ゾフィスです…もう嫌です……   作:悲しいなぁ@silvie

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お願い…1日でいいから、あたしより長生きして…

 

 

 

夜になるのが怖かった、夜になると帰らなくちゃいけないから

帰るのが怖かった、帰ると怒られるから

眠るのが怖かった、眠ると朝が来るから

朝が来るのが怖かった、朝になるとユノさんにたたかれるから

 

お兄ちゃんが欲しかった

お兄ちゃんが居れば、きっと僕と一緒に遊んでくれるから

お兄ちゃんが欲しかった

お兄ちゃんが居れば、きっと僕を守ってくれるから

だから、僕は────

 

「おや…?こんなところに子供が一人

これはちょうど良い、良ければ私と遊んでくれませんか?」

 

いつも通り公園で遊んでて、いつも通りみんなが帰った後に、いつも通り遊具に座り込んでいると…誰かがそう声を掛けてきた。

顔を上げて、周囲を見渡すけど…やっぱり僕以外には誰も居ない。

 

「ぼ、僕…?」

 

「ええ、君に言っています…

おっと、私としたことが申し遅れました──」

 

真っ白のローブに、黄色がかったオレンジの髪をしたその人は優しい笑顔で僕の頭を撫でてくれた。

 

「私はゾフィス、公園で子供相手に少年と声を掛けるタイプの定職に就いているかすら定かではない(ミステリアスな)大人を目指しています」

 

言ってることはよくわからなかったし、ものすごく変な人だったけど、それでも…その日から、僕は一人じゃなくなった。

 

「お兄、ちゃん……?」

 

「お兄ちゃん?…ああ、確かに近所に必ず一人はいるやたらとスマブラの上手い友達の兄貴も憧れますね!」

 

言ってることは本当によくわからないけど、きっと悪い人じゃないみたい………たぶん。

 

 

 


 

 

「泣けるぜ、レオンはそう言うとエイダから受け取ったキーをポケットにしまいアシュリーを助ける為に孤島へと足を踏み入れ…

おや、もうこんな時間でしたか」

 

ゾフィスは本から目線を上げ公園に備え付けられた柱時計に目をやる。

時刻はすでに17時を過ぎようとしていた。

 

「ちょうどチャプター12も終わった(キリの良い)ところですし…今日はここまでにしましょうか」

 

ぱたりと本を閉じるゾフィスに、周囲から非難の声があがる。

 

「えー?」「もう終わりー!?」

「エイダはどこ行くんだよ!」「アシュリー大丈夫なのかな…」「ゴー……!」

 

子供達の不平不満にゾフィスは優しげに笑うと手作りの水飴や綿あめを配っていく。

 

「はいはい、明日もまた今日と同じ時間に始めるので観に来てくださいね

明日はみんな大好きなリヘナラドールも出ますよ」

 

アヒルのような魔物の子供やピンク色の髪をした少女、子馬のような魔物の子供に両手に掃除機を付けた昆虫のような姿の魔物…実に様々な子供達が一つまた一つと駄菓子を受け取り頬張る。

 

「ねぇ、ゾフィス…そのリヘナラドールってなんだい?」

 

アヒルのような少年がゾフィスにそう尋ねる。

 

「そうですねぇ…銃で撃っても死なない不死身の怪物ですよ!」

 

ゾフィスはにっこり笑うと…突然目と牙を剥き出しにしてそう言う。

 

「うわぁぁぁああ!!」

 

アヒルのような少年があまりの恐ろしさに涙を噴き出すも、横に居た金髪の少年は怖がりつつも得意気にゾフィスに尋ねる。

 

「へへ、でも知ってるぜ…?

レオンの近接攻撃(メレー)で倒すんだろ?エルヒガンテだって倒したんだ…そんな怪物なんかに負けないぜ!」

 

「なるほど…確かにレオンは自分よりもずっと大きな、山のような怪物にも立ち向かっていますからね」

 

金髪の少年…パピプリオの声にキャンチョメも自信を取り戻したように涙を拭き、ゾフィスに話す。

 

「そ、そうだ…!レオンは負けないさ!」

「当たり前だぜ!リヘナラドールだかなんだか知らねぇけど、そんな奴ベリィで一発だぜ!」

「ゴー…、ゴー!!」

 

元気を取り戻した二人を肩に乗せたゴームもまた、そうだそうだと手を挙げる。

ゾフィスはそんな三人を微笑ましそうに見つめ…そっと耳元で囁く。

 

「まぁ…リヘナラドールには体術(メレー)も効きませんがね」

 

「うわぁぁぁああ!!」

「うえぇぇぇぇん!!」

「ゴーーーーーー!!」

 

三人の目から涙が噴き出すのを見て満足そうに頷きながらゾフィスはせっせと本を片付けていく。

この後にある『予定』の為だ。

 

「……お前は子供が好きなのか怖がらせたいのかよくわからんな」

 

いつの間にか背後に立っていたアシュロンに、ゾフィスはさして驚きもせずに苦笑する。

 

「人聞きの悪い…もちろん好きに決まっていますよ

ただ、こう……一度下げる事で上げる時により楽しめるでしょう?」

 

ゾフィスのそんな返答に、アシュロンは絶対ただの趣味だ…と言わんばかりの目で見つめ返す。

 

「まぁ……実際ウケてはいるようだがな」

 

連日、人集りが出来る程に盛況なのは…綿あめ作りを手伝わされるアシュロンもよく知っている。

 

「もちろん、元のお話が素晴らしいですからね!」

 

きらきらと目を輝かせるゾフィスに今度はアシュロンが苦笑する。

 

「お前は本当に、ゲームと子供の話は楽しそうにするな」

 

何冊もの本や小道具を載せた荷車をヒョイとつまみ上げるとアシュロンはゾフィスの隣を歩く。

 

「それで…?そんなゾフィス様は今から何処へ行くんだ?」

 

「ふふ、最近出来た新しいお友達に会いに行くのです

アシュロンさんも一緒に来ますか?」

 

「………いや、先約だ…

今日はエルザドルと呑みに行く日でな、また今度会いに行くさ」

 

アシュロンは少し考えてそう答える。

 

「……ガッシュ君は貴方を見ても恐れるような子ではありませんよ?」

 

「うるせぇな、先約だと言ってるだろうが」

 

図星を突かれたのか嫌そうに顔を歪めながら荷車を降ろすアシュロンをゾフィスはクスクスと笑いながら何処か、ここでは無い何処かを見つめる。

 

「優しい子です…そして、とても強い子だ」

 

憧れのスポーツ選手を語る少年のような、好きなテレビのヒーローを説明する子供のような…そんな眼でゾフィスは呟いた。

 

「お前の子供好きは今に始まった話じゃないが…それにしたって随分持ち上げるな?」

 

「ええ、それはもう……なにせ、私なんかよりもずっと

ずっとずっと…ずぅっと、強いのですよ──私のような偽物ではない、本当に優しい魔物です」

 

アシュロンは、目の前の友人が時折見せるこの自罰的な笑みが嫌いだった。

だが、それを指摘したところで自分に見せなくなるだけだとも理解していた。

本人が、ゾフィス自身が変わらなければならない。

ゾフィスが、自分で気付かなければならないのだ。

だが、それでも…アシュロンは乱雑にゾフィスの頭を搔き撫でる。

 

「そりゃすごいな…()()()()()()魔物なら俺も是非会いたいモンだ」

 

言ったところで変わらない…だが、変わらなくとも言ってやりたいのだ。

目の前に居る俺の友は──ゾフィス、お前はお前が思うよりもずっとすごい奴なんだと。

 

 


 

 

「遅くなってしまいましたね…申し訳ありません、ガッシュ君」

 

日も暮れかかった頃、ゾフィスは公園に一人佇む人影に声を掛ける。

 

「ウヌ!私は大丈夫だ!!ゾフィスお兄ちゃんが来てくれるとわかっておったからな!」

 

座っていたブランコから飛び降りると、元気よくそう答えるガッシュにゾフィスは複雑そうに目を細める。

 

「ガッシュ君…その、喋り方は……?」

 

「ヌ?ああ!この方が私の父上と母上も私を見つけやすいと思っての!

なんと私の父上は王様だったのだ!!」

 

「……そう、ですか……」

 

「ウヌ!!だからこそ、私は今日からこうして話していこうと思うのだ!」

 

ガッシュは気付かない。

ずっと居ないものだと思っていた両親に、欲しいと願った兄まで居るとわかった高揚感で目の前に居るゾフィスの僅かな雰囲気や表情の『ブレ』に気付けなかった。

 

「それに、私には…私にはお兄ちゃんが居たのだ!!

ずっと、ずっと欲しかったお兄ちゃんが…私には…!!」

 

その後は、何を話して何をしたのかもよく覚えていない。

ただただ嬉しくて、楽しくて…ずっとこんな日が続けば良いと思った事だけは覚えている。

 

 

その翌日、その日は朝から騒がしかった。

王城の方からとても大きな音が鳴り響き、地震かと思う程の揺れが何度も何度も繰り返された。

学校は朝から休みの連絡があり、全員家に居るようにと先生が子供達の家を一軒一軒回っていた。

だが、ガッシュは居ても立ってもいられずに家を飛び出していた。

音は、揺れは全てが王城の方から来ていた。

何かがあったのだ…父上と母上の、お兄ちゃんの身に何かが。

自分に何が出来る訳でもないのに…ガッシュの足は自然と王城へ向いていた。

脇目も振らず、全力で駆けて、駆けて、駆けて…

途中の瓦礫やうずくまる兵士を飛び越え乗り越え…

そして、王城の前まで来たガッシュは…そこで固まってしまった。

思っていた。

もし賊が王城に攻め込んでいたならば、自分に何が出来ずとも飛び掛かってやろうと。

思っていた。

自分の家族を苦しめようとする悪者が居るならば、私が決して許しはしないと。

 

「ガッシュ君……」

 

ガッシュの前に居たのは、全身が黒く焼け焦げた…自身が兄と慕う男だった。

 

「エルザドル!ヴィンセント!ゾフィスを抑えろ!!」

「動くなゾフィス!!ホントに死んじまうぞ!!?」

「く、この…こんなボロボロのくせに……俺達を、引き摺って…っ!?」

 

寂しい時には優しく頭を撫でてくれた左腕が、肘の少し上からなくなっていた。

自分がどんなにわがままをいってもいつも笑ってくれた優しい両眼が、ゆで卵のように白く濁っていた。

退屈だとねだれば心が躍るような物語を聞かせてくれた澄んだ声が、壊れた機械のように掠れていた。

いつも見ていたあの大きくて優しい背中が、彼の全身が…どうしようも無い程に焼け爛れ、赤黒い肉と黄色いぶよぶよとしたナニカを覗かせていた。

それでも、ゾフィスは自分を抑えようとするバリーとエルザドルを引き摺りながら…ゆっくりとガッシュの前に歩み寄る。

 

「ガッシュ君…」

 

膝を折り、ガッシュと視線を合わせる。

動く度に、パラパラと皮膚や肉が剥がれ落ちる。

 

「ガッシュ君、君は今まで…辛く苦しい思いをしてきましたね」

 

ゆっくりと、引き攣れた皮膚を伸ばしながら残った右腕でガッシュを抱き寄せる。

 

「でも、これだけは信じてください

ガッシュ君…君は、決して──苦しむ為に産まれてきたのではありません」

 

どれ程の痛みが今、彼を襲っているのだろう。

これだけの負傷で、血すら流れない現状で…

 

「君は、その小さな手では数え切れない程に多くの人から

その小さな身体では受け止めきれない程多くの愛を、受け取る為に産まれてきたのです」

 

ぎゅう、と強く…痛いほどに強く抱き締められる。

 

「きっと、今まではそんなガッシュ君に神様が嫉妬して…イジワルをしてしまっていたのです

でも…もう大丈夫」

 

ガラガラに掠れた声で、ボロボロの身体で…

それでも、いつもと同じ優しい彼のままで…

 

「イジワルな神様なんて、私がやっつけてしまいました

これから、君はいやと言う程に幸せになるのです…絶対に!」

 

ガッシュには、中で何があったのかなどまるでわからない。

ゾフィスが誰に、何をしたのかなんてことは見当すらつきはしない。

それでも───それが、『誰の為』かなんて誰に聞かなくたってわかっていた。

 

「どうして…僕の為に、こんな…ボロボロに……っ!」

 

変えようとしていた口調が、元に戻ってしまう。

涙が出た、痛くもなんともない自分が。

それでも、ゾフィスはゆっくりと…泣き止ませるように優しく頭を撫でて、いつものようににっこりと笑った。

 

「そんなの、決まってるでしょう…?

私が、君の───お兄ちゃんだからです」

 

私には───僕にはお兄ちゃんが居る。

あんなに欲しかったお兄ちゃんが…僕には、二人も居る。

 

 

 

 


 

 

ガッシュ・ベル

この後、人間界に来た瞬間に『人が変わった』ように振る舞うようになる。

この作品に曇らせ要素は……

  • あっても良いんじゃないかな
  • 無い方が嬉しいかな
  • 少年漫画の範囲ならまぁ…
  • 原作で辛いのに二次創作で必要無くない?
  • 度合いによる
  • こんなもんあればあるだけええですからね
  • 最終的にハッピーエンドになるなら良いよ
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