・オリ設定乱立なので何でも大丈夫な人向け
・FGOシナリオ既読前提です。プリヤ、EXTRA、アポクリファの設定も出てきます。そちらは未読でも大丈夫ですが、無論読んでいただいた方が理解しやすいです。
・このAttentionは章の始まりだけにするかも。
【side:オルガマリー】
──夢をみた。
一人のマスターがカードの力を使って窮地を乗り越えていく、そんな夢だった。
「う、うおおお!」
彼女がいるのは燃え盛る街と瓦礫の海の真ん中だ。全ての始まりである特異点F、忘れもしない冬木市の光景が、私の前でリバイバルされていく。
そこに立つのは見知ったカルデア制服を着た、見知らぬオレンジ髪の少女。黄色い瞳を精一杯見開き、剣一本でがむしゃらに足掻いていた。
「その調子です、先輩!」
「ありがとうマシュ、これなら私でも何とか出来そう!」
後ろから聞こえた声に一瞬固まるが、逆にオレンジ髪の少女は安心した様子で返事を返した。
声の主は盾を両手で構える少女、マシュ・キリエライト。いつの間にかやってきていた彼女と並び立って、オレンジ髪の少女が目の前の脅威と相対する。
「敵はスケルトン、ですが数も少なく脅威度も低いです。落ち着いていけば撃破は可能かと!」
「うん、私にも段々と分かってきた。素人だけど、戦える!」
傍から見ても彼女の戦いぶりはヒヤヒヤさせられるものだった。周囲への注意も散漫で、踏み込む間合いもまちまち。剣を握る手にも震えが残っているのが極めつけだ。戦いに慣れているとは到底言えず、マシュのフォローがなければ勝率は五分五分だろう。
「せいっ、これで!」
「────状況終了。お見事です、先輩」
「……ふぅ、何とかなったー」
それでも彼女たちは敵を倒すことに成功していた。最後の一体を仕留めて乱れた息を整えながら、オレンジ髪の処女が額の汗を拭う。同時にパキンと音がして剣がカードに戻ったそれを見つめながら、信じられないとばかりに呟いた。
「……すごい、このカード。本当にマンガみたいに身体が動いちゃった」
「それがカードの力ですから。でも先輩も訓練の時に使ったはずじゃあ……あ」
「そう、その辺も記憶が曖昧っていうか。なのでさっきのが初めてだったんだ。ホント、マシュと合流出来てよかったよ」
「……本当に、そうみたいですね。こほん、それで移動は出来ますか? またいつ襲われるとも知れませんし、安全な所を見つけて何とかカルデアと連絡を──」
『──誰か、聞こえる!? 応答しなさい!』
突如として声だけが彼女らの周囲に響き、オレンジ髪の少女が忙しく左右を見渡す。対照的に落ち着いた様子でマシュが礼装を起動し、簡易的な映像ホログラムが空中に出現した。
「はいこちらAチーム、マシュ・キリエライトです」
『え、マシュ?! ……よかった、何とか無事にレイシフトしてたのね。コフィンなしでの稼働記録で事故だと思ってたけど、やっぱり特異点に……』
妙に余裕のない様子だが、聞き覚えのある声だ。というかあまりに身近過ぎて違和感があっただけだと遅れて気づく。録音したものだと余計にそう感じるとは話に聞くが、こんな状況下で自分がそうなるとは思わなかった。
「所長、私は先輩とここで二人ですが、周囲に誰かいますか?」
『今のところ反応はないわ。むしろ私の方があなた達に探して欲しいくらいよ。コフィンのマスターの殆どが消失だなんて……。ああもう、レフもスタッフもいないし、なんで私がこんな……!』
「やっぱりあの爆発事故の所為でみんな……」
『ええそうよ、何とかあなた達を観測するだけの人数は管制室に集めたけど、カルデアの機能の大部分は死んだまま。……ってアナタもレイシフトしてたの!?』
通信越しにカルデアの所長、つまり私がオレンジ髪の少女を見て頭を抱えていた。ものすごく身に覚えがあるというか私も過去に全く同じリアクションをした気がする。
「マシュと一緒に閉じ込められて、気づいたらここにいまして」
『……逃げなかったのね、アナタ。それでレイシフトして合流したってわけ? よりにもよってアナタだなんて、調子狂うわねホント』
「ちょっと、扱いが酷くないですか!?」
『うるさいわね、私は初対面のくせに目の前で居眠りしたアナタのこと忘れてないんだから。本来なら作戦に関わらせることすらないの。これは本当に非常事態だと思いなさい』
これに関してはどこの世界の私でも変わらないらしい。因みに私もまだ忘れてない。
『現在カルデアは十分なメンバーが揃っていない。だけど特異点が人類史を脅かし続けている以上、私たちの使命は変わらないわ。よって暫定で、アナタたち二人に特異点の調査を命じます。いいわね? マシュ、それにえっと……』
「所長、この人は……」
はっきり言って好きじゃない人種、しかも補欠で採用した一般人の名前なんて覚えていなかったのも同じなのだろう。だから言葉に詰まった私を見かねたマシュを制止して、彼女はその名前を告げる。
「
☆
そうして始まった聖杯探索、その旅路の出来事が目の前を流れていく。
「先輩、ワイバーンの襲撃です!」
僅かな木々が点在する草原で、警戒を促す盾の少女の声と共に急な突風が肌を撫でる。突如飛来したワイバーンによる襲撃だが、彼女らはそれを前にしても動じることなく対応を始めていた。
「話の途中なのにホント数が多いなー!」
「ほら、さっさと構えなさい!」
「分かってますよ所長。じゃあちゃっちゃとやっちゃおう、
立ち上がってカードを抜いたのは、あのオレンジ髪の少女。ぱっちりと開かれた黄色い目に多少の気負いはあれど、確かな勝算と希望を感じさせる立ち振る舞いになっている。残る二人を率いるようにカードを使用し、その姿を変えた。
「ドラゴンスレイヤーってね」
「なんで東洋のサムライがそんな……いやもう慣れたけど」
「ワイバーンも広く解釈すれば燕のカテゴリーということでしょうか」
「うんうん、そういうことだよマシュ」
「なに変なこと教え込んでいるのよ……。行くわよ!」
紺色の陣羽織に刀を携えて少女が飛び出す。続いて盾の少女が突撃し、残った一人もカードを用いて手にした杖を振るい攻撃を開始した。
「燕返しっ!」
「残りワイバーン、二体です!」
「これでも、食らいなさい!」
多くいたワイバーンも三人にかかれば敵ではないようで、既にその殆どが地に墜ちていた。切り伏せられ、或いは叩き落とされ、そして最後の二体がアイアンメイデンによって串刺しとなる。杖を持ったマスターの攻撃だろう。
「掃討完了。お疲れさまです先輩、所長」
「ふー。そういうマシュもね。所長も最後、グッジョブです!」
「ホント気安いわねアナタ……。けど、当然でしょう?」
戦いはそう長くはかからなかった。各々が為すべきことを為し、互いの長所を引き出している。そんな感心すら覚えさせる完成度を誇るチームであり、これならどんな苦難でも乗り越えていけるだろうと、そう思わせるだけの光景を私は眺めていた。
「行くよ、夢幻召喚!」
「注意してください、先輩!」
「気を抜くんじゃないわよ、リツカ!」
「なんで私だけなの!?」
苦境に立たされることもあった。疲弊して口数が減った時も少なくなかった。
だけど人類の未来を背負っているとは思えないほどに、彼女らの表情は終始明るかった。苦しい戦いや現地協力者との辛い別れを経てもなお、笑みを忘れることはなかった。
(やっぱり同じなのね、あいつと)
私の知らないカルデアの中心にいるオレンジ髪の少女に感じた既視感。同じ名前を冠する故か、或いは人を惹きつける何かがあるからフジマルリツカ、いや『カルデアのマスター』なのか。性別や多少の言動の違いはあれど、私の知るフジマルに何度も重なって見えた。
そうやって登場人物に意識が向いていた所為か、特異点での戦いがどういうものだったかの記憶は曖昧になっていった。カルデアの所長、司令官としては間違っているのだろうけど、それは他人事ではなかった故だ。
(どうして私がそこにいるのよ。そこは、その場所は)
彼女たちに所長と呼ばれるその世界の私はどういうわけか管制室ではなく、戦う『藤丸立花』とマシュの横に立っていた。当初の私が立つはずだったポジション、すなわちマスターとして特異点にレイシフトしていたのだ。
(あり得ない。私にはレイシフト適性がない。そんなに違うっていうの? あの私とこの私は)
鏡で見る顔よりも血色がよくて、時折怒ったり呆れたりしてもどこか満たされているように見えてしまって、そんな様が酷く私の心を逆撫でする。
そんな彼らの旅路の終着は、突然訪れた。
第七特異点を修復した直後、判明した■■特異点。そこで対峙する■■■と、『藤丸立花』たち三人のマスター。最後の戦いは壮絶を極め、持てる全てを出しつくす死闘となり果てた。人理を焼却するほどの強大な敵との対決がそうなるのは、ある種当然の帰結と言えた。
「…………」
「なんで、どうして」
「…………そっか、ここまでか」
その戦いの果てに一人の少女が膝をつく。■■■は既に消滅し、勝敗は決している。何も失わずに勝てる戦いでは既になく、その代償となったのがその少女だっただけの話。
そうして人理は修復され、人類の未来は取り戻された。
それが戦いの終わりであり、この短いようで長い夢のおわり。
──『カルデアのマスター』と呼ばれる少女の終わりと、英霊としての始まりだった。
お久しぶりです。断章の再開です!
蛇足なのですが、以前別サイト様で投稿していたものとは異なる展開となっています。本編として扱うのはこちらの新しい方なので、旧verも気になる方はそちらもどうぞ。