ゾフィスです…もう嫌です……   作:悲しいなぁ@silvie

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リオウ「ヤバイぜクリア!!」
クリア「くっ!」
ゾフィス「大変ですねお二人共」





許さぬぞ…よくも私をここまでコケにしてくれたな、殺してやる… 

「ハァ…ハァ…ハァ…っ!」

 

現在時刻は朝の8時15分、そして清麿の通うモチノキ第2中学校の朝のホームルームまで残り15分…まさか初日から遅刻する訳にいくかと清麿は全力疾走していた。

いたの、だが………

 

「ハァッ…ハァッ…フグゥ、グゥフフフゥゥウウ!!」

 

清麿は、脇腹を抑えながら泣いていた。

久しぶりに食べるお袋の手料理、ついつい食べ過ぎてしまったとも思ったが…中学2年生の、成長期のガキの胃袋だし問題ないと思ってたんだが……

 

「グゥエホッ!フヌグゥゥフフゥ!!」

 

そうだった……この頃のオレ、飯なんてほとんど食わねぇクソモヤシだった…!!

脇腹が死ぬ程痛い…!身体が重い…!!全力で走ってるのに滅茶苦茶遅い…!!!

なんで過去に戻ってるのに、こんなんなんだよ……

普通、もっとこう…いくら食べてもハラが減るとか身体が軽いとか…若さを実感するもんじゃねぇのかよ…ッ!!

 

「ウヌゥ、清麿が死にかけておる…」

 

「ハァッ!ハァッ!!ハァッ……!

ガ、ガッシュ……マント…マントォ……お、送ってくれ…」

 

この足では間に合わないと判断した清麿は涙ながらにガッシュへ頼み込む。

しかし、ガッシュは困ったように眉を下げた。

 

「ヌゥ…その、清麿……言い辛いのだが、私も身体が非力になっておっての

森で動物達と修行もしたが…私一人で飛ぶのがやっとで、まだ人を乗せて飛ぶ事はできぬのだ…」

 

「な、なに……っ!?」

 

自分の足で行く事に意味がある、とかそういう理想論を投げ捨てた頼みだったが…そもそも今のガッシュでは不可能な頼みだったか…っ!

確かに玄関先で見た時、かなり身体が細かった…栄養失調とかじゃなく、単純に筋肉の量が少ないんだ。

使い方やその()()はわかっても、肝心要の体力や魔力…集中力を鍛えてない今の身体じゃあ同じような使い方が出来るわけがねぇ…

確かにわかる、ああそりゃそうだろうってわかるさ…でもよ……

 

「うおぉ…!うおぉぉぉ…!!」

 

「ウヌゥ…すごい涙だの……」

 

清麿は泣いていた。

母を心配させまいと、学校に行こうと言っておいて初日から遅刻するかもしれない自分の不甲斐なさと脇腹への激痛で泣いていた。

その後、ホームルーム開始の数秒前になんとか席へ飛び付いた清麿は…汗と涙にまみれたそれはそれは面白い顔で安堵の息を漏らすのだった。

 

 


 

 

久しぶりに座る学習机や教科書とノートを広げる感覚に妙な高揚感を得ながら清麿は久方ぶりの授業を堪能していた。

………学生の頃は考えもしなかったが、今観ると授業ってすごい考えられてるよな…

ある程度知っている人間に、ものを教えるのはそう難しい話じゃない。

だが、何も知らない人間に何かを教えるにはその教える物事への深い知識がなくてはならない。

今のところも、生徒達が板書できる時間を作る為に教科書にはない解法の話までしてる…

昔は、今さら学校で何を勉強するんだなんて馬鹿言ってたが…なんだ、今だって勉強する事しかねぇじゃねぇか。

 

「……高嶺、この数式を解いてみろ」

 

授業も中盤といったところで、教師が清麿を指名する。

 

「えっ…?……a=4、b=8、c=0.3…です」

 

少し意外に思いながらも真面目に授業を受けていた清麿は立ち上がりすらすらと答える。

………なんだこの数式…?滅茶苦茶簡単だ…イヤ、大人(オレ)から見ればとかじゃなくて本当に…基礎問題だ。

………まさか、あの頃も…別の本(魔本)を読んでたのを注意する為じゃなくて、オレがちゃんと授業について来れてるか確認する為に……?

初頭効果、という言葉がある。

要は第一印象を強く引き摺り、その後の評価にも影響を与えるという心理効果だ。

ずっと、嫌われていると思っていた。

だが、TM・リー…じゃなかった、中田先生はラスベガスで会った時もすぐにオレだと気付いてステージに上るように言ってきた。

自分だって定年で退職した後だってのに…十年以上前の生徒であるオレをだ。

………きっと、オレが思っていたよりもずっとこの頃のオレはガキで──どうしよう無く怖がりだったんだ。

期待して裏切られるのが怖くて…それなら、最初から期待しないようにして心を守っていた。

嫌われるんじゃなく、自分から嫌う事でなんとか平静を保っていた。

きっと、そうなんだ……

 

───100点とられるのが悔しいから。

───てめぇらの今回のテストはみんな0点だ!!

───オッホッホ、もっと悶々なさい♡

 

………イヤ、やっぱりみんながみんなそうじゃないな。

 

 

 


 

 

時々聞こえる陰口に若干心を痛めながらも、放課後…清麿は赤い魔本の中身を確認していた。

 

「ほとんど全て読めるな……まぁ、流石にシン・ベルワン・バオウ・ザケルガ(アレ)は無いが…

だが、これは……思っていたよりも……」

 

結果、想定の範囲であまり嬉しくない事が二つ…そして、予想外の事が一つ。

まず、ザケルやザケルガといった呪文が1ページではなく1小節分の長さに戻っている。

恐らくは威力も相応に下がっているだろう…そして、バオウから感じる力も同様だ。

つまり……

 

「バオウ・ザケルガは覚醒していない…」

 

魔物の成長によって新呪文を獲得する以上、今のガッシュならば全ての呪文を覚えていてもおかしくはない…だが、バオウ・ザケルガはガッシュの術ではなく元はガッシュの父親の術だ。

ガッシュの成長いかんはバオウの覚醒とは無関係…そう捉えるべきか。

そして、予想外の一つ───

 

「ウィビラル・ザケル……」

 

最後のページに記された術…それは、オレとガッシュの記憶が幻覚や思い込みではないと知らせるなによりの証拠だった。

 

「清麿、私達はすぐにでも未来へ戻らねばならぬ…私達の帰りを皆が待っておるはずだ!」

 

ガッシュが屹然とした眼で語る。

昔と同じ…昔よりも強い眼で。

 

「イヤ…待てガッシュ」

 

オレに止められるとは思ってもみなかったのか、ガッシュは驚いた顔でこちらを見返してくる。

 

「ヌッ!?な、なぜなのだ清麿!!」

 

「そもそも、此処が過去だとするならオレ達は時間移動…いわゆるタイムスリップをしたんだろう」

 

より正確に言うならオレ達の身体は昔のままだからタイムリープと言うべきなんだろうが…ともかくだ。

 

「現代の科学技術じゃとてもじゃないがこんなコトはできん…ガッシュ、魔界に時間に関係する術を持つ魔物が居たりするか?」

 

オレの質問の意図が掴みきれないのか、ガッシュは困惑しつつも答える。

 

「ウヌゥ…居ない訳ではないが……その者の術は当たったモノをボロボロにするような術だったハズなのだ」

 

おそらくだが、時の流れを早める光線のような術か?

だが、現状はオレ達だけではなく周りまで含めてあの頃のままだ…ここまで広範囲に、それも魔界だけではなく人間界にまで効果が及ぶような術があるとは考え難い。

 

「なら…やはりこの状況は魔本が絡んでいるとオレは思う」

 

「魔本が…?」

 

王を決める戦いでの報酬や、戦いが終わった後に傷ついた人間界の物品や人…自然に至るまで全てを修復したあの力ならばオレ達を過去に送るぐらいやってのけるはずだ。

そして、このタイミングで魔本がそれをしたというなら…必ず何か『意味』がある。

 

「きっと、オレ達がしなければならない()()()があるはずだ

それに、今のオレ達は過去に来ているんだ…どれだけ過ごしても向こうじゃほんの僅かな時間すら経っていない可能性もある」

 

……というより、その可能性の方が高いはずだ。

もしも魔本がこの状況を引き起こしているならば、オレ達の不利になるような事はしない。

つまり、オレ達がしなければならないなにかも…オレ達に────魔界を救う為に必要ななにかのはずだ。

 

「…………わかった」

 

ガッシュは眼を固く閉じ、手に爪が食い込む程に拳を握り頷く。

しかし、カッと眼を見開くと黄金のような輝きと共に宣言した。

 

「だが!可能な限り早くその為すべき事を為そうぞ!!

例え意味が無くとも、徒労になろうとも…皆を待たせる訳にはいかぬ!!」

 

ガッシュの宣言に、清麿は思わず頬を緩める。

変わらぬ友の姿に…誇るべき相棒の姿に。

 

「ああ!やるぞガッシュ!!」

 

「ウヌ!!」

 

 

 


 

 

記憶を頼りに屋上で金山に集られていた水野を助けた清麿とガッシュは帰路へつきながら今後について話していた。

 

「………やはり、クリアは現状ではどうしようもない

オレ達の戦力では術を使えない今のクリア相手でも厳しいだろう」

 

今では立派なUMAハンターとなった金山だが、この頃は割とヤンチャしていたなぁ…と懐かしみながらザケルによるツッコミを行った清麿は真面目な話だと気を引き締めて話す。

 

「バオウが未覚醒の現状では決定打が足りん…それに今のガッシュにはクリアを相手にするだけの身体能力がない」

 

滅亡の子、クリア・ノート。

清麿とガッシュを含む何人もの魔物とそのパートナーが結束し遂には打ち破った魔界の脅威を思い出しながら、清麿は淡々と残酷なまでの戦力差を告げる。

 

「ヴィノーが幼くまだ呪文が唱えられない今が最大のチャンスだが…もしここでクリアを倒しそこなった場合、クリアが『賭け』にでる可能性もある」

 

クリアが行うかもしれない賭け…それは奇しくも昔一度だけ清麿が行おうとしたソレに似ている。

即ち、ヴィノーを殺害することで新たなパートナーを発現させる賭けである。

通常魔物の子はパートナーを害することは無い…というより出来ないと言った方が正しい。

それはパートナーを喪えば術を使えなくなるからという理由もあるが…自身の魔本を自身では燃やせないというこの王を決める戦いそのもののルールと言った方が正しいだろう。

ただ、ことクリアとヴィノーの場合は違う。

今現在のヴィノーは言葉も満足に話せない赤子だ…クリアが食事や排泄の面倒を見なければたちまち衰弱してしまうだろう。

清麿は、ナゾナゾ博士に保護され成長したヴィノーを知っている。

当然…ヴィノーを危険に晒すようなマネは出来ない。

 

「ファウードもこの頃はまだ魔界に在るはずなのだ…」

 

ガッシュも頭を捻りながら現状を整理していく。

未来において希望となったファウードも、今の段階では人間界に厄災をバラ撒く爆弾に他ならない。

だが、ファウードは王を決める戦いが始まってすぐに人間界へ送られた訳ではない。

今はまだ魔界に在るファウードを現時点でどうにかするのは不可能だ。

 

「なら…」

「ならば…」

 

二人の声が重なる。

 

「千年前の魔物達を救う!」

「ウヌ!レイラやパムーン達を…一刻も早くあの石の恐怖から救わねばならぬ!!」

 

かつて仲間になってくれた二人を想い、ガッシュと清麿は決意を新たに闘志を燻らせる。

 

「その為には…」

 

清麿は隣に立つガッシュに確認するように視線を向ける。

 

「ウヌ…!」

 

ガッシュも応えるように頷く。

 

「皆の恐怖を煽り、無理矢理従わせたあの者を……

ゾフィスを、倒さねばならぬ!!」

 

「ああ、今度こそアイツの好きにはさせねぇ」

 

黄金のような輝きと共に、王とそのパートナーはまだ見ぬ標的を定める。

極悪非道な外道、ゾフィスを倒さんと。







清麿「金山、お前も若かったなぁ……」
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