夢幻召喚で戦うカルデアの話   作:棚木 千波

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ぼちぼち投稿。


#30 再会、或いは再開

 

【side:フジマル】

 

「……あれ、ここは」

 

 意識が浮上するにつれて自分がどうなっているかの理解が鮮明になる。

 右半身全体で地面の熱を感じている。見える景色も横向きで、自分が倒れているという結論に遅れて辿り着く。

 また寝てしまったのだろうかと思いながら、腕に力を入れて体を起こすことにした。

 

「ここが今回の特異点? 今までとは空気が全然違うような……」

 

 今まで倒れていた大地は明るめの茶色で、頭上に広がる空も例の光輪以外はただの晴天で違和感はない。

 けれど肌で感じるのは過去の特異点とは質の異なる何か。ロンドンの霧と違ってはっきりと分からない分、自然と警戒度は上がっていった。

 

「あ、やっと起きた」

 

「え?」

 

 そんな中、急にやや甲高い声が聞こえて咄嗟に後ろを振り返る。そこには白いフードを被った謎の人物が立っていた。

 

「なかなか目覚めなかったから心配してたんだ。大丈夫? 立てる?」

 

「あ、ありがとう。いやそうじゃなくて!」

 

 差し出された手を掴んで立ち上がってから、その人物を正面から捉え直す。

 自分より少し低いくらいの身長だが、体のシルエットや声から性別が特定できない。そんな得体のしれない存在なのに、いまいち警戒心を抱かせない振る舞いをする誰か。

 けれど自分はそんな人物を一人知っている。随分と前のような気がするけど、決して忘れることのない記憶の中の人。その名は――

 

「もしかして冬木で会ったキャスター? あのキャスターなの!?」

 

「うん、久しぶりだね」

 

 フードの奥で小さく微笑む姿は確かに以前冬木で出会い、そしてバーサーカーの乱入で別れたあのキャスターだった。相変わらずフードで顔は見えないけどそれが分かって、聞きたかったことがワッと吹き出てきた。

 

「あの後結局来てくれなかったけど、無事だったんだ?! いやでもここにいるってことは、えっと、というかなんでここに?」

 

「あー混乱してるよね、そりゃそうだ。けどどこから話せばいいかなぁ」

 

 思考が渋滞し始めた自分を見て考えるように口元に指を当てるキャスター。

 言葉として出てきたのがそれだけで聞きたいことはまだまだある。けども最初にするべきことをどうにか思い出した。

 

「まぁ色々言いたいことはあるけども。本当に、あの時のキャスターなんだよね?」

 

「やっぱりフードは外せないけど、そうだよ。あの時と同じで信じてもらうしかないんだけど」

 

「そうか……。ならまた会えて良かったし、あの時はありがとう」

 

 ずっと気がかりだったのは、バーサーカーとの戦いでキャスターは結局どうなってしまったかだった。どんな決着を迎えたのかはまだ分からないが、その危機を乗り越えたから今会えたのだと思って安堵した。そして言えずにいた謝意を伝えることにした。

 

「……まさか最初にお礼を言われるとは。てっきりなんであの後来なかったんだって責められるかと思ってた」

 

「それは、うん。どうにか出来なかった自分が悪いと思うしね。いてくれたら何か変わったかもしれないけど、キャスターだって大変だっただろうから」

 

 キャスターと別れてからの出来事が脳裏にフラッシュバックしそうになるのを何とか堪えつつ、気にしないでくれと笑みを作る。

 かなり前にそう結論付けたのだから今更その責任を転嫁したりはしないし、したくもないという気持ちも本物だったからだ。

 

「なんか、あの時から色々変わったね」

 

「そりゃあ色々あったから。もう特異点も五つ目、いや冬木を含めると六つ目だし」

 

 訓練中に向かった微小特異点まで含めると結構な数になるし、改めて振り返ると随分と遠くまで来た気がする。

 その上でキャスターと出会った頃と比べるなら、多少は変わって見えなきゃ成長してないってことになりそうだ。キャスターの反応的にそんなことはなさそうで少し安心した。

 

「いや、その左目と前髪だよ。単に染めたってわけじゃないんだよね?」

 

「あーそっちかー」

 

「それに右手も……。いや、言いにくいのなら無理に話さなくてもいいけど」

 

 違った。外見の話だったらしい。

 確かにあの時から変異してしまった左目と前髪は隠してないし、右手も黒手袋を付けて誤魔化しているだけで良く見れば今みたいに気づかれてしまうだろう。その上、事情を話すのもちょっと難しい。ここはキャスターの言葉に甘えておくことにした。

 

「えーとじゃあ、なんでキャスターがこんな所に? というかどうやって?」

 

 露骨な話題転換だったけど、察してくれたキャスターもそれに乗って経緯を話し出す。とはいってもキャスターの方もどう話したものかと首を捻りながらではあったけど。

 

「えっと先に行っておくと、私も生身の人間じゃなくてカードを核にして顕現した存在だと思う。だから正確にはあの冬木で会ったのとはちょっと違う、みたいな?」

 

「カウレスやフィオレたちと同じで、かつて契約したマスターとして顕現したってことか。じゃあそのフードもカードの英霊に依るものってことなんだ」

 

「その人たちは知らないけど多分そう。私としてもなんで呼ばれたのかはよく分かってないんだけどね。けどこうして直近の記憶はあるし、その辺りが関係しているのかも」

 

 冬木で見た姿のままなのはそういうことらしい。あの時使っていた英霊のカードによって再会出来たということになるんだけど、細かい原理や理由は本人にも曖昧なのもあの二人と同じだった。フードで正体を隠した英霊ってなんだよという問いもまた継続されていたけども。

 

「それでこの特異点を彷徨っていたら、またあなたを見つけたんだ。近くに誰もいなかったけど、一人で来たの?」

 

「いや違う。アンジェリカさん、それに所長とも一緒に来たんだけど、まさか逸れた?」

 

「……所長?」

 

 キャスターとの再会で気づかなかったが、ここにいるのは確かに自分とキャスターの二人だけだ。恐らくカルデアからレイシフトした際に離れ離れになったとみるべきだろう。

 

「通信は、繋がらないか。カードとか他の装備は大丈夫そうだけど」

 

「誰か呼べたりはしないんだね。じゃあ本当に今は一人?」

 

「実はそうかも。まぁ一人でも大丈夫なように訓練はしてるから」

 

 最近はアンジェリカさんがいてくれるので忘れていたが、オルレアンやセプテムといった最初の頃は一人でのレイシフトだった。そう思うと今の状況はちょっと懐かしさすら感じる。いや、折角今回からは所長もいると思った矢先なので、拍子抜けしてる節も確かにあるけども。

 

「でも、やっぱり一人よりは二人の方が色々と助かるから、もしキャスターがよければこの先も協力してほしい。どう?」

 

「うん、いいよ。私がここに呼ばれた理由はよくわからないけど、私が今したいことははっきりしてる。せめてカルデアの人たちと合流するまでは一緒にいるよ」

 

「ありがとう、じゃあよろしく」

 

 キャスターの頼もしさは折り紙付きであり、特異点を共に戦うのに不満なんてない。所長たちと逸れてしまったことは不運だが、不安と共に降り立った特異点で最初に会えたのがキャスターであることは確かに幸運だと言えた。

 

 

「人と黒化英霊による東西戦争。それがこの特異点で起こっている異変?」

 

「私が軽く見て回った限りだとそんな感じかな。はっきり言って状況はよくないと思う」

 

 カラッとした晴天の下、人工物の少ない18世紀のアメリカ大陸を二人並んで進んでいく。方角はとりあえず人の集まる所ということでキャスターにお任せしている。その道中で聞いたことをまとめるとその一文に集約されるらしい。

 

「黒化英霊の軍隊って想像がつかないけど、なんでまたそんな大量に?」

 

「聖杯をそういう類の願いで使ったんじゃないかな。このアメリカ大陸を覆い尽くすほどの数なんて、聖杯が関わってないと出来るはずがないだろうし」

 

「待って、そんなにいるならこの時代の人たちなんて一溜まりもないんじゃ」

 

「そりゃあ、この時代の技術力だけじゃ勝ち目はなかっただろうね」

 

 聞けば大陸の半分を黒化英霊側である東軍が掌握していて、これ以上の侵略を許せばいつ人理定礎が崩れてもおかしくないそうだ。今までの特異点よりもずっと深刻な状況といえる。

 

「だからこの時代の人々も更なる力を手にする必要に迫られた。それで使うことになったのがアレだよ」

 

「そんなことが……って街の様子がおかしくない?!」

 

 やっと見えてきたのは石造りの小さな町。

 町から響いてくるのはおおよそ平穏とは無縁であろう声。町を出入りするのは逃げ惑う人、そしてそれを追うように動く黒い影。気づけば自然と動かす足を速めていた。

 

「キャスター、悪いけど町中突っ込むから!」

 

「迷いないね! けどいいよ、付き合う!」

 

 カードから剣を取り出しながら、そのままの勢いで民家と民家の間を走り抜ける。その先の大通りに出て見たのは、この旅が始まって以来すっかり見慣れてしまった光景。

 

 互いの命を削り合う、或いは一方が他方を蹂躙する戦場だ。

 

「■■■ーー!」

 

「くそ、来やがったか。――おいお前も早く逃げろ!」

 

 急に現れた自分を逃げ遅れた子供だと思ったのか、左手でライフル銃を構えたキャップ帽の男が退避を促そうと右手を振る。

 そんな男が対峙しているのは人型の黒い霧、黒化英霊だ。鉈を持ったその黒化英霊は獣のように荒々しく声を上げて突進を始めた。

 

「かかってこいよ化け物。――限定展開(インクルード)!」

 

「!?」

 

 呆然とする自分を庇うように男が振るうのは黒い剣。いや、鍔のような部分の先から伸びる影がその形に見えたからそう形容しただけで、本質はもっと別のモノなのかもしれない。けれど対象を斬ったという結果を生み出すそれは、確かに剣だと言えた。

 

「ちっ、また一枚なくなったか。まぁいい、ほらお前もさっさといけ。死にたいのか?」

 

「い、いや。というかおじさん、今の剣は一体……?」

 

 おじさんが右手で振るった黒い剣は既に塵となって手元から失われている。残った滓を振り払おう仕草と共に彼は鬱陶しそうに言う。

 

「剣? あぁさっきのか。詳しいことは俺も知らん。ただ黒い怪物を相手するのにうってつけだから使ってるだけだ。あとおじさん言うんじゃねえよ坊主……坊主?」

 

 そう言うおじさんはどう見てもこの時代の人だし、魔術が使えるようにも見えない。けれど確かに今やってみせたのはクラスカードの限定展開だ。今の光景がこの場限りでないとすれば、やはりこの特異点の最大の異変とは。

 

「――クラスカード。戦う手段も相手もこのカードが関わってる」

 

「言った通りでしょう? これが今の特異点の姿なんだよ」

 

 後ろから追いついてきたキャスターにとっては驚くべき光景ではないようで、落ち着いた様子だ。カードを使いこなす現地民か、それを見て疑問を抱かない異邦者か、その両方に目を見開く自分か。どれが異常なのか分からなくなってきそうだった。

 

「おじさん、今使ったカードはどこから手に入れたの?」

 

「なんだ、もしかして見るのも初めてだったのか? このカードは今の黒い化け物が落としたもんだよ。上手く倒せばもう一体倒せるようになるって話だ。今回はスッパリ斬っちまったから無理みたいだけどな」

 

「やっぱり、黒化英霊からカードを入手してるんだ」

 

 黒化英霊から手に入るということは恐らくそのカードが核として使われているのだろう。それ自体は今までと同じだが、それが一度使えば失われてしまうカードだなんて聞いたことがない。

 

「アンジェリカさんがいれば話が早いのにな……。やっぱり早く合流しないと駄目だ」

 

「それはそうなんだけど、まずはこの町を何とかする方が先だと思うよ」

 

「くそ、まだまだいやがるよなそりゃ……!」

 

 気づけば自分たち三人を敵だと認識した近くの黒化英霊がまた一体と接近を始めている。

 先ほどはおじさんの一撃で打ち倒せていたので、他のもさほど強くないのかと思えばそれは否だ。どれだけ魔力を溜め込んでいるか、それによって英霊の力をどこまで出力できているかがそのまま黒化英霊の強さだと言える。

 

「何体か、シルエットが明確になりかけてる奴がいる。多分それらは今の限定展開一発じゃ倒しきれないと思う」

 

「お前たち、こいつらのこと知ってるのか?」

 

「きっとこいつらを一番多く倒してきた一人だと思うよ。ね、マスター?」

 

「マスターって、キャスターからそう呼ばれるのは何だか不思議な感覚かも」

 

 からかうように言うキャスターには苦笑を返す。けれど数の不利に動じないのは確かにその所為かもしれない。これなら現状の戦力でも何とかなると感じる自分がそこにはいた。

 

「さっきは助けてくれてありがとう。代わりに今からは自分たちがおじさんを助けるよ」

 

「何を言って……いやまさかお前ら」

 

 脂汗を滲ませるおじさんを鼓舞するように前に出る。それに反応した黒化英霊の一体が地面を蹴るのが同時だった。

 

「限定展開、いくぞ――!」

 

 同じように駆け出しながらその黒い影をしっかりと見据える。

 迫りくる影は両腕を広げ、目の前の敵を引っ掻こうと爪を立てているように見える。言葉になっていない雄たけびを上げる様も含めて、まさに猛獣のような突進だった。

 

「■■■――!」

 

「コード:ブルート、グリッター、セット」

 

 だから選んだのはその二枚のコマンドコード。剣に貼り付けるように使用した後、すぐさまその切っ先を対象へと向ける。そこから爪撃と剣撃の応酬が始まった。

 

 弾く。いなす。受け止め押し返す。或いはその繰り返し。鈍い音が次第に加速していく。

 

「■■ッ、■■■!!」

 

「まだ、まだぁ!」

 

 単純な腕力なら黒化英霊といえどあちらが上だろう。けれど押し切ることが出来ないことへの困惑と怒りが唸りとなって零れている。

 こちらが積んでいるのは魔獣特攻、そして隙を作りやすくするコマンドコードだ。ほとんど英霊の力を擁していないこの剣と今の自分であっても、うまく刺さればこの通り。

 

「■■■ァ――!」

 

「いいね、悪くないじゃん。ならわたしも頑張らないとね」

 

 黒化英霊を一体倒したのを見て安心したように言うキャスターが構えているのはやはり杖だった。それで魔術の一つでも使えばまさしくキャスターに相応しいのだが。

 

「やっぱりそれでも肉弾戦をしかけるんだねキャスター!」

 

「その方が早いからさ!」

 

 杖を構えたといってもその握り方は槍の持つそれと変わらない。同じように襲ってきた槍使いの黒化英霊よりも鋭い突きを繰り出し始めた辺り、やっぱりキャスターじゃなくてランサーだと思う。

 

「その動き、その力……。やっぱお前らもカルデアか?」

 

「おじさん、カルデアを知ってるの!?」

 

 戦闘中とはいえ聞き捨てならないその単語。驚いておじさんの方を向くと、驚きと共にどこか納得したように目を泳がせる姿が目に映った。幸か不幸か解らんな、と呟きつつもその詳細を話してくれた。

 

「そうやって人離れした戦い方をするのがお前たちカルデア以外にいるかってんだ。言っとくが俺たちにカードっつう武器を寄越したのもそいつらだからな」

 

「へぇ、それはわたしも初めて聞いたかも」

 

 おじさんの背後に迫ってきていた黒化英霊をふっとばしながら言うキャスターも知らなかったらしい。つまりこの特異点には自分たちが来るよりも前からカルデアの関係者がいるということになる。まだまだこの特異点の全貌が見えてこないが、どこまでも複雑なことになっているのは間違いないようだ。

 

「っと、今はとりあえずこの場を納めないと。それからちゃんと話を聞くから、おじさん!」

 

「ならいい加減おじさん言うんじゃねえ。オレはまだ28だぞ」

 

「う、うーん?」

 

「そこで首を捻るんじゃねえよ白フード」

 

 

 反論をしながらも堅実に動くおじさんをキャスターと共に援護しつつ、黒化英霊を一体ずつ打ち倒していく。時折黒化英霊の属性を推察してコマンドコードを切り替えつつ戦う事、数十分。どうにか町を襲っていた黒化英霊の大半を撃退することが出来た。

 

「ふぅ、何とかなったね」

 

「よくよく考えたら二人で倒せる数じゃなかった……。カードを使える人が他にもいて本当によかったよ」

 

 疲労でいっぱいなのはキャスターも同じらしい。

 ゲームのように一騎当千が簡単になせるわけはない。手足の疲れや集中力の途切れを実感するとそんな感想が浮かんでくる。一気に回復できる薬もまたゲームの中だけなので、膝に手をついてのどうにか呼吸を整えるしかなかった。

 

「助かったよ、お前たち。オレがカードを使う前にやってくれたら言う事なしだったがな」

 

「あれぇ思ったより手厳しい……。いやまぁそうかも」

 

「いやなんで納得してるの。ただの皮肉だよソレ」

 

「まさか、本音に決まってるだろ。あいつらはまだまだいるのに幾らあっても足りないなんてことはないからな」

 

 この特異点での第一町人であるおじさんが労いの言葉と共に近寄ってくる。

 自分たちと同様に戦いの疲労が見て取れるが、それでも表情にまでは出していない辺り戦い慣れているのかもしれない。その姿にこちらも少しばかりの元気と気力を貰えた気がした。

 

「じゃあさっき言ってた話をしたい。カルデアについてなんだけど――」

 

「待て。それを話してもいいが、お前らのことが先だ」

 

「え?」

 

 急なストップにこっちの動きも止まる。なんだか今の言葉に警戒の色が混じっていたような。

 

「いやな、てっきりお前らもカルデアの一味かと思ったが、本当にそうならあの反応はおかしいはずだ。これまで助けておいて今更事情を知らないなんてあるはずがない」

 

「待って、ここではカルデアって一体どんな扱いになってるの!?」

 

「そうだ、俺たちの知るカルデアとお前らのカルデアはきっと別物だ。でもなんでそんなことが起こる? お前らは何を知っている?」

 

 おじさんの視線が冷たいものに変わる。さっきの皮肉で感じた温度はどこへやら、返事によっては背負ったライフル銃を抜くことも辞さない態度でそういった。

 

「感謝はする。だが今更カルデアの人間だと言われても簡単には受け入れられない。それが他の連中とも一致した意見だ。だから先に素性を話せ」

 

「分かった、いいよ」

 

「心配すんな、今更悪い奴らだとは思ってない。ただの確認……いや思ったより軽いなお前」

 

「だってそれは当然の話だし」

 

 素性の知れない者を過信しないことに何の違和感があるというのか。むしろ成り行きで共闘したとは言えある程度信用してくれている状態で始まっているだけで有難い。なのでむしろ安心した態度で話し始めることが出来た。

 

「自分はカルデアからレイシフトしてきたんだ。別の世界からこの世界を救いに来た、っていうとざっくりしすぎかもだけど」

 

「救いに来た、ね。なら自分で帰る手段もあるわけだな?」

 

「まぁ一応は。けどこの世界の異変を何とかするまでは帰れないと思う」

 

 なら大して変わらないか、と呟くおじさんの声はやや落胆しているようだった。質問の意図からしてあんまりいい予感はしないけど、ひとまず続きを話すことにする。

 

「それでこの世界に来て、キャスターと合流してこの町に来たんだ。あぁそこの白いフードの人ね。怪しさ満点だけど悪い人じゃないから」

 

「行動で示してもらわなきゃそうは信じられなかっただろうな。何なら今も怪しいままだが」

 

「その疑いは甘んじて受け入れるよ。フードは外せないし」

 

 頑なに顔を隠すキャスターにおじさんも呆れていた。けど強硬手段に出たりしないのは信用が足りているからか、或いは単にそれが通用する相手ではないと諦めているからか。

 

「つまりこの町に来たのは偶然で、助太刀したのも成り行きだったと。そいつは何とも虫のいい話だな」

 

「……まだ信じてはもらえない?」

 

「そんな顔すんな。別に疑っちゃいねえ。ただ順序が違うことに驚いてるだけだ」

 

 思ったより不安が顔に出てしまっていたのか、ブンブンと手を振って否定するおじさん。けど順序が違うとはどういうことかと首を捻った自分に対して、簡潔におじさんは答えた。

 

「オレはお前らの素性を話せと言ったんだ。確かに経緯も気になるが、まずはどこの誰なのか名乗るもんだと思っただけだよ」

 

「あれ、名乗ってなかったっけ」

 

「そういやそうだった。あ、私はキャスターでよろしく」

 

 合点がいったと手を打つキャスターがさくっと自己紹介を済ませる。

 おじさんはそんな名乗りに半目を返していたが、そのうちにお前の番だとこっちを向いた。

 

「えっと自分は――フジマル、リツカ。そうフジマルリツカ」

 

「なんで自信なさげなんだよ。まさか偽名じゃないだろうな?」

 

「いや違うから、本当だから! ちょっと詰まっただけだから!」

 

「…………」

 

 そんな感じでどうにか誤解を解きつつ、特異点修復の為にますは情報を集めることにする。けど最後、キャスターがちょっとだけ無言になったのが少し気になった。

 




因みに第一現地人の彼はジョンという名前です。
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