再教育センター脱出 With スウィンバーン   作:Jeep53

3 / 6
続いた。

え…?評価バーに色が…?うそでしょ…(喜)


3.洋上都市掌握

 巨大建築物(メガストラクチャー)、グリッド086。ここは主にRaDが拠点としている場所だ。今現在私たちはチャティが制御するヘリに揺られてそこへ到着した。

 

「到着だ、ビジター。足元に注意して降りてくれ」

「ありがとう、チャティ」

 

生身でこの場所に降り立つのは初めてだ。ACに乗っていたころから大きな建物だとは思っていたが、生身で見てみるとさらにその大きさが際立つ。いったいどうやってこんなのを作ったんだろう。

 

「ふむ…ここがRaDの本拠地、か…。なんというか…大きいな」

 

私の横でデカデカと書かれたRaDのマークを眺める彼はそう呟いた。

 

「スウィンバーンは、初めて?」

「うん?そうに決まっているだろう。企業所属の私がジャンク屋に来るはずがないことくらい分からんのか?」

「そっか…。企業の人はその企業のパーツしか使えないもんね」

「…………一概にそうとは言えないけれどもな」

 

 そのままカーラの後ろをついて行き、おそらく来賓用である少しきれいな部屋に通される。部屋は狭く、テーブルを挟むようにしてソファーが置いてあるだけの部屋だった。

 そこにドアを開けて入ってきたのは小型チャティ。人より少し小さいくらいのサイズのチャティはどうやらお茶を運んできてくれたようだった。

 

「さて…。本題に入る前に状況確認といこうじゃないか。協力者とはいえ、素性を知らん奴にいろいろ話すほどお人よしじゃないのでね」

 

カーラはソファーにどっかりと座り、彼を軽く睨んでいた。そこまで悪い人じゃないと思うんだけどなあ…。

 

「…自己紹介がまだだったな。私はスウィンバーン。かつてはヴェスパー部隊の第7隊長および会計責任者をやっていた。訳あってヴェスパーは抜けて今はフリーだ」

「……嘘は言ってないみたいだが…ビジター、どうなんだい?」

「ん、私に負けそうになって私を買収、そしたらスネイルに再教育センター送りにされた。かわいそう」

「な、き、貴様、かわいそうとは何だ!?かわいそうとは!!!」

「…くっ、ふふふ、アッハハハハハハハハ!!」

 

 彼は私に慌てて食って掛かり、カーラは腹を抑えて大爆笑し始めた。心なしかチャティも楽しそうだ。

 

「ッはは…なるほどねえ。ま、悪い奴じゃないってとこは確かかもね。ちなみにだが、これから先のことを聞いたら企業には戻れなくなるよ。いいのかい?」

 

カーラがそう聞くと彼は一瞬迷うようなそぶりを見せたが、すぐに口を開いた。

 

「どのみちもう私に帰る場所なんてないんだ。仮に帰ろうものなら今度こそ第2隊長殿…スネイルに殺されてしまう。もう私に居場所なんてないんだ。だからどうか…ここにおいて欲しい。私にできることなら何でもしよう」

「…何でも、と言ったね?」

「……」

「…アンタはここぞというときは大胆な行動ができて、それに見合う結果も引き出せる奴なのに…。小さいことで尻込みしちまう。笑えるね」

 

カーラはそう言って頭を振った。彼が恐る恐る口を開いた。

 

「…好意的な解釈が多いようだが…そう判断するには早すぎやしないか?」

 

そう彼は不安そうに言う。だがその点に関しては問題ない!

 

「アンタがヘリで疲れて寝てる間、ビジターから聞いたよ」

 

瞬間、彼が私を見た。

 

「…気づいて、いたのか?」

「後からだけどね。ありがとう」

「……。ふん、死なれては寝覚めが悪かったからな、それだけだ」

 

カーラはまた笑った。

 

「あんだけボロボロになりながら助けといてよく言うよ。それで?アンタができることは何だい?」

「…会計と、ACの操縦だ。会計は小規模から組織規模まで大体のことはできる」

 

ふむ、とカーラが考え込む。

 

「悪いが、RaDの会計担当にはこのチャティが居てね。基本的にそっちに回ってもらうことはなさそうだ。アンタにはACに乗ってもらうよ。……ところで、アンタの元々乗っていたACは…」

「アーキバスのドックの中だ。無理だろう」

「そいつは無理だねえ…そうだね、ウチで一機見繕ってやろう」

 

RaDのACかぁ…。スウィンバーンが乗っていたのとは全然違うACになっちゃいそうだけど、大丈夫かな…。

 

「その…なんだ、与えてもらう立場で言うのもなんだが…私の機体の再現はできるのか?あまりにもかけ離れていると扱える保証はないぞ?」

「できる限り近づけてやるよ。そら、機体構成を教えな!ないものは作ればいいのさ」

 

 彼はカーラが提示した紙に彼の機体を構成していたパーツの名称、および概要をメモしていった。そのすぐ脇にそれぞれのパーツをデフォルメしたような形のものを描いていた。かわいい。

 

「四脚だったのかい。一番の難点はそこかもねえ。ウチは四脚を作ったことがないんだ」

「なんだと!?では…」

「焦るんじゃないよ。多脚型はビジターが倒したシースパイダー…技研のC兵器だね。そいつを解析したおかげでちょっとしたノウハウはある。オーダーメイドで作ってやるよ。ジェネレータは…ビジター、悪いがオールマインドに言って買ってもらうことってのはできるかい?」

 

そうだ、自分の傭兵ライセンスは普通に生きている。パーツの売り買いは普通にできるはずだ。

 その意を込めて首を縦に振る。

 

「RaDはジェネレータを作ってないのか?」

「作ってないってわけじゃないが…アーキバス製のアレに近い性能を出すことは私らには難しい。現物を買った方が早いのさ」

 

それを聞いた彼は納得してた。ちょっと得意げな顔がムカついたけど。

 実際アーキバスのジェネレータは優秀だ。困ったらそれ…VP-20Cを積んでおけばたいてい何とかなってしまうくらいには。そう考えながら私はオールマインドにVP-20Cを注文した。届け先はもちろんここ。すぐ届けてくれるみたい。

 

「すぐ届く?すごいなその傭兵支援システムは。ところで”すぐ”とはいつだ?」

「オールマインドのすぐは大体1日くらいかな。明日には届くと思うよ」

「随分と早いんだな。そんな手厚いサポートがあるのにもかかわらず大半の傭兵はあんなものなのか。そのオールマインドとやらが不憫になってくるな」

 

彼は半ば呆れ気味でそう言った。

 

「ジェネレータが解決したんなら話は早い。武装のことだが、右腕のハンドミサイル。こいつは在庫がある。ファーロンは中立を保ってるからね。ウチでも買えるんだ」

 

あれ?ファーロンは若干ベイラム側じゃなかったっけ。ま、いっか。

 

「左腕のスタンバトン……。ビジター、カートに追加しておいてくれないかい?アーキバス製品は私たちじゃ買えないからね」

「ん、分かった……あれ?」

「どうしたんだい?」

「アーキバスからブロックされたみたい…。製品買えなくなっちゃった」

「あ~…」

 

それもそうかも。捉えていたやつが脱走して、そのうえ注文してくるとか嫌すぎる。スネイルあたりがキレてそう。ざまあ。…でも困ったな。

 

「そいつは困ったね…。ジェネレータが手に入るだけ儲けものと思うようにしようか」

「…一括注文にすればよかったんじゃないのか?」

「「……」」

 

彼の一言で気まずい沈黙が流れた。

 

「一括注文だと発送にラグが出て最悪ジェネレータも発送停止される恐れがあった。悪くない選択だったと思うぞ」

「それもそうか…」

 

チャティがそう発言したことによってその場は落ち着いた。

 

「さて…どうしようか。それも含めて別室でチャティと話してきてくれ。ビジターは私と、話をしよう」

「ん、分かった」

「了解した。この…AC?ロボ?について行けばいいのだな?」

「俺はチャティ・スティックだ。覚えてくれ」

「…悪かったな、チャティ」

 

キュルキュルと履帯の音を立てながらチャティと彼が部屋の外へと出ていった。残されたのは私とカーラ、二人だけ…エアを含めるとすると、三人だけだ。

 

「ビジター…。昔話をしようか」

 

カーラが口を開いた。その表情は真剣そのものだ。いつものどこかふわっとしている雰囲気はどこにもない。眼光も、心なしか鋭くなっているような気がした。

 

「アイビスの火が、この惑星を焼き尽くしたあと…。決して表には出ないある組織が作られた。観測者たちの結社『オーバーシアー』、コーラルの増殖傾向を測り「破綻」が訪れる前に…焼き払う。それが使命だ」

「私やウォルター… そして死んでいった『友人』たちのね。RaDは退屈しない隠れ蓑だったが、いよいよ本来の仕事をする時が来たってわけさ」

 

そこで区切って、彼女は私の顔を見た。私は今、どういう表情をしているのだろうか。

 

「本題に入ろうか」

 

彼女から発せられる気配が少し柔らかくなる。

 

「あんたもザイレムには行ったことがあるだろう?技研の作った洋上都市だ。あそこには来たるべき破綻への備えとして、ちょっとした機能が隠されてる。そいつが今の状況には必要なのさ。RaDの技術者が総がかりで ザイレムのコントロールを奪いに行く。あんたには、しゃしゃり出てくるに違いないアーキバスの相手を任せたい」

 

『観測者たちの結社「オーバーシアー」…コーラルを焼き払う… 使命…』

 

エアがそう呟いた。その呟きはやけに大きく聞こえた。

 

「引き受けてくれるかい?ビジター」

 

迷っているように見えたのか、カーラがこちらの顔を覗き込んでくる。

 

「引き…受けるよ。ただ、ちょっと、いろいろと考える時間が欲しいかも」

「…そうかい。ま、ゆっくり考えて選択することだ。私はスウィンバーンにも一応話してくるよ。巻き込むのに話さないのはちょっといただけないからねえ」

 

そう言ってカーラは部屋を出ていった。残されたのは私と、エア。重い空気が部屋の中に充満していた。

 

(コーラルを焼き払うってことは…エアも、エアの同胞も焼き払うってことだよね…?)

『そう、なります…ね…』

(そうするとエアとはもう喋れなくなっちゃうってこと…だよ…ね…)

『私には、よくわかりません。私はコーラルではありますがジェネレータなどに使われてしまっている一般コーラルとは少し違う存在で…カーラが言う焼却を行った際に私がどうなるかは…』

(でも、可能性としてはあるんだよね?)

『それは……そうですね。あり得ます』

(だったら嫌だよ!…勿論ウォルターの遺志には背きたくないけど…)

 

私は絞り出すような思いで交信する。

 

(エアが居なくなるのは、これ以上身近な人がいなくなるのはもう、嫌だよ…!)

 

目からは涙が溢れてくる。こんな選択、残酷すぎる。かつての主人に従えば友人を殺すことに、友人を支持すれば主人を裏切ることになる。どちらを選んでも取り返しがつかない。

 

『レイヴン……。ですが、今は目の前の任務に集中、しましょう』

(そうだね…。そうしよう)

 

目じりを服の袖で拭い、立ち上がる。目指すのはACハンガー。チャティが取り戻してくれた自分の機体があるところだ。

 

「まずはこの任務を…終わらせる!」

『レイヴン、意気込んでいるところ申し訳ありませんが作戦は明日です』

 

私はもう一回ソファに座った。

 


 

 次の日、ACハンガーにたどり着いた私を迎えたのは最後に見た時より少し傷ついた私のAC。しばらく見ていなかったその姿は健在だった。

 基本的なパーツはベイラムのメランダーC3、脚は大豊の重量二脚。この惑星に降り立った時からほとんど変わらない構成だ。最初期の機体は、封鎖機構のヘリとやったときに壊れちゃったからほとんどこれだ。ジェネレータはアーキバスのVP-20D、FCSはベイラムのTALBOT、ブースターはIB-C03B。このまえオールマインドにもらった技研のものだ。ちょっと大きくて格好付かないと思ってるけど…性能は優秀だ。

 

「ビジター。機体はすぐにでも動かせるようにしてある。武装はどうする?」

 

 チャティだ。彼の機体は設計し終わったのかな?

 今回は防衛だから回転率のいいものにしよう。右腕HARRIS(重リニア)、左腕月光、両肩は初期機体にもついていた4連ミサイルでいいかな。コア拡張機能は……パルスプロテクションにしよう。なんだか使える気がする。

 

「これでお願い」

「了解した。すぐにとりかかろう」

 

すぐにハンガー全体が動き出す。指定された武装を埠頭にあるようなクレーンがACに取り付けていく。モノの数分でその作業は終わってしまった。

 ふと、隣のハンガーを見るとそこは空いていた。彼用のハンガーかな?一個向こうにラミーのマッドスタンプがあるからただ空いているという訳じゃないだろう。空いてるなら詰めるだろうからね。

そう言えばジェネレータが届くのは今日か。さすがに今日のミッションには間に合わなそう。自分一人で頑張らなきゃ。

 

「ビジター!任務だってなぁ!」

 

そう大声で話しかけてきたのはラミーだ。初見でボコしたときは普通に死んだものと思っていたがその後脱出していたことが判明、以来なんか見かけると話しかけてくるくらいの間柄にはなった。本人の目標は打倒私らしい。

 

「ラミー、元気そうだね。グリッドの防衛は順調?」

 

彼は私に倒されてからコーラルをキメる量を減らし、ACの訓練に精を出しているらしい。カーラが言ってた。だから初対面の時よりも強くなってる…らしい。あれ以降戦ったことがないから正直分からない。でも前まではMT連れないとできなかったグリッドの防衛が一人でできるくらいにはなったとか。全部又聞きだけど。

 

「おう!…でな、さっきビジターと一緒に来たスウィンバーンってやつに稽古をつけてもらえることになったんだ。いつかおまえを倒す!待っていろよな」

 

彼が稽古か。これは普通に強くなりそうだ。

 

「ん、待ってる。防衛頑張って。私はもう行くね?」

「死ぬんじゃねえぞ!」

 

そう言ってラミーはマッドスタンプの方に戻っていった。よく見るとマッドスタンプのそばにはスウィンバーンがいた。なにやら手元のタブレットとにらめっこをしている。

 不意に顔を上げた彼と目が合った。彼は少し微笑んで口パクでこういった。

 

(死・ぬ・な・よ、かぁ…なんだかんだ優しいよね)

 

私はそれにサムズアップで応え、ACに乗り込む。

 

〈AC「LIBERATOR」、出ます!〉

 

 カーラとチャティが操縦する輸送ヘリを目指して歩き始める。足元では整備班のドーザーの方々が手振り、帽振りで応援してくれているのが分かる。

 

 あぁ…なんだかあったかい。必ず帰って来よう。

 

ーーー

 

 「ビジター!そろそろ着くよ」

 

カーラのその声で私は見ていたパーツカタログを閉じた。ずっとこれからについて考えていたため正直カタログの内容は覚えていない。私はこれかどう動くのが最善なのだろうか。

 輸送ヘリの中のライトが点灯し、ACが運ばれる。大きな後部ハッチが解放され、ACを繋ぎ止めていたロックが外される。

一瞬の浮遊感を感じたのち、地面のしっかりとした感触が伝わってきた。着地は成功だ。

 

〈始めるよ、ビジター!配置に着きな〉

 

無線越しにカーラが言う。輸送ヘリは制御タワーに無事着陸できたみたいだ。私はABを使って制御タワーのふもとまで移動した。

 

〈こっちの仕事が終わるまで、あんたにはあのタワーを守り切ってもらう〉

 

【恒常化プロセスK、シールド展開】

 

無線ではない、広域放送が響き渡る。

 

〈ボス、手始めに防衛システムの一部権限を奪った〉

〈上出来だ、チャティ。こいつで時間を稼ぐとしよう〉

 

どうやら守るべきタワーにシールドが展開されたようだ。多少の被弾は大丈夫かも…。

 

〈配置に着いたようだね。チャティ、システム掌握までにかかる時間は?〉

〈5分で終わらせる。企業勢力は…〉

 

『敵性反応。アーキバスのMT部隊です』

 

エアに言われてレーダーを確認すると、そこにはいくつもの輝点が表示されていた。

 

〈…せっかちなお客さんだよ。ビジター、早速だが迎撃を頼む。あんたのおもてなしを見せてやるんだ〉

「……了解、カーラ。こっちは任せて」

『レイヴン、今思い悩んでも意味はありません。サポートします。集中を!』

 

エアに言われて気合を入れなおす。

 この制御タワーへつながる道は大きく3つ。どうやらその道全てから部隊が来ているようだ。ならば端から殲滅するのがいいだろう。私は右の道へとABで向かった。

 

ーーー

ーー

 

ーー

ーーー

 

 結論から言うと、計画は恙なく進行し無事私たちは洋上都市ザイレムを手中に収めることができた。終盤、自爆兵器が突っ込んできたときはどうなることかと思ったが、勘で持ってきていたパルスプロテクションが役に立った。正直全機突っ込まれてもシールドが破られることはなかったと思うけど。

 今いるのはザイレムにあったACハンガーだ。人の姿はない。カーラからは部屋に来るように言われているのでそちらに向かうつもりだ。だが足が重い。

 

『レイヴン、迷っているのですね』

(…そりゃあね)

 

 話される内容なんて分かりきっている。コーラルの焼却計画についてだろう。

 

「来たね、ビジター。先に計画について話しておこう」

 

部屋に入るとカーラはもう座っており、飲み物を飲んでいた。赤いけど…コーラルかな?*1

 

「あんたが再教育センターに囚われている間にアーキバスはバスキュラープラントを完成させた。今やコーラルは大気圏外まで吸い上げられ…ルビコンから持ち出されるのも、時間の問題だろうね。そうなる前に 焼き払う必要がある」

 

そう言ってカーラはバスキュラープラントの画像を拡大した。

 

「だが、プラントを突き破ってコーラルに火を点けるには…それ相応の火種がなきゃ、話にならない。分かるかい?ビジター」

 

無言で頷く。確かにそうだ。

 

「ザイレムは…プラントに到達する移動手段ってだけじゃない。コーラルを焼き払い、根絶する…そのための火薬庫なのさ」

 

カーラの話は終わったようだ。それを見越してエアが話し始める。

 

『それが…観測者たちの…』

「だが」

 

それをカーラが先ほどよりはっきりした声で遮った。エアがムッとしているのが分かる。

 

「どうやらアンタが連れてきたヴェスパーは今のまま計画を進めるのが気に食わんらしい。彼、私になんていったか分かるかい?」

「いや…」

「”貴様はレイヴンを分かってない。まぁ…私もすべてを分かってるわけじゃないが…。彼女は何かを知っている。そして、それ故に貴様に全面的に賛同することを躊躇っている。貴様は彼女と話すべきだ”…だとさ」

 

思わず息をのんだ。彼はどこまで知っているのだろうか。彼もコーラルの声が…?

 

「それでだ、ビジター。何かを知っているのなら、話してほしい。私だって無理強いしてまで計画をやらせる気はないからね。禍根は残さない方がいい」

 

カーラはそう言って私の眼を真っすぐ見た。私が話し出すのを待っているようだった。

 

「カーラは…コーラルが生きてる、って言ったら、信じる?」

「コーラルが?…続けてくれ」

「私には、コーラルの声が視える。ウォッチポイントに行ってから今まで、ずっと。彼女の言う『交信』でずっと私をサポートしてくれていた」

 

エアは黙ったままだ。

 

「彼女は、コーラルと人との可能性を見てみたいと言っていた。燃やす以外にも、何か選択肢があるはずだって。もし私がコーラルを焼く選択肢をした場合、いくら彼女が普通のコーラルではないとはいえ無事だという保証はない。たとえ先延ばしにしかならないとしても、私は、彼女と、友達と、一緒に居たい」

「ビジター!」

「自分勝手なのは分かってる!このままじゃいけないってことくらい、分かってる」

 

カーラにかぶせるように言葉を吐く。

 

「機能以外は死んでいた私に意味を与え、再手術まで手配し、人の温かさを教えてくれたウォルターはもういない!それだけでもう私は壊れそうなのに、エア…彼女まで失ったら私はまた独りになる!独りは…もう嫌なの」

 

一息つく。

 

「でも、燃やさない選択をとっても、いずれはまた選択を迫られるときは来る。燃やさない選択肢は延命措置でしかない。根本的な解決にはなり得ない。私は、どうしたら…」

 

自分が何を言っているのかわからなくなり、口を噤む。脳内はぐちゃぐちゃだ。体の震えがとまらない。

 しばらくして、カーラが口を開いた。

 

「なるほどね…。そういうことか。ウォルターの言っていた幻聴ってのはそのエア…だったかい?の交信だったわけだ。それでもって彼女はコーラルだと。……参ったね。ビジターのこんな姿を見せられたら計画が実行できないじゃないか」

『レイヴン…』

 

「カーラ、今はもう少し、時間が欲しいの。明日の終わりまでには、決めるから」

「……そうかい。私はどっちを選んでも責めやしないよ」

「ありがとう」

 

そう言って私は席を立つ。ドアに手をかけて、振り返る。

 

「ちなみにだけど…もし火をつけた場合、グリッドの人たちはどうなるの?」

「…グリッドに限ったことじゃあないが…メガストラクチャーに隠れてる連中に被害は行かないさ」

「…そっか」

 

そのまま自分に割り振られている部屋まで行ってベッドにダイブする。

 

『レイヴン、あの…』

「ごめんエア。今はちょっとほっといて。頭が熱いの」

 

エアの言葉を遮って目を瞑る。いつの間にか意識は深い闇へと落ちていった。

 

『解決策が…あぁ、寝ちゃった…』

*1
紅茶




スウィンバーン成分が薄い…足りない…

ACの構成は趣味です。解決策が思いつかないので失踪します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。