げなかったのね、あなた。それでレイシフトして合流したってわけ? よりにもよって無事なのがあなた達だなんて、調子狂うわねホント』
「ちょっと、扱いが酷くないですか!?」
『うるさいわね、わたしは初対面のくせに目の前で居眠りしたあなたのこと忘れてないんだから。本来ならこうして作戦に関わらせることすらないんだから、これは本当に非常事態だと思いなさい』
仕方ないとばかりに言う所長にブーイングを入れるが、説明会の宣言通り聞き入れる気はないらしい。ただしあの時より遥かに疲れた目をしていたので、これ以上の文句は言わないでおいた。
『現在カルデアは十分なメンバーが揃っていない。だけど特異点が人類史を脅かし続けている以上、私たちの使命は変わらないわ。よって暫定で、あなたたち二人に特異点の調査を命じます。いいわね? マシュ、それにえっと……』
「所長、この人は……」
言い淀んだ所長を見てそういえばまだ名乗ってなかったのかと今更気が付いた。ならばこれでしっかり覚えてもらおうと、マシュを止めて自分の名前を口にする。
何となく、言おうとして詰まったような気がしたのは気のせいだろう。
「
Fシリーズ第一話。Fはもちろんアレの頭言葉ですよ、アレ。うんアレ。