ドン番外 らいほうバニタス   作:鳥鍋

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そのろく(完)

 

『大合体!大合体!ドン!オニタイジン!!よっ!銀河一!!』

 

銀河一の鎧武者、ドンオニタイジンが脳人レイヤーに降り立つ。それを脅威と見て対抗すべく、無限回転鬼ングは巨大な鬼険銃を手に光るビルの隙間から射撃。

 

「はっはっはっ!ちっとも痛くない!」

 

銃撃に対して背中からキジンソードを引き抜き、剣を交差させながらずんずん進む。何度も射撃を防ぎ、弾いて剣の届く距離まで到達すればどうなるかは明らかだ。

 

「そおらっ!」

「ぐあっ!」

 

一撃、二撃、三撃。順に胴体を切り裂かれ、無限回転鬼ングは後方に火花を散らして倒れ込む。それと同時に苦し紛れの連射を定まらない照準で放った。

 

「効くかよ!」

「待て、あのビルの崩れる方向は……」

「サオリ!」

「ミサイル、いや間に合わない!」

 

弾丸はドンオニタイジンには届かなかったが、ある一発が不幸にもビルに命中、脳人レイヤーから現実に影響して破片がスクワッド達がいる方向へと落ちていく。

 

「このっ……」

 

『ゼンカーイ!ジュラン!』

 

瓦礫の雪崩に飲み込まれあわや大惨事かと思われたが、そこに割り込む物があった。

 

「た、助かりました……」

「これも、ドンブラザーズの戦力?」

 

赤い恐竜型のマシン、ゼンカイジュランがスクワッドの前方で盾として瓦礫を受け止めていた。ボディを揺らして瓦礫と砂を払う様子をスクワッド達が観察していると、突然口を開いて彼女らの方へと向く。

 

「え?」

「退避っ……」

 

バクン。

 

「ドン・全開合体!」

 

スクワッドが飲み込まれた場面を崖の上から見下ろしていたのは喫茶どんぶらのマスターことゼンカイザーブラック。いつの間にこの戦場へと駆けつけていた。先程の有り様を見届けた彼は手持ちの銃、ギアトリンガーで操作を行いコマンドを発動。スクワッド達を飲み込んだままのゼンカイジュランと巨大化したエンヤライドンが走り出す。

 

『ドン・ゼンカイオー!よっ!全力全開!』

 

両者が走行しながら変形、縦に合わさる事でもう一つの巨大ロボ、ドンゼンカイオーが完成した。

 

「何なんだろうね、これ?」

「見たところ、あの巨大ロボットと似た操縦席?」

「でも、私達……大型機械なんて操縦した経験はありませんよ?何もできずに壊されちゃうんですかね……」

「それでも動かすだけだ!」

 

恐竜に飲み込まれた後の状況に困惑したスクワッド達だったが、サオリの素早い判断で戦闘へと飛び出す。目前では銃の代わりに鬼険棒に持ち替えた無限回転鬼ングがドンオニタイジンと鍔迫り合い、押しあっていた。少しのきっかけで均衡が崩れればどちらかが不利になる事だろう。

 

「桃井タロウ!」

 

その横合いからアバターソードを振り抜き、無限回転鬼ングは体勢を崩す。

 

「どうだ!」

「うあぁぁぁ!」

 

そこにドンオニタイジンが両手で袈裟斬りを加えて、相手は耐えられず大きく吹き飛んだ。それにより余裕ができた為、コクピットのサオリにドンモモタロウが声を掛ける。

 

「サオリ、あんたもここに来たのか」

「ただ見ているだけではむしろ危険だ、加勢する」

「面白い!カタを付けるぞ!」

 

キジンソードを上段に構えるドンオニタイジン、対してドンゼンカイオーはアバターソードを下段に向ける。

 

「うおぉぉぉ!」

 

体勢を立て直した無限回転鬼ングは激昂して突撃するが、二体のロボットは左右に分かれて移動。一歩前に出たドンオニタイジンが迎え撃つ。相手の正面からの振り下ろしを交差したキジンソードで受け止め離さない。

 

「はっ!」

 

その隙を狙いドンゼンカイオーは背後から剣を振り上げる。剣と言うよりナイフの構えで切り裂き、突き、蹴りを入れる。

 

「射撃開始!」

 

蹴りで右足を押し付けたと同時に、ドンレッグバスターを連射。ゼロ距離で小さな火花がボディからはじけ飛び、前方へ遠く吹き飛ぶ。

 

「ミサイル発射!うあぁぁぁ!」

 

それでもヒトツ鬼ングはすぐに片膝立ちをして胸の口から大量のミサイルを発射。まっすぐあるいは弧を描いて物量で前方を覆うそれらは脅威でしかないが、その程度で負ける彼らではない。

 

「はっはっはっ!吹き飛べぇ!」

「シールド展開!」

 

ドンオニタイジンは軍配を振るい突風を巻き起こす。ミサイルの群れも飲み込み、それらのほとんどが標的から大きく逸れる。数少ない向かってくるミサイルもアバターシールドを展開したドンゼンカイオーが無傷で突破してくる。

 

「ドン・ゼンカイクラッシュ!」

 

逃げようとした無限回転鬼ングの至近距離で巨大なドンブラザーズギアを展開、ギアという刃の付いた斧として横一線に斬り付けるがそれだけでは終わらない。

 

「『et omnia vanitas.』! 」

 

斬り抜いて敵の背後に回り込み、その背中をドンレッグバスターでコバルトブルーの弾丸を連射しながら蹴り飛ばす。その先は口を開けて待つ猛獣の如く剣を構えたドンオニタイジン。

 

「一騎桃千……『ドンブラパラダイス!!』」

『必殺奥義!ロボ・タロ・斬!!』

 

桃と剣が合わさりできる巨大な一太刀。縦一線に振り抜けばもはや結果は見えている。

 

「おあいそ……うあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

『鬼退治、あっ完了!』

「「大勝利!えい!えい!おー!!」」

『めでたしめでたし!』

 

ドンオニタイジンは勝鬨と共に剣を掲げる。

 

「任務完了」

「勝った。ちょっと面白かったね」

「……」

「えへへ、意外となんとかなるんですね……」

 

ドンゼンカイオーのアリウススクワッドは戦闘の終了に安堵しながらも彼らの勇姿を見つめていた。

 

───

 

「桃井タロウ……」

 

戦闘が終わった後の採石場、ドンモモタロウは変身を解除し桃井タロウとしてサオリ達スクワッドと向き合っていた。

 

「錠前サオリ。俺はアンタをキヴォトスに連れ戻しに来た」

「そうか。私達はお前達の世界がどんな物かを知った」

「どうだったんだ?」

「この町における凡人が何かが分からなくなった……」

「……」

「だが、人の幸せ、その一端を味わう事はできた。そう思う」

「そうか、それは良かったな」

 

サオリとタロウは少しの間、キヴォトスでの過去を元に通じ合っていたが、そこにはるかが声を掛ける。

 

「タロウ!今まで何してたの?!」

「シバイヌ急便の配達だ」

「そうではない、戻ろうとしなかったのかだ」

 

タロウのシンプルすぎる返答はもう予想している上スクワッドを通して知っている。猿原は質問の内容を修正して代わりに問いかけた。

 

「いや、俺にはキヴォトスでやるべき事があるらしい。ここに来たのは偶然迷い込んだこいつらを連れ戻しにだ」

「じゃあしばらく会えないんですか?!」

「ヒトツ鬼共はお前達でも問題ないだろう」

「だからってお前、黙ってどっか行くなよ!」

「心配するな、いずれ戻る。マスター!」

 

雉野や犬塚の心配や憤りも淡々と受け止め、マスターに呼びかける。

 

「いいよ」

『欠バーン!カーイテンジャー!』

 

歴代とは離れた戦隊、カイテンジャーの力を利用して平行世界間ゲートを発生、ドンブラザーズとアリウススクワッドの間に虹色の穴が開いた。

 

「ドンブラザーズ、短い間だったが生活の工面を負担した事を感謝する」

「猿原さん、意味は分からなかったけど伝えたい物があるのは分かった」

「えへへ、いつか雉野さんみたいに幸せな結婚がしたいですね……」

「翼さん、ソノニさんと一緒に逃げ切ってね」

 

スクワッドは思い思いの一言をドンブラザーズに語って彼らの方を向いたままゲートの前へと並び立つ。

 

「お供達、しばらくはここを頼んだぞ」

 

タロウもサオリの隣に立って彼らへしばしの別れを告げる。その表情には不安など少しも無かった。

 

「ちょっと待っ……!」

 

はるかは引き留めようとするが、一瞬でゲートが彼らを飲み込み消えた。そこには何も残らず、ただそよ風が吹いた。

 

「行ってしまったな……」

「タロウさんも大変そうですね」

「なぁ、何か忘れてないか?」

 

ドンブラザーズ達は短い間の友情とでも呼ぶべき物を感慨深く振り返り、タロウを頼もしく見送った。しかし、犬塚の言葉に引っ掛かり、はるかは首をかしげる。

 

「忘れてる、忘れてる……なんかここんとこ静かだった……」

 

はっ、と目を見開いて答え合わせをする様にはるか達は視線を合わせて言葉を揃えた。

 

「「「ジロウ(桃谷)!!」」」

「すっかり聞くの忘れてた〜!」

「そもそもなぜキヴォトスにタロウは行く事になったんだ?!」

「タロウさん迷惑かけてないですかね?!」

「いてもいなくても俺らを振り回してやがる!!」

 

「「「「わからないが、多すぎる!!」」」」

 

───

 

「ソノザ……やっぱり、私達は……」

「これは……ザワザワと言うより、クラクラだな」

 

脳人達はフラフラと力なく本野格西病院から歩いて出てきた。

 

「コレが……『風邪』という物か」

「休んで英気を、ハークション!」

「頭が、痛い……」

「せめて、あれくらいは動けないとな……ハクショイ!」

 

くしゃみと頭痛に苛まれながらも、そこで見たある者を目標としてなんとか帰路に就く為に歩く。彼らが見たのは身体の可動域を目一杯動かし、ポーズを決める練習着の女性。特に左足を軸に、確かめる様に動き続ける。その表情には無念も嫉妬も後悔も感じられなかった。

 

───

 

ドン番外 らいほうバニタス

 

───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「団地の方の配達終わりましたよルミちゃん!……じゃなかったルミさん」

「あはは、別にルミちゃんでもいいよジロウ!」

「いや、僕にとっての『ルミちゃん』は一人だけです。そこは譲れません」

「そっか、ごめんね。後で新作の料理食べてく?」

「はい、是非!」




無限回転鬼
スキン/回り続ける握り

 左足を怪我したスケート選手・浅羽静香から生まれた無限回転モデルのヒトツ鬼。「私がスケートリンクで回りたい」という欲望を叶えようとする。
 人を超えた氷上の鬼となり、正義の未来へつながるかのようにどんどん回転していった。モンスター化すると、焦土にする勢いで指名手配レベルに辺りを冷凍しまくる。
 むかしむかし、静香は神社に賽銭を入れて願いを込めたそうな…。

無限回転鬼ング
スキン/特上インフィニティー

 倒された無限回転鬼のパワーが脳人レイヤーに積み重なって生まれる、巨大な無限回転モデルのヒトツ鬼ング。あまねく奇跡で色彩豊かな敵を倒す特異現象スキルを得意とする。
 心を燃やしてハイパーなミサイルやファイナルをスラッシュで決めようとした。「カイテンジャーギア」をドロップする。
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