夢幻召喚で戦うカルデアの話   作:棚木 千波

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お久しぶりです、お待たせいたしました。


#33 惑い惑わせて

【side:???】

 

「女王陛下、カルデアと思しき連中がこの北米に到着したとの報告です」

 

「ふーん、そう。やっと来たのね」

 

 その女はとある大広間の玉座に座っていた。白い衣装にピンクの長髪と見目麗しい少女だが、その地位と権力を疑う者はいない。なぜなら彼女こそが特異点の半分であるアメリカ東部を手中に収めつつある『女王』メイヴその人だからだ。

 

「なんだメイヴ、随分と楽しそうだな」

 

「ええ、ええ! だってそうでしょう? 今まではカルデアと言ってもその下っ端しかいなかったんだから。クーちゃんだって物足りなかったんじゃないかって思ってたの」

 

「……そんなことか。オレは王だ。血の滾った獣とは違う。邪魔だから消すだけで、そこにオレの愉悦はない」

 

「ふふ、そう。それでもいいわ。ならクーちゃんの分も私が楽しんであげるから」

 

 その女王と相対するのは己を王と定義する赤黒い男、『狂王』クー・フーリン〔オルタ〕。巨大な槍を携えていること以上に服装や装備、そして鋭く冷たい目つきがその刺々しさを際立たせている。

 

 二人こそが北米を特異点に変え、戦乱の渦へ落とした元凶である。無論彼女らが常に前線に出るようなことはなく、ワシントンと呼ばれた地の奥でいつか来るその時に向け戦況を繰っている最中だった。

 そんな折に彼が突然、何かに気づいた様子で首を動かす。

 

「……待て。確かあの方角はあいつが行った方向だったな?」

 

「あいつって、キリシュタリアのこと? ええ、ついさっき出撃していったけど、何かあった?」

 

「…………胸騒ぎがするな。仕方ねえ、少し出る」

 

「え? ちょ、ちょっとクーちゃん! どうしたの急に!?」

 

 山のように不動だった狂王の突然の出立に、メイヴも慌てて立ち上がる。けれどそんな時間も惜しいとばかりに進むクーフーリンが、僅かに振り返って女王に言う。

 

「あいつが殺り合っている相手、カルデアとか言ったか。そいつらから妙な気配がする。因縁じゃねぇ……縁か? ともかく、それを確かめてくる」

 

「縁って、まだ会ったこともないでしょ?! なんで、そんな」

 

「オレが知るか。だから余計な面倒が増えないようにするだけだ。あいつらへの釘刺しも兼ねてな」

 

「……もう、クーちゃんったら」

 

 止まる気配がないと悟ったのか、渋々といった様子で制止を諦めるメイヴ。それだけ確認したクーフーリンが、それまでとは比較のならない速度で動き始める。

 それは意思を持つ嵐が、北米に解き放たれたことを意味していた。

 

 

【side:オルガマリー】

 

 ――痛みよりも、驚きが先にあった。

 

「所長!?」

 

 ダラスの砦から少し離れた地点で、キリシュタリアの宝具とぶつかり合った直後。いつの間にか迫ってきていた何者かの黒い槍によって、我が身が背中から刺し貫かれていた。

 貫通によるダメージといつの間にか背後を取られていたことのダブルパンチに揺さぶられながらも、どうにか手の槍を回して背後に突き刺す。

 

「ほう、まだ動けるか」

 

「舐めるんじゃ、ないわよ……!」

 

 叫ぶようにしながら宝具の杭を出現させ、背後の敵を引き離すと同時に胸の異物から身体を取り戻そうとして身を捩る。

 無理な動きで抉る痛みも増えたが、どうにか倒れ込みながらも自由を取り戻すことに成功した。けれどそれで限界が来たのか、ランサーの夢幻召喚が解けた無防備な状態でその敵を見上げることになった。

 

「はぁ、はぁ……、アンタは、一体?」

 

「急所を突いたつもりだったが、見誤ったか。まぁいい、死ぬまで何度でも殺してやろう」

 

 それは敵意が刺々しく人の形を取ったような男だった。その手にある槍や衣装は返り血のような赤黒に染められており、黒く冷たい目や声はまるで幽鬼のようだ。けれど莫大な魔力量からくる圧倒的な存在感が、見る者の鼓動を早くさせる。

 

「アーチャー、夢幻召喚(インストール)……!」

 

 萎縮しそうな身体を無理やり動かし、どうにか距離を取ろうとカードを使う。

 はっきり言ってあの一撃は確かに致命傷だった。『ヴラド三世』(ランサー)の持つ『戦闘続行』のスキルがあったから地に伏さずにいられるが、その代償としてただでさえ減っている魔力を更に大きく削られた。しかもあの槍の後遺症なのか、『ヴラド三世』のカードに朱いヒビが入っていた。この状態では恐らく夢幻召喚は出来ないだろう。

 けれどそんな事情など、敵の知る所ではない。

 

「ぬるい」

 

「がっ……!」

 

 至近距離から一息で放った三本の矢は、されど槍の一振りで薙ぎ払われ、『アタランテ』(アーチャー)の俊敏性を発揮するよりも早く首を掴まれ持ち上げられる。ギリギリと力が込められていくごとに、戦意が削られ弓を引くのが遠くなっていく。

 

「ま、ず……」

 

「手を離せ、怪物!」

 

 そんな私と男の間に割って入るように突進してきたのは『メドゥーサ』(ライダー)上書き(オーバーライト)したアンジェリカだ。しかし先のキリシュタリアと違って吹き飛ぶことなく槍で受け止め、新たな障害だと認めるように目を向ける。

 

「――石化の魔眼(キュベレイ)!」

 

「! これは……」

 

 しかしアンジェリカの瞳は既に魔眼になっていた。一瞬の視線の交錯で男の動きが止まる。そこを見逃す私たちではない。

 

「こ、のっ!」

 

 目の前の男を蹴りつけるようにして拘束から脱し、跳ねるようにして後ろに下がる。男の方は硬直こそ発生しているものの、石化が始まった様子はない。それは『メドゥーサ』の魔眼に対抗できるだけの対魔力を所持していることを意味していた。

 

「……助かったわ、アンジェリカ」

 

「いえ、こちらも気付けず申し訳ありません。まさかこれ程の存在まで急に現れるとは……」

 

「命を拾えただけマシと思いましょう。まだ助かったと言うには怪しいのだけど、ね」

 

 同じように私の横へ来たアンジェリカと共に男を見据えるが、彼も同様にこちらをジロリと見つめたままだ。追撃をするでもなく、ただ私たちへと視線を走らせている様が不気味だった。

 

「なるほど、これがカルデアか。しぶとさは確かにお墨付きだな」

 

「……まさか、それを確かめるために王自らがこんな所まで参ったのですか?」

 

 追いついてきたキリシュタリアが、敬うようにしながらその男をそう呼称する。彼がそんな態度を取るのも驚きだが、それ以上に聞き捨てならないのがその名称、いや役職だ。

 

「王って、まさかコイツが特異点の王?!」

 

「確かに納得は出来ますが……」

 

 アンジェリカがちょっと待てと言いたくなるのも仕方がないことだろう。今までの特異点では王、すなわち聖杯を所持するような大物は大抵幾つもの障害を乗り越えた先で対峙できるような存在だった。言わば前回遭遇した魔術王がロンドン市街地にいきなり現れたようなものだし、大番狂わせもいい所だ。

 

「それだけじゃねぇ。コイツらがカルデアの本命だというのはお前らからも聞いていたが、それ以内の何かを感じた。趣味じゃないルーンまで使ったが、悪くはない」

 

「急に現れたのはそれね……」

 

 私たちの抵抗がどうやらお気に召したらしく、僅かに口角を上げて獰猛な笑みを作る王。

 きっと先ほどの宝具のぶつかり合いから位置がバレたのだろう。あれ程の規模だ、狼煙としてはさぞ分かりやすかったはずだ。

 

「お言葉だが、彼らの相手は私に任せて欲しい。もしや、かつての同胞だからと手を抜くようにでも見えただろうか?」

 

「否定はしねぇ。先の爆発、お前にしては腑抜けた一撃だと思ってな」

 

「……あれで腑抜けてるとか、コイツらのスケールはどうなっているんだ」

 

 Bチームリーダーの呟きが後ろから聞こえるが、言いたいことは分かる。けどそちらよりも気に留めるべきなのは、キリシュタリアに王と共闘する意思がなさそうなことだ。

 

「二人同時じゃないのなら、まだ突破口は――」

 

「驚いたな、まだ何とか出来ると思ってんのか?」

 

 目前。気づけば()がすぐそこにまで迫っていた。

 

「きゃあああ?!」

 

「ぐうっ!」

 

 それはダンプカーが殺意を持って突っ込んで来たような唐突さと威力だった。反射的に夢幻召喚したアサシンの爪とアンジェリカの短剣による二人がかりでも、簡単に吹き飛ばされる位だ。冗談抜きで爪か腕のどちらかが折れたかと思った。

 

「王、貴方は……!」

 

「本来ならお前の獲物に手を出す気はなかった。だがコイツらは今後の脅威になると先の一撃で理解できた。故に殺す。恨むのなら最初から殲滅を選ばなかったてめぇを恨むんだな」

 

「けほっ、なんなのよ、コイツ……!」

 

 狂っている。立ち上がりながらに聞いた言葉から出てくる感想はそれだけだ。

 要するに、男は己の直感を信じてここに来たということ。きっかけは知らないが放置するには危険だと勝手に判断し、横取りする形になってでもその排除を優先する。ある意味機械的に敵視される私達の身にもなってほしいものだ。

 

「そんな理由で、やられるわけにはいかないのよ……!」

 

 ふざけるなと口にしながら思考するのは、どうやってこの場を凌ぐかという一点。

 状況は撤退の一択しかない。キリシュタリアだけなら何とかなったかもしれないが、乱入してきた狂王のせいで戦力差は覆しようのないものになった。

 どちらも倒すには今のメンバーでは足りない。しかし退くとしても、二人にある程度の有効打を与えなければその隙を生み出すことは出来ない。

 

「そんなもんじゃないだろう? 世界を救う、それに足る力を見せてみろ」

 

「言われ、なくてもっ……!」

 

 そしてそんな思考の暇を与えてくれるような相手ではなく、続けて打ち込まれる槍の一撃にどうにか反応を返す。

 

「アサシン……くっ!」

 

「どうした、まだ限界が一度来た程度のはずだ。戦場でそんな弱音を吐くつもりか?」

 

 重いくせに疾い黒槍をスレスレで回避し続けるだけで、我ながら奇跡としか思えない。まともに受けるだけの余力はおろか、そもそも『カーミラ(アサシン)』の宝具をあと一度起動させられる程度の魔力しかもう残っていない。

 

「! ふん、神殺しか」

 

「やはり不意打ちは出来ませんか……!」

 

 そんな狂王の背後を狙うように伸びてきた熱線を、彼は一目見ただけで容易くいなして見せる。戻ってきていたアンジェリカの乱入でも、やはり彼の余裕を崩すことは出来ないようだ。

 

「なら、これでどうだ!」

 

 だからこそのもう一手。狂王の頭上数メートルにあるBチームリーダーの魔本から、光の柱のような一撃が放たれる。アンジェリカの射線に挟まれた狂王に逃れる術はないはずで。

 

「『幻想の鉄少女(ファントム・メイデン)』!」

 

 続けて放つのはなけなしの魔力を注ぎ込んだ棺の檻。突如として現れたそれは狂王の身体を飲み込み、肉の潰れる嫌な音と共にその扉を閉じた。その隙間から漏れる赤色の液体が、確かなダメージの証明となっていた。

 勿論これで倒しきれるとは思っていない。けれど不意に訪れた静寂から目論見は達成出来ていると判断した。

 

「二人共、次よ!」

 

「あとはキリシュタリアだな!」

 

 そんな狂王の姿を確認してから視線をずらすと、既にBチームリーダーはキリシュタリアへと標的を変えていた。いつまでもこの拘束が続くわけではないのだから、このチャンスを逃すまいとするのは当然だ。三人がかりでなら抑えられるかもしれないと、同じように動き出していたアンジェリカの後を追う。

 

「夢幻」

 

 その際に、もう一度だけ狂王の方に目を向けて。あと幾らの猶予があるかを確かめようとして。

 

「召、か」

 

 そんなふとした行動が、すんでの所で私の首の皮を繋ぎとめることになった。

 

「はやすぎ――でしょ!?」

 

「なんだ、あの程度でオレを止められるとでも思ったのか?」

 

 再び動き始めた狂王の一撃で再び私が吹き飛ばされる。それは先ほどアンジェリカと受けた一撃と変わらぬ威力であり、そこに私たちが与えたダメージがあるとは全く思えない。咄嗟に弓を自分と槍の間に挟むのが精一杯でまともな着地なんて出来るはずがなく、ごろごろと地面を転がる他なかった。

 

「え、所長なんで……ってマジかよ!?」

 

「けほっ……信じられないのはこっちの台詞よ……!」

 

 少し距離を取ったことで狂王の全体像が見えたから、その全身が更に血で赤く染まっていることに気づく。

 ダメージはあった。魔力不足だとはいえ、一英霊の宝具を受けて無傷でいられるようなスキルを持っているわけではなく。ただそのダメージがあってなお、動きに支障をきたすことがなかっただけの話だ。

 自身の身すら省みずに動き続ける怪物。まさしく狂戦士と呼ぶに相応しい立ち姿だった。

 

「冗談キツいわよ、ホントに……」

 

 振り返って驚くBチームリーダーの近くでどうにか立ち上がるが、今度こそ魔力切れで夢幻召喚が出来なくなっている。それどころか手足の震えも始まっている気がするし、何なら視界すら靄がかかったように見えづらくなってきた。

 

「ほら次だ。さっさと底を見せてみろ――!」

 

「所長、ここは俺が引き受けます、だから!」

 

 迫りくる狂王に対し、私を庇うように立つBチームリーダー。その背を見ながら必死に頭を回そうとするけども、じわじわと頭に広がる絶望がその思考をせき止めようとする。

 

(何か、なにかないの。今ある手の中で、この状況をどうにかするような妙案は……)

 

 回る。回る。空回る。焦りと恐怖が冷静さを奪ってパニック寸前へと陥りかける。それでもこの場に助けを求められるような相手はいないから、ギリギリの所で自暴自棄は回避する。でもその先は何も浮かばない。

 

「蠢動しろ、死棘(しきょく)の魔槍――!」

 

 だからそれが時間切れ。たった一人なぞ壁にもならなず、Bチームリーダー諸共に滅される未来が来ると直感して、咄嗟に目を瞑りそうになって。

 

「……………………え?」

 

 だから、そんな未来が脇に逸れたことに驚きを隠せなかった。

 

「なに?」

 

 狂王が突き出した槍は私たちを貫くことなく、その横を素通りしていった。私たちは動けていない為、狂王が勝手に攻撃を外したことになる。それに一番驚いていたのは当の本人だった。

 

「……そうか、この霧か」

 

「いつの間に、こんな霧が……?」

 

 気付けば周囲に満ちていたのは白い霧。近くにいるはずの狂王やBチームリーダーの輪郭すらも朧げにするそれは、どうみても自然物ではない。魔力不足に陥ったことの弊害かとも思っていたが、実際はこの場の全員に見えるそれによってこの結果が導かれたらしい。

 

「――今だよ!」

 

「! 金星神・火炎天主(サナト・クマラ)!」

 

 この場の全員が困惑を浮かべる中、不意に響いた誰かの声。真っ先に反応したBチームリーダーが己の持つ宝具を開帳する。彼のありったけの魔力から形を成していくのは、おおよそUFOと呼ばれることが多いだろう円盤だ。魔本と同じように頭上に上がり、その下部から魔力の光と熱が収束し、そして狂王の下へと舞い落ちる。

 

 その白き光が霧と混じり合うことで周囲は完全な白へと塗りつぶされ、最早何度めか分からない轟音が北米の大地を揺らした。

 

☆ 

 

「……なるほど、やはり大したしぶとさだな」

 

 そして立ち尽くした狂王が目にしたのは、誰もいなくなった荒野の光景だった。やや遠くに件の砦も見えるが、そこからも生物の気配はしない。この短時間でよくぞ退いたと軽い称賛の気持ちすらあった。

 

「……申し訳ない、王。私としたことが尻尾すら掴めずに逃がすことになるとは」

 

「構わん。先に場を乱したのはオレだ。それに奴らと殺る機会はすぐにまた来る。一度は譲ってやるさ」

 

 同じ光景を見ていたもう一人、キリシュタリアが傅きながら言うのを軽く流す。温情があるように聞こえるが、添えられた冷たい目は「そこで仕留めろ」と告げているに等しい。だからこそキリシュタリアはその態度を崩すことなく宣言する。

 

「はい。その時は是非とも壊滅をご覧にいれましょう」

 

「ならいい」

 

 そんな臣下の礼を一瞥してすぐに、狂王は居城へと戻るべく背を向ける。戦う相手も失せた以上ここに残る理由はない。それにもう一つ、彼は考えたいことがあった。

 

「……カルデアのマスター。さて、コイツはどういうことだ?」

 

 彼だけが感じた違和感。実際に手合わせしたことでカルデアの面々は倒すべき敵ではあるが、敗北の目は限りなく低いと分かった。しかし当初感じたそれは余計に複雑化していた。

 

「気持ち悪くて仕方がねぇ。――負ける道理がないのにあるとはな」

 

 王らしからぬ忌々しさの籠もった呟き。それを聞く者は誰もいなかった。

 

 

「…………もう、追ってこないわよね?」

 

 切れ切れになった息を隠す事も忘れて周囲を見渡すが、そこに恐れるべき二人の影はない。全速力での撤退が成功したと分かってから、ようやく胸を撫で下ろた。

 

 行き着いたのは最初に出発した拠点のある街だ。その時と比べて傷の数は増えているものの、頭数自体はそんなに変わっていない辺りは誇っていいのかもしれない。

 

「砦を取り返されたのは痛いけど、人員を全員確保出来ただけマシね。先にそれだけは礼を言っておくわ、()()()()()

 

「いや、もう少し早く来られたら良かったんだけどね」

 

 軽い謝意を含ませながら目を向けるのは、若干決まりが悪そうにする白いフードの不審者。深くかぶったフードで表情は見えないのにそれが分かるのも不思議ではあるが、そんなことよりも存在自体が不可解な人物。

 

「キャスター、あなたなんでこの特異点にいるのよ。冬木の聖杯戦争に参加していた現地人じゃなかったの?」

 

 私たちの窮地を救ったのは、冬木でフジマルとマシュが出会った謎の魔術師。最後にバーサーカーと戦ってその消息を絶ったはずのキャスターだった。

 

「えっと、ここにいるのは核になってるカードから引き出された元マスターとしての自分で――ってこの説明も二度目だな」

 

 ざっくりと自分が何者かを語るキャスターを、アンジェリカを含めた他の面々が様々な思惑を持って見つめている。そういえばあの時の冬木と通信していたのは私だけだったなと思い出す。私以外からすれば怪しすぎる事この上ないのだろう。いや私もバリバリ疑い続けてるけど。

 

「けど砦の面々を予め逃がしてくれたのもアンタなんだってな。改めて礼を言わせてくれ」

 

「ふふん、なら有り難く受け取っておこうかな。こっちとしてもまだ頼みたいことがあるし」

 

「なによ、また勝手についてくる気じゃないでしょうね」

 

 聞けばあの霧で私たちを助ける前に砦に寄っていたらしい。あの二人から全員撤退という戦略的勝利をもぎ取ったMVPというわけだが、引っ掛かる所もあるにはある。あまりにタイミングが良すぎるし、こちらの事情にも妙に詳しい。スパイとして来たと考えた方がまだ納得しやすいレベルである。

 

「いやいや、あなた達にも関係ある話だから。実はここに来る前はフジマルと行動を共にしてたんだけどさ」

 

「え、アイツと?」

 

 キャスターから出てきたのは目下捜索中だった3人目の同行者の名前。レイシフトには成功しているだろうと思っていたが、まさか私たちよりも先にキャスターと合流しているとは。

 

「キャスター、フジマルはどこに行ったのですか?」

 

 けれどそのフジマルはここにはいない。その事をアンジェリカが尋ねると困ったように、それでいてあっさりとキャスターは答えた。

 

「えーっとね。フジマルは――」

 




思ったより期間が空いてしまい反省。
実質アゾラれてるようなものですが、どうにか合わせ技でギリギリ生きてます。吸血鬼のガッツ+αということで。色々危なかったのはマジなのです。

評価や感想を頂けると有難いです。閲覧だけでも感謝の気持ちで続けていきます。
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