ドン番外 らいほうバニタス   作:鳥鍋

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そのさん

 

「アノーニ!」「アノーニィ」

「回り……たい!」

 

都立武蔵野学園高校学校にて、アノーニ達がハンマーを振り回して制服の学生や通りすがりの市民を追い払う。その中心には件のヒトツ鬼が何やら恨めしそうに佇んでいた。

 

「あれ、ここ前にも来なかったっけ?」

「タロウが消えた時だな」

 

オニシスターが感じたデジャブにサルブラザーが補足を入れる。

 

「ヒトツ鬼を倒したらヒヨリさんをなんとかしてもらわないと!」

「来るぞ!」

「「アノーニィ!!」」

 

キジブラザーが頭を抱えているとイヌブラザーが銃を構えて警告、直後アノーニ達が突撃した。

 

───

 

「サッちゃん、ヒヨリ、ただいま」

「リーダー、戻ったよ」

 

喫茶どんぶら、外出したスクワッドの二人が入口から入ってきた。

 

「ドンブラザーズ達は?」

「ヒトツ鬼と言って消えた」

「こちらもだ。今頃奴らと戦闘しているはずだ」

「ソノザさんも奇妙な扉を開いて何処かに行きました……」

 

現状の情報交換をして、冷静に対応する。

 

「どうする、サッちゃん?」

「姫、ヒトツ鬼との戦闘は彼らの方が慣れている。奴らと戦ってもキヴォトスに帰れる訳じゃないから弾薬の無駄」

「そうでも無さそうだ」

 

どんぶらのマスターがカウンターに置いたパソコンを見て、全員に呼びかける。

 

「君達から発せられているエネルギーと似た物をあのヒトツ鬼から観測した。戦闘に参加するかは自由だが、近くで見て損する事は無いだろう」

「キヴォトスに帰る手がかりになるかもしれない……リーダー?」

「行くぞ」

 

───

 

「はっ!」

「ケンケーン!」

 

ドンブラザーズの面々はアノーニを蹴散らし、ヒトツ鬼に直接攻撃を浴びせる。サルブラザーのパンチ、キジブラザーの回し蹴り。

 

「よいしょー!」

 

オニシスターのフルコンボウ。

 

「やっ!」

 

イヌブラザーの脛蹴り、ここまでは良かった。だが何かがおかしい。

 

「うあぁ!……脚を蹴るなあぁぁぁ!」

「うおっ?!」

「まずい!」

 

蹴られた方と別で強く地面に足踏みした。その中心から冷気が吹き出し、雪と氷が生まれ、猛吹雪が吹き荒れる。

 

「わー!寒い寒い寒い!」

「このままじゃだめだ!」

 

吹雪はどんどん強くなり、季節外れの局地的な銀世界を作り出した。

 

「翼!」

「はるか!」

 

脳人の二人が走ってたどり着いた時は遅かった。冷気の中に佇むヒトツ鬼の前には白くコーティングされたおかしなポーズのオブジェが並び立つ。

 

「寒い……」

「ありのままの姿……」

 

ドンブラザーズは吹雪から中途半端に逃れたまま変身解除されたポーズで固まっている。体中氷まみれで震える事すらできない。

 

「逃げるぞ翼!」

「ダメだ!動かせない!」

 

ソノザがはるかを抱えるが動かす事ができない。諦めて手を離し、ブレスレットを構える。

 

「痛たたた!」

 

構えると同時に銃声が響き、ヒトツ鬼の体中から火花が飛び散る。脳人二人が振り向くと、校門にいたのは銃声が止まないキヴォトスでも徹底的に訓練された者達。

 

「目標を確認、作戦は対象の撃破及び確保」

 

アリウススクワッド、錠前サオリがアサルトライフルで的確な射撃を命中させた。他のメンバーも攻撃の為に移動しようとして、コツン、とアツコの足に何かが触れた。

 

「?サッちゃん、これ」

「なんだ、姫?サングラス?」

 

彼女が拾ったのは黒いサングラス。サオリの目にははるかが使った物に似ている。

 

「うう……それ使って……」

「ヒトツ鬼は俺達が抑える!」

「お前達がアバターチェンジしろ!」

 

はるか凍ったまま使用を勧め、ソノニとソノザはブレスレットから装備『コロンドレス』、『カゲスタイル』を纏いヒトツ鬼に武器を向け走り出す。

 

「借りるぞ」

「使いますね……雉野さん」

「はぁ……」

 

スクワッドはサングラスを犬塚以外の凍り付いたドンブラザーズから外し、サオリは黄色、ミサキは青、ヒヨリはピンクを自分の顔にかける。

 

『ドン・ブラスター!』

「確か、こうだったな」

 

共に戦ったドンモモタロウに倣い、サオリはスクラッチギアを回し、他のメンバーもマネをしてスクラッチする。

 

『ぃよぉ~ッ!』

 

「やかましい、無駄な機能」

「後にしろ、ミサキ」

 

ミサキの疑問は後回しにして更にスクラッチを回す。

 

『ドン!ドン!ドン!ドンブラコ!』

 

『ウッキウキ!ウッキウキ!ウッキウキ!ウッキウキ!』

『フクはうち!オニもうち!フクはうち!オニもうち!』

『トリッキー!トリッキー!トリッキー!トリッキー!』

『ワンだふる!ワンだふる!ワンだふる!ワンだふる!』

 

アバタロウギアから実体化したデータが彼女達を包み込み、アバターチェンジは成功。ミサキは猿原と同じサル、サオリはオニ、ヒヨリはキジ、アツコはイヌ、彼女らは日本一のお供達となった。

 

「わあぁぁぁん?!目線が高すぎます!」

「サッちゃん、大きくてかわいいね」

「いや、姫が小さいだけだ」

「そんな事より奴を!」

 

ヒトツ鬼が冷気を足に纏いながら疾走、いや滑走してくる。訓練の成果があれば避けるのは苦ではなく、メンバーは左右に回避する。

 

「ちょ、わあぁぁぁん!空、飛んでますぅぅぅぅぅ?!」

 

一人は勢い余って背中の翼を広げて校舎程の高さを飛び回る。それに目を向ける暇を相手は与えてくれない。縦横無尽にスピンも交えて学校の敷地を滑り回る。サオリは未知の能力を持つ敵に身構えた。チェンジに使用したドンブラスターはそのまま持っている。銃を持ってやる事は一つ、彼女達の日常に染み込んだ動作だ。

 

「攻撃開始!」

 

チェンジしたサオリ、ミサキ、アツコはキビ弾丸を連射する。目標はひらりひらりと弾丸を回避するが、一斉射撃の密度から逃れるのは限度がある。

 

「うっ!あっ!ぐぁ!」

「わあぁぁぁ!……止まった、撃ちます!」

 

そこに空中から狙撃手がホバリングしながら的確に狙う。弾丸の雨あられが全身を襲うがこの戦闘においては決め手に欠ける。そこに隙を見出したのか異形の銃、『鬼険銃』を生成する。それを向けるがスクワッドとは射線が重ならない。拍子抜けに攻撃を続けようとするが、銃口の向きに一拍置いて気がついた。

 

「翼!」

「お前達!」

 

弓と槍では滑走に追いつかなかったソノニとソノザは咄嗟に武器を盾に凍り付いたドンブラザーズの前に立つ。弓と槍から火花が飛び、反動にたたらを踏む。

 

「ベルトからギアを取れ、アバターチェンジだ!」

 

ソノザのアドバイスを聞いたスクワッドはバックルを開き、適当なギアを手に取った。

 

「これか。アバターチェンジ!」

『よっ!天装戦隊!!』

 

光と鐘の音に包まれ星を護る天使達、『ゴセイジャー』へとチェンジ。

 

「落ちますぅぅぅ!あっ大丈夫でした……」

 

ゴセイピンク/ヒヨリは空中でチェンジしたのが仇となったが、天使としての翼を広げて事なきを得た。

 

『ガッチャ』

「ディフェンストーンカード、天装」

『イクスパンド・ランディックパワー』

 

ゴセイイエロー/サオリは人間の顔を模したアイテム、テンソウダーを少々慣れない手つきでカードを読み込ませる。直後、凍ったメンバーの四方から地面がせり上がり、身長を軽く超えた石の壁がそびえ立ち彼らを閉じ込めた。

 

「これでドンブラザーズへの攻撃は防いだ。戦闘を継続するぞ」

「はい……でもこの装備、白い翼が生えたりして……トリニティみたいです……。私達への当てつけなんでしょうか、嫌になりますね……」

「それよりも使える武器を出さないと。ハンドガン程度じゃ相手は倒せない」

「もしかしてこれ?」

 

ヒヨリが自分達の因果に卑屈な方向を向き、ゴセイブルー/ミサキが建設的な案を出すと、ゴセイブラック/アツコがカードを取り出した。

 

「「「「天装!」」」」

『サモン』

 

読み込んだのは4種のゴセイウェポン、近接武器と遠距離武器で半々に分かれている。

 

「行くぞ!」

「やっ!」

 

サオリとアツコはハンドガンのゴセイブラスターを左手で撃ちながらソノザと共に距離を縮め鬼険銃と対抗する。威力では敵に劣るが、連射速度と命中率はこちらが上。素人の射撃を避けて爪と斧、槍をぶつける。銃では近距離には対応できず、棍棒のように振り回して彼女らを追い払う。それを受け止める道理など無く素直に引き下がる、と同時に射線を確保した。

 

「し、支援します!」

「発射」

「ふっ!」

 

大型の銃と不慣れなクロスボウ、弓矢は見事命中、胸に火花を散らせる事となった。

 

「スプリント!」

 

ヒトツ鬼はたまらず明後日の方向に滑走して、校舎へ入り込む。

 

「室内戦闘か、装備を変更だ」

「でも……どれににすればいいか全く分かりませんよ?」

「デカレンジャーギアだ」

 

石壁を作った方向に振り返るが、聞き覚えある声の為銃は向けない。

 

「マスター?なぜここに」

「アドバイスだ。チェンジした後スワットモード、オンと言うといい」

 

いつの間に来ていた喫茶どんぶらのマスター、五色田介人の疑問に答えになってない答えを返すが、優先すべきは敵である。アドバイスの通りに再びチェンジを行う。

 

『よっ!特捜戦隊!!』

「スワットモード、オン!」

 

けたたましいサイレンが鳴り響き、ベスト、脚部アーマーを装着、大型マシンガンを抱えた『スワットモード』への変身を完了した。

 

「あれ?ごめんサッちゃん、先に行って」

 

アツコはイヌブラザーのままギアを探るがどうにもならない様子。

 

「姫……仕方ない、戦闘を継続する」

 

───

 

スクワッドは校舎内を散開して捜索、感知システムやインカムを頼りに敵を探す。

 

『こちらサオリ、3階は捜索完了。異常は見られない』

「こちらミサキとヒヨリ、2階の熱源反応が異様に低い。奴がいる」

「ソノザさん達の1階には、誰もいないでしょうね……」

『ラペリングで2階に突入、合流次第攻撃だ』

 

教室の一つから溢れ出る冷気、障害物として置かれた氷塊や寿司桶の山、高校が鬼によって異様な場所に書き換えられている。そこを一歩一歩慎重に進むデカレンジャー/スクワッド。

 

「まだまだ……回れる……」

「目標を確認。リーダー、合流は?」

『ラペリングが可能、挟み撃ちで攻め立てる』

「準備は?」

『3カウントで撃て。その後背後から攻撃。3……』

「2……」

『1……突入!』

 

ディーリボルバーの内部機構が激しく稼働、銃口が前後しながらビーム弾の嵐で先程よりも強くヒトツ鬼の身体を削り取る。

 

「うあぁぁ?!」

 

ガシャン!

 

ヒトツ鬼はたまらず冷気を両手から吹き出し樹氷のように太い氷柱を作り出した。しかし、背後の窓ガラスをアクションスターよろしくラペリングで突入したデカイエロー/サオリ、脳人レイヤーを開いたソノザ達が隙を逃さない。背後からモロに連射を喰らい、振り向く事さえできない。

 

「あがががが……!」

 

サオリの執拗な連射、槍と双剣の追い打ちにうめき声を上げながら床に膝を着くヒトツ鬼、このままなら撃破できると全員が確信していた。

 

「シットスピン!」

 

ヒトツ鬼は突然座ったままの姿勢で片脚を伸ばし、冷気を纏って回転する。その回転数が上がるにつれて弾丸が弾かれているかのように甲高い音が響く。

 

「レーン回りまーす!」

 

同時に脳人レイヤーが開き、回転したままその奥へと流れるように滑り進む。ディーリボルバーでレイヤー諸共撃ち続けるも、結局扉は消えて氷漬けの教室だけが残った。

 

「目標は逃走。戦闘を終了する」

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