深夜、現地の人間すら居ないような時間帯に小さな人影が海面から飛び出した。
ぶるぶると全身を震わせて海水を振り飛ばすと防波堤に置いてあるマントを羽織る、見ればその手にはそれはそれは立派なブリと四角い石板とが握られていた。
「デュフォー、次の石板は何処に在る」
ガツガツと、ブリを頭から丸かじりにしながら少年は傍らでブリ刺しを食べている青年に話し掛ける。
「そうだな…此処から北西に1700キロ程先、丁度アメリカ辺りになるな」
焚き火でブリの刺身を炙り、香ばしさを出してから白米に乗せ出汁を掛けかき込む青年。
デュフォーは魚続きの生活にも持ち前の頭脳で対応していた。
「アメリカか…」
短い付き合いながら、桁外れの洞察力を持つデュフォーはゼオンの僅かな表情の変化と仕草から彼が何かに期待していると察した。
「知ってるのか?魔界に人間界の地図でもあったか」
「…父上が書き記した千年前の戦いでの足跡はあるが、人間界全体の地図などは無いな」
だろうな、千年前と言えば世界地図すら完成していない時代だ…人間界と魔界が頻繁に繋がっているならまだしも千年に一度の周期で繋がるのならゼオンの知る地理と実際の地理はかけ離れているだろう。
「なら、お前の父親がアメリカに降り立っていた訳か?」
「イヤ、父上が降り立った国はアメリカという名前では無かったそうだ」
それはまぁそうだろうな、アメリカ大陸が発見されたのは15世紀…前回の戦いが何年掛かったのかは知らんが少なくとも戦いが終わった何百年も後の話だ。
当然、アメリカなんて名前が付いたのはもっと後だ。
「……なら、なぜアメリカに反応したんだ?」
おそらくはアンサートーカーを使えばわかるだろう…しかしデュフォーはそうせずにゼオンとの『会話』を選ぶのだった。
「ああ……アークレイ山地を観てみたくてな」
「…………アークレイ?」
デュフォーは観光地かなにかかとこれまでの旅の途中で寄った本屋でパラ読みしたアメリカ観光用の地図を頭に描くが、その地図の何処にもそんな名前の山は無かった。
「なんだ、人間界に住んでいるのにアークレイ山地も知らんのかデュフォー」
ゼオンはデュフォーの表情を見てにんまりと笑い得意気に話す。
「アークレイ山地はラクーンシティの郊外にあってだな、なんと此処に自生しているハーブを飲めばどんな負傷もたちまち治ってしまうのだ」
「………………」
当然、ラクーンシティなどという街も知らない。
だが…観光地図に書いていない可能性のある山とは違い、街の名前を書き漏らす事などあるのだろうか?
というか、そもそも
「そうだ!ラクーンシティでアンブレラの本社とR.P.D.も観ておきたいな!
デュフォーもS.T.A.R.S.の名ぐらいは聞いた事があるだろう?」
「STARS…」
当然聞いた事は無い。
そのアンブレラとやらも知らなければRPDが何の略かすらピンとこないぐらいだ。
「おいおいデュフォー、まさかS.T.A.R.S.も知らんのか?」
得意気にそう聞いてくるゼオンに、デュフォーはなんとなく察しながらも尋ねる。
「ああ、そのSTARSとやらはなんなんだ?」
「フッ、いいか?S.T.A.R.S.はR.P.D.の特殊部隊でテロや組織犯罪等のあらゆる事態に対応するエリート達だ
中でもアルバート・ウェスカーやクリス・レッドフィールド、ジル・バレンタインとは是非とも会ってみたいところだな…人間とは脆弱だと思っていたが、あれだけのゾンビと戦って傷付いてもハーブを飲めば全快するとは…
………待てよ、もしクリスやジル、レオンにウェスカーがパートナーになっていれば厄介だな」
ぶつぶつと考え出したゼオンを見ながら、デュフォーは確信した。
確か、現実と空想の区別がつくのは5歳〜6歳頃だ。
ゼオンはまだ6歳、車が空を飛び恐竜やドラゴンが居ると思っていてもおかしくはない年齢だ。
「デュフォー、アメリカに行く前にまずは防弾チョッキを買うぞ
オレのマントで防げるとはいえ、マシンピストルやシカゴを持っていた場合は間に合わん可能性もあるからな」
大真面目にそう言うゼオンに、デュフォーは真実を知らせるべきか少しだけ考え…面白そうなので黙っておくことにした。
「なるほどな、他に注意する事はあるか?」
「そうだな……クリスやウェスカー、レオンがパートナーだった場合はとにかく近づくな
若干ワクワクしながらそう言うゼオンにデュフォーは一切表情を変えずに頷いた。
ゼオンが全ての真実に気付き、デュフォーから
邂逅編時点でのゼオン&デュフォーペア
習得呪文数:13
最大術:ジガディラス・ウル・ザケルガ(準シン級)
言わずと知れた現王ダウワン・ベルの血を受け継ぐ王族にしてこの王を決める戦いの優勝候補筆頭。
ゾフィスの事は『気狂い』と言いつつも週5でゲームする仲。
今回の戦いでは父であるダウワンたっての願いで石板収集をしている……実は父に言われずともやる気だった事は秘密。
パートナーであるデュフォーはアンサートーカーと呼ばれる特殊な能力を持つが、もっぱら魚しか取ってこないゼオンの為にクッ◯パッドと地図アプリの代わりにしか使っていない。
王を決める戦いが始まり、早2ヶ月…各々の魔物達がパートナーである人間と交流を深め成長していく中──その報せは多くの魔物やパートナー達を驚かせた。
そして、過去を知る二人の魔物と一人のパートナーもまた…
おめでとう
人間界に生き残った諸君よ!
この時点をもって、残りの魔物の数は40名となりました。
試練を乗り越え、さらなる成長をし、魔界の王になるべく、これからも全力で戦いあってください。
「馬鹿な、早過ぎる……!」
清麿はじっとりとした粘度のある汗を垂らしながら、自身の魔本を見る。
魔物の子の総数が半分を切ったという、あまりにも早過ぎる報せを。
「まさか、居るのか…?オレ達以外にも……
記憶を持った魔物とパートナーが…!?」
己の知る戦いではないと、そう確信するに余りある現状に優秀な頭脳が赤熱する程回転する。
「誰だ、誰が…今、誰が残っている…
そして、誰が……覚えているんだ……?」
アンサートーカーは、魔法や超能力ではない。
問いに対する答えを出す力、しかしそれは人よりも少ないヒントと時間で出力出来るということ。
全くの未知、無知の事象への答えは出せない。
だが、そんなアンサートーカーが出した一つの答え…
───
魔物の全てが消し去られていない現状が、それを証明している。
清麿は、今まで何処か緩んでいた気を強く引き締める。
容易い事ではない…経験を積み、あの頃より格段に強く大きくなった自分達でも力不足かもしれない。
ただ、それでも──
「ガッシュ…オレは何度だって、お前を王にする」
固く、固く握った手は決して離さぬようにと赤い魔本を強く握っていた。
「……どうやら、オレ以外にも居たようだな」
自身の黒い魔本の輝き、魔本からの報せにブラゴは少しだけ意外そうに呟いた。
日課の鍛錬を終え、日も灯りも落ちすっかり暗くなった屋敷の一室でブラゴは自身の魔本を手に少しだけ悩む。
「クリアか…?」
あの頃のように、がむしゃらに強くなる理由を持たないパートナーに無理を強いる程子供ではない。
倒さねばならぬ相手も、いざとなれば自分一人でなんとかなるはずだった。
だが、それは自分だけが強くなっていた場合だ。
「………構わん、より強くなれば良いだけのことだ」
相手がいくら強くなっていようとも、それを上回れば問題ない。
最悪の場合、自身一人で全てを片付ける為に…ブラゴは再び鍛錬の為に屋敷を後にするのだった。
王なんてそこまで興味あるもんじゃねぇ。
自分でもそこまで頭が回るほうじゃないと自覚してるし、なにより自分よりずっと王になるべきだと思える奴を知ってる。
だから、この戦いには最初からそこまで気乗りしなかった。
勿論、手を抜いたりはしない…王になってやろうって本気で向かってくる相手にそんなナメた事はしねぇ。
だが、それでもどっかで思ってた……あぁ、早く終わらねぇかなって。
「エルザドル…助けてくれ……」
そんな考えが吹き飛んだのは、ボロボロで今にも死にそうなアシュロンが目の前に現れたあの時からだ。
アシュロンの強さはオレが一番知ってる。
どんな攻撃だって弾くヒヒイロの鱗、掠っただけで大木でも紙くずみてぇに吹き飛ばす爪、でけぇ岩盤でもブチ壊しちまう尾。
大人を含めたって、アシュロンはオレが知る中で一番強い魔物だ。
そんな、そんなアシュロンが…
あの固いヒヒイロの鱗で覆われたデカい身体の、何処にも無事な場所がないくらいにボロボロで。
肩には深過ぎて傷口が見えねぇぐらいにデカい穴が空いちまってた。
爪だって何枚も剥がれてて、尾は千切れてねぇのが不思議なくらいにズタズタになってた。
「あ、アシュロン…!?お前…どうなって」
焦るオレと違って、アシュロンは強い眼でオレを見てくる。
「ついさっき…クリアと名乗る魔物と戦った」
「魔物…!?」
信じられなかった。
酔って飛んでる時に飛行機に撥ねられたとか、そんなでもない限り……
アシュロンが、魔物相手にここまでやられるなんて思いもしなかった。
「アイツを…クリアを王にしてはならん!!」
吠えるように声を荒げるアシュロン。
傷口から血が噴き出すのも構わずに、強え眼でオレを見てくる。
「強くならねば…今よりも、もっと…ずっと強くならなければ奴は倒せん……っ!!
エルザドル、お前だけが頼りだ……頼む!」
王なんてそこまで興味あるもんじゃねぇ。
だけどよ……親友がここまで頼ってくれるってんなら…
やる気にならねぇ訳がねぇ。
「オレだけってよ、アシュロン…お前オレ以外に話してねぇのか」
「オレがクリアと戦って、なんとか逃げ延びたのが昨日のことだ…それからずっと、お前を探していた
話したのも、お前が最初だ…エルザドル」
こんなことを思っちまう場面でも、状況でもねぇのはわかってんだけどよ。
それでも……嬉しいと思っちまった。
あの賢くて、強くて、オレなんかよりずっとデケェと思ってたアシュロンが…オレを頼ってくれたことが。
親友が、オレを親友と思っていてくれたことが。
なぁ、アシュロン…わかるかい?
「アシュロン、まずはお前のケガを治さなきゃな」
「……良いのか?エルザドル…命の保証もできん戦いになる
頼んでおいてなんだが、断ってくれても…」
オレが、どれだけ嬉しかったか。
「うるせーやい!!
やるったらやるんだ!!オレとお前の二人がいりゃあクリアだろうがなんだろうが敵じゃねーんだよ!!」
わかるかい、アシュロン…
「すまない、ありがとう…エルザドル」
「なに言ってんだ…礼はそのクリアってのに勝った後で聞いてやらぁ!!」
オレは、嬉しかったんだぜ。
「実に面白いゲームでしたよ、アレはね」
「ザケルザケルザケルザケルザケルガ!ザケルザケルザケルザケルガザケルガーー!!!」
「うわああぁぁぁぁーーーーおぅ!!!?」
「シン・ゴルゴジオ!」
「ガッシュ!?ガーーッシュ!!」
「お前が元気に二本の足で、立てなくなる理由だよ」
「Vの華麗な力を頂点に!!!」
「ゾフィス!オレは…お前を王にする!!」
「僕の記憶の中で、強く美しい君を汚さぬように…
死んでくれ、ゾフィス」
次回から新章開幕ですが…
この作品はかなり前に書き始めたので、プロットを整理するためにも少しだけお時間をいただければと思います
あと、誤解なきように言っておきますが作者はswitch2の抽選外れました