ドン番外 らいほうバニタス   作:鳥鍋

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そのいち

 

「うわあぁぁぁぁぁぁ!?」

 

とある街の工場の近く、ヒト型の何かが吹き飛ばされ、手前から奥に倒れながら転がった。

 

「どんなもんよ!」

 

吹き飛ばしたのは黄色いスーツに角、肩と全体的にトゲトゲしたサングラスの戦士、オニシスター。武器のフルコンボウを肩に担いで啖呵を切った。

 

「ケンケーン!」

「追い撃ちだ!」

 

倒れた所を更に奇妙な二人の戦士が攻め立てる。空からは桃色の身体と翼、何より長過ぎる両脚の持ち主、キジブラザーの空中射撃。それが通り過ぎた後に物陰から走り出したのは黒い身体に犬の顔、何より幼児の様に小さな体型のイヌブラザーが、大きな手裏剣で起き上がろうとする背中を切り付ける。

 

「よし、ここで決めるぞ!」

 

青い身体に太い両腕のサルブラザーが合図をして、彼の隣に攻撃を決めた三人が並ぶ。全員が先程キジブラザーも射撃に使ったギアとサングラスの合わさった銃、ドンブラスターのギア部分を回し、目標に構えた。

 

『パァーリィータァーイム!』

 

派手な効果音と共に四人の銃口にエネルギーが収束し、狙われた相手、ヒトツ鬼はなす術無し。そのはずだった。空中から唐突に脳人レイヤーが開き、何かが落ちてくるまでは。

 

「ふっ!」

「?!」

「わあぁぁぁぁ!?うぇっ!」

「うわっ?!……サッちゃん?」

 

ヒトツ鬼を背中側に地面に降りたのはドンブラザーズでもヒトツ鬼でも無い人間、それが四人。射線上に運悪く出てきてしまった。

 

「わ!?ちょっと!中止中止!!」

「うわっ!危な!」

 

オニシスターの一言でドンブラザーズの必殺のエネルギーは霧散し、一撃を放つ事は無かった。

 

「まだ、私は回りたァァい!!」

 

その隙に乗じてヒトツ鬼は立ち上がり、足を滑らして前に進む。そのままどんどん加速して、スピードスケートよろしくどこか遠くに離れてしまった。

 

「……逃げられたな」

「大丈夫ですか?!」

 

ヒトツ鬼を取り逃がした事を悟るサルブラザーに、戦いに巻き込まれた人達を心配して長い足で近寄り介抱しようとするキジブラザー。しかしその一歩は急に止まる。

 

「動くな!何者だ貴様ら!」

「おわっ!?」

 

脳人レイヤーから飛び出したのは四人、それも全員女性、年頃はメンバーの一人と同じ女子高生程に見える。しかし奇妙な事に全員がその手に銃、無駄なデザインの無い無骨な物を持ち、一人がそれをキジブラザーに威嚇する様向けた。

 

「うわぁぁぁ!突然どこかに出てきたと思ったら姫ちゃんが上に落ちてきました!苦しくて重……」

「ヒヨリ、そこまで。リーダー、あの装備をよく見て。ドンモモタロウと共通している」

 

リーダーと呼ばれた少女が手を上げたキジブラザー達を威嚇したまま観察する。額の鉢巻き、目立つサングラス、桃が描かれたベルトの赤いバックル。合点が付いたのか、銃を向けたまま質問を投げ掛ける。

 

「お前達、ドンモモタロウを知っているか」

「えっ、タロウ!?」

「知り合いか?」

「アイツ、どこで何したんだ?!」

「あのー、手を降ろしていいですかね?」

 

三人はその単語が出た事に驚くか不思議に思い、キジブラザーはヒヤヒヤしながら姿勢を楽にするタイミングを伺っていた。

 

───

 

ドン番外 らいほうバニタス

 

───

 

王苦市の一角に古めかしさを感じる店を構える、『喫茶どんぶら』。その店内にアイドル、クレーマー、幽霊などもはや珍しくない程訪れた変わった客達。半数は常連にして街を守るヒーロー達、ドンブラザーズのメンバー四人。もう半数は先程落ちてきた四人、キャップと口元を覆う固そうなマスクのリーダー、無気力そうで風邪か花粉症か黒く薄いマスク、自身無さげに帽子を外し片目が隠れマフラーを巻いた者、店内を好奇心で見回すフードを降ろした三つ編みおさげの少女。長い机でそれぞれ横並びに向き合っている。

 

「ご注文は?」

「いや、必要ない」

 

黒い服の喫茶店のマスター、五色田介人に聞かれるが素っ気なく断った。

 

「ここは雉野が奢るから話を聞かせてくれないか?」

「ちょっ、猿原さん?」

「大丈夫!私も払えるから!」

「は、はるかさん!」

「……水でいい」

「私も、味なんて無意味」

「……チョ、チョコレートパフェで」

「じゃあ紅茶で」

 

マスターは注文をメモして店の奥に下がった。そこから沈黙に陥る前に作務衣にねじりマフラーの青年、猿原真一が発言した。

 

「まずは自己紹介だ。私達はドンブラザーズ、君が言ったドンモモタロウ、もとい桃井タロウの仲間だ」

「桃井タロウが何者か言ってみろ」

 

リーダーの確認に息を合わせる様、順番に答える。

 

「シロクマ急便の宅配業者で、」

「嘘をつく事ができない、」

「縁にうるさい野郎だ」

「だけど何でもこなせる凄い人ですよ!」

 

紅一点の鬼頭はるか、猿原、黒いコートの犬塚翼、スーツにピンクのネクタイの雉野つよしが順番に言った特徴が自分の知っている桃井タロウと一致しているのを確認したのか仲間への目配せと共に自己紹介を始めた。

 

「元アリウス分校生徒、錠前サオリだ」

「戒野ミサキ」

「……つ、槌永ヒヨリです」

「秤アツコ、よろしく」

「鬼頭はるか、漫画家だよ」

「猿原真一だ」

「……犬塚翼」

「雉野つよしです。皆さん、はるかさんと変わらない位ですかね?」

「リーダー、あの三人とも大人だよ」

「……ここはキヴォトスでは無いのか」

「あ、あの、……はるかさん。ヘイローは無いんですか……?」

「えっ、何それ?なんかマズイ?!」

「それよりお前ら、何であんな銃を持っていたんだ。俺でもそんなヤバい事はしてねぇぞ」

 

お互い気になる事が多すぎてわちゃわちゃしかけた所に猿原が待ったを掛ける。

 

「全員落ち着け、質問は順番に話すべきだ」

 

わちゃわちゃ、わちゃわちゃとお互い答えを出さないまま質問攻めを叩き合う。

 

「……黙れ!!」

 

サオリの力強い一言に押し黙った。彼女の気迫には戦いを潜り抜けたドンブラザーズでも怯んだ。

 

「すまない、では聞こう。君達は何者でどこから来た?」

 

仲間を代表した謝罪と質問をする猿原に、サオリ達はポツポツと答えた。

 

「ふむ、君達はキヴォトスという世界の学生で、そこにある脳人の扉に引き寄せられた」

「キヴォトス?では生徒は頭にヘイローが浮かんでいて……見える見える!サングラスで見えた!」

「大人は動物やロボットの姿で、先生以外でこんな顔なのは初めて見た。そこの会社はどんな感じですかね?」

「で、そこの奴らは頑丈で銃の弾で怪我しないから銃撃戦が日常茶飯事……俺の罪がチンケに見えるな」

「……そうだ。後で知ったがアリウスはとても学校とは呼べなかったがな」

 

過去の苦しみや犯した罪を思い出して、サオリは苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

「それで、そのキヴォトスには戻れるのか?」

「分からない。桃井タロウの様にあの扉を開く事は私達には出来ないからな」

「さっきの場所でもう一度扉を開けるとかどう?」

「それなら善は急げ、早速行こう」

「……ち、注文がまだですよ、皆さん。ゆっくりチョコレートパフェを食べさせてください……」

 

はるかの提案に猿原が乗り、店を出るのをヒヨリが待ったを掛ける。スクワッドは銃以外の荷物が無くすぐに出られるが、落ち着いて飲食できる機会も少ない。

 

「ヒヨリ、早く行かないとどうなるか分からない。キヴォトスでもないよく分からない場所で暮らせる?」

「そ、それは……」

「ミサキ、たまにはこうしてゆっくりしてもいいんじゃないかな?サッちゃんともお茶が飲めるし」

「姫、いやアツコ……注文を受け取り次第すぐに片付けろ。5分以内だ」

「邪魔するぞマスター」

「やっぱりここにいた、翼!」

 

スクワッドが行動方針を固めていると、店の入り口から種類の違う二人の声が聞こえた。唐傘を肩に乗せた男性と小柄だが輝きと妖艶さを秘めた女性。

 

「編集長とソノニ、今日はどうしたの?」

「おぉはるか、さっきおかしな揺らぎと扉を見つけたから閉じて戻ってきたんだが……そいつらは?」

「翼、色目を使ってないだろうな?」

「それって……」

「まさか……」

 

はるかと翼が店に入ったソノニとソノザの一言にお互い目を合わせて察した。そしてスクワッドのリーダーもそれが分かってしまった。急に席を立ちソノザの胸ぐらを掴み剣幕でまくし立てる。

 

「どういう事だ!扉を閉じた?今すぐ元に戻せ!」

「うおっ?!な、何だ?」

「わー?!ちょっと待った待った!」

 

はるかが慌てて二人の間に割って出るが、スクワッド達は状況からして時既に遅し。

 

「彼女達、別の世界から来たからあの扉で帰りたいって。編集長、できる?」

「別の世界……無理だ。完全に塞いで消えた」

「なっ!?」

 

サオリは掴む力を無くして腕を下ろし、スクワッドのメンバーも驚きの表情を見せる。

 

「ご注文の品、水二つ、チョコレートパフェ、紅茶、お待ち」

 

マスターは空気を読んでか読まずか注文の品をそれぞれの席に置く。しかしサオリは席に戻らずその場に佇むだけだった。

 

「うわぁぁぁぁん!!どうせ戻れないならここで思う存分食べまくります!ついでにスマホの充電もさせてください!」

「いいよ」

「リーダー、今すぐ戻れなくても彼らはドンモモタロウの仲間、何か次善策を持っているかもしれない。それまで落ち着こう」

「……美味しい、サッちゃんもどう?」

「……すまないドンブラザーズ、お前達には世話になりそうだ」

 

必死でパフェを食べるヒヨリや提案するミサキ達に勧められサオリは席に戻る。

 

「まぁこれ位へーきへーき」

「それと次善策か……無い訳では無いが」

「本当か?」

「マスター、私達のキビ・ポイントはどれだけ貯まっている?」

 

充電器と延長コードを手に持ったマスターが気付くとカウンターからパソコンを取り出し、画面には4色のポイントを表す丸いマークがそこそこ詰み上がっていた。

 

「それなりですね、別の世界に行くのに足りますかね?」

「待て、俺達のポイントを会ったばかりの奴らに使う気か?それで不幸になったらこいつらを責めるのか?」

「それでも、一人が一人ずつ元の世界に安全に送るとしてこの倍はポイントが必要になる」

 

翼か雉野の感想に待ったを掛けるが、マスターは淡々と答えた。

 

「つまり帰る事はできるのか?」

「時間がかかる、だが不可能では無い」

「ま、待ってください……キヴォトスに戻ってもどこかの廃墟で逃亡生活ですよ?逃げたり固い床で寝たりするのは辛いです……」

 

パフェを半分食べたヒヨリが不安な顔でサオリを止めようとする。

 

「ヒヨリ……キヴォトスには先生がいる。それに生徒としてまだ学ぶ事があそこにはある。それを放りだしてまで別の世界で暮らそうとは思わない」

「私も先生と育てた花が気になるから帰れるなら早くしたいな」

「……リーダーには、サオリ姉さんには従うよ」

「うわぁぁぁ!どうせ帰るならこの世界を全力で満喫してからにしますよ!」

 

ヒヨリは叫びながら残りのパフェを早いペースで食べ進めた。その一部始終を見ていたソノザも口を開く。

 

「何と言うか、お前の漫画でも見た事無いぞこんな奴ら」

「確かに!ねぇあなた達、漫画のモデルにならない?」

「それよりこいつら帰るまでどう過ごすんだ?」

「住む場所が必要なら、誰かの家に置いておくかだな」

「生活費も必要ですよね。マスター、はるかさんみたいにバイトの募集してますか?」

 

マスターはもったいぶる様子を見せると急にバックヤードに戻る。その10秒後、手に喫茶どんぶらの制服を持ってサオリの横に立った。

 

「バイトの枠、あるよ」

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